前世の記憶を取り戻したら、原作開始前に死亡する予定のラスボスの妻になっていた件について   作:しらたま大福

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ごめん、来週から週二回更新(月・金9になります、私は今エルガドに居ます。生まれ故郷を守る為にモンスターと戦っています。本当はあの涼しかった日々が恋しいけど……。でも、今はもう少しだけ知らないふりをします。私が走っているこのゲームの経験も、いつか小説の役に立つかもしれないから――。

(訳:最近暑くて夏バテ気味で、うっかりサンブレイク祭りしてます。少しやる気が迷子になっているので、すみませんが11日からはまた週二回更新に変更したいと思います)


樺太

 さて、私たちキロランケ率いる一行は、北海道の地を離れついに樺太へとやってきた。網走監獄で第七師団に捕まったオリガと杉元くんたちの事は気になる所ではあるが……原作通りの展開になっていれば恐らく大丈夫だろう。私が居る時点で原作通りになっているとはとても言いがたいけど、基本的に(私とオリガの生存以外)そこまで大きな原作改変は現在おこっていないので大丈夫だと信じたい所である。

 戦闘能力皆無でお荷物の特技(?)言えば、人生二回目ゆえの謎の包容力ぐらいだ。なので、現在はメンタルケアを行っている。

 

 特に北海道を出たばかりのアシㇼパちゃんの落ち込みようは酷かった。父親の二度目の死と裏切り、相棒は頭を撃たれ、仲間の一部は第7師団に捕まってしまった。特に父親の裏切りと、杉元くんの死(死んでない)には、まだ十二歳の少女の心に大きな影を落としているのは確実だった。

 私に出来ることと言えば……傍に寄り添うぐらいだ。彼女の憂いは、杉元くんと再開することによって晴れる。私がどんなに優しい言葉を掛けたり、励ましの言葉を掛けたとしても、杉元くんの健康な姿を見ることにはかなわないだろう。

 

 この旅の果てにアシㇼパちゃんはウイルク(アチャ)のルーツ、刺青の暗号のヒント、そして相棒との再会が約束されている。この旅の中で、彼女はまたひとつ成長するのだ。

 だから、アシㇼパちゃんのことはそこまで心配していない。

 

 

 だから、この先私が一番心配なのは尾形くんの方である。

 私のなけなしのふわっとした原作知識の中で、未だに鮮明に覚えていることと言えば、尾形くんが右目を失うことだった。尾形くんは、アシㇼパちゃんから暗号のヒントを杉元くんの代わりになって聞き出そうとしたが、結局信用ならないと言われて――不意の事故で右目に矢を受けた。「やっぱり俺では駄目か」という言葉が妙に頭に残っている。

 

 尾形くんは、アシㇼパちゃんの中にずっと勇作くんを見ていた。殺しは絶対しないアシㇼパちゃんと勇作くん。人を殺すことにためらいも、後悔も、罪悪感も感じないと言う尾形くん。自分のように祝福されず育った人間は、何かが欠けていると思い込み、こうなっても仕方が無いと思いたかった寂しい人。

 

 だから、アシㇼパ(勇作)がその手を汚す所を見たかった。祝福された人間でも、結局人間の本質はそうなんだ、だから自分が罪悪感を感じないことに正当性を見いだしたかった。……そう思いたかったんだと思う。

 

 もう勇作くんはこの世に居ないから、代わりに人を殺さないと決めているアシㇼパに勇作くんを見いだした。

 

 杉元くんの代わりになれないと悟った尾形くんは、せめてアシㇼパちゃんが人を殺す瞬間を見届けたいと、わざと「父親殺し」(道理)をあげた。そしてその矢は……結果的に尾形くんを射貫いた。これによって尾形くんは右目を失うが、命は助かる。

 

 それが原作での樺太編の流れのはずだ。

 

 

 そこまでの過程に行くまで、尾形くんはアシㇼパちゃんを気にかけ、執着していたはずだった。だがしかし、現在はアシㇼパちゃんのそばに居るより、私の近くにいることが多い。それも私に前以上に優しくしてくれたりしている。

 

 何がどうなってこうなったかは知らないが、どうやら尾形くんの執着先が私に回ってきているような気がする。現に、アシㇼパちゃんや白石くん、ついにはキロランケにまで「尾形は樺太に来てからクレハにべったりだな」と言われる始末である。

 

 この状況から推測されるのは……もしかして、私の中に母親を見いだしているのかな?という予測だ。確かに、私は人生二回目だからっていうのもあるので包容力はあるとは思う。そうじゃなきゃ、皆のカアチャンというあだ名なんてつかないし。

 

 私が尾形くんを認めてあげるだけで彼の心が救われるんだったら、私はいくらでも認めてあげる。でも、そんなことで彼の心が救われる訳ではない……中々難しい問題である。

 

 

 まだ樺太編佳境(タイムリミット)まで猶予はある。私に出来ることを探そうと思う。





【樺太へと向かう船の中で】


「……鯉登少尉殿は、鶴見中尉の奥方に会ったことがあるんですよね?」
「あぁ、旭川でな」
「どのような方でしたか?」

「あの時は少ししか会話をしなかったが、優しそうな人だった。目元は中尉殿似だが、全体的には奥方に似ている」
「髪色は何色でしたか?」
「髪色? 黒だったぞ」
「……そうですか」

 ――黄金の髪の持ち主の正体は、未だ知らず。


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