前世の記憶を取り戻したら、原作開始前に死亡する予定のラスボスの妻になっていた件について   作:しらたま大福

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土方陣営

 

 さて、これは一体どういうことだろうか……?

 今私の目の前では、土方歳三、永倉新八、牛山辰馬、家永カノ、尾形百之助、そしてオリガという豪華面々が一軒家に集合している状況である。

 

 話しているのは、「のっぺらぼう」の正体諸々。こんな所に原作イレギュラーな私たちが居ていいのか……。

 

「つまりのっぺらぼうは極東ロシアの独立戦争に使うため、アイヌの金塊を樺太経由で持ち出そうとして失敗したのが今回の発端なわけか」

「ジイさん、あんたこれっぽっちものっぺらぼうを信用してなかったんだな。ということは、監獄の外にいるというのっぺらぼうの仲間も……」

「――アイヌに成りすましたパルチザンの可能性が高い」

 

 というかこれはアレなのでは、確かこのシーンめっちゃ原作であったような気がする。(原作知識ほぼ吹っ飛んでるせいで断言出来ないけど)

 

 

 さてさて、私がこんな明らかに原作シーンっぽいど真ん中にいるかと言うと、小樽を出発した私達は茨戸へと向かうことになった。

 茨戸ではどうやら後継問題とかなんやらで抗争が起こっており、街中は危ないからという事で私達は近くで待機。尾形くんが「ちょっかい出してくる」と野良猫のように街へと消えていくのを見送った。

 そして、オリガは「お花をつんでくるわ!」と言いながら長いトイレへと消え(長すぎて絶対トイレじゃないと思う)。ようやく戻ってきたと思ったら尾形くんと一緒だし、オマケに土方歳三一行を連れてきたのではないか!!

 もうこの時点で気絶したいぐらいだったよ……。

 

 土方歳三からの鋭い視線に、私は身を小さくして必死に「ぼくはミジンコ、むりょくないきものだよ……(震え声)」とオーラを放つことしか出来なかった。オリガごめんなさいね、お母さんは無力な一般人なの……。

 そんなこんなで、土方歳三一行に立ち話もなんだから(意訳)され、こうして隠れ家的な民家へと連れてこられたわけだ。

 

「ところで、尾形よ。お前はいつから子供の子守をするようになったんだ?」

 

 のっぺらぼうの正体や、パルチザンの話はどうやら終わったようだ。その話が終われば、今度はそっちの身の上話だと言いたげに会話がチェンジされた。

 

「あら、土方のおじい様。私ならまだしも、マーマは子供扱いしないで欲しいわ」

「マーマとはお嬢さんの名前かい?」

 

 土方歳三からの問いかけに、私はスっと背筋を伸ばして微笑む。内心ガクブルだけど、ここは何とか母親としての威厳を保つために頑張らねば……ひぇぇ。

 

「いいえ、私の名前はクレハと言います。マーマとは母という意味になります」

「その目の色、ロシアの血が入っているのか」

「えぇ、私は生まれも育ちもロシアです」

「ずいぶん日本語がお上手ですね」

「えぇ、いっぱい勉強しましたし、もう16年ほど日本に住んでいるので。ある程度はこなせるようになりました」

 

 本当は前世日本人というチート技を使ったけどね!! 

 

「クレハさんはずいぶん若く見えるけどその娘の母親なのか」

「ふふ、私の自慢のマーマよ! 牛山のおじさま、手は出さないでくださいな」

「俺は紳士だ、嫌がる女性に決して手は出さない。まぁ、お綺麗なクレハさんが俺の誘いにのるなら話は別だが」

「牛山のおじさまも素敵だけど、マーマの好みはもう少し細めでインテリ系よ」

 

 娘よ、どうして私の好みを知ってるの? え、どうして?? 恋バナしたことあるっけ??

 

「むぅ……しかし、1度寝てみれば好みが変わることも――」

「マーマに色目使わないで!!」

「こら、ユキコやめなさい」

「まぁまぁいいじゃねえか、お母さんよぉ」

「随分不思議な組み合わせだな」

 

 本当にそれな。方やロシアの血が入ったある意味どこにでも居そうな親子、もう方や第七師団の上等兵。普通だったらこんな組み合わせにならないでしょ。

 というか、オリガは一体どうやって尾形くんを仲間に引き入れたのだろうか? まさか、自分の父親の正体を知って?

 ……いやそれはないでしょう。私はあの人が写真屋だったのに、あの人の写真一枚すら持ってない。ウイルクに撃たれて気を失う前に教えてもらった「鶴見篤四郎」という名前も、私の心の内に留めており、あの子には父親の名は「コウイチ」とだけ伝えている。

 だから、父親の本当の正体に気づくわけが無い。

 

 私の知らない事が沢山ありそうだ。せめて、早いうちに聞き出しておかないと……。私はお荷物だけど、邪魔にはならないようにしたいし。

 

 そう自分の中で結論付けていると、何となく話が纏まったようだ。

 

 

「まぁ、とにかくだ。俺はアンタ達の用心棒もやる傍ら、この親子のお守りもしないとならねぇ」

「私、こう見えても頭は回るほうよ。仲間に引き入れて損は無いことを約束するわ」

「ほぅ、随分と面白いことを言うお嬢さんだ」

「ふふ、冗談かは私の働きで判断してちょうだい」

 

 にっこりと年相応に見えない大人っぽい笑顔でオリガは土方歳三と向き合う。その姿は我が娘ながら、とても頼もしくカッコイイものであった。

 

「ではユキコ。第七師団の鶴見中尉が、ここ最近小樽を離れ、夕張のとある剥製屋に入り浸っているようだ。お嬢さんは、やつが何をしようとしていると考える?」

「そうね、もしも私だったら……剥製屋さんに頼んで偽物の刺青人皮を作ってもらうわ。もしも偽物が出回ってるとも知らないで偽物を掴んだら――例え暗号の解き方が分かっても金塊まで辿り着かないわ」

 

 ……偽物の刺青人皮。確かそんな話あったかもしれない。オリガったら凄いわ、私なんかオリガの話を聞いてそんなエピソードあったような気がするみたいな朧気すぎる記憶がちょびっと出てくるぐらいなのに……!! 流石鶴見篤四郎の娘と言うべきなのか……。

 母親としてはあまり危険なこと首を突っ込んで欲しくないんだけどなぁ。

 

「ふむ、確かにそれは厄介だ」

「まぁこれはあくまでも、もしも私が鶴見中尉だったらの話だからあんまり当てにしないでくださいまし」

「あぁ、分かっている」

「お気に召して貰えたかしら?」

「あぁ、中々気に入った」

「それなら良かったわ」

 

 

 土方歳三は、満足そうにふっと息を吐いた。場の空気が少しだけ柔らかくなったのを肌で感じる。

 とりあえず、何とか敵対心が無いということは伝わったという方針で大丈夫なのだろうか?

 

「お前達、そろそろ次の目的地に向かうぞ」

「次の目的地はどこだ?」

 

 牛山さんの問いかけに、土方歳三は答える。

 

「――もちろん、夕張だ」

 

 夕張に出発することが決定した。

 はぁ……役立たずの私。この先ちゃんとオリガを守りながら生き残れるかな……。

 

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