慟哭   作:ネオン(ハーメルン垢)

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勘違いトレーナー君 ゴールドシップ編

凛と澄んだ蒼穹。

その帳は蒼く、どこまでも蒼く。

それはまるで、世に蔓延る憂いまでも塗り潰すかのように。

 

芝を靡かせて吹き抜ける白南風。

背中を押されて、少し前のめりに一歩を踏み出す。

 

早朝とは打って変わって、よく風の通る爽晴。

さんざめく木々の囀りが、これから始まる長い長い一日に向けて鼓舞してくれているみたいで。

天の寵愛を一身に受けて、弾む芝を踏みしめる俺。

ああ、今日も良いスタートを切れそうです。

 

 

 

 

 

 

 

このメールが無ければ、の話ですが。

 

 

 

 

 

 

 

突如としてトレーニング終わりにスマートフォンに送信された悪魔の宣告。

なんとまあ送り主は勤務先のトレセン学園と来ましたか。

秋川理事長、俺貴女と関わって碌な事が起こった試しが無いのですがそこの所如何でしょうか。

たづなさん、貴女もですよ。

 

ある程度簡潔に纏められたメールの内容は至極単純。

どうやらトレセン校舎内で予期せぬトラブルが発生したとの事。

大方大規模改修工事の件でしょう。

学園に勤務している以上、他人事とは言い切れない所です。

 

学園内の生徒に危害が及ぶ万一を懸念した秋川理事長は、全生徒に一律で各々のトレーナーと会い、トレーナー室にて翌日まで待機をする旨の達しを示したそうです。

無論そのメールの対象は俺達トレーナーも然り。

 

そしてメールの最後にはこんなお言葉が。

 

 

 

《近年の学園生徒とトレーナー方の関係は良好であるとお見受けします。

一方、私達は残念な事に関係の悪化を原因に契約が解消されてしまった件も一定数把握しております。

この機会に親睦を深められては如何でしょうか。》

 

 

 

いやあの。

そういう気遣い要らないんですよ。

貴女方は今しがた担当ウマ娘によって理性を大根おろしにかけられた俺に一日中彼女と一つ屋根の下で暮らせと申しますか。

 

シンボリルドルフさんと?

一日中??

ひとつ屋根の下???

 

うん、無理無理。

むーり。

いや、別に嫌って訳じゃないんですけどね。

如何せんタイミングが酷い。

 

ハッキリ言って、今日のシンボリルドルフさんはおかしいです。

いきなり抱きついてきますし、それだけじゃ飽き足らず抱き締めてほしいとか言いますし。

終いには凶器(上目遣い)を何の躊躇いも無しに突き付けてくる始末。

これでは暴君もいい所です。

 

あのですね、俺は聖人君子じゃないんですよ。

我慢強さに自信のある俺ですが、あんなのを一日中続けられたら流石の俺でもオチるのは火を見るより明らかでして。

 

人形の様に整った顔付き。

威風堂々を絵に書いた様な風格。

そこから時々はみ出す年相応の女の子。

それらが織り成すギャップがまあ効くんですよこれが。

 

 

 

天「……はあぁぁ~~~……」

 

 

 

神様の嫌がらせとも思えるこの状況に、深い溜め息が肺から押し出される。

 

彼女の幸せを願う身として、彼女の幸せを摘み取るような真似は喩え何があってもしたくありません。

彼女の幸せの為だけに、残された人生を捧げてきたのです。

それはトレーナーとして、また一人の人間として心に決めた最後の覚悟。

……もう二度と、失わないと決めましたから。

 

だから、彼女との間で過ちを犯す事……それは即ち、俺の生きる意味を失う事に等しいのです。

どんな結末になろうと、いずれ俺が終わる(・・・)時は必ずやってくる。

ならば、せめてたった一人でいいから。

たった一人の女性を、幸せにしてから終わりたい。

 

 

 

天「……とか言ってたって、行動しなきゃ何も変わらないんですよね」

 

 

 

そう、薄情な三女神様への愚痴をいくら零した所で、この窮地から脱する事が出来る訳でもなければ自ずと状況が良くなる訳でもありません。

口より先に行動。

結局はそれに尽きるのです。

 

となると、気になってくるのは今朝のシンボリルドルフさんの奇行の動機。

あれは普段の彼女からは絶対に考えられない行動でした。

 

思い返せば2年程前から彼女の身体的距離は近づいていたような気がします。

ボディタッチの回数も年を追うごとに増えていきましたし、最近では妙にじっとりと粘度を含んだ視線で見つめられる事も。

今朝の事件はこれらの延長線上の物と考えて良いのかも知れませんね。

 

しかし、それは今朝の奇行の理由にはなり得ません。

そもそも何故最近の彼女がこんなにぴったりくっついてくるのかがまるで分からないのです。

 

 

 

──ウマ娘の一挙一動を、何らかのメッセージとして受け取れ。

言い難い事も全て共有してこそ、苦楽を共にする人バ一体ってもんだ──

 

 

 

俺が新人だった頃に宿原さんが語った教えが、脳裡を過る。

 

……シンボリルドルフさんがああなった原因。

もしかするとそこには、シンボリルドルフさんの伝えるに伝えられない思いが隠されているのかも知れません。

トレーナー志望だった時期にいずれ役立つ日が来ると思い学んでいた心理学。

今日がその出番になるとは。

やはり持つべきものは知識ですね。

 

まず、ウマ娘における近しい者へのボディタッチというのは、充実感・承認欲求の現れ、又は不安感から来る物。

これは特にウマ娘に限った事ではありません。

幼子が母にしがみつく心理と根底は相違無いのです。

 

そして何かを訴える様に人を見つめるというのは、とある感情を伝えたいという思いはあるが、伝え辛いという事。

所謂『察しろ』というやつです。

 

……前々から俺は人から『鈍感』との評価を受け取る事が多々ありました。

人の気持ちを察する事は少し、いやかなり苦手です。

そんなだから友達が碌に居ないのですが。

 

あまりに乏しいコミュニケーション能力も相俟って発生した今回の事件。

その裏に隠されたシンボリルドルフさんの知られざる感情。

 

 

 

天「………まさか」

 

 

 

そして俺は気付いてしまいました。

ある一つの仮定の元に考察を図ると、全ての辻褄が合ったのです。

 

俺がトレーナーとして頼りないが為に、彼女に不安を抱えさせてしまっていたのではないのでしょうか。

 

同じ夢を見たいなどと謳っておきながら、俺は彼女一人に重圧を背負わせていた事。

彼女のSOSに気付く事もなく、知らず知らずの内に追い詰めてしまっていた事。

夢の片棒を担ぐなんていうのは、俺の自己満足に過ぎなかった事。

 

期待。

それは時に、重圧となって鉛の様に肩に重くのしかかる。

名だたる猛者の頂に君臨せし彼女においては尚更の事。

 

アウグストゥスやルイは、一人でその絶対的な主権国家を作り上げたか。

答えは、否。

側近や玉座、市民なくしてどうして皇帝など成り立とうか。

信頼出来る臣下や、背中を預けられる仲間と共に力を合わせて築き上げた暁に、名も轟く『皇帝』を初めて名乗る事が出来る。

 

……俺は、どうでしょう。

玉座となって皇帝の背を支えるでもなく、側近となって皇帝を護るでもなく。

彼女の威に甘んじて信頼を裏切り続けた詐欺師じゃないですか。

 

片脚を失って歩む覇道はどれだけ辛く、苦しく、孤独だった事でしょうか。

彼女の片脚になんてなれた覚えはありませんが。

その思いに気付かずして、何がトレーナーだ。

伸ばされた手を取らずして、何がトレーナーだ。

 

 

 

天「……くそっ……!!」

 

 

 

気付くのが、あまりに遅すぎた。

 

悔しさ、憤り、無力感。

幾重にも重なった感情を抑えきれず、コンクリートの壁に力の限り拳を打ち付ける。

中途半端に温かい壁に赤色が滲むのが分かった。

いっその事こうしてこの薄汚い血を全て抜き取ってやろうか。

 

自分がどうしようもない屑である事を実感する。

一周回って、乾いた笑みが溢れる程に。

一周回らなくても、誰もが俺を笑うでしょう。

皇帝の足手まとい、と。

この様で、よくもトレーナーなんて名乗れた物です。

増上慢も甚だしい。

 

太陽から目を背ける様に俯くと、皮肉にも健気に煌めくトレーナーとしての(バッヂ)が目に入った。

 

 

 

天「………なんで俺、こんな物着けてるんでしょう」

 

 

 

こんな物必要無い。

だって俺は、もう彼女のトレーナーを名乗らないから。

……いや、もう名乗れない。

 

後悔はない。

いや、この三年間の事を評するのなら後悔しか無かったけれど。

あくまでこの決断についての話です。

 

乱雑にバッヂに手を掛け、僅かに巣食う未練ごと剥ぎ取ろうとした。

しかし留め具の針の先が繊維に引っかかって、しがみつく様に離れない。

 

 

 

天「こんな物……こんな物……!」

 

 

 

何故。

どうして邪魔をするのですか。

これ以上俺に未練を作らせないで下さい。

これ以上彼女を苦しめないであげて下さい。

元々彼女を送り出した後は自らの手で終わらせるつもりだったのです。

それが少し早まっただけじゃないですか。

何を今更臆する事がありましょうか。

 

 

 

天「外れろ……外れろっ……!!

外れ───」

 

「……良いのか」

 

 

天「……っ」

 

 

 

空気を切り裂く様な。

それでいて、ふわりと浮かぶ様な声が手を止めた。

 

 

 

天「……宿原さん」

 

 

宿「……そこから先は、戻れなくなるぞ」

 

 

 

猫を彷彿とさせる、切れ長の眼。

その瞳に映る心理を見透かす事は出来ない。

 

 

 

天「……止めないで下さい。

自分の罪を覚えた今、これ以上この学園に居るつもりはありません。

俺なりの……けじめです」

 

 

宿「……お前らに何があったかは知らねえけどな。

俺、ついさっきシンボリルドルフとすれ違ったんだわ。

あいつ、どんな顔してたと思う」

 

 

 

ああ、もう止めて下さい。

これ以上彼女の苦しむ姿を俺に見せないで下さい。

これ以上俺を罪に晒さないで下さい。

 

罰なら幾らだって受けましょう。

復讐なら甘んじて受けましょう。

 

だから、もうゆるしてください。

 

 

 

天「……分かりきった事を聞かないで下さい」

 

 

宿「……そうか。

じゃあ、ニッコニコで鼻唄歌いながら歩いてたっつーのも知ってるんだな?」

 

 

天「……はぇ?」

 

 

 

しかし彼の口から告げられた事実は、あまりに信じ難い物でした。

 

 

 

宿「何を思い詰めてんのかは知らねえけどよ。

どうせお前の事だ。

シンボリルドルフ一人に重圧を背負わせてたとか思ってたんだろ」

 

 

天「な、何故それを」

 

 

宿「顔見りゃ分かるさ。

伊達にお前の先輩やってねえよ」

 

 

 

まるで鏡に映したかの様にいとも簡単に見透かされた事情も然る事乍ら、つらつらと事実が述べられていく。

 

 

 

宿「そりゃあ世間一般から見ればお前は頼りない部類に入るだろうさ。

シンボリルドルフに降りかかる重圧を半分背負えるだけの器なんてお前には無い」

 

 

宿「だがな。

同じ夢を掲げ、トレーナー以前に人としてあいつの幸せを願ってやれる……。

そいつは誰にも真似出来ない、お前だけの覚悟だ。

お前の存在が、お前の想いが、どれだけあいつにとって支えになっている事か。

少なくとも、俺には鼻唄を歌うあいつが重圧に苦しんでいる様には見えなかったな。

寧ろあいつ、重圧を楽しんでやがるように感じたぜ?」

 

 

 

その言葉は深く、心の深くまですっと入り込む。

 

俺の想いが、彼女の支えになっている。

急にそんな事を言われたって、中々実感は湧きません。

往々にして、一度植付いた自己嫌悪というのは中々晴れない物です。

 

 

 

天「……俺の、覚悟」

 

 

宿「ああ。

何も背負ってやらなくて良いさ。

来たるその時にあいつが羽ばたけるように、疲れた時に羽を休められるように、止まり木になってやれば良いんだ。

それだけの覚悟を持ったお前だから出来る……お前にしか出来ない、重役だぜ」

 

 

 

けれども、思えば俺は彼女の重圧を背負おうと躍起になっていて、いつの間にか俺の決めた覚悟を忘れていたのかも知れません。

……大切な物が、見えていませんでした。

 

世間一般の視点なんて要らない。

俺達は、俺達のやり方で。

俺は皇帝のトレーナーじゃない、シンボリルドルフさんのトレーナーなんですから。

 

 

 

天「……有難うございます。

俺は……もしかしたら急いでいたのかも知れませんね。

でも、貴方のお陰で気づけました。

俺、もう一度シンボリルドルフさんと向き合ってみようと思います」

 

 

宿「おうおう。

気づけたんなら良かったぜ」

 

 

 

八重歯を輝かせて大きく笑う宿原さん。

またこの方に助けられてしまいました。

やはり雲の上の存在であることを改めて実感する。

 

 

 

宿「……しっかしアレだなー……。

お前の鈍感さにはいつも驚かされると言うか。

普通あいつの顔見たら上機嫌かそうじゃないかくらい分かるだろうよ」

 

 

 

うぐっ。

耳の痛い事を。

 

 

 

天「そればかりは……俺だって努力はしてるんです。

でもやっぱりコミュニケーションは難しい物でして。

俺、時々彼女に嫌われていないか不安になるんです」

 

 

宿「おいおいマジかよ。

まあ……悪いようには思われてないと思うぜ。

寧ろ……その……何て言うんだろ……」

 

 

 

眼を逸らしながら急に言い淀む宿原さん。

あの、そのタイミングで止められると色々不安なのですが。

何か言って下さい、お願いします。

 

 

 

天「……?」

 

 

宿「……おっと、ここから先は俺の口からは言えねえな。

野暮は好きじゃないんでね。

いつか本人の口から聞けると良いな」

 

 

宿「ただ一つ言えるのは、あいつはプレッシャーを感じている訳じゃない。

その一方で、お前に言い難い感情を抱いているのもまた事実だ。

……早く気付いてやれよ、この鈍感がよ」

 

 

 

心做しかにやついた宿原さんがそう言う。

あれ、俺もしかしてホントに嫌われてる?

 

 

 

宿「……ま、そういうこった。

あいつの感情について気になるなら数少ないお前の友達 ・・に聞いてみろよ。

多分俺より詳しいんじゃねえかな。

それじゃ、良い報告待ってるぜ」

 

 

天「ど、どうも」

 

 

 

そう言って彼は、俺の心の中にハテナを植え付けたまま通路を歩いていってしまいました。

きっと彼も、エアグルーヴさんとトレーナー室で合流する所だったのでしょう。

 

 

 

天「……うーん」

 

 

 

俺の中の誤解は晴れました。

知らず知らずの内に彼女を傷つけていた訳ではなかった事に、安堵を覚える。

 

しかし、何処か煮え切らない口振りから生まれたもう一つの疑問。

 

シンボリルドルフさんの特別な感情って何の事でしょう。

考えられるのは、俺を生理的に毛嫌いしているとか。

思い返せば、最近のあの粘度の高い視線は睨んでいるようにも見えない事はありませんでした。

 

……こういうのって、本人に聞くのが一番でしょうか。

でも、いきなり『俺の事嫌いですか』なんて聞くのもアレじゃないですか。

もうちょっと遠回しに訊ねたい所ですが、『特別な感情を抱いていると聞いたのですが教えて頂けませんか』とは口が裂けても聞けませんし。

寧ろそれが原因で契約解除を突き付けられかねません。

コミュニケーション能力が無いことは自分でも分かっていましたが、ここまで足を引っ張るとは。

 

仕方ありません、彼女達(・・・)を頼りますか。

俺が新人の頃から何かと絡んできたゴールドシップさんとアグネスタキオンさんです。

学園内では問題児として恐れられたり避けられたりしている彼女達ですが、根は優しい方々です。

今もよく悩みを話し合う仲。

今日も相談に乗って頂けると嬉しいのですが……。

 

……悩んでいる暇はありませんね。

こういう時こそ、冷静にかつ迅速に。

 

手に取ったスマホで通話アプリを立ち上げ、そこから彼女の名前を探す。

 

 

 

天「えーと……あ、ゴールドシップさん発見」

 

 

 

超が付く程の破天荒さや、予測不能な言動と謎テンションで周囲から恐れられているウマ娘。

それがゴールドシップさんです。

新人の頃、背後からいきなり麻袋を被せられてそのまま三大洋を20分で回るという衝撃的な出会いを果たしました。

結局アレ、どうやって移動してたのでしょう。

 

それからはちょくちょくゴルゴル星に招待されたりエデン探しの旅に誘われたりしています。

勿論全て断っていますが。

もう麻袋ツアーは懲り懲りです。

 

それはそうとゴールドシップさん。

くさび型文字でやり取りしようとするの止めましょうか。

トークルームがくさび型文字で埋め尽くされているのですが。

俺がたまたま考古学の教授資格を持っていたから良かったものの、してなかったら会話成立していませんでしたよ。

 

そんな彼女のアカウント名は『ოქროს გემი』。

『黄金の船』を意味するジョージア語です。

あの、ゴールドシップさん。

せめて統一しましょう。

 

アカウント名の下にある通話ボタンをタップし、流れ始めた電子音に耳を傾ける。

 

 

 

(以後 ゴールドシップ···ゴ)

 

 

 

『PRR…』

 

 

ピッ

 

 

ゴ『おう、ゴルシちゃんだぜ!

オメーから連絡なんて珍しい事もあるもんだな。

何だ、漸くエデン行く気になったか?』

 

 

天「あ、いえ、そういうのじゃなくて」

 

 

ゴ『またまたー遠慮すんなってー!

抵抗しなけりゃ痛くねーよ』

 

 

 

怖い怖い。

どうして痛い事が前提なのでしょう。

先程のシンボリルドルフさんの件もあって絶賛疑心暗鬼中です。

 

 

 

天「ちょっと……いやかなり困っていまして。

それどころじゃないんです」

 

 

ゴ『おうおうどうしたよ元気無ぇなあ?

ポッ〇ーとプ〇ッツ間違えた時みてーな声してんぞ』

 

 

天「えぇまぁ、その……相談事がありまして」

 

 

ゴ『へえ、相談事かよ!

良いぜ、乗ってやるよ。

一時間12000円だ、ツケで良いぜ』

 

 

 

言ってる事は滅茶苦茶ですが、やっぱりゴールドシップさんは優しい方ですよね。

なんだかんだ言いながら、結局協力してくれるのがゴールドシップさん。

目に余る数々の奇行を彼女から除けば、残るのはただのお人好しなのです。

 

因みに以前にも何度か、育成について相談に乗って頂いた事があります。

その度に高額な請求が申し付けられるので、今の所はラフレシアの種で我慢して頂いているのが現状です。

学園の植栽に植えてやるぜとの事。

俺知ーらないっと。

 

 

 

ゴ『んで、相談事っつーのは?』

 

 

天「……あー、その。

……単刀直入に言います。

 

 

 

 

 

 

 

今朝シンボリルドルフさんに抱きつかれました」

 

 

ゴ『ん゙ふッww』

 

 

天「……あれ、ゴールドシップさん?」

 

 

ゴ『……いや、ごめw

いやーあの会長もなかなかダイタンな手に出たなあww』

 

 

 

笑い事じゃないんですって。

傍から見たら微笑ましい光景でも俺にとっては何気に人生最大級のピンチなんです。

 

 

 

天「……で、その後抱き締めてほしいと言われました」

 

 

ゴ『思ったより強かだなアイツ。

やればできるじゃないの♡』

 

 

 

何処か噛み合わない会話は置いておくとして、早速本題に入りましょうか。

 

 

 

天「思えば最近何かを訴える様な目でじーっと見つめられる事もありましたし、ボディタッチの回数も何だか増えてきた気がするんです」

 

 

ゴ『そりゃオメー、ルドルフがオメーの事すk──』

 

 

天「……俺って」

 

 

天「やっぱり嫌われてるのでしょうか」

 

 

ゴ『……は?』

 

 

天「いや、その……俺、やっぱり嫌われてるのかなーと。

日常生活の中でそう思わせる節も多々ありましたし。

……教えて下さい、ゴールドシップさん。

俺に、何が足りなかったのでしょうか」

 

 

ゴ『仕事のし過ぎで頭でもトチ狂ったか?

いや、前から鈍感だとは思ってたけどよ……』

 

 

天「どんな厳しい言葉でも受け止める覚悟は出来ています。

何なりと言って下さい」

 

 

ゴ『唯一足りねーのは人の気持ちに気付く能力だよ……と言いたい所だがそいつはもうオメーには無駄だな、うん。

んーと、その……アイツがオメーの事どう思ってるかについてオメーは気にする必要無いと思うぜ』

 

 

 

バツが悪そうに言い淀むゴールドシップさん。

宿原さんといいこの人といい、そろそろ包み隠さず教えて欲しい物です。

 

 

 

天「……原因は別にある、と」

 

 

ゴ『んー、ま、そゆこと』

 

 

天「……やっぱり俺、彼女に何かしてしまったのでしょうか」

 

 

ゴ『だ──!!

なんでそう斜に構えるかなぁ!?

ポジティブに生きなきゃ人生楽しくねーだろ?』

 

 

 

俺の人生なんてどうでもいいんですって。

最近のシンボリルドルフさんのバグり始めた距離感の原因を突き止めない事には対策のしようがないのです。

対策を張らずして今のトレーナー室へ向かうという行為は、自殺に等しいでしょう。

 

 

 

天「……兎に角。

ならあの距離感をどうすれば緩和できるのでしょうか。

俺、そろそろ世間の目が痛くなってきたのですが」

 

 

ゴ『世間の目もそうだが、本音はオメー自身が理性の限界なんだろ。

ゴルシちゃんにはお見通しだぜ』

 

 

天「うっ」

 

 

 

……見透かされてしまいました。

そんなに分かりやすかったでしょうか。

全く、大の大人が女子生徒のスキンシップにどぎまぎしているなんて知れたら、面目なんてあったものじゃありません。

 

 

 

天「……あの。

この事は彼女には秘密にしておいて下さいね……」

 

 

ゴ『へっ、わーってるって。

どうせその内耐える必要もなくなるんだしな?』

 

 

天「それって……契約解除って事じゃ……」

 

 

ゴ『ちげーっての。

なんかお前に友達が居ない理由分かった気がするわ』

 

 

 

うぐっ。

 

あのですね。

俺だって友達が全く居ない訳じゃないんですからね。

ほら、トレーナー室で育てているマリモとか。

あの子だって立派なお友達です。

 

 

 

ゴ『……ま、この際受け止めてやるってのも意外とアリなんじゃねーの?

ホラ、柔能制剛とか言うじゃんか』

 

 

天「柔能制剛の意味調べてから言って頂いて」

 

 

ゴ『なんつーか……もうちょっと、こう…アイツの気持ちに気付いてやれよな。

アイツも必死なんだからさ』

 

 

天「……?」

 

 

ゴ『それと、オメーはネガティブすぎ。

オメーは自分が思ってるよりずっと良い奴だぜ』

 

 

天「……ち、ちょっとよく分かりませんが、ありがとうございます」

 

 

ゴ『もう一度言うぞ。

ルドルフがオメーの事をどう思ってるかをよく考えろ。

そしてアイツの気持ちに気付いてやれ』

 

 

天「……貴女何か知ってるんですか」

 

 

ゴ『ん、まぁ知ってるっちゃ知ってるな』

 

 

天「っ。 な、なら教えて下さい。

俺このままだと越えてはいけない一線を越えそうなんです……」

 

 

ゴ『悪ぃ、そいつはアタシの口から言えねーな。

てゆーかあんだけ必死にアピールされたら気付くだろフツー。

ま、アタシはオメー達を応援してるぜ!

主にルドルフの方をな』

 

 

天「ま、まぁ、ありがとうございます……?」

 

 

ゴ『んじゃそーゆー事だ!

ひとつなぎの秘宝でも探しに行きたくなったらまたいつでも連絡くれよな!』

 

 

天「著作権に引っかかるのでやめましょうね」

 

 

ゴ『何でだよー!?』

 

 

 

ピッ

 

 

 

天「………」

 

 

 

……結局何だったのでしょう。

ハッキリとした回答を得る事は出来ませんでした。

 

うーん。

「ルドルフがオメーの事をどう思ってるかをよく考えろ」「アイツの気持ちに気付いてやれ」ですか。

俺はそれが分からなくて聞いたのに。

 

ゴールドシップさんは何が言いたかったのでしょう……?




どうも。

ライアンのもみあげをモフモフしたいネオンです。

この後トレーナー君はタキオンと式間君に電話をかける予定だったのですが、バカ長くなりそうだったので3部に分ける事にしました。

ちなみに、私は実はライス推しなのです。
それはそうとしてルドルフも中々に好きなので書いてみました。

全国のお兄様諸君、こんな駄文読んでる暇があったらライスの小説を読みなさい。
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