不運・悪運 Lv MAX!   作:プリズ魔X

8 / 10
高評価はいわば書き手のやる気を出す燃料なのです。他意はありません()


Lv8 衝撃吸収

翌日、普段はかなり早めに教室にいる布幸が、ありとあらゆる不運により──具体的には、何もない所でコケて、2組の担任が偶に飛ばすチョーク(衝撃で砕ける程のスピード)の流れ弾が額に直撃、謎のツインテ女子の施設案内(案内した後に何か言っていたが、遅刻の予感がしたので逃げた)、うさぎっぽくてやたら強い盗撮ロボットの処理etc.....───遅刻した。

 

「……布幸、5分遅れたな。各地から目撃情報があるからいつもの不運だろう? 出席簿は免除してやる」

 

「はひ……」

 

ボロボロの布幸が腫れた頬を擦りながら答え、千冬が号令をかける。(今日は山田先生が学園の設備一斉点検により不在らしい)

 

「さぁ、SHRを始めるぞ」

 

 

 

◇◇◇

 

 

昼休み、布幸はおにぎりを中庭で頬張っていた。勿論不運Lv MAX対策である。

 

「……よし、外敵はいないな。ハトもたかりに来ない。今日は珍しいな……」

 

描かれていなかっただけで俺は様々な不運にぶち当たっていた。オルコット対一夏の映像も偶に字幕が何故か文字化けしてビビらされたし、トトゥガは定期的に高速硬化ガスが漏れたりする。あれ漏れると後処理が……な。

昨日の飯はカラスに奪われかけ、一昨日はハトがおにぎり本体を狙ってたかり、今日は雀が頭で休憩する(しばらくしたらどこかへ飛び去った)。

 そうそう。不運Lv MAXなんだが、たまーに仕事しない時がある。多分、癒し要素を与えて発狂しないように調整されてるんだと思う。

多分今日は不運Lv MAXのサボりの日だ。

 

そんな事を考えておにぎり(塩むすび)を頬張っていると、オルコットが半泣きでこちらに駆け寄ってきた。

 

「あの…………布幸さん、一夏さんがこのサンドイッチを食べて凄い顔で味がヤバいと問い詰めて来たのですが、本当にこのサンドイッチがおかしい味なのか不安で……その、味見をお願いしたくて……」

 

「……ちょっと食べ足りなかったからいいぞ」(話からして明らかにヤバい代物だろうけど、ここで遠慮して機嫌を損ねられて周囲になんか言われても面倒そうだし……今日は珍しい不運Lv MAXサボりの日だ。美味しい可能性も無きにしも非ず……!)

 

意を決して俺はサンドイッチを手に取り、一気に頬張る。

!!??!?……わりぃ、俺、死んだ……

 

「」

 

「ふ、布幸さんんんんん!?」

 

 

その日、目が覚めた俺は激しい下痢と腹痛により午後の授業を休んだ……不運Lv MAXめぇ……!

 

 

 

 

◇◇◇

 

次の日の放課後、俺は日課となっているトトゥガでの歩行と飛行の訓練をしている──同時刻、一夏はオルコットと箒による特訓でしごかれている──と、昨日出会った謎のツインテ女子がアリーナに入ってきた。見慣れないISを展開しているのを見るに、専用機持ちなのだろう。

 

「はぁ〜……あのバカ一夏めぇ……ん?」

 

「あ」

 

俺とツインテ女子の目線が合った。いや、厳密には俺の乗っているトトゥガの頭に視線を向けている。

 

「何よその あ、って! バカにしてんじゃないわよ!?」

 

「違う違う! そんな意味で言った訳じゃ……」

 

「……なんかアンタ、聞いた事ある声ね……?」

 

「あー、昨日逃げるように行ってしまったのは謝る。1組の織斑 布幸だ。ちなみに織斑先生の養子」

 

「ふぇ……? 千冬さんが養子をとった……? いやいやそんな訳……」

 

 俺がトトゥガを解除して自己紹介をすると、ツインテ女子は俺の千冬さんの養子発言の辺りから何か呟いていた。

 なんだよ、そんな事されたら気になる……が、こういうのは追及してもはぐらかされるかぶっ飛ばされるかのどちらかだろうからスルーだ。ちゃんと線引きしないと不運Lv MAX関係なしに不幸になるからな……

 

「なぁ、突然で悪いんだが、ISの飛行って何かコツがあるか? 他はある程度できるんだが……」

 

「そうねぇ……感覚よ感覚! 自分の感覚を信じてやっていれば自ずとできるもんよ!」

 

「感覚……思えばトトゥガでは上手く飛べないという先入観が俺にはあったな……自分の感覚を信じてやっていれば自ずとできるもの……か。ありがとう、少し分かったかもしれない」

 

「そう、役に立ったなら良かったわ。……そうだわ! アンタ、専用機持ちって事はそれなりの腕前ってことよね? 私と模擬戦をしなさい!」

 

「……俺のトトゥガを相手するのは他のISにはあまり参考にならないぞ?」

 

「いいわよ。どうせ一人でやるよりも効率いいし。ほらほら! 早速準備してよ!」

 

俺は半ば強引に模擬戦をやる事になり、トトゥガを再び展開して背中を向ける。

 

「? 何よ、ハイパーセンサーで前後が分からなくなったの? 向いてる向きが逆よ?」

 

「いや、これでいい。あー、「(ファン・)鈴音(リンイン)よ。鈴でいいわ」 鈴、これがトトゥガの基本スタイルなんだ」

 

俺の後ろ向きトトゥガに鈴はやや不満があるようだが、何とか納得してくれた。

 

「じゃあ、始めるわよ!」

 

鈴は、トトゥガの腕だと新しく装備を持てないと判断して近接戦で仕留めるべきと考え、切るというより叩き潰す様に設計された一対の青龍刀、『双天牙月(そうてんがげつ)』を呼び出して肉薄する。

 

「まずは小手調べだ!ビーム砲!」

 

トトゥガの棘のようなビームシールド発生器兼ビーム砲からビームの嵐が巻き起こり、鈴の専用機、『甲龍(しぇんろん∕こうりゅう)』のシールドエネルギーを奪おうとするが、鈴の卓越した操縦技術によりかすりもしない。

 

「狙いが甘いわよ!」

 

「ビームシールド!」

 

鈴はそのままトトゥガに密着して双天牙月で切りかかるが、トトゥガのあまりに強固なビームシールドによりあっさりと阻まれてしまう。なんとトトゥガのビームシールドはアリーナのシールドバリアーの数倍の堅牢さを誇る。零落白夜のような抜け道でも使わない限り突破は困難だろう。

 

「さぁ、この要塞とも言えるトトゥガの守りを如何にして崩すかな…?」

 

「ふーん……そのトゲがビームの盾の発生器なのね? ならトゲが無い正面から狙う!」

 

「トトゥガの真骨頂はまだ見せていないぞ! 来い!」

 

「滅多切りにしてやるわ!」(……とは言ったけれど、あの図体じゃ龍咆も効果は薄いだろうし、このまま切りつけまくって弱点を探して、そこを叩く!)

 

(ラッシュのスピードが上がった!)

 

一見すると鈴の一方的な攻撃が続いているが、一向にトトゥガに目立ったダメージを与えられない事に鈴は苛立っていた。

 

「なんちゅう硬さなのよ!もう優に100回は切りつけてるわよ!?」

 

「トトゥガは守りに特化したISだ!ちょっとやそっとで傷はつかないぞ!」

 

(この感じ、あのISは攻撃とドッグファイトがそこまで得意じゃない……でも堅牢すぎて、双天牙月でかすり傷にしかならないのに龍咆じゃ…… !関節が見えた!そこを狙えば……!)

 

鈴は双天牙月でトトゥガの関節部を狙い、傷をつけることに成功する。

 

「甘いね鈴。トトゥガの真骨頂はここからだ!」

 

「!!」

 

ブシュゥゥゥゥゥゥ!!

 

突如傷つけた部分からガスが吹き出して鈴の甲龍を包み、急速に固体となって身動きを封じる。

 

「何よ、これ!」

 

「高速硬化ガスだ。トトゥガの装甲は多重構造になっていて、そこの隙間にガスが詰まっている。肉を切らせて骨を断つ。だ!」

 

俺はトトゥガのハンマーハンドで身動きの取れない鈴の甲龍のシールドバリアーを殴りまくって絶対防御を発動させ、シールドエネルギーを僅かに残して、辛くも勝利する。

 

「うぐぅ……甲龍みたいな近接重視ISを殺しに来てる機体じゃない……!」

 

「これは相性の問題だな……実は俺のIS適正、Dなんだが、高速硬化ガスのお陰で避けさせずに殴れた。だから勝てた」

 

「ガスを喰らいたくなければ遠くでチマチマ削るしかないって事……? なんていう化け物よ……!」

 

「まぁ攻撃力と機動性はお察しだけどな……」

 

「うーん……それにしても随分と極端なISね……どうしてこんな欠陥機ができたのよ?」

 

「あぁ……それには理由があってな。俺がISに乗ると、ことごとく故障して、最悪爆散する。だから堅牢さを求めた全身装甲のトトゥガを作ってもらった。構造も比較的シンプルにしてメンテナンスもマニュアルさえあれば自力でできるし、毎度毎度ISが授業の度に爆散したら不味いからさ……」

 

「なんでISが爆散するのよ……」

 

「自分、不幸なので……」

 

「いや、不幸で済むレベルじゃないわよ!?」




この作品のIS適正Dは、基本的な動きは可能で、止まった敵になら安定して攻撃できると想定して書いています。なので、初手のビーム砲は完全に牽制ですね。

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