魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero 作:月に吠えるもの
放たれた光は虚空の中に全く異なる新たな風景を作り出していた。
薄暗い劇場とはまた別の場所――どこかの執務室らしき場所が大きく映し出され、二人の人間の姿もぼんやりと見え始める。
アンリエッタもウェールズも銃士隊も呆然としていたが、リッシュモンのみが小さく呻きだした。
「お父様……?」
「叔父上……!」
――ヘンリー陛下……!
その部屋はトリスタニア王宮の執務室に間違いなく、ライカ欅の大机に向かう男の姿に一番驚いたのはスパーダを介しているヴァリエール夫妻の二人であった。
30代半ばか、まだまだ働き盛りな壮年の美丈夫は王族のみが持つ威厳と品格を併せ持つのがはっきり感じられる。
まごうことなき、今は亡き先代トリステイン国王、ヘンリーの姿がそこにあるのだ。
アンリエッタにとっては今や幼少の記憶の中にのみ残されている父の生前の姿。懐かしい、元気だった頃の父親の姿に思わず笑みが零れてしまっていた。
『陛下。何故、今頃ダングルテール事件を再調査などと……もうとっくにその件は始末がついておられるのですぞ』
先王ヘンリーが相対している法衣を纏う中年の貴族もまた見覚えがあるものだった。
顔の皺はやや少ないものの、たった今自分達の目の前にいる高等法院長リッシュモン本人であることがすぐに分かる。
「今のアンタと大して変わんないネ」
鏡を掲げたままのジェスターが横目でリッシュモンを見やり、意地悪そうに苦笑いを浮かべる。
『高等法院長。そなたはその一件における責任者の一人と聞いている。公文書によれば、あの村に討伐隊を派遣させたのはそなたとか』
『もちろんですとも。あの地方の平民連中は新教徒の集まりで、国家の転覆を企てておられたのです。故に騒動が広まる前に、早急に鎮圧し先手を打つためにも……』
先王ヘンリーはすっと手を上げるとリッシュモンの言葉を遮った。
『私はこの一件に不審な影を感じているのだ』
『と、申されますと?』
『これはそなたがダングルテールに派遣した討伐隊の作戦記録と報告書だ。最初からよく読んでみるがよい』
机の上に投げ出された一冊の分厚い本をリッシュモンは手に取り、まじまじと読み入りだす。
『命令書――ダングルテールにて重度の伝染病が流行せり。外部への拡大と蔓延を防ぐため、アカデミー実験小隊は総力を持って、海村一帯を集中的に焼却により滅菌されたし。なお、既に住民は回復不能の状態であるが故、考慮する必要はなし……』
『……そうだ。公文書の内容と食い違いが見られるのは何故だろうか?』
ヘンリーの指摘にリッシュモンは黙りこくる。アンリエッタやウェールズ――そしてヴァリエール一家でさえも怪訝そうに眉を顰めだした。
スパーダも珍しく興味深そうに王と臣下の場面に見入っている。
『この一件は不審だ。何者かが反乱をでっち上げてダングルテールを故意に全滅させた可能性がある。何しろ新教徒は弾圧の対象だからな。新教徒狩りの可能性も充分にあり得る』
「ヘンリー陛下様は、新教徒には割と寛大なお人だったそうだからネ~。それにアルビオン人が多いあの村に思い入れでもあったかもネ」
スパーダもトリステインの歴史書を読んだりする中で先王の人となりはある程度は把握していた。
ジェスターの言葉と記録に相違はないことは、この場面を見ても明らかだ。
『何者か……とおっしゃいますと?』
『例えば……いや、これは私の勝手な想像だ。余談を話している暇などない。何より証拠もないのだしな。そうであろう?』
ヘンリーはリッシュモンを真っ直ぐ睨むように見つめていた。
『無論、これらの内容がいずれでも事実だったなら残念ながら認めざるを得ないだろうが……念には念を入れる必要がある。私は事実をはっきりさせておきたいのだ。新教徒とはいえ、不当な制裁は民を不安にさせかねん。それこそ反乱が起きよう』
――先王様は、ダングルテールの事件が怪しいと思ったのね。
――そりゃあ、あんだけ話が嚙み合ってねえんだからな。まともに見りゃ子供だって気付くぜ。
(中々に鋭いな。名君というのは本当らしい)
本人の真意はともかく、先王ヘンリーはダングルテール事件にきな臭さを感じたのだ。
どこまで洞察しているかは分からないが、あの様子からして事件の責任者の一人であるリッシュモンのことも怪しんでいるのは確かだろう。
調査が進んでいればロマリアとの癒着と不正も暴かれる。そうなればリッシュモンの破滅は確実だ。
見ればリッシュモンの表情は僅かながら強張っているのが見て取れるが、ヘンリーは気付いていない。
『ダングルテールに派遣された実験小隊には生き残りが一人いると記されている。まずはその者を捜し出し、直接話を聞き出したい』
王の命令を受けたリッシュモンは厳かに一礼して退室したが、王の視界から消えたその表情は瞬く間に不機嫌なものへと変貌していた。
『下種が……余計なことを勘繰りおって……』
そう毒づいたリッシュモンは足早に廊下を進んでいくが、そこで映像がぼやけ別の光景へと切り替わった。
どうやらリッシュモン個人の執務室らしい。恐らく本人の邸宅に戻ってきたのだろう。
主たるリッシュモンはソファーに腰掛けて寛いでいるように見えるが、その顔は未だ憮然としたままだ。
――あら。あの子は……?
カトレアが目を丸くしたのはテーブルを挟んでリッシュモンと向かい合っている人物だ。
若い娘――ルイズと同じ年頃らしいその女は白いフリルで所々彩られた漆黒のドレスを身に纏っている。
長く伸ばした薄い紫の髪には黒いリボンのついたカチューシャが飾られており、どことなく派手に見えなくもない。
だが人形のように血の通ってなさそうな白い肌も相まって、今目の前にいるジェスターとどことなく似たような、だが異なる方向性で不気味な印象だった。
(こいつ……人間ではないな)
黒衣の女を凝視していたスパーダは僅かに顔を顰める。
映像を通していようとそこに映る者達が人であるか否かは悪魔であるスパーダには判別できる。
それに映っている女と似たものをかつてヴァリエール家と共に時空神像を通して見たことがあるのだ。
『また私どもを贔屓にして頂いて光栄ですわ。閣下』
鋭い翠眼を細めて女は薄い笑みを浮かべだす。
『今度もまた、どこぞの誰かでも蹴落として出世する気でいますの? 懲りないのね』
女の嘲笑にリッシュモンは気にした風もなくふん、と鼻を鳴らしだす。
『陛下が私の周りを嗅ぎ回ろうとしている。これ以上ダングルテールの調査が進めば足がつくかもしれん。その前に始末するのだ』
リッシュモンが発した言葉にアンリエッタの目が大きく見開かれた。
『とうとう王様まで手にかけようって訳。今に始まったことじゃないけど、あなたも相当なワルなのね。臣下の風上にも置けないわ』
『方法はお前に任せる。だが、あまり派手にはするなよ。自然に死ぬように仕向けるのだ。誰にも悟らせてはならん』
どうやらあの女が先王を暗殺した下出人であるらしい。しかも話から察するに、過去に何度もリッシュモンから依頼を受けて彼の悪行を手助けしていたようだ。
しかも女の口ぶりからして単独ではなく、集団で活動している犯罪者か傭兵であるのが見て取れる。
『ついでに王軍資料室にある実験小隊の名簿から隊長の名前を削り取っておけ。万が一にでも足がついてはならん』
更なる要求に女は「お安い御用だ」と言いたげに一礼する。
やはりアニエスが捜していた実行犯の証拠を隠滅したのはリッシュモンの仕業だったのだ。
生き残りを直接殺せと命じないのは恐らく本人も居場所が分からないからなのだろう。最低でも名前だけでも闇に葬ってしまえば何者も干渉はできなくなると踏んだのである。
『ですがよろしいですの? 王様はこれからこの国の政治と社会を改革なさろうとがんばっているというのに』
『知らんわ。誰が王になろうとも同じことよ。むしろそんな余計なものなど必要ない』
『そう。……それじゃあ、王様はこれを使って衰弱死にでも見せかけましょうか……。少し時間はかかるけど、半年もあれば自然に死んだように見えるでしょ』
女が懐から取り出した小さな瓶の蓋を開けると、中に満ちていたどす黒い液体のようなものが煙のように浮かび上がり頭上へと漏れ出していく。
――あの悪魔は……!
――カトレアから出てきた……。
ヴァリエール一家は息を呑み驚愕する。瓶から出てきた黒いガスはいくつもの目がぎょろりと剥き蠢く奇怪な生物で、スパーダがカトレアの体内から追い出した病魔そのものだったのだから。
『ですが、王様の暗殺ともなればお値段も高くつきますわよ? 最低でも10万エキューってところかしら……』
『それで構わぬ。何としてでも奴を殺せ。時間が惜しい』
『せっかちですのね。ま、当然でしょうけど』
瓶の中に病魔を戻す女は恐ろしい言葉を次々に口ずさみながらも、その笑みは何の感情も感じられない冷たさに満ちている。
可愛らしい姿には似合わない悪魔そのもののような恐ろしさにヴァリエールの一家は寒気を感じるほどだった。
◆
光が治まると共に映像は消え失せ、再び劇場内には薄暗さが戻りだす。
「ハーイ、これでオシマイ。ご感想は? お姫サマ」
ゆうべの水晶を下ろし陽気に喋りだすジェスターに全員が無言だった。
というより銃士隊はそもそも状況自体がほとんど吞み込めず呆然としているだけで、今の場面をはっきり認識できていたのはアンリエッタ達だけだった。
そのアンリエッタもまた映像が映し出されていた虚空から視線を外さないまま唖然としていたが、やがてこの場にいるリッシュモンへと向けられだす。
「リッシュモン……本当に、あなたが……!」
震えた声を発するアンリエッタの表情からは平静さが完全に失われ、血の気すら失せていた。
対するリッシュモンはそれまでの焦燥から一転して落ち着きを取り戻し、大きな溜め息を吐き出すほどだ。
「だったらどうだというのだ?」
開き直ったような悪意に満ち溢れた表情でアンリエッタを睨みつける。
「先々代のフィリップ三世やその娘のマリアンヌのように政治に無能であれば、先王はせいぜい長生きができたのだ」
自らが犯し、暴かれた悪行にまるで悪びれもしないばかりか、王家への忠誠など微塵も感じられない無礼極まりない罵倒までも平然と口にしていた。
ウェールズはその態度に明らかな不快さを感じている様子で怒りに拳を震わせている。
「既に終わった過去を蒸し返して波風を立てようとする王など、国にとっても邪魔でしかない。だから消えてもらったまでよ。たかが平民ごときが消えたくらいで騒ぎおって……」
それはあまりにも自分勝手な言い草だった。
自ら犯した悪事がバレそうになり、己の保身のためだけに主君さえも口封じで手にかけようなど非道極まりない。
主君の目を盗み、陰でこそこそ私腹を肥やすようなそこらの小悪党な貴族などとは比べ物にならなかった。
先王ヘンリーの病死も、ダングルテールの真実を暴かれるのを恐れたリッシュモンが差し向けた暗殺者の毒牙にかかった結果なのだ。
――こりゃあとんでもねえ外道だなぁ。王様を平気で殺すなんざおったまげるぜ。
――何て奴なの! あんな外道な奴が王家にずっと仕えてたなんて!!
――あやつめが……! エスターシュと同じことを……!
貴族にあるまじきリッシュモンの外道な所業にルイズはもちろん、ヴァリエール一家の全員が憤る。特に公爵はテーブルを拳で叩くほどに怒りを露わにしていた。
リッシュモンにとっては主君など忠誠を尽くす価値もない、己の邪欲を満たすために利用する道具であり、邪魔になれば遠慮なく抹殺する敵でしかないのだ。
「先王も鳥の骨も、そしてこやつも……しゃしゃり出てきては余計なことをして我らの気分を害する。これだから余所者という奴らは嫌いなのだ。他の貴族共も内心、そう思っておろうよ」
リッシュモンはじろりと自分に銃口を向けたままのスパーダを憎々しげに見やった。
先王ヘンリーはアルビオン人、鳥の骨と称されるマザリーニ枢機卿はロマリア人、そしてスパーダは遥か異邦の地――ということになっている――から訪れた外国人。
伝統やしきたりを重んじる……というより執着する純粋なトリステイン貴族にしてみれば仲間内で事を荒立てず上手くいっていた風潮をかき乱そうとする部外者など不愉快で邪魔者でしかないだろう。
もっともリッシュモンのような悪徳貴族にしてみればそんなものは関係なく、単に私腹を肥やすのには都合が悪いからというだけだろうが。
「貴様もその一人だ、アンリエッタ。何も知らない小娘らしく大人しく小僧と駆け落ちでもしておれば良いものを……没落貴族ごときに誑かされてこんな連中を蔓延らせおって」
周りの銃士隊を見やりながらそう吐き棄てるリッシュモンにアンリエッタは震える唇を強く噛み締める。
「所詮、蛙の子は蛙よ。貴様らのような勘の良い奴らは我らにとって目障りなだけだ」
「ヒューッ……だってサ? どうする? お姫サマ? 閣下ハ、コウ仰ッテオリマスガ?」
ジェスターは相変わらずおどけたまま不敵な笑みを浮かべ、アンリエッタの顔を覗き込んでくる。
――ひ……姫様……!?
ルイズだけではない。カリーヌを除くヴァリエール一家はアンリエッタを見て愕然とした。
「アンリエッタ……」
それは間近にいるウェールズとて同じことである。
リッシュモンを睨みつけるアンリエッタの表情はそれまで目にしたことがないほどの鬼気迫るものだった。
男勝りな銃士隊隊長のアニエスの苛烈さなど比較にならないほどの凄みは周りの銃士隊隊員をも慄かせる。
怒り……哀しみ……殺意……ありとあらゆる負の感情が全身より溢れ出て膨れ上がり、今にも破裂しそうだ。
「よくも……よくも……よくも……お父様を……あなたは……!」
激しく血走った目、低く呟かれるその声音にははっきりと、あらん限りの憎悪が込められていた。
一国の王が信じていたはずの家臣の裏切りによって犠牲に――いや、それ以前に愛する肉親が一人の男の悪意により命を奪われた以上、怒りと憎しみに理屈も何もいらないのである。
「Kill you……! I'll kill you, Now!!(許さない……! 殺してやるわ! リッシュモン!!)」
女王の威厳も、王族としての品行もかなぐり捨てた、一人の少女の怒りがけたたましい絶叫となってホール全体に轟いた。
怒りに身を任せて振りかざされたアンリエッタの手には小さな杖が握られ瞬く間に巨大な氷の槍、ジャベリンが頭上に作り出される。
◆
「……アンリエッタ!」
アンリエッタの怒りの象徴が放たれようとする刹那、ウェールズが振り返りながら叫び――スパーダも同じくルーチェの銃口を上階のボックス席へ向けて引き金を引いた。
銃士隊達の銃より鋭い銃声が何発も轟き、同時に狙撃地点から無数のマジック・アローがアンリエッタ目掛けて飛ばされる。
ボックス席では杖を握るメイジらしき者の影が蠢くのが見え、席の間を駆け抜けながら魔法を連発してきていた。
ウェールズも咄嗟に同じマジック・アローを放って敵の魔法を撃ち落としていく。
「うわあああああああっ!!」
悲鳴のような絶叫と共にアンリエッタのジャベリンがリッシュモン目掛けて迫る。
だがリッシュモンを串刺しにしようとする寸前、一斉に飛来してきた何発ものマジック・アローが氷塊の横からぶつけられてきた。
軌道をずらされたジャベリンはリッシュモンの真横を掠めてジェスターの方へと飛んでいく。
「――Oops!(おっと!)」
銃士隊達が慌てて氷塊を避けようとする中、ジェスターの姿は煙のようにその場から一瞬にして掻き消えていた。
手にしていた夕べの水晶だけが空中に残され、ジャベリンと激突した鏡はバラバラに砕け散ってしまう。
リッシュモンから外れたジャベリンはそのまま誰もいない観客席を薙ぎ倒しながら勢いのままに床を滑り転がっていく。
「馬鹿めが!」
底意地の悪い嘲笑を浮かべたリッシュモンは自らの杖を足元へかざした。
彼が立つ床の一部が光に包まれ、瞬く間に砂へと錬金されるとぽっかりと空いた深い穴の中へ流れ落ち、リッシュモンもそのまま重力に従い落ちていった。
「待ちなさい! リッシュモン!!」
「アンリエッタ!」
金切り声で取り乱すアンリエッタの前にウェールズが立ちはだかり身構えた。
スパーダの絶え間ない銃撃の連射から軽快な動きで逃れ続けるメイジが上階から一気に大きく飛び出し、アンリエッタ達の目の前に着地したのである。
さらにメイジがジャンプする寸前で放っていたマジックアローは天井のシャンデリアを撃ち抜いており、その真下にある自分の元に落としてきていた。
ウェールズがアンリエッタを庇いながらその場より下がり、メイジは真横にあるリッシュモンが通っていった抜け穴へと自ら飛び込んでいく。
直後、落ちてきたシャンデリアは豪快に砕ける音を響かせながら抜け穴を塞いでしまった。
――ありゃま、まだ伏兵がいやがったんだな。全員捕まえたと思ったのに。
――何をやってるの! あなたが付いていながら取り逃がすなんて!
エレオノールの叱責は当然、スパーダに対してのものだ。デルフリンガーを通して互いの状況は認識できる以上、意思相通自体は行える。
その気になれば向こう側にスパーダも返答自体はできるし、その逆も然りである。
しかし、あの新たな刺客はスパーダも存在を認識できておらず完全に意表を突かれる形だった。
恐らくリッシュモンの護衛が外で待機していたのが異変を感じ取り、魔法衛士隊の監視と包囲を掻い潜って侵入してきたのだろう。
土のメイジだったようなので、侵入路など自分で作ることも容易いはずだ。実際、侵入してきたのもついさっきだったようでスパーダが存在を認識できた時には既に敵は攻撃を始めていた。
(後は彼女に任せるか)
だが目標を取り逃がしたとはいえスパーダは特段慌てることもなくあくまで冷静だった。
アンリエッタは万が一、この場で逃げられた時のための保険を用意しており、この結果自体は予測されていたものなのだから。
むしろ今、問題なのは全く別のことである。
「オーウ……惜しかったネ。せっかく徹底的に罠を張りまくって追い詰めたのに、逃げられちまった。ザンネン、ザンネン」
嘲る声がアンリエッタの真上から響いてくる。
見上げればシャンデリアが吊り下げられていた天井にジェスターの姿があったのだ。
しかも逆さのまま天井に何の苦もなく足をつけ、重力が反転しているかのようにあっさりと立っている。
「あなたは一体何なのです!? 突然現れてかき乱すばかりか、邪魔までするなんて! 何が目的なの!」
悔しさと怒りに満ちた顔のアンリエッタは瞳を潤ませ、涙声を響かせる。
唐突に明かされた亡き父の死の真相――憎き父の仇を取り逃がした無念――何もかもジェスターという悪魔に邪魔されたことによって治まらない自らの怒りをぶつけるしかなかった。
「だったら、オレ様なんて無視してとっとと捕まえちゃえば良かったジャン? 自業自得ってヤツ? アーッハッハッハッハッ!!」
――あんのピエロ! 何言ってんのよ! アンタが邪魔しなけりゃ……!
やかましい笑い声を響かせるジェスターにアンリエッタだけでなくルイズまでもが苦虫を嚙み潰す。
言ってることは一理あるが、場違いにも程があるやかましい道化がいては作戦に集中などできる訳がないし、レコン・キスタとは全く異なる第三者の介入などスパーダですら予想できなかったのだ。
邪魔者以外の何者でもない、極めて不快極まりない存在に誰もが憮然とするしかない。
「道化に用はない。貴様は場違いだ」
さすがのスパーダもはっきりと顔に嫌悪を露わにし、オンブラまで抜き放つとルーチェと共に交互に発砲する。
だが放たれた銃弾はジェスターを捉えたかと思えばその姿は一瞬にしてすぐ真横に移り変わり、天井に弾痕を刻むのみだ。
追撃で連射してもジェスターは身動き一つ取らないまま位置を変えてはあっさり銃撃を逃れてしまう。
ついには天井自体から完全に姿が掻き消えてしまった。
「それに――オレが本当に用があるのはお姫サマじゃあないんだナ、これが。実を言うと、お姫サマ達はついでなのサ」
ジェスターの声は全く別の場所――舞台の方から聞こえてきた。
現在、多くの銃士隊に配備されている銃は従来の火薬式のものでゲルマニアの名工ペリ卿ことマキャヴェリの製作した連発式風石銃は全員に行き渡っていない。
故に隊員達は急いで新たな弾を込めるのにもたついていた。
「オレが一番用があるのは……アンタの方サ。――神の左手ガンダールヴ……魔剣士スパーダ様?」
いつの間にか手にしていた小振りの杖をスパーダに突きつけ、ジェスターは異様に長く鋭い舌で舌なめずりをしだす。
指名されたスパーダに本人以外の視線が一斉に集中した。
「タルブでのアンタの活躍ぶり、オレ様もたっぷり見させてもらったゼ? もう、コーフンしっぱなしだったサ! 魔界の王の一角を倒しちまうなんてナ!」
――あいつ、何でそのことまで……?
――野郎、何を色々知ってやがるんだ?
スパーダの左手にはルイズの使い魔の証であるルーンが刻まれている。もっとも、今はその大元の力はデルフリンガーに移植されており、彼女とのパートナーである証だけでしかない。
ガンダールヴ……ルイズの虚無の系統と共に歴史の彼方に消えたとされる伝説の使い魔の存在を知るのは限られたものであるはずだった。
それなのにジェスターはスパーダのルーンの秘密を完全に把握している。その事実にルイズもアンリエッタも愕然としていた。
「だけど……ガンダールヴの力自体はアンタにはないみたいだねェ。一体、どこへやっちまったのかな? せっかくの使い魔の力をモッタイナイ……アンタ本人の力と合わせりゃきっと百人力のはずなのにナ」
溜め息を吐いて肩を落とすジェスターだが向けられてきた顔はにやりと気味の悪い笑みを浮かべていた。
「で・も……アンタ自身の力には興味津々サ。ダ・カ・ラ……」
静かに杖を掲げると先端の宝石が妖しく光を放ちだす。
それと共にホール中央の空中に魔法陣が浮かび上がり、どす黒い霧が溢れ始めていた。
「コイツをプレゼントするゼ!」
スパーダ以外が狼狽する中、魔法陣の中から巨大な影が伸び出てくる。
――げ! コイツ……!
金切り声のように奇怪な雄叫びを上げながら、先端の巨大な牙が並ぶ二枚貝のような巨大な口を開けて蠢くムカデのように長大な怪物がホール内を埋め尽くそうとしていた。
魔界に生息する魔物――電蟲ギガピードの一種でありルイズもタルブでの戦いで目にしていたものだ。
あの魔法陣は悪魔を魔界から召喚するためのもので、しかも上級悪魔を呼び出せる高等術によるものである。
「あれは……!?」
「お姫サマも、お近づきの印にぜひとも楽しんでってチョーダイ!」
這い出てきたギガピードは雄叫びを上げながら狭い空間の中でも長い体を蛇のように柔軟にもたげだす。
銃士隊達が突如現れた巨大な悪魔に狼狽える中、ギガピードはその口を開いて周りにいる餌に齧り付こうとしていた。
「Let's Party! Ha-Ha-Ha-Ha-Ha!!(さあ、パーティの始まりだ!)」
けたたましい笑い声が木霊し、ジェスターは大仰な仕草で両手を広げだす。
直後、残像と共に舞台に転移したスパーダのリベリオンが大きく薙ぎ払われるも、空しく虚空を切り裂くのみだった。
◆
タニアリージュ・ロワイヤル座の地下数十メイルには誰もその存在を知らない秘密の通路が存在する。
この地下通路はリッシュモンの邸宅からアジトとしている国内のありとあらゆる場所に繋がっており、万が一のための逃げ道として用意していたものだ。
壁に灯された小さな魔法の明かりが照らす中、迷宮のように入り組むその通路を後に続いてきた護衛のメイジを伴いながら何の苦も無く歩を進めていく。
「首尾はどうなっておるのだ」
「既に船を準備し、亡命の手配は整えております。急いでアルビオンへ脱出しましょう」
「うむ」
リッシュモンの後に続く護衛のメイジはリッシュモンが国内に数多く用意している手駒の一人だ。
まさかあのように周到な罠を張り巡らされたとは予想外だったものの、さらに予想外な出来事もあってこうして逃走に成功した。
おまけに部下が乗り込んできたタイミングも良かったのは幸いだった。
(それにしてもあの道化……何故、あそこまで……)
渋い顔で考え込むリッシュモンが思い浮かべるのは突如姿を現したジェスターという悪魔だ。
(まさか奴がワシ以外の第三勢力だとでも言うのか? ……まあ、今となってはどうでも良いか)
自分の秘密をあそこまで知り尽くしていたことには驚いたものの、バレた所でこれから亡命しようという自分には関係のないことだ。
さっさとアルビオンへ国外脱出し亡命した後はクロムウェルに頼んで部隊を授かり、再びこの矮小な王国へと舞い戻ってあの生意気な小娘を捕まえ、徹底的に嬲って辱めて、父と同じように生き地獄を味わせて殺してやろう。
「どこへ行くつもりだ? リッシュモン閣下」
どす黒い感情を内々で燻ぶらせる中、突如響いた声にリッシュモンは我に返った。
護衛のメイジが咄嗟に前へ出て杖を手に主を庇う。
「貴様……ラ・ミラン……!」
暗がりの通路の先から姿を現した人影にリッシュモンは顔を顰める。
白いマントを身に着け背中に大剣を背負う剣士……貴族達が『粉挽き娘』と罵倒して蔑み忌み嫌う銃士隊隊長のアニエスだった。
「残念だが貴様を逃がしはしない。ここで終わりだ」
一瞬、何故こいつがここに……とも思ったが自分が会うはずだった密使が捕まったということは劇場の設計図も手に渡っていることになる。
それならこの秘密通路の存在もアンリエッタ達に知れ渡っているのだろうとすぐに納得する。
「貴様がメイジ殺しだから何だと言うのだ? たかが平民一匹に捕まりはせんわ。とっととそこを退くが良い」
「何を勘違いしている? 私は文字通りにメイジを……貴様を殺しにきたのだ。リッシュモン」
鬱陶しそうに杖を振るリッシュモンだがアニエスは静かに背中のアラストルを抜き放った。
見れば先ほどのアンリエッタに匹敵する憎悪と殺意に満ち溢た表情を浮かべているのである。
「ダングルテール……貴様に罪を着せられ、咎無く焼き滅ぼされた我が故郷……忘れたとは言わせぬ!」
ここまで露骨に憎しみをぶつけてくるのに怪訝そうにしたものの、アニエスが発した言葉に合点がいったように頷いた。
昨晩、アニエスはリッシュモンの邸宅を訪れアンリエッタが失踪した――という偽情報を伝える際にダングルテールのことを聞いてきたのだが、その時は深く考えもしなかったもののこれで全て理解できた。
「ロマリアの宗教庁から見返りに賄賂をいくらもらった? 貴様の欲望のためにどれだけの者達が命を奪われたと思う!?」
アニエスはアラストルを突きつけ、刀身からパリパリと雷光が散りだす。
「貴様だけは絶対に許さん。裁判の必要もない。今すぐここで殺してやる!」
「出まかせを言うな! アンリエッタの飼い犬め!」
リッシュモンを警護するメイジがアニエスに匹敵する猛々しい声を上げた。
「自分が賊にかどわかされた不始末ばかりか、ありもしない罪をリッシュモン閣下に擦り付け陥れようとは、貴様らはどこまでも腐った連中ばかりだ!」
メイジが被るフードから覗ける紺碧の髪の下、苛烈な鋭い瞳がアニエスを射抜く。
立ち塞がる敵の顔を睨んでいたアニエスは何かに気付いたように僅かに顔を顰めた。
「……女か?」
「貴様に言われたくないわぁ!」
「さっさとそやつを片付けろ! ミシェル!」
リッシュモンの命令に応じて女メイジ――ミシェルが手にする杖の先端に細い光の刃が伸びだす。ブレイドの魔法だ。
一気に駆け込んできたミシェルが片手で光刃を振るい、アニエスはアラストルの刃で弾き返した。
「お前に用はない! 邪魔をするなら斬り捨てる!」
「やってみろ! 平民め!」
アニエスが剣を振るえばミシェルは流れるような動きで体を小さく捻って紙一重でかわし、光刃を突き出してくる。
咄嗟に身を屈めてかわし柄頭で敵の腹を打ち据えようとするが即座に相手は後ろへ飛び退き距離を取った。
「貫け!」
ミシェルが光刃を唸らせながら杖を振るうと無数のマジック・アローが放たれる。
即座にアラストルを正面にかざすと刀身から激しい雷光が弾けだし、アニエスを包むように駆け巡った。
飛来したマジック・アローはアラストルの結界に阻まれ、次々に弾け散る。
だが間髪入れずに疾走してきたミシェルが振るう光刃をアニエスは自らの剣で捌いていった。
二つの刃が幾度もぶつかり合い、交錯しては激しい衝撃音を狭い地下通路に響かせる。
「惜しいな。お前ほどの腕が立つ者なら銃士隊の一員に加えたいくらいだ」
「誰が平民ごときクズの寄せ集めに! 片腹痛いわ!」
アニエスの賞賛をミシェルは辛辣に一蹴する。
さほど歳は変わらないであろう若い娘でありながらもミシェルの実力はメイジ殺しと謳われるアニエスと互角に渡り合えるほどだった。
同じメイジでも以前に御前試合で戦ったヒポグリフ隊など足元にも及ばないくらいだ。
「リッシュモン閣下には指一本触れさせん」
鍔迫り合いで互いの刃が拮抗する中、ミシェルは呟く。
どうやらリッシュモンに対して深い忠誠を抱いているようで、その忠義を果たそうという強い信念が見て取れた。
それは結構なことかもしれないが、どっちにしろ彼女は敵に過ぎない。しかも実力もあるのが厄介だ。
さっさと倒さなければこの隙にリッシュモンは逃げてしまうかもしれない。様子を窺おうにも一瞬でも隙を見せればやられるためにそれはできない。
「閣下! 今のうちに――な……!?」
軽くアニエスを押し出したミシェルが叫ぶが視線をリッシュモンの方へ流した途端、その表情が戸惑いに歪んだ。
「っ……!」
アニエスも同じく振り向けばリッシュモンが杖を向けて巨大な火球を放ってきたのである。
敵の意図を察した時には全てが遅かった。
「うわあああああ!?」
ミシェルの悲鳴が響く中、膨れ上がった猛火は二人の戦士を容赦なく包み込んだ。
◆
「ふんっ……平民一匹も満足に殺せぬか」
目の前で激しく燃え盛る炎を冷たく見つめながらリッシュモンは吐き棄てる。
リッシュモンはこれまであらゆる貴族達を蹴落としてはその地位を奪ってきており、地位を失った者達は家族を残して皆無残に死んでいった。
そうして行き場を失った残された者達にリッシュモンは声をかけては彼らが満足できる仕事や身分を与え、自分への恩義を抱かせ手駒として利用してきたのだ。
ミシェルもその一人であり真実を知らない彼女はリッシュモンを恩人として長年慕い、深い忠誠を誓い護衛として仕えてきたのである。
「……ワシの役には立てたのだから、お前も満足だろう。感謝はしてやる」
もっともリッシュモンにしてみればそうした連中も捨て石が前提の道具でしかなく、今がその時だと判断したに過ぎない。
「ったく……余計な時間を食ったわ」
面倒くさそうに溜め息をつくと来た道を引き返していった。
邸宅への近道は炎で塞いでしまった以上、少し遠回りになるが別の出入り口から外に行くしかない。そう考えながら歩を進めると……。
――バゥンッ!
鋭い雷鳴のような轟音が轟いた途端、右腕に熱い衝撃が走った。
「――あ……あああああああっ……!?」
何が起きたのか? と意識する暇もなく、耐え難い激痛が襲いだしたのだ。
見れば自分の目の前の宙を何かが回転しながら舞っている。――それは人間の腕そのものだった。
恐る恐る自分の右腕に視線をやればそこにあるはずのものがなく、肩口から先が千切れていることに気付く。
「――どうだ。痛いか?」
激痛に喘ぎながら膝をつくと、背後から冷たい声が聞こえてきた。
「だが……貴様の陰謀でこれまで陥れられ、命までも奪われた者達の苦痛と無念に比べれば遥かにぬるい」
混乱と困惑に顔が歪む中、恐る恐る振り向くリッシュモン。
燃え盛る炎の中からコツコツと足音を立てながらぼんやりと人影が浮かび上がるのが見える。
やがてその形ははっきりしだし、自分の炎に包まれたはずのアニエスが悠然と歩いてくるのだ。
左手には雷光が激しく迸るアラストルが、そして右手には三つの銃身が束ねられた風石銃が握られている。
あれだけ強烈な炎を浴びせたはずなのに、アニエスは火傷一つ負っておらずせいぜい煤が多少汚している程度だ。
「メイジだったら、魔法でそんな傷などすぐ癒せるのだろう? さっさと腕を繋いだらどうだ?」
冷酷な視線で睨まれながらもリッシュモンは左手の杖を構えようとするが――
「できるものならな――」
アニエスが引き金を引くと再び轟音が唸り、銃口から閃光と共に弾丸が放たれた。
火薬ではなく風石で発射する以上は小さいはずの銃声は雷鳴のように激しく、放たれた弾丸は電光に包まれながらはっきりとした軌跡を残しながら直進する。
「ぎゃあああああっ!!」
雷撃を纏った、というより稲妻そのものが凝縮された弾丸そのものと化した銃撃はリッシュモンの左腕を撃ち抜き手首から先を吹き飛ばしていた。
手と杖が宙を舞い地面に空しく落ちる中、引き千切られたリッシュモンの両腕の裂け目から鮮血が溢れだす。
「貴様はいつか言ったな? 剣や銃など子供の玩具に過ぎぬ、と。……貴様らメイジの杖も同じさ。今の貴様には玩具以下でしかない」
立ち止まりアラストルを背に戻したアニエスは銃身を回転させて再度銃口をリッシュモンに突き付ける。
リッシュモンは気付いた。アニエスの全身から妖しいオーラが湧き出し、それがまるで角と翼を生やした悪魔のように形づいていくことに。
「あ、悪魔……」
「そうさ。私は悪魔だ……。だが貴様の十分の一ほども悪鬼にはなりきれてはいまい……」
「ぎゃあっ!!」
三度放たれた稲妻の弾丸はリッシュモンの残った左の肩口を撃ち砕いた。
「私は貴様を殺すためなら、悪魔にさえ魂を捧げても構わない。……そう思っていた。いや、とっくにそうなっているかもしれんな」
先程までの激しい炎のような憎悪に満ちていたアニエスの顔は今や氷のように冷たい感情が消え失せたようなものへと変貌していた。
リッシュモンは尻餅をつき、発せられる威圧感に恐怖し声も出せない。
「貴様も悪魔だ……。同じ悪魔に殺されるのなら本望だろう?」
銃を収めるアニエスはベルトで肩から吊るしている対悪魔用のランチャーを手にしだす。
取り出した砲弾を装填すると、真っ直ぐに銃口をリッシュモンへ突きつけた。
「貴様を殺すのに剣はいらん。斬り捨てる価値すらない」
両腕を失い、腰を抜かしたまま立ち上がれず思うように這い回ることすらできずにリッシュモンの顔は目の前の悪鬼を前にして恐怖と絶望に支配される。
銃口の奥から雷光が漏れ出し、ランチャーとそれを手にする両手そのものを包み込んでいた。
「Go to hell, Scum.(地獄へ落ちろ。クズめ)」
それまでより低く篭った雷鳴と共に、二回りも膨れ上がった稲妻の砲弾がリッシュモンを直撃する。
激しい爆音と雷鳴が混ざり合い、地下通路をも揺るがす震動が広がった。
閃光を発しながら膨れ上がる爆風をアニエスは僅かに一瞥するだけですぐに踵を返し、未だ治まらない炎の方へ歩み寄る。
炎に包まれ倒れるミシェルは全身を焼かれ、既に事切れていた。アラストルの結界が無ければアニエスも同じ運命を辿っていただろう。
彼女の前で片膝をつくアニエスは力なく目を閉じるその顔にそっと手を触れる。
「Rest in peace……(安らかに……)」
忠誠を誓い、信じていたはずの主に裏切られたことはきっと無念であったことだろう。
あの男の邪欲のせいで数多くの人々が犠牲になってきた。それは彼の部下として仕えていた者達ですら例外ではないのだ。
アニエスが今してやれるのは、失われた命と魂が静かに眠りに就くことを願うだけだ。
「この気配……スパーダか……」
背中のアラストルが雷光を散らすとアニエスは立ち上がり上を見上げた。
はっきりと地上の方から悪魔達の気配と殺気を感じられるのが分かる。
「ずいぶん暴れてるらしいな……」
思わず笑みを零すアニエスはその気配の中に戦友である一人の男の存在をはっきりと認知していた。
「大丈夫……分かっているさ。お前があいつを認めていることくらいな……」
絶えず雷光を散らし続けるアラストルにそう呟くとアニエスは歩き始める。
こんなつまらない場所で遊んでいる暇はない。一刻も早く自分も仲間達の元に行かねばならないのだ。
死体すら跡形もなく残さず消し飛んだリッシュモンが倒れていた床を踏み躙り、アニエスは颯爽と彼らが来た道を駆け抜けていった。
作品の良かったところはどこですか?
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登場人物
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世界観
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読みやすさ
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話の展開
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戦闘シーン
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主人公の描写・設定
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悪魔の描写
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脚色したオリジナル描写・設定