才能の権化が才能を無駄遣いしていることを嘆くのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 大事なことを言うぞ。この作品にシリアスを期待するな。主人公はどこまで行っても変態なんだ。一話の前書きに書いてあるようにネタでしかないんだ。

 文才が欲しいと毎日思う。ではどうぞ。


黒幕の正体

「マジか……」

 

 アポロン主催の『神の宴』の翌日。自慢の眷属(アイズ)ロリ巨乳(ヘスティア)眷属(ベル)の仲を取り持つような真似をしたヘルメスに呼び出されたロキは、指定された場所の『くっ殺の館』に赴くまで抱いていたマジで天界に送還してやろうかという考えを霧散させていた。

 

「ロキ、先に言っておくよ。俺の眷属は『開錠薬(ステイタス・シーフ)』を使っただけだ。断じて催眠魔法や脅迫による『更新薬(ステイタス・スニッチ)』の強制使用、神の子供の嘘を見抜く力対策の魔道具(マジックアイテム)による虚偽申告は一切していない」

「……そんなもんわかるわ」

 

 ヘルメスに返事をする声は無機質だった。怒りや驚愕、己への不甲斐なさが混ざり合い、胸の中の感情を整理することに意識を裂かれていたからだ。それはきっと、隣で表情を消している男神も同じだろう。

 

 変態(ジーク)の仕事道具が取り払われた石部屋には一つだけ椅子があり、そこにはエルフの少女が目を閉じて座っていた。彼女の名はアウラ・モーリエル。【ディオニュソス・ファミリア】の副団長である。

 

 同盟を組む際に一通り【ディオニュソス・ファミリア】の構成員を調べたロキは彼女のことを知っていた。ディオニュソスの忠実な眷属である彼女の背に刻まれる『恩恵』は当然ディオニュソスのもののはずなのに――。

 

「ぺニアか、これは」

「そうだ……本神(ほんにん)からも確認を取った。刻んだ記憶など欠片もなかったよ」

 

 眠る少女の背中にあるのは清貧を司る女神の『恩恵』。神々の間で悪い意味で有名な貧乏神が眷属を得たという話は聞いたことがない。ましてや他派閥の眷属を無理矢理奪うなど、どこぞの美神(チート)でもなければ不可能だ。

 

 アウラ自身が『改宗(コンバージョン)』を願った、ディオニュソスとぺニアの間に何らかの取引があって『改宗(コンバージョン)』させたことを内緒にしてた……検討すること自体が馬鹿馬鹿しい可能性が浮かんでは消える。答えなんて最初からわかっている。

 

「『エニュオ』の正体はディオニュソスか」

 

 ある程度ロキはディオニュソスを疑っていた。しかし、その疑惑は決定的なものとは言えず、ディオニュソスの語る神意はロキの目にも本物として映っていた。こうして決定的な証拠を見るまで天界きってのトリックスターが欺かれていた。

 

 その覆らない事実にプライドは傷ついたし怒りはあるが、それを抑えて何故お前の子供(ジーク)神々(じぶんたち)より早く黒幕(エニュオ)に辿り着けたのかと視線でヘルメスに問い掛ける。

 

「……ディオニュソスはぺニアの他にデメテルを『エニュオ』の身代わりにするつもりだった。奴の計画ではデメテルは俺達の注意を逸らす囮として最高だったらしいからな」

「ふーん……それで?」

「デメテルを操り人形にするために、奴はつい先日、彼女の眷属を大量に誘拐しようとしたんだ。消耗品の人質は多くても困らないと思ったんだろう」

「屑やな……」

「実行者は奴の唯一の手駒である仮面の怪人(エイン)……フィルヴィス・シャリアだ。それを偶然ペルセフォネ達と一緒にいたジークが逆に捕獲した。希釈しないと腹上死するくらい効果の高い媚薬の原液を使ってな。Lv.8並の【ステイタス】だったそうだけど、空気に触れるだけで絶頂しまくってたから楽だったって」

「……?」

 

 ロキは自分の耳がおかしくなったのではないかと思った。都市崩壊の計画を事前に阻止したにしてはふざけているような内容が聞こえた。胡乱げな眼差しになったロキを無視してヘルメスは話を続ける。

 

怪人(クリーチャー)の生命力のおかげで気絶で済んだフィルヴィスちゃんをジークは『セックスしないと出られない部屋』に連れ込んだ……レフィーヤちゃん同伴で。ジーク曰く、『「好感度測定器(ラブスカウター)」でフィルヴィスのレフィーヤに対する好感度を調べたらマジでヤバい。性的に襲いそうなくらい高かった。このままだと百合(レズ)を超えてアレが生えて――ふたなりエルフ――うっ、頭が……』だそうだ」

「おい待てやコラ」

 

 ロキを無視してヘルメスは舌を回す。

 

「で、レフィーヤちゃんに依存したフィルヴィスちゃんを取り込むために『賢者の石』と『ナンニデーモ菊』を使って怪人(クリーチャー)化した身体を治療したんだって。おかげで『エニュオ』の正体とか神を酔わせる『神酒』とか『人造迷宮(クノッソス)』の『鍵』とか都市を滅ぼすための『精霊の六円環』とか『ニーズホッグ』とかについて教えてもらって――」

「よぅしいっぺん黙れ」

「ぐふぅ!?」

 

 決して目を合わせようとせずに話し続けたヘルメスの鳩尾にロキの右拳が突き刺さる。その細腕にどんな力があるのか、腰の入ったいい一撃を喰らって崩れ落ちそうになる男神の胸倉を掴んで持ち上げる。

 

「卑猥な部分については後で本人(ジーク)に問い詰めちゃる! でもええ加減突っ込ませえや! 『賢者の石』と『ナンニデーモ菊』とかいう馬鹿丸出しの名前のブツは何や? 神を酔わせる『神酒』は? 『人造迷宮(クノッソス)』と『鍵』とやらは? 一から全部説明せえ!」

「お、俺もよく知らないんだ。眷属を守ったお礼にデメテルが本物の『賢者の石』のレシピをくれたってことくらいしか。他のは全く知らない!」

 

 ――デメテルがとある『愚者』を『「賢者の石」のレシピくれなきゃ畑の肥料にしちゃうぞ』と脅して手に入れたものをそのままジークに渡したのだが、そのことは誰も知らない。ついでに『賢者の石』の材料採取のために『オリンピア』へ行き、不器用過ぎた英雄の憎悪を『それ、俺に関係ある?』と切り捨てた挙句、『せくすぃーであだるちーな美女に生まれ変わって出直せ』というセリフと一緒にぶちのめして『賢者の石』の被検体にしたことは『オリンピア』の住人以外知らない。

 

「もうええ、じゃあディオニュソスの糞野郎は何処におる!? 流石にそれくらいは把握しとるやろ!」

「そ、それなら奥の部屋に――」

 

 ヘルメスを放り出して目的の扉まで進む。ヘルメスの潰れたカエルのような呻き声を耳にしながら開いた扉の先でロキが目にしたのは――。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「――首輪とリードで犬小屋に繋がれて上半身を亀甲縛りにされて、『アハハ、犬のウンコ~』ってアメリカンに笑う、頭がパッパラパーになったディオニュソスやった……」

「「「……」」」

 

【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)、『黄昏の館』にあるフィンの執務室で語られた内容に【ロキ・ファミリア】の三首領は絶句していた。行儀悪く机に尻を乗せているロキには彼等の気持ちが痛いほど理解できた。もう黒幕が捕まっていて、更に無残なことになっていると知れば誰だってこうなる。神だってそうなる。

 

「ついでに結構怪我しとったんやけど……なんでもナンパした時にディオニュソスくらい爽やかでカッコよくなってから出直せと言われたことがあったらしい。それにディオニュソスの眷属は可愛い子が多かったやろ? その鬱憤を晴らすためにボコったそうや」

「……ロキ。これを知ったのはいつだい?」

「ドチビとアポロンの『戦争遊戯(ウォーゲーム)』が始まる前」

「もう全部ジークに任せたら解決するよね? 僕は帰らせてもらおう」

「正気に戻れ、フィン。既にここが帰るべき場所じゃ」

 

 疲れ切った笑みを浮かべて部屋から出て行こうとするフィンの頭を叩いてガレスが止める。ちなみに『戦争遊戯(ウォーゲーム)』は【ヘスティア・ファミリア】の勝利で終わり、一ヶ月でLv.3になったルーキーの知らせが都市を賑わせている。

 

「何故これほど重要なことを黙っていた?」

「『教えたら忙しくなって娼館に行く暇もなくなるし、戦争遊戯(ウォーゲーム)もなくなって【リトル・ルーキー】がホモに凌辱されるかもしれない機会(チャンス)をみすみす逃すことになるから』……がジークの言い分や」

「ほう。奴は何処にいる?」

「夜になったら娼館に行くらしいで。今の内に行っとかんと娼館が消滅しそうとかなんとか」

 

 リヴェリアの姿が消えた。第一級冒険者でも見逃してしまう速さだった。最近リヴェリアの【ステイタス】の伸びヤバいもんなー……と、ロキは遠い目をした。

 

「……あー、とにかく近い内に『人造迷宮(クノッソス)』に攻め込むから準備しといてくれ」

「わかった。ところでジークも参加するのかい?」

「参加せんって。なんでも誘ってるとしか思えない恰好の赤髪の怪人(クリーチャー)がジークのトラウマを刺激する薬を使っとるらしい」

 

 何故か名前も知らないエルフが脳裏に浮かび、フィンにサムズアップしてきた。頭を振って追い出す。

 

「代わりに『人造迷宮(クノッソス)』を難攻不落たらしめている最硬金属(オリハルコン)の『扉』の『鍵』と、『不治』の呪道具(カースウェポン)の解呪薬を量産しまくっとる。『鍵』は一つ製作するのに普通なら十日以上かかるみたいやけど、もう五個はできとった」

「……」

「ちなみにジーク一人なら『鍵』も解呪薬も必要ないらしい。扉は『賢者の石』を完成させたことが偉業と認められてLv.9になった【ステイタス】による力技で、呪道具(カースウェポン)についてはそもそも『呪詛(カース)』が効かんのやって」

「代替案を出せとるなら助かるが……肝心な時に役立たずになるのう、あ奴は」

 

 フィンもガレスもLv.9という単語に突っ込まなかった。どちらも情報量の多さに『遠征』を行った時以上に消耗していた。というかフィンに至っては現実逃避を始めていた。

 

 そうこうしている間に時間は過ぎていき、『明日の僕達が頑張ってくれる』というヤケクソ気味の結論を出して解散となった。

 




 男にはどこまでも厳しい主人公。エピメなんとかさんに毛程も同情しない。

 ガチモンの『賢者の石』を作ればLv.は上がる気がする。

 セックスしなければ出られない部屋で何があったかはここでは語らない。

 ディオニュソスは『ユージン島』のキノコの胞子を吸ってしまったようだ。

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