大日本帝国出身の堅物指揮官は今日も誘惑される。   作:気まぐれな富士山

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第4話

 

「⋯⋯⋯⋯はっ、ここは⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

目が覚めると、知らない天井が目に入る。

 

「ようやくお目覚めですね⋯⋯⋯⋯指揮官様⋯⋯♡」

「⋯⋯⋯⋯あなたは確か⋯⋯⋯⋯った⋯⋯⋯⋯」

 

自分の前には、黒茶髪に尻尾が9本生えた妖艶な麗人。

今まで眠っていたからか、今更顔面が痛むことに気づく。

 

「あぁ、動いちゃダメですよ?まだ傷が痛むから⋯⋯あぁでも、痛みに喘ぐ指揮官様も見てみたい⋯⋯⋯⋯♡」

「俺は⋯⋯⋯⋯っつ、頭が⋯⋯⋯⋯」

「やっぱりおクスリが効いてるのかしら⋯⋯⋯⋯私の事、思い出せます?」

「⋯⋯⋯⋯確か⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

事の発端は、3時間ほど前まで遡る。

 

 

 

 

 

「ふむ⋯⋯⋯⋯やっぱり人手不足なのではないか、この艦隊。俺一人だけで庭木の手入れとは⋯⋯⋯⋯」

 

本日彼は、リゾート施設の中庭にある庭木の葉を手入れしている。

もちろん資格などは持っていないから、適当に整えていく。

 

チョキチョキ⋯⋯⋯⋯バサッバサッ⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 

「うむ⋯⋯⋯⋯かなり綺麗になったな。」

 

謎の達成感に身を浸し、次の木に移ろうとしたその時。

 

「おい貴様。そこの貴様だ。」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「聞いているのかそこの庭師!」

「む、俺か。すまん、集中していた。何か用か。」

「随分と軽口をたたくな。我々に同行願おうか。」

 

謎の軍服男数名に同行を願われる。

真ん中の者は襟元のバッヂ的に、階級は海軍曹長はといったところか。

 

「同行?生憎仕事が立て込んでいる。何用かだけ教えてもらえば、上司に報告が効く。同行はその後だ。」

「必要無いな。これは、我らが指揮官殿からの直接命令である。」

「だとしても、一報入れなければ気が済まない。それに俺はこの国の人間じゃないから、この国の者に従う権限は無い。」

「貴様!曹長に無礼だぞ!さっさと来ないか!」

 

横の二等兵らしい海兵が彼の腕を掴む。

しかし、彼は軽く腕をひねると、素早く投げてしまう。

 

「ぐえっ!」

「貴様!それは反逆行為だぞ!」

「何がだ。攻撃を仕掛けたのはそっちが先。正当防衛だろう。それに、俺はこの国の人間じゃないんでね。」

「生意気な⋯⋯⋯⋯行け!」

 

3名ほどの海兵が一気に襲いかかる。

しかし、彼にとっては3人など朝飯前だった。

 

「フンっ!」

「うおっ!?」

「うげっ!」

「あがっ!」

 

1人の頭を掴むと、ソイツをもう2人目に向かって押し出し、ぶつかった瞬間に3人目を殴り飛ばして倒れた1人目と2人目を踏みつける。

 

「まだまだ若いな。戦場に出たことないのか。」

「う、動くな!動けば撃つぞ!」

 

先程まで偉そうに話していた曹長が、銃を抜いた。

 

「ふ、フフフフ!貴様はそれなりの心得はあるらしいが、銃の前には無力だ!」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯甘いな。」

「な、なんだと?」

「貴様の構えはまだまだ甘い。人を殺したことの無い構えだ。」

 

そう言うと彼は、曹長らしき人物に近づき、銃弾が当たる位置まで移動する。

 

「ほら、撃ってみろ。この位置なら確実に当たるはずだ。」

「な、なにを⋯⋯⋯⋯」

「いいから撃て。撃てと言っているんだ。」

 

歩を進める事に彼の覇気が上がっていく。

曹長らしき人物は、冷や汗を大量にかき、銃の先端は激しく揺れている。

 

「ったく⋯⋯⋯⋯これならどうだ。」

「ひぇっ!」

 

すると彼は、自分の額に銃口を突きつける。

もう彼と曹長らしき人物の距離は、ほんの20cm程しかない。

 

「どうした。撃て。」

「はぁ⋯⋯!はぁ⋯⋯!や、やめてくれ⋯⋯⋯⋯」

「貴様は本当の軍人では無いのか。さっさと撃て。」

 

自分を殺せと言っているはずの相手は、確実に生物としての格が違う、と理解した曹長らしき人物。

自分は、いつの間にか虎の尾を踏んだのだ。

 

「ひぃ、ひぃえぇ⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯もういい。」

 

しかし、彼はそう言い放ち、立ち去って行く。

全身の毛穴が緩み、毛髪が抜け落ちる。

銃を掴む気力は無く、曹長らしき人物はその場に崩れ落ちた。

 

「ば、化け物⋯⋯⋯⋯!」

 

立ち去って行く彼に放った、最後の一言だった。

 

「化け物か⋯⋯⋯⋯そうかもな。」

 

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯またお客か。今日は多いな。」

 

流石に仕事には戻れず、寮舎で昼食を摂っていると、玄関のチャイムが鳴る。

ふと、窓の外を確認してみれば、かなり多くの軍人が銃を持って待機していた。

 

ガチャリ「ご機嫌よう。調子はどうかね?」

 

扉を開けてみると、チョビ髭を生やしたスキンヘッドが4名ほどの部下を引き連れて立っていた。

 

「おっと、失礼。私は重桜海軍第43部隊隊長、飯島少佐である。貴君、聞いた話だと元軍人らしいが、階級は?」

「⋯⋯⋯⋯大日本帝国陸軍、斉斉哈爾部隊219部隊、第59連隊第1大隊第1中隊、擲弾筒部隊分隊長にして軍曹。名前は、ここに来た時に忘れた。」

「なるほど陸軍か。道理で我々の部下がやられる訳だ。陸上では、陸軍には敵わんからな。」

「それで、何の用だ。」

「うむ。率直に申し上げると、上の者がそなたを呼んでいる。一緒に来てはくれないか。」

「⋯⋯⋯⋯仕事を妨害されたのは棚に上げといてやる。ただし、行くなら拘束をしないことが条件だ。」

「それは無理な話だな。我々は、お前を拘束した状態で連れてこいと命じられている。」

「なら、拒否する。」

「それも無理だ。君に拒否権は無い。」

「⋯⋯⋯⋯だったら、強引にでも連れて行け。俺は抵抗する。」

 

すると、少佐の横にスタンバイしていた二等兵らしき人物が声を荒らげた。

 

「貴様!少佐どのの手を煩わせる気か!いいからさっさと⋯⋯⋯⋯」

 

二等兵が彼の腕を掴もうとすると、素早く腕を掴み返し、腕を拘束する。

 

「このやり取りさっきもやったろう。」

「な、何の話だ⋯⋯⋯⋯!グァァ⋯⋯⋯⋯ッ!」

「こ、このっ!動くな!」ジャキッ

「⋯⋯⋯⋯それを抜くなら、こっちにも策がある。」

 

瞬時に拘束を解除し、拳銃を向けた兵士に兵士を押し返す。

 

「わぶっ!」

「セイッ!」

 

兵士と兵士が衝突した瞬間に蹴りを入れ、寮舎の廊下の手すりにぶつける。

 

「き、貴様⋯⋯!」

「フンっ!」

 

もう2人も腰から拳銃を抜こうとするが、片方が裏拳で銃を弾かれる。

 

「グブッ!」

 

弾かれた方の兵士を左フックで壁にめり込ませる。

そして、もう1人を左の肘鉄で頭蓋を叩く。

 

「ガハッ!」

 

瞬時に4人を倒してしまった。

 

「いやー、素晴らしい。さすが、それ程の傷を負って生きているだけあるな。」

「⋯⋯⋯⋯俺の勝ちだ。お帰り願おう。」

「いや、君の負けだよ。」

 

すると、少佐の後ろに機関銃を持った武装兵が十数名、銃を構えて立っていた。

 

「残念だが投降してもらおう。」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」スッ

 

両手を挙げ、降伏の意志を示す。

 

「銃は安全装置を切っておけ。引き金には常に手をかけておくんだ。」

 

こうして、大変不本意ながら彼は、海軍の本部へ連行されることになった。

 

「それと、これは保険だ。」

 

そう言うと少佐は、懐からハンカチを取り出し、素早く彼の顔に押し付けた。

瞬間、彼の意識が遠のく。

 

「君には、眠ってもらうよ⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯うぐ、ぐう⋯⋯⋯⋯」

「おっ、目覚めたか。早かったな軍曹。」

「ここは⋯⋯⋯⋯」

「ここは我が軍の管理施設だ。今、部下が指揮官殿を呼びに行っている。」

 

指揮官。

愛宕、高雄などが嫌っていた、噂の指揮官。

一体どんな人物だろうか。

 

ガチャリ「入られます!」

「中尉殿!お疲れ様です!」

 

入ってきた男は、体格は普通より痩せていて、顔の血色が悪く、偉く着飾った格好の青年だった。

正直に気持ちが悪い印象だった。

 

「お前が俺の周りを嗅ぎ回ってる野郎か⋯⋯⋯⋯何が目的だ?」

「目的も何も無い。俺はただ、助けられた恩を返しているだけだ。」

「ケッ。平和主義か⋯⋯⋯⋯気持ち悪い。おい、アレもってこい。」

 

そう言うと、指揮官らしき男は、部下から差し出されたトレーからメリケンサックを取る。

 

「これからお前を拷問にかけてやる。敵勢力のスパイかもしれんからなぁ⋯⋯⋯⋯ゲヘヘ⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯この臭い、やはり腐臭か。お前は、まさかとは思うが、奴隷を買ったのではないだろうな。」

「ヘッ、察しがいいな。俺の玩具としては足らなかったなぁ⋯⋯♪男なら痛ぶって殺す、女なら犯して殺す⋯⋯これほど気持ちいいことは無いんだよ!」

 

男の拳が彼の顔を撃ち抜く。

メリケンサックによってダメージが上がっており、1発で口の中が切れ、血が出る。

 

「ほらもう1発!」

 

3発、4発⋯⋯⋯⋯10発ほど殴ったあと、息を荒らげる。

 

「ハァハァ、どうした?恐怖で声も出ないか?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯下衆め⋯⋯ゲボッ、ペッ⋯⋯⋯⋯」

 

口に溜まった血痰を男の足元に吐きかける。

 

「その下衆に殺される気分はどうだ?恐怖か?絶望か?」

「⋯⋯⋯⋯俺の死に方は、俺が決める。貴様の様な鈍重な拳では、100発殴っても死なん。」

「減らず口を⋯⋯⋯⋯おい!さっさと寄越せ!」

 

男は部下から奪い取るようにトレーに乗った鞭を握る。

 

「ヒヒヒ⋯⋯⋯⋯ヒャッハァ!」

「ッ!」

 

シパァン!

 

「ほらどうした!泣き叫べ!命乞いをしろ!」

 

 

 

 

その場を眺めていた一等兵の1人はこう語った。

 

「鞭という物は、誰にでも同じ痛みを与えると聞きました。赤子であろうと、屈強な戦士であろうと。それが、KAN-SENであろうと、感覚器官が働く者であれば、同様の痛みを味わう。ということは、あの人は精神力だけであの苦痛を耐えたんです。⋯⋯⋯⋯ええ。人間じゃありませんよ。体だけじゃなくて、頭からも血を流していたのに、あの人はじっと、あの中尉を見つめて動かなかった。」

 

 

 

「ハァ⋯⋯⋯⋯ハァ⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「クソッ⋯⋯⋯⋯面白くない!貴様、本当に人間か!?もしかして、本当に死んでいるんじゃないか?」

「生きている。やりたいならさっさとしろ。」

 

もう何十発打たれたか分からない。

彼は確かに全身に傷を受けていた。

前の古傷を覆い重ねるように出血している。

しかし、未だに視線を逸らさず、彼は男をじっと見つめている。

 

「クソッ、クソックソッ!なんで俺に気持ちよくさせんのだ!呻き声も、喚き声も上げず、泣き叫ぶこともしない!なんとつまらん玩具だ!」

「⋯⋯⋯⋯俺は、ゲホッ、お前の玩具じゃない。」

「うるさい!あぁ⋯⋯⋯⋯もういい!」

 

そう言うと、男は、腰から拳銃を抜いた。

 

「貴様への興味は失せた。とっとと消えろ。」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」ガチリ

 

額に銃口を突きつけられ、命のカウントエンドが近づく。

もう間もなく死ぬ、と、その場の全員が感じる。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯あぁおい!なんで命乞いしないんだ!」

「する必要があるのか。」

「抗えよ!抵抗しろよ!それを捻り潰すのが楽しいんだからよ!」

「俺はこんなところで死なない。お前のような暖かい屋根の下でしか生活したことのない者にはわからんだろうが、俺には分かっている。俺は、死なない。」

 

彼だけは、死なないと言い切った。

自らを信じ、決して死ぬことは無いと断言した。

それは、自らを信じれず、他者を貶めることしか考えない男には分からない事だった。

 

「あぁぁうっぜぇ!!とっとと死ね!」

 

遂に引き金を引く。

そう誰もが思ったその時。

 

「お痛はいけませんわ〜。」

「ナバッ!」

 

小型の艦載機が銃弾を防ぎ、彼の腕を括る縄を銃撃で撃ち抜き、男に衝突した。

 

「ひゃ、ひゃにを⋯⋯⋯⋯」

「ウフフ⋯⋯♡やはり私の見込んだ指揮官様⋯⋯⋯⋯」

「お、お前⋯⋯⋯⋯赤城!」

 

犯人は、重桜が誇る一航戦、赤城だった。

 

「な、なじぇお前が⋯⋯⋯⋯!それに、しぇきかんは俺だじょ!」

「あら?いたのですか。無能の用無し。」

「無能⋯⋯っ!?」

 

前歯を衝突の爆発で吹き飛ばされたせいで、サ行が上手く発せれない。

 

「もうあなたは必要ありませんわ。さっさと消えなさい。」

「ふ、ふじゃけるな!こんなことしゅて、どうなるか⋯⋯⋯!」

「これは私の慈悲ですよ。だって、早くしないと⋯⋯⋯⋯」

 

死んじゃいますわよ?

 

「⋯⋯⋯⋯ひょ?」

「ほら、早く逃げないと。見てみなさい。あれがあなたの怒らせた人よ。」

 

男が恐る恐る振り返ると、先程赤城が縄を撃ち落としたおかげで自由の身になった彼がいた。

 

「は、はひぇ⋯⋯⋯⋯」

「随分と⋯⋯⋯⋯痛ぶってくれたな⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

血を滴らせ、右目に血が垂れ、紅く染まっている。

 

「お、おおお前ら、こんなことして、ただじゃおかないじょ!親父に言いつけてひゃる!しょうだ赤城!お前もいいように使ってひゃる!親父に言いちゅければしょれが出来る!」

「はぁ⋯⋯⋯⋯本当に浅はかですのね。あなたの父上なら、今頃裁判で終身刑をかけられているはずですよ?ほら、これが礼状です。」

「ひゃあ?しょ、しょんな馬鹿にゃ!?」

「もう終わりなんですよ。あなたのような間抜けは。」

「なんだかわからんが⋯⋯⋯⋯もうこいつにやり返しても良いってことだな⋯⋯⋯⋯?」

「はい♡存分にやり返して下さい、指揮官様♡」

 

四肢はとうに傷だらけ、服は裂け腹の傷には幾つもの切り傷が走っている。

しかし、彼は今、確かに立ち上がっている。

それは、鬼の形相の不動明王のように、また、決して倒れない生きた屍のように。

 

「ゆ、許してくれ!にゃんでもしゅる!でゃ、でゃからたしゅけて⋯⋯⋯⋯!」

「⋯⋯⋯⋯戦場に、命乞いは存在しない。お前はせめて⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

来世からやり直せッ!

 

ボガァッ!

 

「アベェエッ!!」

 

渾身のアッパーカットが男に炸裂した。

一撃で男を2mほど先へ吹き飛ばし、男は壁に激突する。

 

「かはぁ⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「素晴らしいですわ指揮官様♡」

「あぁ⋯⋯⋯⋯ううっ⋯⋯⋯⋯」

 

彼はフラフラと出口に歩き出すが、バランスを崩し、赤城にもたれかかってしまう。

 

「あ、あら?指揮官様?」

「す⋯⋯⋯⋯まん⋯⋯⋯⋯もう、意識が⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯ぐっすり眠ってくださいませ。赤城の胸の中で⋯⋯⋯⋯ウフフ♡」

「悪い⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯Zzzz⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 

 

 

 

「そうだった⋯⋯⋯⋯助けていただき、感謝する。赤城殿。」

「よいのですわ。指揮官様♡」

「⋯⋯⋯⋯その、近くないか。ほぼ初対面の男女がこのような距離で話すものではない⋯⋯と思うのだが。」

「あら、照れていらっしゃるのですか?フフ、カワイイお方⋯⋯⋯⋯」

 

初対面のはず、なのに。

ものすごい距離が近い。完全に距離感がバグってる。

赤城の着物は、胸部の前部分がさらけ出されており、豊満な乳房が目に入る。

というか、ここに来てから巨乳の女性にしか会っていない。

 

「そのくらいにしてください、姉様。」

「そうよ。そろそろ緊急会議なんだから。指揮官くんはもう少し休んでなさい。」

「むう⋯⋯⋯⋯せっかく指揮官様との時間を共有していたのに⋯⋯⋯⋯では、赤城行ってきますわね。指揮官様は、ゆっくりと傷を癒して下さいまし♡」

「いや、必要無い。」

 

3人が気づかない内に、指揮官は起立し、かけてあった軍服を着用していた。

 

「えっ、もしかして立てるの?」

「何か変か。次期指揮官たる者、会議に出席しないでは埒が明かないだろう。」

「い、いえ、指揮官様。問題無いのでしたら是非とも出席して頂きたいですが………」

「問題無い。この程度の切り傷、大したことはない。」

「いやいやいや!?指揮官くん、お腹の古傷を抉られていたのよ?内臓も出かかってたって聞いたし、普通立ち上がれるはず…………」

「…………昔から、体は頑丈だったから。」

 

3人は、彼を見つめて唖然としていた。

彼の状態は、軍部に知れ渡っており、出血多量や各部骨折など、通常は絶対安静というほどのものだった。

それを知っていたからこそ、3人は同じことを思った。

 

(((この人(?)本当に不死身なんじゃ?)))

 

「さて、行こう。」

 

移動しようとすると、赤城がサッと革靴を取り出す。

完全な新品であり、その履き心地はとても良かった。

コツコツと小気味良い音を立てる。

その背には風格があり、またどこか初々しさがある。

 

(この者が、これからの重桜の先導者……………)

(色々と心配なことは多いけれど……………)

(指揮官様なら問題ありませんわ♪だって…………私が惚れ込んだ指揮官様ですもの♡)

 

重桜に、新たな風が吹き込んだ瞬間であった。

 

 

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