前世の記憶を取り戻したら、原作開始前に死亡する予定のラスボスの妻になっていた件について   作:しらたま大福

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誤爆

 

 熱を出した尾形くんが無事に復活しました! 本当に良かったよ(ほっこり)

 

 さて、尾形くんの復活までに起こったことを軽く説明しよう。尾形くんが熱に魘されている間に、白石くんが私とアシㇼパちゃんに一緒に逃げようと言ったが、結局アシㇼパちゃんが断ったりするイベントがあったりした。もちろん私も熱でぐったりな尾形くんを放ってはおけないので勿論丁寧にお断りした。

 

 確か朧気な記憶の中では、この先が樺太編の佳境へと入っていく訳ではあるが……今までみたいに黙ってこのままただ傍観している訳にはいかない。

 

 だって、この先尾形くんは――失意の中、右目を失うことになるから。……例え右目を失ったとしても、彼は狙撃手として返り咲く。だけど……息子のような尾形くんの右目を守りたいと思うのは必然だろう。

 

 だから私は、何としてでもあの氷上の上でアシㇼパちゃんと二人っきりには出来ない。そして、尾形くんがこの旅の先に迎えるエンディングを変えるためには――彼の心に踏み込む必要がある。例えそれが彼の地雷を踏むことだったとしても。

 

 尾形くんの心の奥底には罪悪感がある。彼はそれに気づいていないだけ、いや……あれは自分の心を守るために気づかないふりをしているのかもしれない。原作の最後、彼があの選択肢をしたのは……突然自覚してしまった罪の意識に耐えられなかったんじゃないかと私は思う。

 でも尾形百之助という人間が前を向き、祝福をされるためには罪悪感(それ)を自覚する必要がある。

 

 では、尾形くんがあのエンディングを迎えないためにはどうすればいいのだろうか?

 

 

 うーん、うーんと一人唸っていれば、向かい側に座っていたアシㇼパちゃんが私に問いかけた。

 

「クレハ、どうした? そんなに難しい顔をして」

「ううん、なんでもないの」

 

 どうやったら尾形くんを祝福出来るのかって考えてたとは流石に言えない。そんなことを言ったら真っ先に「祝福ってなんだ?」と聞かれるのが落ちだろう。というか、今更だけど祝福ってなんだろう……(哲学)。

 祝福……祝福……?? ……………うん、考えたってしょうがないよね!! とりあえず当たって砕けてみるしかないよね!! 未来の私、頑張って!!【完】

 

「今日のクレハ変だな」

「なになに、もしかして尾形ちゃんの風邪が移ったとか?」

 

 白石くんからのその言葉に、隣に座っていたキロランケはおもむろに私にその手を伸ばした。私の前髪を優しく分け、額へとその手が触れた。私よりも少し低い体温が額へと伝わる。

 

「熱は……無いようだな」

 

 これは少女漫画でよく見るやつうッ……!!!(残念ながら中身がおばちゃんな私はトゥンク……みたいな反応は出来ないけど)

 

「体調は大丈夫だから心配しないで大丈夫だから」

「何かあったら直ぐに言うんだぞ」

 

 こうしてさらっとイケメン行動を出来るキロランケは本当に色男だ。これがモテる男の格の違いか……恐ろしいものだ。

 そんなことを思っていれば、尾形くんが銃を持って立ち上がる姿が目に入った。

 

「あれ、尾形くんどこに行くの?」

 

 銃を持っているということは、狩にでも行くのかな? もしも狩だったら一緒に着いていけば……二人っきりで話ができるかもしれない。

 

「腕鳴らしに行ってくる」

「もういいのか?」

「尾形ちゃん、もうちょっと安静にしていた方がいいんじゃないの?」

「これ以上大人しくしてたら、役立たず(白石)になる」

「確かに」

「それも一理あるな」

「クゥン……」

「白石くん……」

 

 可哀想な白石くん……。まぁ、そういう私も役立たずのお荷物代表者ではあるから耳が痛い。

 生ぬるい表情で白石くんを見ていれば、「おい」という尾形くんの声が聞こえた。

 

「クレハも来るか?」

「え、私もいいの?」

 

 ここでまさかお誘いが来るとは思わなかった! もしかし、私が二人っきりで話したいというオーラが伝わったのかな?

 

「俺は構わん」

「じゃあお言葉に甘えようかな」

「尾形ちゃん、母ちゃんに迷惑かけないでね!」

「ちゃんとクレハの言うことを聞いていい子にするんだぞ」

「珍しい蝶がいても、クレハを置いて追いかけちゃダメだからな。クレハを一人にすると多分死ぬ」

「俺はガキじゃねえよ」

「私の事、赤ちゃんかなんかと思ってたりする?」

 

 三人の中での私と尾形くんの扱い……。流石に尾形くんとはぐれたぐらいで死なないよと思いたいが……クマとか出たら多分私は死ぬ。

 

「戦闘能力がない時点で赤ん坊と大差ないぞ」

「うっ……アシㇼパちゃんの鋭い指摘」

「事実だから諦めろ」

 

 うぅ……強くなりたい。

 

 

 先に進んでいた尾形くんがふと歩みを止める。そして、ゆっくりと振り返った。

 

「おい、俺に話があるんだろ」

「……驚いた、本当に私の気持ちが伝わってたなんて」

「お前は分かりやすい」

 

 私そんなに分かりやすかったかな……? まぁ、今回はそのわかり易い私の態度でこうして話す時間が出来たから良かったとしよう。

 

「それで、何の用だ?」

 

 尾形くんの真っ黒い瞳がじっと私を見下ろす。今の彼が何を考えているのかは分からない。

 

「率直に言うね、尾形くんに一つ提案したいことがあるの」

 

 私には優れた頭脳も、人を魅了できるような魅力もない。ましてや、物語のヒロインになれるような器でもない。

 そんな私に出来ることは――自分の気持ちを伝える事だけ。

 

 自分の心を落ち着かせるため、私は小さく深呼吸をしたあと口を開いた。

 

「尾形くん、私と家族になりましょう」

「…………は?」

 

 あ、この反応ちょっと待って……これは言葉のチョイス間違ったやつ!!

 

 

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