前世の記憶を取り戻したら、原作開始前に死亡する予定のラスボスの妻になっていた件について   作:しらたま大福

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原作からはやっぱり逃げられない

 

 時は過ぎ去り決死の思いでロシア大脱走を決めてから16年が経った。痛む肩を庇いながら何とか娘を連れて病院を抜け出したあの日、ロシアでこっそり隠れながら転々として何とか日本まで辿り着いた。

 北海道にまで来ることには成功したが、本州へと渡るには金銭の備蓄が微妙な所だし、ロシア系アイヌが多い北海道から出れば私の容姿が目立つことも影響して、北海道に定住することに決めた。将来的にこの地で金塊争奪戦が始まるが、基本的にジョ○ョみたいにモブに優しくない世界じゃないから、大人しくしておけばきっと悪いようにはされないだろうという気持ちだ。

 

 そんな北海道での生活のスタートだった、前世の記憶でペラペラだった日本語のおかげでそこまで苦労することなく周囲に溶け込めることに成功した。後に夫が北海道に左遷されるはずなので、間違ってもルフィーナという本名で生活するわけにはいかない。よって新しい名前のクレハという名前で生活することに決めた。

 もう原作を離脱した身ではあるが、ここは原作の舞台である北海道。いつ何かが起こってうっかり目の前に夫が現れ、弱みになるものは隠すと言って監禁されたり、最悪要らないと処分されたりするかもしれない!! 用心に越したことはないので、娘のオリガもユキコという偽名で通すことにした。

 

 ちなみに、現在の私はチート技でバイリンガルになったので、ロシア文学など翻訳をする仕事で生計を立てている。基本的に在宅ワークなので、娘の面倒を見ながらのんびりと生活している。そんな私がちゃんと母親をやれているかは分からないが、私は父親の分の愛情も惜しみなく注いで育てたと思う。

 そんな我が娘、オリガは美しいブルネットの髪に、目鼻がくっきりとした顔立ち、私とお揃いのアクア・ティメントの瞳は強い光を秘めており、その目の形は鶴見篤四郎によく似ていた。

 どこからどう見ても完璧な美少女。おまけに地頭がいいので、ロシア語も日本語もどちらも簡単に操る。うんうん、我が娘ながらも欠点などないに等しい。

 

 オリガはここ数年、小樽の花園公園にある団子屋さんでその美貌を生かして看板娘をやっている。たまに持って帰ってきてくれる団子は絶品だ。

 

 さて、そんな感じで割と順風満帆に過ごしているのであるが……ここ数年一つ気になっている事があった。

 

 それは――、年に二回届く差出人不明の手紙と贈り物だ。その贈り物は、私と娘の誕生日に届く。手紙にはどこか見慣れた筆跡で書かれた『с днём рождения(お誕生日おめでとう)』という文字。一緒に届く奇数の花束と、生活費の当てにしてくれと言わんばかりの金品。恐らくこの手紙の差出人は……夫である鶴見篤四郎なのだろう。

 

 ついに居場所がバレてしまったという絶望と、もう十年以上の月日が経ってしまっているのに未だに私たちを覚えてくれているという安堵の心に、私の感情がぐちゃぐちゃになる。

 もしも、人から「夫を恨んでいるか」と聞かれたら、私は少し迷って「恨んでいない」と答えるだろう。あんなことがあったとしても、私の心は未だにあの人を思っている。彼の優しい態度が、私たちへの愛が……全てが嘘偽りだったとは思わないから。

 

 そして何より……朧気になってしまった原作の記憶にある鶴見篤四郎という男の顔面が……めちゃくちゃ好みだったのだ。

 いやさ、最初の頃は杉元の頬に団子の串をぶっさすとんでもないヤバいキャラ出てきたなって思ってたんだよ。それが後半になるにつれて、情報将校という役職に相応しい知的でインテリな雰囲気を出してきてさ……本当何なの?? 

 そして極めつけは前頭葉が吹き飛ばされる前のあのご尊顔!! 何あの顔の良さ?? あんな麗しい美中年が優しい言葉をかけてくれたり、命を賭けて助けてくれたりしちゃったらさ……宇佐美や鯉登音之進が心酔するのも仕方ないと思う。もしも私だったらマジで惚れていると思う……。

 

 まぁ、未だに好きだからって彼の元に押しかけようとは思わないけど。いのちだいじ。

 

 

 閑話休題。

 

 

 それは、とある日の夕方だった。すっかり夫の事を頭から追い出し、原作のことなんて気にせずに呑気にいつも通りの生活をしていたはずだった。

 だから、私はいつものように晩ご飯の準備を始めるために台所へと立った。今ある食材を頭の中で並べながら、今夜の献立を考えていれば、ガラガラと玄関の扉を開ける音が聞こえた。

 

 娘の帰宅を迎えるために、玄関へと声をかけた。

 

『オリューシャおかえりなさい』

 

 家では母国を忘れないためにロシア語で話をするようにしている。

 表向きはそういう理由だが、これも全てはあの子の本名を呼んであげるための作戦だった。せっかくだったら、あの人が付けてくれたあの子の名前をちゃんと呼んであげたいからという母心である。うんうんと一人頷きながらお鍋を棚から取り出した瞬間、ぴしゃーんと台所の扉が勢いよく開き、娘が飛び込んできた。

 

「ひぃぃぃ!?!? な、なに!?」

 

 某奇妙な冒険のワンシーンかのように、オリガが入ってきたドアからはバァァンという効果音が聞こえな勢いだ。私のノミのようなか弱い心臓は、ドクドクと忙しなく動く。

 娘のご乱心を宥めようと私が口を開くよりも早く、オリガは早口で私に捲し立てた。

 

「マーマ! 今すぐ旅に出る準備をして!!」

「…………はい?」

「金塊を探しに行くわよ!!」

 

 ……え、金塊を探しに行くって?? というか、何で今回のこと知ってるの??

 

「いやえっとその……オリガ落ち着きなさい」

「マーマ、私はめちゃくちゃ落ち着いてるわ」

 

 いやいや、金塊とか言ってる時点で色々とアウトだから!! というか、さっきからずっと気になってるけど……オリガの後ろにたってるそのどこか見覚えのある人is誰??

 

「あの……後ろの人って?」

 

 娘の後ろに立つのは、外套を羽織った髭面の男性。ダウナー系のような気だるげな雰囲気を漂わせたかなりの美男子。彼のその猫目には大変見覚えがあるし、原作キャラのような気がするが……。嫌でも、ツーブロなのに顎に縫合痕がないから恐らく別人だよね?? ……っていうか、頭の中に浮かんでいる人物とは別人だと思いたい(切実に)。

 

「あぁ、紹介するわ! 今日から私たちの護衛兼私の相棒になった尾形百之助よ!!」

 

 娘に紹介された軍服に外套を羽織った男は、器用に片眉を上げて口を開いた。

 

「どうも、お母さん」

 

 ☆――突然私を襲うCV津田健○郎!!

 ゴールデンカムイ原作から脱出したはずのフィーナ達の運命は!?

 

 次回「フィーナ死す!!」

 

 デュ○ルスタンバイ!!

 

 っじゃねーわ!! 突如脳内に勝手に流れた映像め!! 勝手に人のことを殺すな!!!! というか、デュ○マと遊○王ミックスするな!!

 

 

「……マーマ、ちょっと付いていけないわ」

「大丈夫、私たちがマーマを守るから!!」

 

 いや、何も大丈夫じゃない!!!

 

 

 こうして私たちは、いつの間にか尾形百之助を仲間へと加え金塊争奪戦へと身を投じることとなった。[完]

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