才能の権化が才能を無駄遣いしていることを嘆くのは間違っているだろうか 作:柔らかいもち
正直、どっちかに圧倒的に偏ると思っていたのですが、意外と票はばらけています。
なので、R18だけを書いたものと通常版に分けようと思います。通常版もギリギリを狙っていくつもりなのでよろしくお願いします。
ジーク・グレイマンは幼少の頃から自身が天才であると疑っていなかった。第三者の視点から見れば天才であるということ自体は間違っていないが、本当に天才なのか疑いたくなる部分があった。
まぁ、何が言いたいのかというと、ジークは天才であるが同時にそれを帳消しにするくらいスケベだった。
『いいかジーク? 男はなー、金属の剣の腕と下半身の剣の腕を磨けば勝ち組になれる』
そもそも父親がこれである。二歳になったばかりの息子にとんでもないことを抜かし、ジークはそのセリフをしっかり記憶した。『私のことを弄んでたのね!?』『騙したなぁ!』『裏切り者っ!』と罵詈雑言と共に刺されまくっていたこともよく覚えてる。
三歳の時、父親がべらぼうに強い『黒竜』とかいうモンスターに殺されたと聞いて思ったのは、
(遂に刺されて死んだか? それとも腹上死? あるいはおっかねぇ女の尻に敷かれて帰れなくなったとか? だって女にだらしがないクソ野郎だったし。人妻に何回も手を出して修羅場になりまくってたし。数え切れないほど殺されかけたり死にかけたりしてもゴキブリみたいなしぶとさで生きてたし)
真っ先に考えるのが女性トラブル。悲しみや寂しさは正直言って感じなかった。親をなくした三歳児の思考じゃない。
と、こんな感じで生きてきたが、不幸な幼少期を過ごすことはなかった。天才の所以を存分に発揮し、衣食住に一切困ることなく生活していた。
問題なのは大きくなるにつれてスケベの側面が仕事を始めてしまったことだ。
幼少の頃に吹き込まれた『手に持つ剣と下半身の剣を鍛えたら勝ち組』というセリフのしぶとさは凄まじく、少年の中にしっかりと根を張り、『モテたい』『エッチなことしたい』『ハーレム作る』といった欲望を実らせ、立派なスケベ小僧に成長させてしまった。
大人になったジークは誇り高い相手を屈服させるのが好きになっていた。彼の中にあった強い相手ほど乗り越えたくなる冒険者の性が歪んでしまった結果でもある。性根が腐ったともいう。
しかも面倒な歪み方をしていた。まず対象は女性限定。そして清く正しく美しい相手ほど興奮するのである。酒場のエルフや治療院の聖女など超好みである。男性やクズだったら痛めつけたり屈服させるのに微塵も抵抗がないどころか、積極的に踏み躙りに行く。しかし、穢れを知らない女性だと快楽で堕とす時の背徳感がたまらないらしい。クソ野郎である。
誰もジークのスケベ心の肥大化を阻止することはできず、それどころかエロ爺による『くっ殺最高』の後押しまでされたせいで、彼は欲望丸出しの妄想を圧倒的な才能で実現させてしまった。
その結果が『くっ殺の館(命名:とある爺)』である。
館の設備にはとても力が入っている。
集客は有り余る才能を無駄遣いしまくって行った。つまり優れた
都市中を隅から隅まで駆けずり回り、目に留まった女性を調査。神に近い直感と偏見で客になるかどうかを判断し、偶然耳にしてしまう塩梅の音声で店の情報を流す。
客が来たらどのような趣旨の店なのかを理解していることの確認を取り、客だったらサービスを受けてもらう。そこで満足してもらってからが本番だった。
お店で金払って「くっ、殺せ」? そんなものはくっ殺とは言わない。娼館にでも行って金を積んで頼めばいい。理不尽に誘拐され、抵抗できないと思い知った気高い女性が獣欲の餌食になるくらいならと口にするのがくっ殺なのだ。それを再現できないでなにが『くっ殺の館』か!
なのでジークは頑張った。
またの利用を望んだ女性に『神秘』と『魔導』のレアアビリティを使って作成した複製不可能な
――特定の感情に反応する
魔道具の目的は目印だ。装着して色が変化していれば店の利用を望んでいるとわかるので、唐突な拉致監禁の演出をしても問題ないのだ。そしてどの程度変色したかでサービスをする。これがお金を払って行われている、などという余計な考えはジークの『催眠魔法』で消し去るので完璧だ。
そしてこの店を曖昧な表現で誰かに教えるのはいいが、具体的な内容を伝えるのは禁じている。店のサービスと誤解して無抵抗に強姦されることを防ぐためだ。こちらはジークの『制約魔法』のおかげで破られることはないし、悪用しようとした連中は片っ端から始末している。
使った金は到底回収できない額になっているものの、ここまで頑張ったおかげで経過は順調だ。店に来た客には一個しか
一つ問題があるとすれば……子供が出来ちゃうかもしれない過激コースだけは『催眠魔法』で済ませていることだろう。『「催眠魔法」の使い方間違ってるだろ』『こんなことに利用してる時点で間違っています』と主神と団長に突っ込まれた。ジークはいざ本番になるとびびって何もできないヘタレ童貞だった。だからいっぱい『魔法』が使えるのかもしれない。
♦♦♦
(さーて、今日はどんな人が来てるかな?)
時刻は夜。ジークは日の光が消えて暗闇に包まれた『ダイダロス通り』を走っていた。連れ去られるならここでしょ! というイメージから客には指定した時刻に『ダイダロス通り』にいるよう言ってあるからだ。
(この前は何故かヒキガエルの化物がいたからなー……何も考えずに叩き潰したけど。くっそう、客自身の判断に任せてあるから好みじゃない女も来たりするのがこのシステムの欠点だよな――!?)
と、客に指定した場所を前にしてジークは足を止めた。そこにいたのが信じられない人物達だったからだ。
(な、な、な……【
男ならむしゃぶりつきたくなる麗しいエルフ達。しかし、彼女等は【ロキ・ファミリア】。客かどうか判断するための
(くそぉー、遂にバレたか! ギルドはウラノス様からの依頼で、【ガネーシャ・ファミリア】は生け捕りにして猿轡で『魅了』を封じた『マーメイド』を譲って黙認してもらってたのに、ちくせう! もう俺の楽園は終わり……ん?)
一人静かに絶望していたジークはふと三人の女エルフ達を見た。
護身用の杖や剣、防具をしっかり装備している。腕にあるのはジークお手製の
「………………」
「――」
一瞬でリヴェリア達の背後に回り、首を叩いて意識を奪う。気を失って倒れるエルフ達を抱え上げ、全力で店に向かった。
(超絶美人のハイエルフキタァー!! しかもあの【
彼は欲望に正直だった。
主人公の見た目はエレボスに近いのを想像しています。理由はダンメモ三周年の『抱いてやろうか?』がかっこよかったからです。
主人公の詳しい【ステイタス】を書くつもりはないので、書いとくべきものだけ載せておきます。
『催眠魔法』
一対一で使うとかなりの自由度と頑丈さを誇る。一度で催眠にかける人数が増えると催眠の内容は薄くなりちょっとの刺激で催眠から覚めてしまうが、催眠をかける数に制限はないので一人ずつ使えば問題ない。
『制約魔法』
使い方としては『十秒間二倍の速さで動けるけど、その後十秒間半分の速さになる』と一時的なパワーアップをしたり、『お互いに「魔法」や「スキル」を使用禁止』などと、公平さや消費精神力で内容を決める。ただし、相手が納得するなら理不尽な条件を付けることもできる。
最大契約対象は使用者と一人。二人を対象に結べる契約は一つ。自分だけでも一つ。契約の数に制限はない。代わりに結んだ数だけ最大精神力量が減る。
『発展アビリティ』Lv.7現在。【ランクアップ】はしてもらってない。
『狩人』『神秘』『魔導』『耐異常』『精癒』『調合』
さらりと魔道具作成者としても才能を発揮する主人公。攻める時は強いが、攻められるとクソ雑魚になりそうな主人公。