前世の記憶を取り戻したら、原作開始前に死亡する予定のラスボスの妻になっていた件について 作:しらたま大福
フィーナ、谷垣、インカラマッ、夏太郎は途中谷垣&インカラマッが瓦礫に押しつぶされそうになったり、途中で合流した牛山が死亡フラグを背負い投げたして木っ端みじんにするというイベントを挟みながらも、何とか正門の前にまで集合した。
そこに、白石&アシㇼパのコンビも合流し、「キロランケが杉元と共にのっぺら坊を連れてくるからここで待っていろ」という伝言を聞いていれば、直ぐにキロランケも合流を果たした。
「杉元は?」
キロランケの傍に杉元が居ないことにいち早く気づいたアシㇼパは、キロランケに杉元の動向を聞いた。
「舎房からは助け出したが、ひとりで教誨堂へ行った。『のっぺら坊を連れてくる。アシㇼパに必ず会わせる』と」
フィーナはその言葉を聞き、薄ら覚えている原作通りに事が進んでいることを確信した。
(確か、この後アシㇼパはこのまま杉元くんと合流できないまま樺太へと向かう。そういうシナリオだったはず……。でも、どうして杉元くんが合流できなかったんだっけ? 先遣部隊には今ここに居る谷垣さんも混じっていたはずなのに……)
思い出せない原作の流れに、モヤモヤを抱えたままフィーナは難しい顔をしていた。
「土方と犬童も教誨堂にいるらしい」
「助太刀しなきゃだぜ、牛山さん!」
「おい待てッ」
夏太郎と牛山は土方を助けるために教誨堂へと向かっていった。それに続き教誨堂へと駆け出そうとするアシㇼパをキロランケが止める。
「アシㇼパちゃん、私たちはここで待っていましょう。大丈夫、杉元くんは不死身なんだから」
「でも……」
「インカラマッ!?」
谷垣の声に、インカラマッの方を見れば、彼女はハシゴに登っている最中だった。
「屋根の雪下ろし用のハシゴです。高いところから見渡せるかも」
インカラマッはどんどんハシゴを登っていく、屋根の上に立つ彼女はキョロキョロと当たりを見渡す。その時、照明弾が辺り一帯を明るく照らした。
赤い囚人服、そして見覚えのある服装をした男性の姿。その二人の姿が、直ぐに
「アシㇼパちゃん、上に来てくださいッ! のっぺら坊と杉元ニシパとユキコちゃんがいますッ!!」
「ッ!?」
「ユキコも!」
インカラマッの声に、先にアシㇼパとキロランケが屋根へと上っていく。その姿に続いてフィーナもハシゴを登ろうとすれば、突然ズキズキとした鈍痛が頭を内側から殴るかのように主張し始めた。
「……うっ!?」
「え、クレハさん!?」
ぐらりと崩れ落ちそうなフィーナの体を支えたのは白石だった。頭を押さえながら、痛みを我慢するかのように顔をゆがめるフィーナの姿に谷垣は慌てて駆け寄った。
「一体どうしたの!? どこか痛いの!?」
「もしかして、撃たれたのか?」
「あ……頭がっ」
ガンガンと痛みを主張する頭痛。その頭の痛みに、フィーナは既視感があった。十六年前、長谷川写真館で体験した"知っていてはいけない記憶"が蘇る痛みだ。
「先にクレハさんを連れて脱出した方が――」
目立った外傷のないフィーナではあるが、ここまで顔色が悪く冷や汗をかいている姿に、ただ事じゃないと直感した谷垣は、フィーナを先に逃がした方がいいと判断する。
だが、当の本人であるフィーナはその言葉に小さく首を横に振った。
「だ、……大丈夫」
(谷垣さんが今ここで離脱する訳にはいかない。だって彼には……"杉元くんを救出する役"があるから)
フィーナの脳裏に湧き上がる記憶は、"欠如していた筈"の原作の記憶。今までロックされていたかのように頑なにその存在をなかったようにしていた記憶がフィーナの中に突然蘇った。
特徴的な青い目をしたのっぺらぼうの脳天に弾丸が埋め込まれ、その傍に居た杉元にも弾丸が襲いかかる。
「あ……!! ウイルクが撃たれたッッ!!」
「杉元ォ!!」
インカラマッの悲痛な声、アシㇼパの叫び声が届く。
「……どうして」
そして、のっぺら坊と杉元を撃ち抜いた弾丸を放ったのは――尾形百之助、その人であった。
この世には、変わる運命と変わらない運命というものがある。尾形百之助の裏切りは……、変わらない運命だった。