魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero   作:月に吠えるもの

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Another Mission <ダンテ、到着す-apostatel> 44章

「この卑劣者ぉ!!」

怒りを爆発させたのはネロだけではなかった。

下ではルイズがケブーリーの銃を構え、教皇に向けて次々にニードル弾を放っていく。

教皇は光に包まれ巨神像の中へと潜り込んでいったが、ホーミングするニードル弾は右肩から左肩にかけて軌道を変えては次々と張り付いていく。

やがて頭の上に教皇が姿を現わすと同時に、刺さっていたニードル弾が一斉に炸裂し鋭い轟音を轟かせる。

「人の心を弄ぶなんて! あんたこそ本物の悪魔よ! あんたなんかにスパーダを崇める資格なんてないわ!!」

肩を上下させながら荒い呼吸で喘ぐルイズは鋭く叫び倒す。

愛する者と同じ姿の操り人形を用いて愛する者を欺く……それは、かつてアンリエッタが受けた卑劣な策謀そのものだった。

そのような悪意と下劣さに満ち溢れた所業を、ルイズは断じて許すことなどできはしない。

「この恥知らず! ひとでなし!! 外道!!! 鬼畜!!!! 変態!!!!!! キ×××ク×ハ×ジ××!!!!!!」

あらん限りの絶叫と共に次々と吐き出される罵詈雑言が塔内に木霊する。

「人のことを言えねえじゃねえかよ……」

掴まれたままでいながらも、ネロは思わず皮肉混じりの失笑を漏らしてしまった。

アグナスの時もそうだったが、ルイズが口にするのは可愛い女の子が使って良いようなものではない暴言ばかりだ。ネロが教皇に浴びせかけた罵倒の方が可愛く思えるくらいである。

つくづく、この場にキリエがいなくて良かったと改めて痛感する。

 

そんな汚らしい罵倒の数々を受けた教皇はただ鬱陶しそうに顔を顰めるばかりだった。

ネロにしてみればルイズは自分が口にしてやりたいことを全部言ってくれたのだから、いい気味である。

「異教徒風情が軽々しく我らの神の名を口にするとは……汚らわしい」

教皇は徐に手をネロの方に伸ばすと、彼を握り締めている巨神像の右拳の一角に光が溢れ始める。

「閻魔刀が……!」

光の中から飛び出てきたのはネロが持っていた閻魔刀だった。

宙を浮く刀は教皇の元へ一直線に吸い寄せられていく。

「くそっ……!」

ネロは必死にもがいているが、やはり巨神像の拘束からは逃れられない。

「エア・ハンマー!」

タバサが杖を突き出すと、教皇に吸い寄せられていく閻魔刀が弾き飛ばされた。

「!!」

宙を舞った閻魔刀の元へ飛んだ途端、巨神像の左手が払われ、急ブレーキしたタバサの目前をギリギリ掠めていた。

明後日の方向に飛んでいった閻魔刀は再び教皇の元へ一直線に吸い寄せられていき、手の中へ収まっていく。

 

「これで全てが揃った……。混沌の果てに、ようやく我らが楽園を築く時が来たのだ!」

閻魔刀を掲げながら教皇は酔い痴れるかのように高らかに声を上げていた。

「最悪だわ……!」

「まったくだぜ。こんなデカブツで今さら何しようってのかねえ」

あの閻魔刀を使って何をしようとしているかなど、もうルイズ達には判り切ったことだ。

街の中にあった巨大な地獄門。かつてスパーダが封じた、魔界と人間界を繋ぐ出入口を開くつもりなのだ。

そんな狂気の沙汰を人間が自らの手で行おうとするなんて、それではスパーダがこの世界を救った意味がない。

第一、魔界への道を開くことに何の意味があるのかさっぱり理解できないのだ。

「楽園……」

ルイズの後ろで今までずっと蹲っていたクレドは己の体に鞭打ち、起き上がろうとしている。

「そんなもの……幻だ……!!」

跪き、よろけながらも立ち上がると巨神像の頭上にいる自らの主を睨みつけていた。

 

「あんた……」

ルイズが振り向くとクレドの姿が光に包まれ、またあの悪魔へと姿を変えていた。

隻翼を広げ、悪魔と化したクレドは左腕の大盾を構えながら教皇に向かって一直線に突撃していく。

「ぬっ……」

『ネロ! 逃げろ!!』

クレドのぶち当たりで教皇の体が大きくよろめきだす。

すると巨神像の右手の力が僅かに弛むのがネロにははっきり判った。

「くそっ……このヤロ……!」

必死に這い出そうと身をよじっていると、タバサが傍に降りてきて巨神像の指の隙間に杖を差し入れてくる。

「デルフ! 早くして!」

「おうよ! 待ってな!」

さらにはルイズもレビテーションで上がってきてガンダールヴの魔人が剣を同じように差し込み、タバサと共にこじ開けようとしていた。

二人の少女が必死に自分を助けようと奮闘する姿にネロは一瞬呆然としていたが、突如鳴り響いた甲高い剣の打ち合う音にハッとする。

 

「クレド……!」

巨神像の頭上ではクレドの剣と教皇の閻魔刀がぶつかり合っていた。

閻魔刀よりも遥かに大きい剣が押し付けられ、教皇は顔を顰めている。

「背信者め……お前の一族はつくづく手を焼かせる……お前も大人しく、私に従っておれば良かったものを……」

『Silence! You're the traitor!!(黙れ! あなたこそが背信者だ!!)』

叫びながらクレドは剣を押し出し、教皇を弾き飛ばす。

ふわりと宙を浮く教皇にクレドは追撃を仕掛け、自らも躍りかかり斬りかかっていた。

イクシードの轟音を轟かせ、豪速と共に剣が薙ぎ払われ――

「……っ!?」

ネロは目を見開き、絶句した。

宙を舞っていたのはクレドの剣……そしてそれを握る右手だった。

よく見えなかったが、教皇はクレドが剣を振り切る寸前で閻魔刀を振り上げたようである。

「っっ……!!??」

驚きと苦痛の入り混じった呻きを上げたクレドにまたも稲妻が浴びせかけられ、下の広場へと吹き飛ばされる。

「クレド!!」

思わずネロは右腕を伸ばそうとして、その拍子にスポリと巨神像の指の隙間から抜け出ていた。

叩きつけられたクレドは元の姿に戻り、またも倒れ伏してしまっている。

しかも今度は右腕の下が真ん中から先が失われ、血を溢れさせて。

 

神の顔前で浮遊する教皇はクレドに冷酷な視線を浴びせかけながら見下ろしている。

「愚かな。かつてはわしも騎士団長の座にあったことを忘れたか。老いたりといえど、己が剣技を忘れてはおらぬわ」

教皇はちらりとネロ達の方を振り向いてきた。

「きゃっ……!?」

「危ねっ!」

巨神像の握力がまたも強まったかと思えば大きく傾きながら動きだし、ルイズは必死にしがみつこうとする。

タバサやガンダールヴの魔人が支えてくれたが、巨神像はさらに激しく手を振り回すように肩まで振りかぶると一気に薙ぎ払いだす。

「きゃああああっ!!」

「ルイズ! タバサ!!」

二人の少女が空中に弾き飛ばされていくのを見てネロは叫んだ。

辛くも自由に動かせる右手をルイズに伸ばすが、装着しているギルガメスのせいで幻影の腕が伸ばせなかった。今から悪魔の右腕の中に収容しても間に合わない。

 

「おい、レビテーションだ! レビテーション!!」

デルフが慌てて叫ぶがルイズには咄嗟にレビテーションを唱える余裕すらなかった。

それでも杖を手に取ろうとしたが、突然自分の体を誰かが受け止めたような感触があった。

一瞬、視界に入ったのは見覚えのある銀髪だ。

(スパーダ……!?)

まさかと思い、ルイズは顔を上げてみる。

だがそこにあったのは自らのパートナーであるスパーダではない。

紫ではなく赤いコートを身に纏ったその男は……。

「……ダンテ!?」

「待たせたな、お姫様」

ルイズを両手で抱き上げているのは大剣リベリオンを背負う長躯のデビルハンターだった。

軽くウィンクまでして笑顔を向けてくるダンテはルイズの小さな体をそっと下に降ろす。

(何、あの女……)

無事に降り立ってクレドに治療の魔法をかけているタバサの姿にホッとしたルイズだったが、ダンテの隣に近寄って来た一人の女に目を丸くした。

金色の長髪を伸ばす彼女は肩を露わにした黒いビスチェやブーツなど、ダンテと似た雰囲気の装いをしている。

何よりルイズの目を引いたのは、両眼を黒い眼鏡(サングラス)で覆い隠しているのだ。

その手にはダンテと同じような黒と白の拳銃を二丁携えていた。

 

「グロリアか……ようやく変装を解いたようだな」

「あら、バレてたのね」

金髪の女は教皇の言葉にあっけらかんと肩を竦めだす。

「……グ、グ、グロリアですって!?」

「全然違げーな……」

教皇が呼んだ女の名にルイズもデルフも仰天した。

昨夜に出会ったグロリアという謎の女は銀髪に褐色の肌をしていたはずである。だが、目の前にいるのは対照的な明るい肌をした女で、かつて目にした時の姿は影も形もない。

破廉恥すぎる装いは一転して落ち着いた感じにはなっているが、ルイズはこの女があのグロリアだとはとても信じられなかった。

本人は唖然とするルイズに小さく微笑みかけると、教皇の方へ視線を戻していた。

「貴様が我らにもたらした魔剣スパーダは、有難く我らが〝神〟の心臓とさせてもらった。礼を言うぞグロリア……いや、トリッシュと呼ぶべきか」

教皇が呼び直すとダンテは苦笑を浮かべてグロリアことトリッシュを振り返りだす。

「バレバレだったな」

「……みたいね。もう少し地味な格好の方が良かったかしら?」

「貴様が魔剣スパーダを手にしていることは、とうの昔に調べがついている。我らを侮るとは浅はかなものよ」

鼻で嗤う教皇は宙に浮いたまま手にする閻魔刀を正面にかざすと、巨神像もそれに合わせて右手を前にかざしだす。

握られたままギルガメスの右腕に突っ伏しているネロを一行に見せつけてきていた。

 

「この小僧がいてくれて助かったわ。正直、貴様のような輩を捕らえるのは骨が折れる。だが、同じスパーダの血族であるなら、お前やあの男よりもまだこの小僧の方が遥かに御しやすいというものだ」

したり顔を浮かべる教皇にダンテは呆れたように溜め息を漏らしていた。

「やめとけよ。あんまり調子に乗ってると、親父に怒られちまうぜ? お前らの神サマがな」

軽口を叩くダンテだが、ルイズは二人の会話に思わず顔を顰めだす。

「スパーダ? スパーダの血族って……」

スパーダの血族……親父……確かに二人ははっきりとそう口にしたのだ。

何故、ダンテがスパーダの愛剣リベリオンを手にしているのかずっと疑問だった。この異世界におけるスパーダ本人ではないかと最初はルイズも考えた程である。

魔剣士スパーダの血族……魔剣士スパーダの息子……俄かには信じがたい事実だった。

 

「そーだぜ、爺さん。こんな悪趣味なモン作ってる暇があるんなら、せいぜい神サマにお祈りでもしてな。てめえが殺した前の教皇みたいによ」

デルフもダンテに同調してからかいだすと、教皇は僅かに目を細めだしていた。

教皇サンクトゥスが先代の教皇を毒殺したらしいという話はルイズもミティスの森へ向かう道中でスパーダから聞いたが、あの反応からしてどうやら図星らしい。

ダンテやトリッシュは感嘆と頷き、蹲っているクレドもキッと顔を上げて教皇を睨みつけていた。

「それにだ……坊やはまだやる気みたいだがな?」

そうダンテが言い出すと、ハッとしてルイズはネロの方を見た。

ぐったりとしていたはずのネロはいつの間にか顔を上げて教皇を睨みつけている。さらに右腕のギルガメスが変形し、拳が真っ直ぐに突きつけられていた。

「……You're fired!!!(()っ飛べ!!!)」

四方に杭状の機関を展開していたギルガメスは大砲のような爆音と爆風を発していた。

 

作品の良かったところはどこですか?

  • 登場人物
  • 世界観
  • 読みやすさ
  • 話の展開
  • 戦闘シーン
  • 主人公の描写・設定
  • 悪魔の描写
  • 脚色したオリジナル描写・設定
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