前世の記憶を取り戻したら、原作開始前に死亡する予定のラスボスの妻になっていた件について   作:しらたま大福

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再会とフリチン

 暗い闇の中に薄らと光が差し込み始めて、長い夜がゆっくりと明けていく。すぐ傍らにある水面には朝日が差し込み、屈斜路湖の水面はキラキラと輝きはじめ朝の爽やかな空気が肺を満たす。

 刺青囚人の一人である都丹庵士と言う人物が屈斜路湖周辺で盗賊をしていると聞いた土方さんは、「都丹庵士を確保するために屈斜路湖へと向かう」と言い放ち、私を自分の馬に乗せて現地へと颯爽と向かい始めたのが今日というか昨日のハイライトだ。夜通し馬に乗っていたせいで多少寝不足であるが、お荷物で非戦闘要員の私では多少寝不足でもなんら問題はないのである。(なんか自分で言ってて悲しくなってきた……)

 

 屈斜路湖の最寄りの旅館に着けば、近くの森の方が騒がしい。きっと杉元くん達が都丹庵士達と交戦したのだろうと言うことだった。

 つまり、森の方にはきっとオリガも居るはず。牛山さん達にくっついていけば、やはり交戦が終わった後のようで、土方さんが都丹庵士の処遇を任せてくれと言っていた。

 

 私は完全に部外者なので、そっと話の邪魔にならないように近くの木の傍に立っていることにした。鳥の鳴き声を聞きながらぼーっとしていると、ガサガサという音と共に人影が草むらの間から飛び出してきた。

 

「マーマ!!」

「ゆ、ユキコ!!」

 

 草むらから飛び出したオリガは、そのまま一直線に私の元へと走ってきた。

 

「会いたかったわ~!!」

 

 腕の中に飛び込んできたオリガを抱きしめると、オリガは嬉しそうに私の胸元へと顔を埋める。久しぶりに感じるオリガの体温に、よしよしと撫でればまるで猫のようにさらにぐりぐりと頭を押しつけてくる。うんうん、昔に比べると大きくなったけど、まだまだ子供で甘えたい年頃なんだな……とほっこりした。今日も家の娘が可愛いのである。

 

「元気だった?」

「えぇ、元気よ!」

「尾形くんたちも元気?」

「元気が良すぎて困っちゃうくらい」

「そう」

 

 そんな感じにガヤガヤと杉元くん達がこちらへとやってくる声が聞こえた。

 

「犬より役にたっとらんぞ谷垣一等卒、秋田に帰れ」

「……」

 

 なんということでしょう。(某匠風に)

 今まではぐれていたメンバーが、今ここに全員集合した。本来だったら外人らしく、ハグとキスでもして再会の喜びを分かり合えたのなら……どんなに良かったことなのだろう。だが、今私は再会の喜びを表現するよりも、困惑の表情の方が強かった。

 

「……あなた達、どうして全裸なの?」

 

 あの理由は――彼らの格好が全裸であったからだ。

 

「きゃー!! 母ちゃんみないでぇ!!」

「こ、これには深いわけがあってーー!!」

 

 ワタワタと言い訳をする白石くんと、杉元くんの姿に私は思わず遠い目をしてしまう。(なお、白石くんと杉元くん以外に恥ずかしそうに息子を隠しているのは谷垣さんぐらいである。それ以外の人は堂々としている。……いや、少しは恥じらって欲しいものだ)

 

「これも全て都丹庵士のせいだ!」

 

 いやなんとなく状況は察したよ、一応土方さん達から刺青囚人である都丹庵士の話は聞いてたからさ。きっと温泉にでも入ってる時に奇襲されたから、やむを得ずフリチンで戦ったんだろうってさ……。さすがにそれは察する事が出来るよ。

 

「丹庵士が俺たちが風呂に入ってる時に襲ってこなければ俺たちはフリチンで戦うこともなかった!!」

「そうだよ母ちゃん!! 信じてちょうだい……くぅん」

 

 別に皆が露出狂だとは思ってないから安心して欲しい。というか、私が言いたいのは戦いが終わったのなら、さっさと服を着ればいいんじゃないかってことだ。いくらなんでもずっと全裸だったら、ムキムキマッチョな魅惑のボディーを持っていたとしても、そのうち風邪を引いてしまうかもしれない。

  

「状況は察したからもういいわ。さぁ、風邪を引くから温泉に入り直して暖まってきなさい」

「母ちゃん……」

「クレハさん……」

「ほらお前ら、感心してないでさっさと風呂に行くぞ」

「「は~い」」

 

 こうして、全裸一行は温泉に入り直しに行ったのであった――。

 

 ちなみに、私が冷静なのは決して見慣れているとか、何にも感じないからとかではない。一応、羞恥心とかはあるけど……今の私は一周まわって“無”という感情になっているのだ。

 ……まぁ、私も人妻だった時もあったし、子供もいる身だからね。それなりに経験はありますし、今更息子みたいな子達の息子を見たとしても動じるほど青くはないのもあるが。(前世の記憶があるせいで中身がおばちゃんだからというせいもあるけど)

 まぁ、何が言いたいかというと……決して私は若い子の息子を見て喜ぶような痴女ではないということだ。

 

 閑話休題。

 

 

「……ところで、こんな状態でケロッとしてるけどあなた……」

 

 さっきか男性陣の全裸を見てケロッとしているオリガ。私がオリガくらいの年の頃だったら、絶対あの光景を見たら赤面するとか、顔を隠すとか何らかのアクションを起こすはずなのに……オリガは至って普通の態度である。

 ……もしかして、私の知らない間にオリガは大人になっていたとか……そんなことあったりする??(※徹夜テンションでおかしくなっている)

 

 私からの問いかけに、オリガはすっと天使のような慈悲深い笑みを浮かべた後、すこんと表情が抜けた。

 

「……マーマ、私知ったのよ。この世の中には様々な愛の形が存在し、様々な変態が今日も元気にこの世を生きてるってことを――」

 

 悟った目で遠くを見つめるオリガ。あまりにも虚無なその表情に、一体何があったのかと私は無性に心配になった。一体私と分かれた後なにがあったのだろか……。

 

「オリガ……」

「マーマ、私は大丈夫よ……世界は広いから」

「……オリガ、一旦寝た方がいいわよ」

 

 しかし、よくよく考えたら、ゴールデンカムイって変態がいっぱい出てくる漫画だった。人が苦しむ様を見て股間を光らせる人とか、何かあったら「勃起」と言ってる人とか、ヒグマとすけべしようとする人間とか、人の皮で作った肌着を愛用している人とか……ってそれ私の旦那だった。冷静に考えなくても、この世界には変態がいっぱい居るので、細かいことは考えないようにしよう。

 多分オリガもこの旅で、恐らくとんでもない変態に遭遇したのだろうと結論づけることにした。オリガよ、たくましく生きておくれ……。

 

 ~完~

 

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