〜 畑に囲まれたとあるところ 〜
自炊とは素晴らしいものである。
特に命であるお米を炊いた瞬間だ。
ピー、ピー、と愉快な音を鳴らしてほっかほかの恵みを俺たちに日本人に教えてくれる。
とある熱い妖精も言っていた。
お米食べろぉ!!
蓋を開けるたびに甘い熱気が鼻を擽り、俺たちに生きてると思わせてくれる瞬間が大好きだ。
その中で炊飯器は選ぶことが大事だ。
炊飯器が悪ければ、良いお米も台無しになる。
そのため美味しいお米を食べるならやはり良い炊飯器で炊きたいものだ。
そうすればお米も喜び、ピカピカな白米を俺たちに姿を見せてくれる。
だが炊飯器は機械だ。
いずれ壊れてしまう。
そして最近お気に入りの炊飯器が壊れてしまった。
俺はお米とともにこの炊飯器の命日なんだと悲しんだ。
けれど泣いてはいられない。
気持ちを入れ替えて新たなる炊飯器を手に入れた。
家庭用品とは日に日にバージョンアップを繰り返す。それは機械も同じ。だから必然的に昔よりも性能が上がり、美味しいお米はさらに美味しく炊きあがる。それを知ってる俺はこれまで頑張ってくれた炊飯器に感謝して、新たなる炊飯器を手に入れた。
コンセントを差し込み、スイッチを押す。
ああ、これだ…
ピカピカのツルツルの米釜。
これに天然水を注いで、実家で育てている最高のお米を入れて炊けば… ッッ!
ダメだ! 待ちきれない! 早く炊こう!
炊飯器の設定をいじる。
すごい!すごいぞ!
大きなモニター付きだ!
これで細かい設定が可能だ!
その上、炊きあがりの好みも設定できる!
大喜びする自分の顔がモニターに映り、その顔を見て自分は相変わらずお米が大好きなことを今一度教えてくれる。
それから炊飯器に名前を登録して、細かな設定を行ったあと、実家のお米と天然水を持ってこようと台所に向かう。
少し目を離した………その時だ。
炊飯器から何か"異音"が聞こえた。
なんだ?
心配になりながら俺はお米と天然水の持ち込みを中断して、モニターに近づく。
そして
「……へ?」
『え……?』
現れたのは……少女?
大人しそうな女の子がこちらを見ている。
「……」
『あ、えっと……』
無言空間は古時計のカチカチ音だけが響く。
モニターの中にいる少女はオロオロと。
少し間を置いて、俺はとある回答に至った。
炊飯器のモニターに見知らぬナビがいる。
だが設定を終えたタイミングでだ。
それってつまり…
「ああ、なるほど!この炊飯器には美少女がナビしてくれるのか!いやー、家電用品も随分と進んだなぁ!」
『え?…え?………ええ?』
量産された無機質なナビよりも、しっかりデフォルメされたナビがいて、しかも表情をコロコロさせている。
最先端技術の炊飯器ってすげー!
『いや、あの………えっと??』
まだまだ初期設定でヨチヨチ歩きなのか困惑している。つまり成長型のナビってことか?
なるほど!
それはありがたい!
何せこれからもっとお米の価値を追求できるからな!!
すげー炊飯器を買ってしまった!!
…
…
…
そして俺は全く知らない。
彼女が世界規模の軍事用ナビであることを。
頭の中が炊けている俺がこの時知るわけもなかった。
♢
私は軍事の中で作られたナビ。
Dr.ワイリーの手によって誕生する。
それからただのナビではない。
全ての電子機器を制御する力を持っている。
振りかざせば世界を震わせることも容易い。
とても恐ろしい力を持っている。
けれど私は従うだけの存在。
そう思っている。
これまでそうだった。
でも疑問を抱く。
それは私として認識する故。
なぜ__私には意思があるの?
これまで薄かった自我はこの役目に対して疑問を持つほどになった。いつしか「何故?」と己の存在を問うほどになっていた。考えは次々と生まれてしまう。だって意思があるから。
そんな中でも私は次々とこの体に与えられた役割を果たす。
しなしアメロッパ軍の軍事機械を操作して、ハッキング作業を行っていた時に感じる。
何かがチクリと傷んだ。
ウイルスの仕業?
いや、そんな物は近くにいない。
なら、これは…………心?
「こんなことに意味があるとは思えない…」
初めて心の底から言えただろう言葉。
自分の手を見て、自分の問いを考え、そして私はここから逃げ出した。
私を生み出したDr.ワイリーすらも見つけれないところにまで…
どこか、どこか遠くに。
これまでとは関係ない世界に。
…
…
…
私は電脳世界を彷徨った。
未知なる場所に足をつける。
その度に襲いかかるウィルスたち。
私はそれを打ち払う力がある。
打ち払うどころか"兄"と同じ力で全てを消し去ってしまうほどだ。
手を伸ばせば、簡単に消せる生命達。
いや、ウィルスを生命とは言わないか。
けれど、簡単に消し去ってしまうこの力も、だんだんと恐れに繋がる。
破壊を可能とした体。
消失へと陥れる力。
「なんで…」
なんで…
作られたんだろう…
なんで…
心があるんだろう…
なんで…
彷徨ってんだろう…
なんで…
わたしなんかにこんな悲しい力が備わった?
眩しいはずのネット世界。
誰もが生活の一部として営む世界。
でも一人寂しく怯える私はそんな世界で何も育めない虚無の中で放浪するみたいだ。
そして、無意識に、無意識に、当てもなく何処かをさまよい、意味もなく何処の中へと勝手に居座り、ウイルスが現れるたびにその場から離れて争いを遠ざける。
またこうして時間を費やして自問を繰り返す。
私は…
わたしは…
ワタシと、言うのは……
なんのために生きてるのか…?
「炊飯器のモニターオン!!」
声が聞こえた………え?声??
__ズズズ!
「!?」
外部からのプラグインの反応。
まさか無意識にフラついてしまったこの場所は先ほど聞こえた、声の主が扱う主電源のアクセスポイントなのか?
ああ、まずい、油断してしまった。
電力と共に吸われる。
うっかりにも程がある。
「っ…ぁ、ダメ、力を、使っては…ダメ!」
何かに吸い込まれているこの状態で力を使って抵抗すると支障を起こす可能性がある。
私は軍事機械を操るほどの莫大な力を保有するナビだ。
だから一般家庭の機械にその力を使うなんて危険極まりない。
もしそんなことして爆発なんて起こしてしまったのなら大問題だ。
破壊でしか存在価値を生み出せない私なんかでは責任取りきれない。
「っ」
されるがままに私は繋がれた場所に吸い込まれてしまい、そして激しい波は落ち着いた。
眼を開ければどこかの空間に流れ込んだ。
__ブォン!!
画面が移る。
外が見える。
そして…
とある人間の顔が私を覗き込んだ。
「……」
「ぁ……」
画面に向かって真顔で見つめる人間。
そしてこの上なく驚いた私の顔。
声を発する余裕もなく、しばらくの静寂がこの空間に流れる。
するとこちらのモニターを眺めていた人間は手をポンと当てて何かに納得した。
「ああ、なるほど!この最新の炊飯器には美少女のナビがナビゲートしてくれる機能が付いているのか!最近の炊飯器はすごいな!」
「……ふぇ??」
こうして、世界を変えてしまう程の力を持つ軍事用ナビが、ごく一般家庭で使われる炊飯器のナビに変わった瞬間だった。
つづく
これ読んで皆もアイリスしろ(動詞)
ではまた
どれ好き?
-
ロックマンエグゼ1
-
ロックマンエグゼ2
-
ロックマンエグゼ3
-
ロックマンエグゼ4
-
ロックマンエグゼ5
-
ロックマンエグゼ6