魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero   作:月に吠えるもの

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Another Mission <円卓の間-Eavesdropping> 33章

 

魔剣教団本部の奥には円卓が設けられた広間がある。

教皇や幹部達はこの部屋に集まって組織の意思決定を行うのだ。

教皇サンクトゥス以下、数名の幹部達は円卓の前に置かれた大鏡を眺めている。

そこにはアルブム大橋の広場の様子が映り込んでいた。

ネロを捕縛するため派遣させたクレドに同行したアルト・アンジェロの鎧を通して教皇達の元に届けられているのだ。

昨晩、アグナスはネロが悪魔に取り憑かれていることや、教団の秘密を知ったことを騒ぎ立てていたが、サンクトゥスが最も関心を持ったのはまた別のことである。

「閻魔刀……!?」

映像を見ていた幹部の一人が驚きの声を上げ、他の者達も同様にどよめきだす。

「閻魔刀が二つだと……!?」

「あの男、何故閻魔刀を……!?」

サンクトゥスは僅かに目を細めて映像を凝視する。

クレドの前に立ちはだかる銀髪の男が鞘に納めた刀はネロが持つ閻魔刀そのものだった。

折れて使い物にならなかったはずのものをネロが復活させて持ち去ったと聞き、今もああして携えているからこそ、彼から取り戻そうとしていたのである。

だがもう一本、別の閻魔刀が現れたなどサンクトゥスにとっては全くの予想外だった。

 

(似ている……あの男に……)

ネロと同じ銀髪のデビルハンターの姿にサンクトゥスは既視感を覚えていた。

自分を襲った赤い服の男――ダンテに似た印象だったが、サンクトゥスは17年前にさらに酷似した男を目にしたことがある。

 

――せいぜい今はスパーダを崇めていろ。だが、俺はいずれその神を超える。その時、どちらを崇めるべきか考えるがいい。

 

――貴様らの神か、それを超えた神の子かをな。

 

忘れもしない、教皇に即位した日の晩にフォルトゥナ城の寝室に忍び込んできた銀髪の青い男。

その男が携えていた刀は、後日文献を読み漁って魔剣士スパーダの愛剣の一つである閻魔刀であったことを突き止めることができた。

それこそがまさにネロが手にしているものなのである。

その刀を手にしていたあの青い服の男もまた、ダンテと同じくスパーダの血を引く者であることをサンクトゥスは確信したのだ。

今映っている紫の服のデビルハンターはあの時に現れた青い男と、見紛うかのように似ていた。

 

(まさか、もう一人のスパーダの息子……? いや、しかし……あの剣は……)

だが、あの時会った男でないこともサンクトゥスは感じ取ることができた。

あの時から年月を経ていて髪型もそっくりだが、何かが違う。

何より、新たに手にした剣の存在があの時の男とは別人であることをサンクトゥスに確信させる。

あれは教団が今手中に収めている魔剣士スパーダが最も愛用した最強の魔剣の仮初めの姿だった。

 

「もしや、あの男……」

「魔剣士スパーダ……?」

「いや、だが卑しき銃を使うなんて……そんな……」

幹部達からはさらに困惑の声が漏れ出している。

サンクトゥスと同じ想像を抱き始めているようだが、同時に受け入れることができないという疑念も感じている。

「鎮まるのだ。(みな)、落ち着くが良い」

サンクトゥスの宥めるような一声に幹部達は一様にざわめきを取り止めていた。

「あの男も、ダンテと同じく我らの築く楽園の障害となることは疑いようがない」

教皇の下した決断に幹部達は眉を顰めて顔を見合わせる。

ダンテが教皇を暗殺しようとした時、その身を守ろうとしたのは部外者である少女達。

それが今映っている二人で、クレドからはデビルハンターであることを告げられていた。

結果的に教皇の命の恩人でもあるのだが、ダンテ以外にもデビルハンターがこの地に足を踏み入れていることそれ自体が異端であり、ここにいる幹部達は誰も少女達に感謝などしなかった。

むしろ幹部以下、多くの騎士達は教皇を守る手柄を横取りした挙句、自分達の面子を潰したとして少女達を恨んだ。

教団の秘密を知った以上は敵でしかないし、現代では完全に廃れた魔法を用いて戦うなど教団の教義からすれば唾棄すべき異端者そのものなのだ。

 

「我らが奉ずる〝神〟は、この世に唯一つのみ。そのことに何ら変わりはない。その〝神〟も、間もなく完成する」

サンクトゥスの言葉に幹部達は広間の壁に飾られている石像を見やる。

歌劇場にあるものよりずっと小さいが、同じ魔剣士スパーダを模した神像である。

そして、本部の最奥にも〝神〟の御神体が祀られている。それこそが、魔剣教団の新たな楽園を築くための理想像なのだ。

「皆も帰天をし、天使の鎧を纏うが良い。〝神〟の降臨を迎える準備をするのだ」

教皇の厳命に幹部達は立ち上がり、広間を後にしていく。

サンクトゥスも席を立つと幹部達とは反対の扉へと向かっていった。

「クレドでは勝てんな……」

小さく溜め息を漏らし、サンクトゥスは小首を振った。

帰天をしたクレドは今、並の悪魔など比較にならない力を得ている。その気になれば上位の悪魔とも渡り合うことができるはずだ。

だが、ダンテにしろスパーダの血族が相手では正面からまともにやり合っても歯が立たないであろうことは目に見えている。

相手がネロにしろクレドが返り討ちに遭う可能性もあった。

 

「嘘よ! ネロが悪魔だなんて!」

「落ち着きたまえ。私とて最初見た時は信じられなかったさ。だが……事実なのだよ」

背中に届く男女の声。それは出口に続く扉の向こうから聞こえてくる。

男の声は幹部の一人であるアグナスのものだった。

「信じられないなら、君自身の目で直接見てみると良い。今、クレドが彼を捕まえようとしているのだ。下手をすれば、返り討ちに遭うかもしれん」

立ち止まるサンクトゥスはアグナスの発する言葉に微かに口元を綻ばせてほくそ笑む。

ネロを捕縛する任をクレドに授けはしたが、万が一のための保険を打っておくべきだとサンクトゥスは考えていた。

クレドがしくじった時、どうやってネロを止めるべきかと。

アグナスも帰天はしているものの、クレドほど高い戦闘能力はない。故にネロが連戦してアグナスと戦ったとしても確実に勝てる保証はない。

故にアグナスは直接戦わずにネロに勝てる策を密かに進言してきた。

ネロは、クレドの妹と親しい間柄であると。




元々、前話と合わせて投稿する予定でしたが、投稿日の日付調整のために分割させてもらいました。

作品の良かったところはどこですか?

  • 登場人物
  • 世界観
  • 読みやすさ
  • 話の展開
  • 戦闘シーン
  • 主人公の描写・設定
  • 悪魔の描写
  • 脚色したオリジナル描写・設定
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