桜咲く道   作:白河よぞら

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第1話 始まりの日

「ふぁ~あ。ねみぃ」

 

 呑気に欠伸をしながら、少年は桜の立ち並ぶ並木道を歩いていた。春眠暁を覚えず、とはよく言ったものである。

 春というのは、始まりの季節であり、出会いの季節である。欠伸をしていた彼も、今日が中学校の初登校日だ。

 

「おっとっと」

 

 欠伸をして、伸びをしながら歩いていたら、小石に蹴躓いて転げそうになった。体勢を立て直してからカバンを持ち直し、桜並木を進んで行った。

 しばらく歩くと、学校の正門らしきものが見えてきた。学校の先生らしき人が、他に登校してきている生徒たちに挨拶をしているので、学校の先生であり、正門であろう。

 

「おはよう」

「おはようございます」

「おはようございます!」

 

 正門の前で登校してくる生徒たちに挨拶をしている先生は、服装がジャージなので、体育の先生だろうか? などと考えながら、少年も正門に辿り着いた。

 

「おはよう」

「おはようございます」

 

 少年は、先生に挨拶をして正門をくぐった。その正門の先にも、桜並木が立ち並んでいた。

 ここまで桜の木がたくさんあると、特別感が薄れてくるようにも思える。が、これが、この学校、ひいては、この街全体の特徴であり、シンボルなのである。

 正門をくぐった先にある桜並木を通り抜けると、ようやく校舎が見えてくる。

 

「ふぅ、ようやく着いた。ええと、確か・・・・・・」

「おい、お前」

 

 少年が校舎の前でキョロキョロしていると、後ろから誰かに呼びかけられた。

 後ろを振り向くと、そこには赤色のネクタイをした、一人の男子生徒が立っていた。

 

「こんなところで何をしている。ここは、中等部の新入生が来る場所ではないぞ」

「あ、いえ。第2校舎はどこかなーと・・・・・・」

 

 赤ネクタイをした男子生徒は、なぜか威圧的に話しかけてきた。上級生であるため、下級生には威圧的になるのだろうか?

 この学校は、ネクタイや校章などによって、上級生から下級生かが分かる。例えば、赤色のネクタイに、赤をベースに白色で桜を象った校章をつけている生徒は、中等部の3年生である。

 しかしながら、この威圧的に話しかけてきている生徒に対して、一つだけ不思議に思うことがあった。それは・・・・・・

 

「先輩、本校舎って高等部の先輩たちがいる校舎ですよね、中等部3年生の先輩には関係のない場所では?」

 

 この学校は、中等部と高等部によって校舎が分けられている。

 学校の敷地内には、大きく分けて6つのエリアが存在し、初等部エリア、中等部エリア、高等部エリア、大学部エリア、そして、運動部エリアと文化部エリアである。運動部エリアと文化部エリアは、小中高大共通のエリアであるが、それ以外のエリアは、所属によって異なる。とはいえ、例えば、中等部の生徒が高等部のエリアに行くことは可能であるため、単に管理上のエリア分けに過ぎない。

 

「はんっ! 俺は、中等部の3年生だ。来年自分たちが入る校舎くらい見ていてもいいだろう」

 

 もっともな意見な気はする。誰だって、自分が進学する先の校舎や雰囲気は気になるものだろう。とはいうものの、教師陣はさすがに違うものの、校舎の基本的な作りは大学部エリアと運動部エリアと文化部エリア以外はほぼ同じであるため、正直見学する意味はあんまりない。ていうか、入学・始業式の日にやることではない。

 

「おっと、もうこんな時間だ。じゃあな、新入生。大講堂で待ってるぜ」

 

 そう言うと、3年の先輩は走り去っていった。大講堂とは別の方向へ。・・・・・・案外おっちょこちょいなのかもしれない。

 そんな変な先輩に出会った少年は、踵を返して、先輩が走り去っていった方角とは別の方角へと歩き始めた。完全真反対であった。

 それから更にしばらく歩くと、第4校舎が見えてきた。中等部第4校舎は、中等部の1年生が勉学に励むための校舎だ。

 校舎の前には、人だかりが出来ていた。遠目で見てみると、校舎の前には掲示板があるため、おそらくは新入生のクラス分けだろう。

 

「ふんふん。俺は、Aクラスか」

「なんだぁ? お前もAクラスかよ」

 

 掲示板を見ながらそんなことをつぶやくと、またもや後ろから声がした。毎回後ろから声がするのはなぜだろうか? そんなことを考えながら後ろを振り向くと、小学校時代からの悪友が立っていた。

 

「よう、榊。お前もAクラスなんだな。俺と同じだな」

「ああ、そうみたいだな、ワタル」

 

 ワタルと呼ばれた少年は、真っ白な歯を見せてニカッと笑って見せた。いつ見ても真っ白な歯である。

 そんな、真っ白な歯を持つ悪友とともに、教室がある、第4校舎の2階へと向かった。

 教室に入ると、すでに何人かの生徒がおり、各々好きな席に座って、小学校時代からの友達であろう人たちと楽しそうに喋っていた。

 

「にしても、お前と同じクラスになるなんてな」

「ああ、俺も驚きだ。お前の頭の悪さでここに入れているのには驚いた」

「うるせー。大体、小中高大のエスカレーター式だろうが、この学校は」

「ああ。初等部から中等部、中等部から高等部、高等部から大学部へ進学する時に共通模試があるがな」

 

 大体の中高一貫校は、中等部から高等部へ上がるのに試験はない。しかし、この学校では、生徒の学力にあわせて授業を行う関係上、初等部から中等部、中等部から高等部、高等部から大学部へそれぞれ進学する際に、共通模試と呼ばれる、振り分け試験がある。その成績によって、クラスが決まるのだ。つまり・・・・・・。

 

「Aクラスは秀才の集まりってことだ。なんで筋肉バカのお前がこのクラスにいるんだ?」

「んなの決まってんだろ、俺様の実力さ☆」

 

 ワタルは、両腕の上腕二頭筋に力こぶを作って真っ白な歯を見せながら最高の笑顔を見せつけてきた。本当に、どうやってAクラス入りしたのか謎だ・・・・・・。

 

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