魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero   作:月に吠えるもの

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Mission 55 <烈風の騎士姫> 前編

 

 

時空神像が映し出したのはどこかの寺院らしき場所の庭だった。

夜であるらしく暗いものの月明かりに照らされているためか景色ははっきりと覗うことができる。

その薄闇の中には二つの人影が向かい合い、対峙している。

 

一人は貴族であるらしくマントを身に纏い、灰色のような銀髪につばの広い羽のついた帽子をかぶった黒ずくめの男だ。左目にはモノクルをつけているのが特徴的である。

 

対するは桃色の髪を揺らす十代半ば程度の一見、少年のようにも見える騎士姿の人物。

その人物が身に纏う時代遅れでしかない衣装はルイズ達には見覚えがあった。

 

「まあ、母様ったらとってもお若い! ルイズにそっくりだわ! お若い頃はこんなにも可愛かったのね!」

カトレアが楽しげに笑ってぽんぽんと手を叩く。

「あれが母様……!?」

「さっきの時と同じ格好じゃねえか。しっかしまあ、本当にダサいもんだねえ」

ルイズもエレオノールも、あの桃髪の騎士が男装した自分達の母、カリーヌ・デジレのであることを認識した。

髪型も服装も、先刻スパーダと激闘を繰り広げていた時のものと全く同じだったのだ。

さすがに三十年以上前というだけあって現在のような大人の魅力は感じられない、子供そのものの姿ではあったが。

「それに、あれは父様だわ! とってもお若いわね!」

「と、父様って……もしかしてあの銀髪のこと……?」

「だってほら、あの目の色だって同じだし……ちゃんと面影だってあるわ。髪は染めてるだけよ」

カトレアの指摘にまたも二人の姉妹は呆然として自分達の父と映像の男を見比べる。

金髪の父とは似ても似つかない髪色の上に髭も生やしていないので、どうにもあの男が自分達の父親には到底見えなかった。

「でもちい姉さま。あいつ、サンドリオンって名乗ってたわ」

「きっと偽名よ。母様だってカリンって名乗ってたくらいなんだから、父様だって仮の名を名乗っていたに違いないわ」

 

公爵とカリーヌは唖然としたまま映像に映る若き日の自分達を眺めていた。

これは遠い昔、実家からトリスタニアへ騎士になるため上京してきたばかりのカリーヌがちょっとした悶着から決闘騒ぎを起こした時の出来事だ。

この決闘がピエール・ド・ラ・ヴァリエール公爵とカリーヌ・デジレ・ド・マイヤールという二人の男女の馴れ初めであった。

 

(ああ……そうだったな。俺はこの時のカリーヌに一目惚れしてたんだよな……こんなに綺麗な貴族の女の子がこの世にいたなんて思いもしなかったから。そういえばこの時のカリーヌはガキだったし男装してたから、俺も他の奴らも男と見間違えてたっけな)

 

(あの時、この人はゲルマニア人との争いで怪我をしてた……それを押してあそこまで戦ってくれたのよね……)

 

今は結ばれた二人の男女は若き自分達の姿を眺めながら遠く過ぎ去った馴れ初めの時に思いを馳せていた。

二人の騎士は正面からぶつかり合い、今にも互いの杖で切り結ぼうという所で映像がぼやけだして消えてしまう。

「何だよ、せっかく良い所だったのになあ」

デルフに同調してルイズもカトレアも残念そうな顔を浮かべていた。

「何がどこまで映るかは見当もつかん。お前達にとって後ろめたい光景が出てきても私は知らん」

ルーチェの銃を手元で弄びながら言うスパーダは言外に「そうなったのは過去のお前達の責任だ」と込めているのをカリーヌは感じ取っていた。

 

少しの間を置き、再び映像が鮮明になるとそこには全く別の光景が映し出される。

 

『な、何をするか貴様!』

『寝るから服を脱いでるんだ』

『ひ、人がいるのに脱ぐんじゃない! 馬鹿者!』

『男同士じゃないか。何を言ってるんだ』

『そ、そうだが……! ぬ、脱ぐな! ここで脱ぐな! 外で脱げ! 頼むから僕の前で服を脱ぐんじゃない!』

 

そこでは若きカリーヌが羞恥に顔を真っ赤に染めながら着替えを始めようとする若きピエールに詰め寄っていた。

決闘騒ぎの後、色々あって魔法衛士隊の見習いとなったカリーヌはピエールの雑用として務めることになったのだが、寝食を共にしなければならなくなったので女人禁制の魔法衛士隊に男装して入隊したカリーヌにとっては苦難の日々の連続だったのだ。

 

映像は忙しなく切り替わり、朝起きたカリンが毛布に包まっているのをピエールことサンドリオンが力尽くで剥ぎ取ろうとしたら逆に彼女の風魔法で吹き飛ばされていた。

「もう。お父様ったら、女の子の前ですんなりと服を脱ごうとするなんて。それに年若い女の子は肌を見せたりするのを恥ずかしがるものなのに」

「まったく、女の子なのに無理して男の言葉を使ったりして……はしたない」

カトレアとエレオノールが目を細めて両親を見やる。

映像を眺めていた父と母は苦い顔で、そして恥ずかしそうに視線を逸らし合っていた。

 

『何よ! 年上ぶって! 私より四つばかり年上なだけじゃないの!』

映像の中では一人、風魔法を使いながら洗濯をしているカリンがはっきりと少女の声と口調で悔しそうに癇癪の怒鳴り声を上げていた。

 

(本当にあたしにそっくり……母様にもこんな時代があったのね……)

 

ルイズは若き日の母の姿が自分と瓜二つであることに感嘆としていた。

今でこそ烈風カリンとして畏怖される存在である鋼鉄の騎士とは思えないほどに初々しい姿で、現在のような威厳などまるで感じられない年頃の子供そのものだった。

初めて目にする母の意外すぎる姿に思わず笑みをこぼしてしまう。あの烈風カリンと呼ばれる母にもこんな時代があったのだから。

 

 

次に切り替わった映像はどこぞの居酒屋で飲み食いをしているカリンとサンドリオンの姿だった。

 

『どうだカリン! 俺は強いだろう!』

『変態だけどな』

『この僕が魔法衛士隊きっての色男ということがこれで分かっただろう?』

『趣味は悪いけどな』

 

他にも二人の貴族の男が同じ席でくだを巻いてどんちゃん騒ぎをしている様子だ。

一人は屈強そうな大男で、もう一人は派手な衣装に身を包みキザな雰囲気を醸し出した優男である。

 

(若いわね……あの二人も……)

 

カリーヌもピエールも互いに微笑を浮かべていた。

あの二人はかつて魔法衛士隊に所属していた隊員。カリーヌとピエールが共に戦場で戦い、助け合った無二の親友だ。

バッカスにナルシス――今でも交流は続いている永遠の戦友達である。

この頃は全員、まだ二十にも届かぬ若者だったが、今ではもうみんなずいぶんと年老いているのだ。……カリーヌただ一人を除いて。

 

静かに酒を飲むサンドリオンを除いてしばらく楽しそうに喋り合っていた一行だったが、新たな客が現れると事態は一変した。

『ちっ……ユニコーン隊の奴らか』

舌を打つバッカスと同様にナルシスまでもが苦虫を噛み潰したような顔を浮かべだす。

居酒屋の入口には四人の白ずくめの騎士達の姿があったのだ。

 

「ユニコーン隊? 魔法衛士隊じゃないの?」

「聞いたことがあるわね。確か、当時のトリステイン大公だったエスターシュの親衛隊だったそうよ。一時期、魔法衛士隊に代わって近衛を務めていたらしいわ」

ルイズも聞いたことがない名の部隊に首を傾げるがエレオノールが答えていた。

スパーダも魔法学院の図書館で色々と歴史を調べていた際に知り及んでいることである。

 

映像の中でカリンはユニコーン隊の姿をうっとりと見惚れた様子で眺めていた。

『何だ、お前? あっちが良かったって顔だなあ』

『そ、そんなことはないよ!』

バッカスに突っ込まれて慌てて我に返るカリン。

(本当、馬鹿みたいね……あんな名前と見栄えだけでしかない騎士に憧れるなんて……)

カリーヌは若き日の自分の青臭い姿を見て溜め息をつく。

あの頃の自分は立派な騎士というものに憧れ、世間のことを何も知らずに魔法衛士隊に志願した。

だが現実はカリーヌが想像していた華やかなものとは程遠かったことを思い知らされたのだ。

 

『お前達はそれでも貴族か!?』

『カリン、やめろ』

『ああまで馬鹿にされて、お前は悔しくないのか!』

やがてユニコーン隊が魔法衛士隊であるカリン達を堂々と侮辱したり難癖をつけ、さらには店員にも暴行を加え始めたことからカリンが真っ先に怒鳴り上げていた。

それをサンドリオンが止めるが、カリンの怒りは鎮まらない。

『何だあいつは? 子供じゃないか。とうとう子供まで入れるようになったとは、魔法衛士隊もいよいよ終わりだな!』

『直接言うのが怖いのか? だろうな……遠くでこそこそと陰口を言うのが似合いの卑怯者だからな』

冷笑するユニコーン隊の騎士達に面と向かってカリンは言い放つ。

『まったく、お前達のような馬鹿どもとそんな子供しか残っていないようでは魔法衛士隊も終わりだな! 解隊されてもやむを得まい!』

ユニコーン隊の一味の中からリーダー格らしき偉丈夫の男が出てきていた。

そいつはアンジェロと呼ばれる元魔法衛士隊の騎士であったが、様々な問題行動ばかりを起こしていたので隊を追い出されていた男だったという。それが今度は要領よくユニコーン隊に鞍替えしたというのだ。

バッカスとナルシスにその事実を伝えられたカリンの目がさらに吊り上がっていく。

『黙れ裏切り者。お前はろくでもない罰当たりだな』

『おい。その杖を抜いたら子供とて容赦はせんぞ』

店内は完全に沈黙しており、成り行きを見守っていた。

そんな緊迫した光景をルイズら三人の娘達はハラハラとした様子で見守っていた。

『そこまでだ、カリン』

『離せ!』

『止めるな、サンドリオン! こいつが正しい。あいつらはどうにも許せん!』

『減俸なんかより我慢できないことがあるもんさ!』

バッカスとナルシスもカリンに同調してカリンの左右に並び出す。

『僕は貴様たちに決闘を申し込む』

『俺も決闘を申し込む!』

『僕もだ!』

カリンを筆頭に杖を抜き放った三人にユニコーン隊一行も立ち上がっていた。

『こちらも四人。そちらも四人。数は揃っているな。いいだろう、相手をしてやる』

今にも場も弁えない貴族の決闘が始まろうかという一触即発の空気が立ち込めていたその時だった。

 

『な、何だ!?』

突如、対峙し合う二組の間に次々と無数の鋭い光が頭上から降り注いだのだ。

場面を眺めていたルイズ達もいきなりの光景に驚いてしまう。

『こ、これは……』

床に突き立てられたのは、浅黄色をした長剣だった。

仄かな光を纏い、薄っすらと透けているその剣は実体のない、魔力で作られた存在であることは明らかだった。

(これって、スパーダの魔法の剣?)

ルイズはスパーダが使う魔力の剣、幻影剣に酷似していることに眉を顰める。

 

何事かとカリン達もユニコーン隊も狼狽する中、今まで沈黙していた周囲の客席の中からすっと立ち上がる人影があった。

『ギ、ギルバの大将!』

ユニコーン隊がその姿を目にして慌てふためく。

 

(な、何! あいつ!?)

ルイズは突然の介入者の姿に顔を顰め、目を見開いていた。

それは濃緑の色をしたスーツを着こなした紳士のような出で立ちの長身の男だった。その手には150サントほどはあるであろう長大なサーベルらしき剣を手にしている。

だがその男は誰が一目見ただけで異様としか言えないような風貌をしているのである。

何故なら顔中に包帯を巻きつけて素顔を隠しており、逆立った短い銀髪だけでなく覗かせている鋭い瞳は人間とは思えないほどの冷酷さを蓄えていたのだ。

 

ギルバと呼ばれた紳士は呆然と立ち尽くすカリンら一行の横を素通りして入口に向かうが、扉を開けようというところで立ち止まると肩越しに振り返る。

何の感情も覗えない冷たい視線を叩きつけてくる彼にユニコーン隊側の方はカリン達以上に緊張し、強張っていた。

一言も言葉も交わさずにギルバは店を後にしていく。同時にカリン達の前に突き立てられた剣が砕け散り、消えていく。

凄まじい威圧感に怯んでいた一行だったが、我に返ったユニコーン隊がカリン達を向き直る。

『……セント・クリスト寺院で待つ! 必ず来い!』

言い捨て、まるで逃げるようにしてユニコーン隊達も店から出ていった。

『何だったんだ? あの包帯の男は?』

『ああ……ギルバか。エスターシュ大公の側近って呼ばれてる奴だよ』

『さすがのユニコーン隊もあいつには逆らえねえらしいな』

我に返ったカリンに尋ねられてサンドリオンとバッカスが答えた。

『あいつ……貴族なのか? 杖を持ってなかったようだが……』

『さあね。ゲルマニアの平民出身の貴族かもしれないし、とにかく得体の知れない奴さ』

『だけどさっきの剣、あれは魔法だろう? だったらあいつもメイジということじゃないか』

『もしかしたら、あの剣が杖なのかもしれんな。本当に変わった男だよ』

『少なくとも僕ら魔法衛士隊に因縁をつけたりはしないからマシだね』

 

(ペドロ……やっぱり奴は屍人だったのか)

映像の中、ずっとユニコーン隊一行を観察していたピエールは深く顔を顰めていた。

ペドロというのは当時、ユニコーン隊に新しく入っていた新入りの隊員だったという。ピエールことサンドリオンがこの決闘で戦った相手だ。

しかし、その後に起きた様々な出来事もあって、このペドロは人間ではないことを改めてピエールは実感する。

何故ならその決闘でサンドリオンはペドロの心臓を深々と貫いたというのに、まるで平然としていたのだから。

おまけに先程観察していた時も、その目はおろか全身より発する空気からも生気というものがまるで感じられないことが歳を重ねた今になってはっきりと見極めることができていた。

 

(ギルバ……スパーダ……)

カリーヌは黙々と映像を眺めているスパーダに厳しい視線をぶつけていた。

当時は悪魔などという存在などまるで信じていなかったカリンであったが、このヴァリエールに嫁ぎ魔法衛士隊を引退するまでの間に数多くの異形の存在達と対することになる。

あのギルバという男との邂逅が、カリーヌにとっては最初の悪魔との遭遇でもあったのだ。

 

 

またも映像が別のものに変わり、今度はどこかの街並みが映し出される。

「何なのよ、これ……」

「ルイズ、カトレア。見ては駄目よ……!」

ルイズが愕然とし、エレオノールが慌ててカトレアの視界を手で覆う。

ピエールとカリーヌも露骨に顔を顰めて映像を眺めていた。

その街はトリステイン領内にある海に面したドーヴィルという街だ。人口二百人ほどの小さな街だが観光地や保養地として有名となっている。

ところが、その美しい海の景観を台無しにしてしまう凄惨な場面がそこには映っていた。

 

(アンジェロ……!)

ピエールとカリーヌが険しい顔を浮かべて映像を睨みつけた。

一人の貴族が住民を次々に魔法を使って虐殺していく光景がそこには映っている。それはユニコーン隊の一員だったアンジェロだったのだ。

街の出入口にも数人の貴族が待機しており、逃げようとする住民を魔法で斬殺していき、やがて響き渡っていた悲鳴がピタリと止んだ。

『これで良いのかい、ノワールさんよ』

『ええ。ご苦労様、アンジェロさん』

杖を収めて振り返るアンジェロの後ろには黒い修道服を身に纏う女性が一人立っていた。

その女は苦々しい顔をしているアンジェロと対照的に虐殺など眼中に無かったとでも言いたそうに平然と、にこやかな笑みを浮かべている。

 

(カ、カリーヌ……)

ピエールは目を見開き、思わず席から立ち上がりかける。そんな夫の姿を妻のカリーヌは苦い顔で見つめていた。

(ほう。あの女……一見、人間にしか見えんがそうではない……)

スパーダはノワールと呼ばれた修道女を見据えて嘆息する。

姿形は人間ではあるものの、その体はルイズ達のような純粋な人間としての肉体とはまるで異なるものだった。

その事実を過去の記録でしかないただの映像だけでもスパーダは看破していた。

 

『しかし恐ろしい女だな。俺も軍人は長げえがこんなのは初めてだぜ』

『人を殺すことは嫌いかしら?』

『当たり前だろう。人殺しが好きな奴なんているかよ』

『でも殺したのね』

『あんたがやれって言ったんだろうが。そうしたら奴らに勝たせてやるからってな。あのサンドリオンと生意気な騎士見習いの小僧を殺せるなら、悪魔にだって魂を売ってやる』

悪態をつくアンジェロの姿にピエールは眉間に皺を寄せた。

当時の自分は彼から相当恨まれていることは自覚していたが、まさかここまでだとは思ってもみなかったのである。

『あらあら。私は悪魔ではないわよ』

『よく言うぜ。尼さんの言うことにはついていけねえな』

 

(何なの、あいつ……何か、怖い……)

ルイズはもちろん、エレオノールもカトレアも、あのノワールという女の異常性に気が付いていた。

カトレアのような慈愛の笑みを讃えてはいるものの、人間らしさというものを全く感じ取ることができない。

まともな人間であればあのアンジェロのように普通ならば命を奪うという行為に気分を害するし、目の前で命が次々に失われる惨劇の中で笑っていられるなどあり得ない。

彼女が『人間』の心を持っているのであればの話だが。

その笑顔の裏では凶悪な何かが隠れ潜んでいる……そうにしか見えない。

 

『でも、殊勝な心掛けなのね。大したものだわ』

薄くほくそ笑んだノワールの言葉が切れると共に、突如として彼女の周りの地面が次々に隆起し始めた。

噴き上がり飛び散る土くれと共に飛び出してきた何かが、俊敏な動きで着地する。

「おおっ!? 何だあ! あのトカゲどもは!」

デルフも思わず仰天しだしていた。

現れたのは亜人……と言うべきなのか微妙な怪物だった。それはトカゲのような爬虫類が二足歩行になったと言うべき姿だったが、尻尾は尻ではなく後頭部から生えているという奇怪なものである。

特徴的なのはそのトカゲ達は頭部には兜を、右手には円形の盾を装備しているということだ。

また固体にも一部違いが見られ、種類そのものは近種なのだろうが体は一回り大きめな奴から、体は小さいが顔の横や後頭部から尻尾に沿って鮮やかなヒレのようなものが存在している、もしくはそのどちらにも該当しないものもいるのだ。

現れたトカゲ達はけたたましい金切り声のような雄叫びを一斉に轟かせていた。

『な、何だ! 何だよ、こいつらは!』

『私達の同志となれるかどうか、まずはその力を試させてもらうわ』

ノワールが言うや否や、一斉にトカゲ達が鋭い爪を振りかざして戸惑うアンジェロに襲い掛かる。

慌てて杖を構えようとするものの、トカゲ達の俊敏な動きに呪文を唱える暇さえ与えられず次々にその身を刃のごとき爪で斬り刻まれていった。

最期には喉や心臓、背中とあらゆる場所を爪で串刺しにされ、断末魔を上げることさえ許されず無残に惨殺されてしまう。

 

目を覆いたくなるような光景にルイズは顔を背ける。カトレアだけはまたしてもエレオノールに目元を覆われていたために凄惨な場面を見ることはなかった。

「スパーダ。あのトカゲは何なの?」

「ブレイドにアサルト……魔帝が遣わした尖兵ですね」

「せ、尖兵ですって?」

ルイズの問いかけにモデウスが代わりに答える。エレオノールは目を丸くしつつもカトレアの目元を覆い続けた。

魔帝ムンドゥスは人間界侵攻のために様々な尖兵や戦力を手中に収めており、中にはムンドゥスが直接生み出したものさえも存在する。

その一つがあの爬虫類をベースに作り出したブレイド、そしてアサルトなのだ。

岩をも容易に切り裂き砕く鋭利な爪を武器にし、装備した防具に自らの魔力を付加させて防御さえも行う知能も持っている。

ブレイドはパワーを重視し、アサルトはさらにスピードを強化させた上で暴風の力さえも操る力を併せ持つ。

魔帝ムンドゥス直属の、土と風の精鋭魔界兵の一角だ。

 

『あらギルバ。来ていたのね。まあ、あなた様も』

アンジェロがブレイドらになぶり殺しにされた直後、ノワールの前に二人の人影が姿を現していた。

「あ! あいつは……」

一人はあのギルバとかいうスーツを着こなした男。もう一人は貴族らしき壮麗な身なりをした男であったが、その背中には巨大な猛禽類の翼が生え、口元を仮面で覆っていた。

(ほう……あいつがいるのか……)

スパーダはその翼人のような男を目にして感嘆とする。

それはかつて魔帝ムンドゥスの右腕として仕えていた時からも顔を合わせていた、同じムンドゥスの腹心の一人である上級悪魔。

スパーダと同じ、真の悪魔の力と本性を隠した人間体である。

『ふん。他愛もない……所詮、人間などこの程度か』

『大丈夫ですわ。私がこうしてあげれば……』

翼人に吐き捨てられたアンジェロの亡骸にノワールが近づきしゃがみ込むと、その首筋に触れる。

すると驚くことにあれだけブレイド達に切り裂かれ貫かれたアンジェロの体は瞬く間に傷一つない元の状態へと戻っていた。

さらには何事もなかったようにゆっくり起き上がるアンジェロであったが、先程までとは打って変わってその表情や瞳には生気が宿っていない。

『これで彼もこの街の人達と同じく救われますわ。辛い現世を離れ、何も悩みの無い場所へ辿り着くことができましたから』

『遊びも程々にしろ。そろそろ我が主の新たに生み出せし黒騎士と悪夢の実験を始めねばならん』

『その黒騎士の一人が彼ですものね。それにしても悪夢だなんて、一体どんなものが来るのかしら。楽しみですわ』

 

「何で? あのユニコーン隊の騎士、何で蘇ったの?」

アンジェロが蘇ったことに戸惑うエレオノールに対し、ピエールとカリーヌは険しい表情を浮かべていた。

あのアンジェロはもはや人ではない。水の魔法によって無理矢理動かされている、生ける屍でしかないのだ。

 

この時期、カリンとサンドリオン、仲間のバッカスとナルシスは護衛を行っていたトリステイン王女・マリアンヌ姫のお忍びの旅行であのドーヴィルの街へと向かった。

しかし、そこで一行を出迎えた街の住人は、あのノワールによって生ける屍へと変えられていたためにカリン達に襲い掛かってきた。

バッカスとナルシスがマリアンヌ姫を街の外まで逃がし、カリンとサンドリオンは力を合わせて屍人と化した村人達を無力化させることに成功した。

 

ピエールとカリーヌはあの時の死闘を今でも覚えている。

生ける屍となった村人達をサンドリオンの癒しの水魔法とカリンの風魔法の合体技で無力化したのは良いものの、続いてアンジェロを瞬殺したブレイド、アサルトも襲ってきたのである。

消耗していたサンドリオンはまだ充分に戦えるカリンのサポートに回り、巧みな連携でブレイドとアサルトを迎え撃った。

今まで見たことも聞いたこともない凶悪な亜人達はハルケギニアに生息するオーク鬼など比べ物にならない強敵だったのだ。

 

そして二人はこの事件の首謀者でもあったノワールに加え、ギルバという包帯の男とも邂逅したのである……。

 

 

 

 

時空神像はさらに別の映像を壁に映し出し、ルイズ達は一様に顔を歪めていた。

どこかの貴族の館らしき壮麗なホールだったのだが、先程と同じように凄惨な場面がそこにはあった。

恐らくは屋敷を警備していた兵達だったのだろうが、全員が無残な骸となって床に倒れ転がっていた。

炎の魔法が使われたのだろうか、全員がその身を完全に焼き焦がされてしまっており、黒い炭の塊と化している。

ホール内の所々にも焼け跡が残り、炎が燻っている。

 

『さっさと来い。貴様らの船を用意してある』

『う、うむ……分かっている』

二階の吹き抜けに現れたのはオールバックにした黒髪に白い僧服を纏った二十半ばほどの男で、前を歩く軍服姿の強面の貴族の後ろをついてきている。

歴戦の戦士と呼ぶに相応しいだろう立派な体格と髭を生やした厳めしい風貌に対し、後ろにいる聖職者のような貴族は切れ長の目付きが鋭く将軍のような雰囲気があるもののどうにも威厳さやその他諸々の印象で負けているように感じられた。

(奴がいるならこいつもいるだろうな)

髭面の男もまた魔帝ムンドゥスの腹心の一人である。スパーダはその懐かしい仮初めの姿に思わず嘆息していた。

「何なの、あいつ」

「あれがかつてこの国の大公を務めておったエスターシュ卿だ」

「へえ。あいつが例の反乱を起こしたっていう……」

白い貴族の方を見て首を傾げるルイズだったが、父ピエールが渋い顔で答えた。

エレオノールは眼鏡を直しつつ興味深そうに画面を眺めている。

 

ジョシュア・エスターシュ大公。国王フィリップ三世の治世の時代、トリステイン王国宰相の地位に就いていた貴族。

政治に疎かった王に代わって内政から外交、経済まで一手に引き受けて改革を行い、今にも破綻しかけたトリステイン王国を立ち直らせるほどの手腕を振るったという

そして三十年前、トリステインの歴史上でも大規模な反乱劇・『エスターシュ動乱』を起こした張本人である。

 

『お待ちしておりましたわ。エスターシュ大公殿下』

開け放たれたままだった玄関の入口に現れたのは、あのノワールにギルバの二人だった。

『ノワール! お、お前だな! 今までの私の策を陛下に密告したのは! おかげで今までの苦労が全て水の泡だ! 息がかかっている他の貴族どものおかげで死罪は免れたが、私は宰相の任も財産も、領地さえも失った! しかも一生ここから出るなとまで言われたぞ!』

階段を降りてきたエスターシュが掴みかからん勢いで捲し立ててくるが、ノワールは涼しい顔で笑みを絶やさない。

『まあ、密告だなんて。私は大公殿下がこの国の王様になれるように仕事をしやすくしただけですわ』

『ふざけるな! お前は一体誰の味方だ!? お前が貸し与えてくれた屍人どもも役に立たん! おまけに今度はこれだ! あんな愚王がこの国を動かし続けていれば必ずトリステインは滅びる! だからこそ俺が王にならねば意味はない! それなのにこんな役立たずを送り込むなど、貴様らの主もまるで役に立……!』

怒鳴りながら罵詈雑言を吐き続けていたエスターシュだったが、突如としてその言葉が遮られた。

強面の貴族がエスターシュの喉元を掴み、剛腕をもって頭上へと持ち上げたのだ。

息を吐くことさえできないらしいエスターシュは苦悶の表情でもがいている。

『おい、虫ケラ。調子づくなよ。我らが魔帝を侮辱するとは良い度胸だ』

エスターシュを掴み上げる男が目に爛々とした怒りを蓄えながら言った。

ミシミシと音を立てて深く指が皮膚に食い込んでいき、さらには小さな煙さえも昇り始めている。

呻き声さえ上げられないままエスターシュはさらに強くジタバタと暴れている。

 

ルイズ達はその光景を眺めて完全に言葉を失っていた。

目が白く裏返りかけていたエスターシュはまさに死の一歩手前だったのだろうが、その直前で手を離されて床に崩れ落ちていた。掴まれていた首には酷く爛れた火傷の跡が残されている。

それをノワールはやはり笑みをたたえたまま見下ろしていたが……。

『You fool. You're so easy.(本当に無様な姿ね)』

異国の言葉をもってエスターシュを冷笑しだす。

今までとはまるで異なる、慈愛さも人間性さえもまるで感じられない冷酷な声にルイズ達は一瞬、慄いてしまった。

エスターシュは蹲りながら頭上を見上げると、そこには笑みはおろか表情さえも消え去ったノワールの冷たい顔がそこにはあった。

『甘えた人間め。その愚かさを悔いりなさい』

『う……』

『あなたは以前、この国の王になりたいと言った。覇を唱えるのも王の一つの姿。ならば王の座をいつもやっているように力尽くで奪えば良かったのよ。なのにあなたは反乱ごときに怯えを成したがために、結果としてこのような事態に陥った。魔法衛士隊を消し去ろうとジェーヴル総隊長の食事に密かに毒を混ぜて病に追いやり、他の隊長や隊員達を事故に見せかけたり誰かを煽って闇討ちし、密かに始末していく……何と気の小さいこと』

次々と恐ろしい陰謀がノワールの口から放たれていく。

確かに当時の魔法衛士隊はエスターシュ大公の陰謀によりユニコーン隊や様々な刺客に狙われていた。

『……そんな程度のことしかできない、力なき臆病者ごときに付き合うほど私達は暇ではないの』

 

「おでれーたな。あれがあの女の正体かよ。笑顔の裏には鬼がいるって奴だぜ」

デルフも思わず溜め息を漏らすほどにノワールの悪魔のような……いや、悪魔そのものな本性にルイズ達は息を呑む。

『ぎゃあああ……っ!』

しゃがみ込んだノワールがエスターシュの肩にそっと触れると、強烈な電撃が彼の全身を迸った。

メイジの雷魔法に匹敵するであろう威力でありながら、エスターシュを生殺しにしているのか息絶えることはないようだ。

『言ってみなさい。王になりたいの? なりたくないの?』

『わ……わた…………王……な……た……い……!』

『結構ですわ。エスターシュ様』

息も絶え絶えな返答にノワールの表情と声色がいつものものに戻り、手を離す。

エスターシュはバタリとまたしても床に崩れ落ち、その身を数度痙攣させている。

一思いに殺される方がまだ楽であっただろうと思うほどに残酷すぎる光景で、ルイズ達は露骨に嫌悪の表情を浮かべていた。

『さっさと立て。貴様にはまだまだ仕事があるのだからな』

髭面の男が完全に憔悴しきって失神しかけているエスターシュの首根っこを掴み、無理矢理立たせるどころか吊り上げる。

『まずはここを出て身をお隠しになりましょう。同志があなた様の旅路をお守りしますわ』

 

 

 

 

それからルイズ達は時空神像の更なる記憶を見届けることになった。

シュルピスという交通の要とされるトリステイン領内の街にあのブレイド、アサルトを筆頭にした魔界兵の大群が現れ、蹂躙していたのである。

他にもオーク鬼やジャイアントスコーピオンといった獰猛な怪物達の姿もあった。

「大きいクジラ……」

カトレアが溜め息をつくほど、さらに驚くことには街の上空を全長数百メイルはあろうかという巨体のクジラのような姿をした怪物が遊弋し、覆い尽くしていた。

(リバイアサン……また新しいのが作られたか)

かつて魔帝ムンドゥスがテメンニグルを拠点に人間界侵攻を図った際に生み出した生体兵器がある。

小さな街一つならば一飲みにしてしまえるほどの巨体と共に人間界へ尖兵を送り込むため、体内に嫉妬の地獄へと繋がる出入口を持った、鯨と龍を組み合わせたような巨魔・魔鯨リバイアサン。

今もテメンニグルと共に封印されているはずであるが、このリバイアサンはまた新たに生み出された別個体のようだ。大きさも以前見た物より少し小さいらしい。

 

『さすがにすばしっこいな! おっと!』

魔界兵達が蠢くシュルピスの街中ではグリフォン、ヒポグリフ、そしてマンティコアと騎乗する幻獣に跨る魔法衛士隊達が杖を振るっていた。

バッカスの杖から放たれる炎の魔法が飛び掛かってきたブレイドを焼き払う。

『行け! ゴールドレディ達よ! 恐るべき悪魔達を討ち滅ぼしたまえ!』

「何がゴールドよ……真鍮じゃないの……見栄を張ったりして」

ナルシスが呼び出した数体の武装したゴーレム達と共にブレイド達に立ち向かうが、エレオノールは冷ややかな視線を送っていた。

『油断するな、ナルシス! バッカス! こいつらは手強いぞ!』

カリンの怒号が辺りに響き渡り、頷いた隊員達は素早い敵の動きに合わせながら迎撃を行う。

先程までの映像とは違い、カリンは魔法衛士隊の正隊員の証である黒の隊服とマント、帽子を身に着け、口元を鉄のマスクをで覆っていた。

見習いの時は子供同然だった容姿も数年の時を経てしっかり成長しているのが分かる。

入隊して約三年。カリーヌは若くして魔法衛士マンティコア隊の隊長として活躍している時期だった。

『どうやらあのデカブツがこいつらを生み出しているらしいな!』

獅子奮迅の活躍を見せる魔法衛士隊であったが、魔界兵達は次々と上空から落下してきては地上に降り立つ。

華麗で力強いブレイド捌きを見せるサンドリオンは上空を飛んでいるリバイアサンを睨んでいた。

『私が奴を仕留める! お前達はこいつらを頼む!』

『無茶だぞ、カリン!』

『だが、奴をやらねばこの戦いは終わらない! このままでは泥沼になるだけだ! 行くぞ! はっ!』

カリンが手綱を握り締め、騎乗しているマンティコアが翼を広げて一気に飛び上がる。

そのまま上空のリバイアサンの顔の方へ一直線に向かっていくものの、そこで映像がぼやけだしていた。

「あっ! あっ! あっ! 良い所なのに!」

消えていく場面にルイズが慌てふためいたが、結局この映像の続きを見ることはできなかった。

だがカリーヌやピエールはこの先の結末をよく覚えている。

結局、カリンはあの後リバイアサンの口から体内に入り込み、その内部で大いに暴れ回ったのである。

内部は生物の体内とは思えないほどに混沌としていたことをカリーヌはしっかり記憶しており、様々な下級悪魔達を相手にしていた。

最後は全力の風魔法を炸裂させることでリバイアサンを内部から倒し、地上へと墜落させていたのだった。

 

 

『ヴィヴィアン殿! 間もなく火竜山脈へ到達します!』

次に切り替わった映像はどうやら空を飛ぶ船の上のようだった。

甲板上には魔法衛士隊達がそれぞれ騎乗する幻獣達の手綱を手に、整列している。

一行の視線は先頭で腕を組みながら立っている黒髪の女性へと注がれていた。

『いいな! これまで集めた情報からエスターシュ卿はここに潜伏しているのは間違いない! 何としてでも身柄を拘束するのだ!』

当時、火山帯である火竜山脈に脱走したエスターシュの一派が隠れ潜んでいるという情報を掴んだトリステイン王国は直ちに戦艦を用意し、魔法衛士隊に捕縛の任を命じていた。

この時期は生息している火竜が繁殖期であり、普段よりも余計に獰猛な状態となっているために近づくことさえ危険であったが、エスターシュを取り逃がしてまた雲隠れされないためにもここで捕まえて決着をつけなければならなかったのである。

この映像はその時のものであることをカリーヌ達は察していた。

 

「あ、あれ? 女の人? 魔法衛士隊って確か女人禁制のはずじゃ……」

大きな眼鏡をつけ厳しい雰囲気をしたその妙齢の女隊員を見ていたルイズが怪訝そうにする。

確かに本来ならば魔法衛士隊は女人禁制という掟になっており、故に女性の入隊は不可能とされているはずだった。

だからこそ、母のカリーヌも男装して入隊したというのに。

「そういえば当時はジェーヴル総隊長のご息女が代理を務めていたって聞いたことがあるわ。でもやっぱり女人禁制であることに変わりないはずよね……」

「あら。あくまで隊長さんじゃなくて、代わりの人が来ているだけだから構わないと思いますけど」

カトレアの言葉にピエールとカリーヌは複雑そうに顔を歪めていた。

エレオノールの言う通り、二人が魔法衛士隊で活躍していたこの時期は病に伏せていたジェーヴル総隊長の娘であるヴィヴィアンが代理となって魔法衛士隊全体を統括する総隊長を仕切っていた。

女人禁制のはずだが本人曰く、『自分は隊長ではなく、あくまで代理だから良いのだ』と、屁理屈みたいなことを言っていたのを二人はよく覚えていた。

それでも総隊長としてしっかり勤めを果たしていた頼りになる上司であったので文句はなかったが。

 

『前方に一隻、戦艦を確認!』

しばらく航行を続けていると赤々と熱した溶岩石に囲まれた峡谷に船が一隻遊弋しているのが見える。

『よし! ヒポグリフ隊は本艦で待機! グリフォン隊、マンティコア隊は出撃の準備をせよ!』

ヴィヴィアンに命じられ、魔法衛士隊は次々に自らが乗るべき幻獣へと跨っていく。

カリン、サンドリオン、ナルシス、バッカスの四人も颯爽と出撃準備を整えていた。

魔法衛士隊の乗る戦艦が目的の船の真上まで移動しようとしていたその時である。

『何だ?』

突如として轟きだした雷鳴に隊員達が狼狽する。見ればたった今まで多少の雲は出つつも青空が広がっていたはずが、分厚い暗雲に覆われていた。

暗雲は大きな渦を巻きだし、雷鳴と共に閃光が幾度も瞬いた。

『何かお出でなするみたいだな』

『そのようだね!』

『気を抜くな。また奴らかもしれん』

バッカスとナルシスが不敵な笑みを浮かべるのをサンドリオンが諌める。

やがて暗雲の中に幾重にも連なった紅蓮の稲妻が迸り始め、巨大な生物のシルエットが形を成していく。

『うわあっ!』

『くっ……!』

一際強烈な轟雷が響き、紅蓮の稲光が弾け、戦艦の前に姿を現したのは巨大な翼を広げる巨鳥だった。

翼長は実に三十メイルにも達する巨大さに見合ったものだった。極楽鳥に酷似した瑠璃色と濃紺の羽は幻想的な美しさが感じられるほどで、嘴の上顎と繋がった後ろへ向かう角のような二つのトサカが特徴的である。

魔法衛士隊の前に姿を現した巨鳥は全身に細かな紅蓮の雷光を散らせて迸らせながら立ち塞がっていた。

『とうとう奴の居場所を嗅ぎつけたか。トリステイン魔法衛士隊よ』

「まあ」

「しゃ、喋った!?」

その巨鳥は何と明らかに人間の言葉をはっきりと口にしたのだ。喋るのに合わせてしっかり嘴を動かしているし、下顎が三つに分かれて開いている。

「何よ、あの幻獣は? あんなの聞いたこともないわ」

「魔天将グリフォン……」

ヴァリエール三姉妹が驚く中、スパーダが静かに呟く。

スパーダがかつて属していたムンドゥスの腹心として仕えていた上級悪魔の一人。

紅蓮の稲妻を操り、大気の精霊をも従え巨大な嵐をも自在に巻き起こす強大な力を有した魔鳥であり、その力は上級悪魔の中でも極めて高位に位置している。

先程の映像で姿を見せていた翼人の男の正体だ。

 

グリフォンという名の幻獣は現に魔法衛士隊達が今も扱っているが、その姿は全く異なっており猛禽類がそのまま巨大化したようなものである。

『我らが交わした盟約により、あの男を貴様達に引き渡すわけにはいかぬ』

空域一体に激しく吹き荒れる突風に魔法衛士隊達はよろめいていた。

『うろたえるな! 奴らに弱みを見せてはいかん!』

カリンが勇ましく厳しい声音で檄を飛ばしていた。

『ホホホホ、これはとんでもない悪魔が現れたものだわえ! 火竜なんぞと比べ者にならぬわ!』

『ああ。こいつはやばいな……』

サンドリオンが騎乗する老いたマンティコアが人語を発し、主本人も冷や汗を流している。

ピエールもカリーヌもこの時に感じたグリフォンの威圧感をはっきり覚えているほどだった。

『散れ。人間どもめ』

グリフォンが翼をさらに一気に横へ広げると、突風と共に巨大な紅蓮の稲妻が次々と吹き荒れだし、戦艦を飲み込もうとする。

一瞬にして稲妻が船の翼やマストを直撃し、火災が発生し瞬く間に燃え広がっていく。

魔法衛士隊達は次々と空飛ぶ幻獣達の翼で空へ舞い上がり、墜落していく戦艦から離脱していった。

『全騎、固まるな! 奴の雷の餌食だぞ!』

『我らの目的はエスターシュただ一人だ! こんな相手に足止めを食う訳にはいかん!』

『カリン殿! 我らが援護をします! エスターシュ卿の捕縛を!』

サンドリオンとヴィヴィアンが大声で号令を飛ばし、ヒポグリフ隊の隊員も叫ぶ。

それから魔法衛士隊の三分の一がグリフォンの足止めを行うことになり、カリンらはエスターシュの戦艦へ向かって降下していく。

『馬鹿め。逃げられると思うか』

魔法衛士隊達が次々と魔法を放つものの、全身に纏う雷光に阻まれてしまって全く効いていない。

自分への攻撃を意に介さないグリフォンが向き直ると、戦艦に向かう魔法衛士隊に向けて口から電撃が放たれ、帯となって一直線に伸びていく。

それを散開してかわす魔法衛士隊だが、電撃は突如四方向へ分かれるようにして広がり四本の帯となって薙がれていった。

予想しなかった連撃に慌ててかわそうとするが、幾人もの魔法衛士隊達が雷撃に焼かれてしまう。

さらにグリフォンは立て続けに落雷を落とし、さらにその落雷を水平にした帯として連続で、角度さえも変えて飛ばしてくる。

稲妻の乱流に魔法衛士隊達は翻弄され、かわすので手一杯でエスターシュの戦艦に辿り着けないでいた。

それでも近づいたら近づいたで、戦艦から何発もの槍のように巨大な光の矢が放たれて弾幕を張られるという有様だ。

 

「あっ! あっ! 危ない、母様!」

ルイズはもちろん、カトレアとエレオノールも攻撃をかわし続けるカリン達の姿に肝を潰している。

今ここに、自分達の母として存在している以上は心配する必要もないはずだが、それでも悪魔との死闘を潜り抜けようとする光景に緊張してしまうのだ。

やがて映像はぼやけだし新たな記憶が映し出されるが、それはグリフォンの猛攻の直後のものらしい場面である。

甲板の上で十人ばかりの魔法衛士隊達が多数の悪魔達を相手に戦っている。どうやらエスターシュの戦艦に乗り移ることができたようだ。

 

『おっと! これ以上は撃たせんぞ!』

『我が黄金の淑女達がお相手仕る!』

ナルシスが作った十体もの真鍮のゴーレム達を壁にしてバッカスがファイヤーボールの魔法を放っていた。

対峙しているのは何本の腕と足を蛸のように生やした石像の悪魔で、巨大な赤黒い眼が体の中心で不気味に剥いている。

手にする石弓から放たれる魔力の槍が矢のように射放たれ、ナルシスのゴーレムに突き刺さっていくが、バッカスの炎魔法に当たると呆気なく砕かれていた。

魔弾の射手の異名を持つ、エニグマと呼ばれる下級悪魔達である。

甲板では他にもブレイドにアサルトが、さらに上空では蠅の悪魔ベルゼバブや血の悪魔ブラッドゴイル達が飛び回って魔法衛士隊達と激闘を繰り広げていた。

 

『まあ、素敵よ! ピエール!』

そしてその戦場の中にはあのノワールやギルバの姿もあった。

後部甲板の高台から楽しそうに声を上げる彼女の視線の先ではサンドリオンとカリンの戦う姿が見える。

『でやあああっ!』

『はああああっ!』

二人が同時に繰り出したブレイドによる一突きが巨大な悪魔の体の同じ個所に突き出される。

だが硬質な衝撃音を響かせるだけで逆に弾き返されていた。

『退け! カリン!』

サンドリオンが叫ぶと二人は颯爽と後方へ飛び下がる。

『舐めるなよ人間。お前がいつぞや倒した軟弱なサソリごときとワシを一緒にするな』

二人が対峙する悪魔は荒々しい声を響かせながら嘲笑した。

「ク、クモーっ!?」

その悪魔の姿を目にしてルイズは悲鳴を上げだす。

ルイズの言う通り、それは巨大な蜘蛛とも言うべきものだった。

灰色の岩石質な外殻に覆われ、所々から煮えたぎる灼熱のマグマを滴らせているその巨蜘蛛は人語を喋る度に口を開き、体内に溢れる赤々としたマグマを晒している。

「猛煉将ファントム……相変わらずか」

グリフォンと同じくかつては魔帝ムンドゥスの腹心として仕えていた上級悪魔。

悪魔らしい獰猛さはムンドゥス配下の悪魔達の中でも指折りで、暴れまわると手が付けられない。

その強靭な体はスパーダの力を以てしても正面からでは簡単には傷つけられないほどに頑強であり、現に魔法衛士隊達の一撃では傷一つ付かないだろう。

 

『惜しい、惜しい! もう少しで命中だったのにな!』

ファントムが口から次々に吐きだす巨大な火球をカリンとサンドリオンはかわしていき、次々に魔法を撃ち込んでいく。

だがファントムは放たれる氷の槍に魔法の矢を堂々と体で受け止め、逆に砕き弾いてしまっていた。

『ハハハハハハッ、威勢の良い小娘だ! もっと遊んでやるぞ!』

笑い飛ばすファントムは巨体に見合わない俊敏な動きで跳躍すると、カリン目掛けて落下してくる。

『危ない、カリン!』

押し潰される前にフライで素早く離脱するが、そこにサンドリオンが叫んだ。

ファントムの尻の部分がメキメキと音を立てながら形を変え伸び、瞬く間にマグマに覆われた尻尾となって振り回されたのだ。

尾の先端には鋭く曲がった針が備わっており、さながらサソリそのものである。

ファントムは蜘蛛にサソリという異なる生物の特徴を有した悪魔なのだ。

『そらそら! もっと逃げんと串刺しだ! どこに当たってもその顔は醜くなるぞ! グハハハハハハッ!』

薙ぎ払い、突き出し、頭上から振り下ろしたりと自在に尻尾を操りマグマの飛沫を撒き散らし、さらには口からも火球を吐き出してくる。

まさに重戦車とも言うべき力押しの猛攻をサンドリオンとカリンは反撃のチャンスも得られず必死に避け続けていた。

 

カリーヌとピエールはこの時の戦いほど悔しい思いをしたことがない。

結局、逮捕すべきエスターシュは悪魔達の妨害により逃走を許してしまい、多くの魔法衛士隊達が犠牲になってしまったのである。

 

 

続いて切り替わった映像の光景は明らかに王都トリスタニアにおけるものだった。

サン・レミ聖堂前となる中央広場には無数の兵士や悪魔達の亡骸が転がっている。

そこに立つ魔法衛士隊達はサンドリオンにバッカス、ナルシス、他数名……。

『エスターシュよ。お前がここまでの蛮行に及ぶとは……余は実に残念でならん』

加えて、その魔法衛士隊達を背に従えるのは威厳溢れんばかりの金色に輝く長い髪に美髯を蓄えた武人であった。

「フィリップ三世陛下……」

ピエールだけでなくカリーヌまでもが困惑した面持ちで目を丸くしていた。

三十年前、このトリステイン王国を治め、二人が仕えていた懐かしき国王の姿であった。

「このお方がかの英雄王……」

エレオノールが興味深そうに映像に映るかつての国王を観察している。

トリステイン国王フィリップ三世はハルケギニアの歴史に名を残す『英雄王』の二つ名を持つほどの武人だったという。杖を取れば一騎当千、軍を率いれば常勝無敗というまさに英雄に相応しい活躍をしたらしい。

もっとも、政治の才能だけは極めて乏しい物だったそうで、彼の治世でトリステインは年々国力を落としていったそうだが。

 

『何故、この世に仇なす悪魔どもに魂を売り渡した? お前がそこまで腐った男であるとまでは思わなかった。お前には人間として最低限の誇りがあるものと思っていたのだがな』

フィリップ三世の前にはあのエスターシュがたった一人で立ち、向かい合っている。

気味の悪い笑みを浮かべながら彼はフィリップを睨んでいた。

『前にも言ったはずだ。私はお前ではなく、このトリステインに忠誠を誓っているのだ。お前が一体、何をした? この国を破滅に追いやりかけた将軍程度でしかない。なのに血筋というだけでお前と、その娘と婿が王となる。それが我慢ならんのだ。お前の一族が存在し続ける限り、いずれ必ずこのトリステインは滅び去るに決まっている! だからこそ、真の王が必要なのだ!』

ピエールはこの場面をよく覚えていた。これはエスターシュが大軍を率いて本格的な武装蜂起を起こし、王都トリスタニアへ攻め入ってきた時のものだ。

自ら最前線に出てきたエスターシュの部隊は亜人や悪魔、さらに生きる屍と化した元ユニコーン隊を含めて二百あまりの数で、トリステイン王軍や近衛の魔法衛士隊達で激闘を繰り広げ、王都は戦火に包まれたのである。

 

『愚かな……悪魔どもの力を借りて、本当にこの国を……いや、この世に秩序と繁栄をもたらすことができるものか!』

杖を突きつけるフィリップだが、エスターシュの邪悪な笑みはより深くそして濃くなっていく。

『私は必ずこのトリステインの王となる。……たとえ、魔に全てを捧げようとな……!』

『むっ?』

言うや否や、エスターシュの体に異変が起こった。

その体は見る見るうちに風船のように膨れ上がっていき、ドス黒い液体に包まれていく。

他の魔法衛士隊達も一斉に杖を手に身構えていた。

『力が溢れてくる……! これが、本当の力……! 私が、このトリステインの王となるべき力あああああっ!』

瞬く間にエスターシュの人としての姿がドロドロに崩れていき、雄叫びと共に一気に変異した体が膨張した。

それと共に無数の触手があらゆる方向に向かって伸びていった。

『ぬううっ! ぬおっ!』

『陛下!』

突き出された触手がフィリップの手から杖を弾き飛ばした挙句、その体までもが大きく吹き飛ばされてしまう。

『陛下! お下がりを!』

『すまぬ……!!』

サンドリオン、バッカス、ナルシスが前へ進み出てくる。フィリップ三世は他の衛士達に介抱されて後ろへ下がる。

『この私に挑むか? 愚王にこき使われていただけの貴様らが、この国の王となるこの私に!!』

エスターシュはもはや声すら、かつての面影がないほどの異形と化していた。

ドス黒い粘液の塊が激しく不気味に蠢き、所々にエスターシュの輪郭や無数の光る目が現れては内部に飲み込まれて消えていく。

さらにその塊は体から無数に生えた細長い腕や蜘蛛の足のような形をした触手によって支えられている。

まさしく醜悪そのものな怪物が今、目の前にいるのだ。

『寝ぼけんな。貴様みたいな奴が王になってたまるかよ』

『まったく下品すぎるものだ……美しさには程遠いな』

バッカスとナルシスが吐き棄てると、サンドリオンは静かに杖を正面へ突きつける。

『言うだけ無駄だ。体で気付かせてやらんとな』

その言葉に横の二人も不敵な笑みを浮かべ、同様に自らの杖を左右からサンドリオンの杖に重ねていた。

三人の杖は静かに、ブレイドによる魔力の光で包まれていく。

 

『I will be a King! You're die!(私は王になるのだ! 貴様らは死ねええええ!)』

極めて聞き取りずらいほどに濁り切った叫びと共にエスターシュの体から幾重もの触手が伸びてきた。

『おおおおおおおおおっ!』

サンドリオンが杖先を軽く払い、向かってきた触手を切り払うと一気に突っ込んでいく。

『『でえええええいっ!』』

バッカス、ナルシスも左右に分かれて叩きつけられてきた触手を掻い潜っていく。

三人の騎士達は勇ましい咆哮を張り上げ、醜悪な悪魔へと立ち向かっていった。

 

(すごい……あの時、この人はこんな戦いをしていたなんて……)

当時、反乱軍の本隊を鎮圧に向かっていたのでこの場にいなかったカリーヌは王都で起きていた戦闘がどのようなものであったかなど知る由もなかった。

だが今、目の前に映るのは愛する夫が掛け替えのない戦友達と共に悪魔に立ち向かう勇敢な姿である。

思わず溜め息を漏らしてしまうほどにカリーヌは年甲斐もなく目を輝かせ食い入っていた。

 

赤く変色したエスターシュの体から次々と粘液が鋭い矢となって周囲に放たれる。

サンドリオンの水の盾が、ナルシスの土の壁が攻撃を阻み、バッカスの炎魔法が逆に焼き払い撃ち落とす。

 

何本もの触手が縦横無尽に鞭のように振るわれるのをサンドリオンは構わずに斬り捨て、逆に巨大な氷の槍で貫く。

バッカスの火球が粘液の体面で炸裂し、ナルシスの土の礫が砲弾のような勢いでめり込む。

 

エスターシュの体から飛び散った無数の大きな粘塊がナメクジのような姿の奇怪な生物となり、群れを成して襲い掛かってくる。

目には目を、ナルシスが生み出した真鍮のゴーレム達で戦力を増やし、氷の嵐が、炎の壁が、まとめて大群を蹴散らしていく。

 

そして攻撃の機会を見つけ次第、三人は一気に攻めにかかる。

サンドリオンの、ナルシスの、バッカスのブレイドが三方向からエスターシュの体へ深く突き立てられた。

もがき苦しむエスターシュが太く大きくした触手の腕を振り回すと、三人は即座に守りに入って一時後退し、反撃を窺う。

 

抜群のコンビネーションは異形の怪物を翻弄していく。

魔法衛士隊の若き三騎士達は悪魔と化したエスターシュなど比べ物にならないくらい、鬼神のごとく縦横無尽に暴れ回った。

 

幾度となく魔法を受けても倒れる気配のないように見えた異形の怪物であったが、やがてその体がドロドロに崩れて形を成さなくなっていく。

攻撃も散漫になっていき、振るわれる触手も勢いがない。

明らかに弱り果てているエスターシュが倒されるのはもはや時間の問題であった。

『お……おの、れ……!』

もがき蠢き苦しむエスターシュを前に集まった三人は堂々と並び、見据えていた。

『それじゃあ、フィニッシュと行くか』

先端に眩い光が灯る杖を掲げながら、まずサンドリオンが呟いた。

『一際派手な奴をぶちかますぜ!』

右からサンドリオンの杖に自らの杖を重ねるバッカス。

『久しぶりにあの決め台詞、やってみるかい?』

左からさらに杖を重ねたナルシスの言葉に二人はニヤリとほくそ笑んだ。

この場面を目にするピエールもつられて同じような苦笑を浮かべてしまっていた。

三人でつるんで大仕事を成功させる際、よく一緒になって叫んでいた言葉。

もう長年使っていないその合言葉をピエールは今でも覚えていた。

 

『Don't! do it!(やめろ! 私は――)』

うろたえるエスターシュの声が響くが、三人の重ねた杖は振り下ろされ、正面の怪物へと突きつけられる。

 

『『『大・当たり!!』』』

 

それが魔法衛士隊三騎士の、若気の至りな合言葉である。

三人の杖から放たれた巨大な魔法の矢が尾を引きながら重なって飛んでいく。ナルシスとバッカスの魔法の矢は一直線に突き進むサンドリオンの矢の周りで緩やかな螺旋を描いていた。

三つの光はエスターシュの体に直撃し、内部で爆ぜる。

『ワタシハ、オウニ、ナル、ベキ……! ナノニ、ナゼ、ダアアアアアアアッ!!』

断末魔の雄叫びを上げながら、エスターシュという人間の面影さえも失った怪物はドロドロに溶け、崩れ落ちていった。

『最期まで品の無い台詞だね』

ナルシスが鼻を鳴らし、他の二人も軽く一息をつく。

エスターシュだった異形の悪魔の骸となる液体は巨大な水溜まりとなって広場に残されるが、見る見るうちに蒸発して跡形も無く消え去っていた。

『あらあら。残念ね。もう少しは持ちこたえると思ったのに。本当に、使えない男……』

突如響いた女の声に三人は振り返る。そこには彼らと敵対するあの黒ずくめの修道女が柔らかい笑みをたたえる姿があったのだ。

サンドリオンの表情が強張り杖を構えだすが、せっかくの重要な場面という所で、時空神像はまた新たな記憶を映し出そうとしていた。

 

 

パラパラと雨が降りしきるそこはカルダン橋と呼ばれるトリステイン有数の広さを誇る川にかけられた巨大な橋に違いなかった。

立派な石造りで出来たその長い橋は数千もの軍隊が一度に多数の列を作って行軍できるほどに幅も広い。

この橋の中央で、烈風カリンの戦いは起こっている。

王都トリスタニアがエスターシュ率いる部隊が直接乗り込んでいた時、マンティコア隊隊長のカリンはカルダン橋にてたった一人で反乱軍の本隊を相手にしていた。

 

マンティコアに跨るカリンの周りにトリスタニアの時と同様に多くの亜人やブレイド、アサルト達の亡骸が転がっているものの、彼女はそれらには最初から全く意に介していない様子で正面を見据えていた。

彼女の視線の先、約十メイルの場所に相対する六体の悪魔達の姿がある。

まず四体は血の気の失せたような全身の血管が浮き上がり、血を被っているようなおぞましい姿に湾曲した角を頭や背中から生やしている人型の悪魔。

身の丈程の血塗られた杖が握られ、鋭い熊手状の先端には赤々と燃え盛る鎌の刃が備わっていた。

種族全体が魔帝ムンドゥスの勢力に属する中級悪魔の一族、深淵の尖兵にして炎の精鋭の一角・アビスだ。

 

さらに二体はブレイドらと同種の爬虫類型の悪魔であり、その全身は白い霜に覆われ周囲に冷気を発している。

兜だけでなく肩から胸を覆うほどの鎧を纏っており、それは氷によってできていることが見て取れた。

右手には巨大な氷塊が、左手のより剣のように鋭利な爪もまた極低温の冷気を発する氷そのものである。

ムンドゥスが自ら生み出した氷を司る精鋭の一角・フロストである。

 

計六体が相手かと思った矢先、突如として橋の中心で微かな雷光が湧き出したかと思えば突如落雷のような光が爆ぜ、新たな悪魔が姿を現す。

現れたのはフロストやアビスより一回り大きい爬虫類型の悪魔で、金色の雷光を全身から発している。

フロストのように所々が装甲に覆われ、目を覆い隠すほどの鋭い角を前に向かって生やしていた。

背中から発せられている稲妻に至ってはそれ自体がアサルトの背びれやフロスト達のような尻尾の形を成しているのだ。

フロストと違ってどこか無機物的な印象のあるこの悪魔もまた、ムンドゥスの生み出した尖兵――雷を司る精鋭の一角・ブリッツである。

 

どれも魔帝ムンドゥスが従える尖兵の中でも優れた実力を持つ精鋭ばかりである。

これら三種に併せてブレイド、アサルトを含めた精鋭達はムンドゥスの勢力で五大属性を司る者達で、並の下級悪魔など話にならない戦力なのだ。

『下がれ』

降り立ったカリンが命じるとマンティコアは翼を広げて浮上し、遥か後方の橋の出入口の方へ向かっていく。

直後、ブリッツが槍のように大きく鋭い三本の爪を生やした両手に雷光を集め、それを正面へ突き出すと激しい稲妻の帯がカリン目掛けて一直線に放たれる。

その場で飛び上がるカリンだが、見計らったようにフロストが爪先を氷柱に変えて連続で飛ばしてくる。

フライで即座に横へ飛ぶと今度はアビスが手にする鎌を大きく振るい回し、炎を帯びた刃が鋭い回転と共に飛来する。

ブレイドで弾きつつ回避を行ったカリンは一気にアビスの一体へ急接近し、その首を刎ね飛ばした。

 

他のアビス達がカリンを取り囲み次々と新たに刃を魔力で生成した鎌を振り下ろし、飛び掛かり、薙ぎ払ってくる。

カリンは動じることなく振り下ろしてきた一体にエア・ハンマーを叩き込んで吹き飛ばすとその場から離脱した。

 

飛び退って着地した地点に薄っすらと雷光が湧き始めるとまたカリンは間髪入れずに素早く離れる。

直後、立っていた場所へ落雷と共に現れたブリッツはその身を稲妻そのものへと変えて周囲を縦横無尽に、まさしく電撃的に高速で攪乱するように動き回る。

だがカリンはブリッツの移動先を見極め、実体化した所でマジックアローを数発放っていた。

 

その場で飛び上がっていたフロストが着地した途端に鋭い氷の剣山が足元から突き出てくる。

しかもそれはカリンのいる場所目掛けて次々地を走るようにして築かれていった。

さらに別のフロストもその身を細かな氷の粒へと変え、十数メイルの距離から一瞬にしてカリンの目の前にまで迫っていた。

 

カリンは連携で繰り出される悪魔達の攻撃をフライを駆使して華麗に舞いながら当てさせることを許さず、自らの風魔法やブレイドによる一撃で堅実に攻めていく。

 

アビス達は空間に波紋を残しながら地面に潜ったり姿を掻き消すと、カリンの死角から姿を現し鎌を振り下ろしたり飛び掛かってくる。

それさえもカリンは振り向きさえせずに魔法を放って返り討ちにしていた。

 

「すごい……」

ヴァリエールの三姉妹は呆然と映像に目を奪われていた。

多数の強力な悪魔達を相手にする烈風カリンの戦いぶりはまさしく獅子奮迅そのものである。

冷静に的確に、そして確実に悪魔達を一匹ずつ仕留めていく姿は何と華麗なものか。

母はこんなにも強い、まさに騎士そのものであることを改めて三姉妹は納得していた。

 

最後に残された傷だらけのブリッツが赤い雷光を撒き散らしながら角を突き出しての突進を行い、かわされると即座に稲妻に変じての攪乱へ移行し、隙を見つけてはまた体当たりを繰り返している。

カリンはその開き直ったような猛攻をかわし続けていると、やがてブリッツは咆哮と共に体を仰け反らせると内部から眩い光を溢れさせ、轟音と共に爆ぜた。

危険を感じて離れていたカリンはブリッツの自爆に巻き込まれることはなかった。

 

ヴァリエールの家族達は烈風カリンの凄まじい戦いぶりに唖然としてしまう。

(本当に厄介な奴ね……あいつは)

過去、何度となくブリッツと戦ったことのあるカリーヌは溜め息をついていた。

あの悪魔は瀕死になると敵を道ずれにせんがために自爆攻撃を仕掛けてくるのだ。

もしあの爆発に巻き込まれれば人間などひとたまりもないだろう。

ブリッツの自爆で犠牲になった仲間も大勢いるため、実に憎らしい悪魔であることを再認識する。

 

 

『人間にしてはそこそこだな。魔帝の精鋭とここまでやり合えるとは』

精鋭の悪魔達を片づけたカリンだったが、突如何者かの声が響き渡っていた。

振り向けばそこにはいつの間にか二人の人影の姿があったのである。

『貴様、ギルバ……!』

一人はあの包帯の男ギルバで、もう一人はコートを纏った黒ずくめの男だった。

彼らの周りには何匹もの黒ヒョウ達が唸り声を上げながら威嚇してきている。

(見かけん奴だが……そうか……)

スパーダはその不吉そうな黒ずくめの男は見覚えがない相手だった。

かつて魔帝ムンドゥスの右腕として仕えていた時にはこのような者は影も形もなかったのである。

恐らく新たな腹心となった上級悪魔の一人であることは想像に難くない。

その正体も、周りにいる漆黒のオーラを纏う猛獣の姿をした悪魔達から推測はできていた。

 

『エスターシュをけしかけてこのトリステインに災いを振りまくとは……決して許さんぞ!』

『奴はただの駒だ。我らが主がこの異世界で実験を行うための舞台を整えさせたに過ぎん』

杖を突きつけ吠えるカリンだが、黒ずくめの男は顔色一つ変えずに返していた。

ギルバは相変わらず一言も声を発さず、手にするサーベルを足元に突き立てたままだった。

『だが貴様らのおかげで色々と実験は完了した。感謝しよう』

『感謝だと? ……ふざけるな! この悪魔め!』

はっきりと怒りを露わにしてカリンは杖から魔法の矢を放つ。

だが、突如黒ずくめの体が黒い影に包まれ、向かってきた矢は全てすり抜けていってしまった。

『お前の相手は私ではない』

戸惑うカリンに再び人の姿を現した男は十数歩後ろへ下がり、黒ヒョウ達も付き従っていく。

代わりにギルバが一歩だけ、大きく前へと進み出てきていた。

『何……?』

ギルバは自らの顔に手をかけると包帯を掴み、それを一気に引き剥がす。

解かれた包帯は風雨に乗って何処かへと流されていく。

 

「え? スパーダ……!?」

「まあ……」

「何ですって?」

ヴァリエールの三姉妹達は包帯の下に隠されていたギルバの素顔を目にして驚愕する。

オールバックにした銀髪は逆立ち、肌は死体のように青白く表情も氷のように凍てつき全くの無表情で、瞳はおろか眼球そのものもが赤黒くなっているのもあって一切の感情や生気というものが失われているように見えた。

おまけに青紫の血管がはっきりと浮き上がっているのはまるで顔そのものが罅割れているように見えて不気味だ。

それでも尚、端整な顔立ちをした三十前後の壮年男性の風貌は今、自分達の目の前にいる悪魔と瓜二つ……否、生き写しに等しいほど全く同じ顔だったのである。

 

(……我が主もつまらんことをする)

スパーダは自分と生き写しの顔をしたあの悪魔の素顔に珍しく顔を顰めてしまう。

あれもまた魔帝ムンドゥスが生み出した新たな尖兵たる人造悪魔であることを察していた。

だがよりにもよってスパーダの人間体と全く同じ顔立ちというのは実に不愉快に感じられてしまう。

これではまだ自分が魔帝ムンドゥスの配下として仕えているようである。

見ればモデウスもまた不快そうにギルバを見据えていた。

 

『行け。漆黒の騎士よ。お前の最終テストを行い、調整を済ませることで此度の実験は幕は閉じる』

黒ずくめの男が命じると、ギルバは手にするサーベルを鞘から抜き放ち、長大な刃を露わにする。

カリンが身構えた途端、ギルバは残像を残して姿を掻き消し……瞬時に彼女の目前まで迫ってきていた。

 

薙ぎ払われたサーベルは青ざめたオーラを纏っており、カリンが跳躍してかわすと斬閃が軌跡として残される。

ギルバはサーベルを袈裟に振り返し、さらに交差を描くように連続で振り回してカリンを追撃する。

フライで浮き上がるカリンはその大振りの連撃を難なくかわして距離を取っていた。

 

『ウィンディ・アイシクル!!』

無数の氷の矢が放たれるがギルバはサーベルの一薙ぎによる剣圧で全ての矢を蹴散らしてしまう。

さらに残像を残して姿が掻き消えたかと思えば、カリンの頭上に現れ一気にサーベルを振り下ろしてくる。

『くっ!』

それをカリンがかわすと間髪入れずに構えを変えたギルバがサーベルを後ろへ引きながら滑走し、突進してきた。

繰り出された突きをカリンはブレイドで弾いて軌道を逸らすが、帽子を掠めて切り裂かれてしまう。

 

反撃に転じたカリンはフライを駆使しギルバの周りや上空を蝶のように舞いながらブレイドで斬りかかる。

ギルバはサーベルを盾にして攻撃を防ぎ続けており、反撃する暇が無いように見えた。

『……うっ!』

ところが、片手に青ざめたオーラの塊を生じさせたギルバがそれを足元に叩きつけた途端、爆音と共に魔力が解放されドーム状の衝撃波が発せられた。

カリンは体勢を崩して吹き飛ばされるが、そのまま身を翻してすんなりと着地する。

だがギルバは腰だめに身構えると片手にまた魔力を集中させ、巨大な青ざめた炎の礫を投げつけていた。

着弾し爆炎を立ち昇らせるその攻撃をカリンは高速で滑走してかわしていき、ギルバも幾度となく火球を放ってくる。

さらには斜に構えたサーベルにオーラを纏わせると、それを一気に振るって剣圧の衝撃波を放っていた。

 

(ほう……どちらもやるものだ)

烈風カリンの魔法を駆使した杖さばきや立ち回りも見事なものだが、ギルバの戦闘力もまた並の上級悪魔など比較にならないレベルであることは間違いなかった。

しかも剣技や体術はどれもがスパーダのものと酷似しており、あの悪魔は自分の流儀を会得しているのが見て取れる。

無論、スパーダ本人には遠く及ばないものの自分の弟子であるモデウスやバアルにも匹敵するであろう実力であることは確かだ。

スパーダと同じ顔に同じ技を操る新たな手駒……魔帝ムンドゥスはかつての右腕であった者と同じ悪魔を作り出したというのか。

 

 

『何っ!?』

ギルバの遠距離攻撃を回避し続けていたカリンは慌ててフライの速度を急速に落として停止していた。

直後、自分の目の前に頭上から無数の閃光が降り注いできたのだ。

地面に突き刺さったそれは、あの浅黄色の魔力の剣――そう、幻影剣だったのである。

ギルバの周囲に澄んだ音色と共に次々と新たな幻影剣が作り出されてはカリンに飛んでいき、さらにはカリンのあらゆる方向へ転移しては死角を突いて襲ってくる。

全方位からの奇襲に加え本体からの攻撃という猛攻をカリンはフライで飛び回りかわし続けているが、回避しきれず何度も体を掠めて傷つけられていく。

 

「「「母様っ!?」」」

ヴァリエールの三姉妹達は一斉に悲鳴のような声を上げていた。

幻影剣をかわし続けていたカリンだったが、突如としてその左腕が肘から先が宙を舞っていたのである。

転移してきたギルバ本人がサーベルを振り上げ、彼女の左腕を斬り裂いていたのだ。

だがカリンは激痛に顔を歪めながらも動きは止めることはなかった。回避している間にも続けられていた呪文の詠唱は終わったばかりである。

『……カッター・トルネード!!』

激痛を堪えながらも杖をギルバの胸先へ突きつけると、球状の竜巻がギルバの体を飲み込んでしまう。

圧縮された刃の竜巻の中では幾度となく斬り刻む音が響き渡っているが、元より無口だったとはいえギルバの断末魔は一切上がらない。

 

やがて竜巻が消滅すると、そこにはギルバのサーベルや衣服、そして黒い金属の破片らしきものが大量に散らばっていた。

『ぐ……う……』

跡形もなくなってしまったギルバだが、呻くカリンはその場で膝を突き杖を落としてしまう。

「母様……」

ルイズ達三人の娘はカリーヌの方を振り返り、心配そうに見つめていた。

ここにいる母はちゃんと五体満足ではあるが、カリーヌ本人も映像を目にしながら苦い顔を浮かべており、左腕を押さえている。

 

『これまでか。試作にしては上出来だったな』

斬り落とされた左腕から大量の血を流し蹲るカリンに黒ずくめの男が歩み寄ってくる。

カリンは腕を押さえつつも顔を上げ、未だ戦意を失わない鋭い眼で睨みつける。

しかし、もうカリンに戦う余力は残されていないだろう。それどころかこのままでは出血によって命が危ういのだ。

黒ヒョウ達が牙を剥き出しにして唸り声を上げながらじりじりと迫ってくる。襲い掛かってくるのは時間の問題だ。

 

「ちょっと、何とかしてよ! スパーダ! このままじゃ母様が……」

過去の映像であるにも関わらずルイズは懇願した。

大切な母が悪魔達になぶり殺しにされる光景など見たくない。それはカトレアやエレオノールも同じ思いだった。

 

『そこまでだ。獣闇将よ』

 

突如として響き渡る神々しくも威厳と威圧に満ちた声。

(この声は……!)

映像を見ていたルイズは聞き覚えのある、そして思い出したくもない声に目を背けてしまう。

「ルイズ? どうし……」

「……っ」

カトレアとエレオノール、さらにはピエールとカリーヌさえも映像に映し出されるものを目の当たりにして愕然とした。

暗雲の中、雷鳴と共に現れた稲光を帯びる三つの赤い光。

まるで目のように見下ろしてくるその光は過去の記憶の映像でありながら底知れぬ恐怖と威圧感を見るもの全てに与えていた。

「嫌……!」

恐怖から目を逸らしたくてもそれすら容易にはできない。カトレアは自分の肩を抱いて深く俯いてしまう。

カリンもまた空に浮かぶ三つ目の光を見上げ、鋼鉄の騎士にしてマンティコア隊隊長とは思えないほどの恐怖に打ち震えていた。

(魔帝ムンドゥス……)

スパーダは三十年前における異世界ハルケギニアにて確かにその姿を現した魔界の帝王の姿に厳しい表情を浮かべる。

 

『おお、ムンドゥス様……!』

黒ずくめの男は胸に手を添えて深く一礼をする。

『エスターシュとノワールは敗れた。黒騎士も敗れた以上、実験を続ける意味はない。下がれ』

『御意に。……では、ムンドゥス様。こやつはどうなさいますか?』

黒ずくめの男は恐怖に竦んで動けないカリンを見やる。

『捨て置け。我らに付き合ってくれた褒美だ。せいぜい、残された時を無為に過ごさせてやるがいい』

『仰せのままに』

主の答えに一礼をし、黒ずくめの男は全身を影に包み込み、その姿を跡形も無く消していた。付き従っていた黒ヒョウ達も同様にして消えていく。

 

――ハハハ……フハハハハハハハハ……!

 

残酷な哄笑が木霊し、三つ目の光は幻のように消え失せた。同時にあれだけ降りしきっていた雨がピタリと止んでいく。

カリンはへたり込んだまま完全に放心しており、虚ろな表情を浮かべていた。

未だ腕から血が滴り落ちているというのに、それすらも意識せず人形のように固まってしまっている。

『カリーンッ!』

無為に時が過ぎていこうとしていた中、そこへ現れたのはマンティコアに乗って空から降りてきたサンドリオンだ。

他にもバッカスやナルシス、その他大勢の魔法衛士隊や竜騎士隊達までもが次々に橋に降り立ち、カリンの元へ集まってくる。

片腕を落とされるという重傷を負ったカリンを仲間達、特にサンドリオンは血相を変えて介抱していた。

 

(あいつは……ムンドゥスは、私を見せしめにしたのね……)

カリーヌはあの時、ムンドゥスが残していた言葉の意味と残酷さがよく分かっていた。

 

――貴様らのような虫ケラなどいつでも殺せる。だから今は生かしておいてやる。

 

魔界の帝王は烈風カリンの命を弄び、心と記憶に決して消えない恐怖と絶望を植え付けていた。

ハルケギニアでただ一人、いかなる妖魔や亜人、悪魔をも超える強大な魔帝の恐ろしさを思い知ったのである。

作品の良かったところはどこですか?

  • 登場人物
  • 世界観
  • 読みやすさ
  • 話の展開
  • 戦闘シーン
  • 主人公の描写・設定
  • 悪魔の描写
  • 脚色したオリジナル描写・設定
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