大日本帝国出身の堅物指揮官は今日も誘惑される。   作:気まぐれな富士山

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めちゃくちゃ更新遅くなりました。10〜15話くらいでストーリーを終わらせて、書きたかったKAN-SENたちに振り回される堅物指揮官を書こうと思います。


第7話

 

海の上にポツンと浮かぶ小島。

ロイヤルの持つ排他的経済水域の中で、最も重桜に近い島である。

周囲にはロイヤルの巡視船、後方には戦艦と空母が幾つも控えている。

しかし重桜も負けず劣らず、お互いに睨みを効かせていた。

 

「向こうのトップはKAN-SENらしいな。指揮官はいないのか?」

「分隊ごとの指揮はあるようですが、総指揮がKAN-SENということですね。ロイヤルは王政。女王クイーン・エリザベスに忠誠を誓った者たちで構成されています。我らにとっても、厄介な相手かと。」

「それで、その女王の名を冠したKAN-SENが艦隊の総指揮官か…………これは骨が折れそうだ。」

「ご心配なさらず!殿の敵は、この龍驤が薙ぎ払いますよ!」

「頼もしいな。しかし、あくまで専守防衛を忘れるなよ。」

「はい!もちろんですとも!」

 

指揮官は赤城、高雄、龍驤の3人を引き連れ、扉の前に立つ。

扉が開くと、長机の向こう側に金髪ロールのKAN-SEN、クイーン・エリザベスとその他KAN-SENとメイドが待っていた。

 

(交渉に長けた戦艦級が多いな………この部屋には俺以外人間はいなそうだ。ウォースパイト、プリンス・オブ・ウェールズ、キング・ジョージⅤ世、さらには超弩級戦艦のヴァンガードか…………名の知れた戦艦を連れてくるとは、奴らは本気だな。)

「お待たせしました。重桜艦隊所属、大本営直轄大艦隊総指揮官の三島と申します。今回は、我々への交渉に応じていただき、感謝致します。クイーン・エリザベス殿下。」

「社交辞令は不要だわ。私たちロイヤルも決して暇じゃないの。私が本部から動くのにも本隊が動かなくてはならないわ。そこまでしてこの私を呼び出した。この交渉にその価値があって?」

「えぇ。戦争を回避できます。」

 

迷いなく言い切る指揮官。

思わずギョッとするウォースパイトだが、その言い切りように少し感心した様子だ。

 

「今現在我々が問題を起こすのは、国際社会上あまりよろしくないことは理解していらっしゃいますか?」

「ええもちろん。野蛮なセイレーンの技術を用いるあなた方に、華麗なる私たちロイヤルが手を下す必要がないもの。あぁあと、その敬語やめなさい。なんだかとっても気持ちが悪いわ。」

「そう、でしょうか?…………では、遠慮なく。現在軍内部では、此度のこの密偵行為を批判する声が相次いでいる。血気盛んな者共によって、戦争にまで発展しそうな勢いだ。しかし、我らが大元帥はそれを望まない。重桜の技術は重桜の発展のみならず、世界の恒久的な平和と外敵の根絶に使われるべきと言うご英断だ。そして我々は、その一歩を叶えるべくここに貴公らを呼んだのだ。」

「その一歩とは?」

 

余計な小細工のない、正しく真剣勝負のような雰囲気が部屋を包む。

そして今より放たれるは、誰もが予測しない渾身の一振りだった。

 

「我々重桜は、ロイヤルと秘密裏に同盟を結びたい。」

「っ!!」

「貴公らにも、悪い話ではないだろう?」

 

指揮官が椅子に座ると同時に赤城が書類を式神で配る。

それは、ロイヤルと重桜の『同盟調印書』であった。

 

「現在貴公らは、サディア及び鉄血に主要な土地を囲まれている。この同盟に調印を貰えれば、重桜の発言権を使いサディアと鉄血にその警戒を緩和させよう。その代わり貴公らには、我らへの相互不可侵の条約の締結と我らの行う活動への厳正中立を誓って欲しい。貴公らには利点しかないと思うが。」

「……………なるほど。確かに、私たちにはメリットしかないわ。でもね、Mr.三島。あなた、交渉術というものを知らないの?これを私たちが受けるメリットがあっても、これを受けないことによるデメリットも無いのよ。危険な実験やセイレーンとの関わりを続ける貴方達レッドアクシズを武力で潰す、というのも選択肢としてあり得るわ。」

「……………我々、いや、レッドアクシズと戦争になるぞ。」

「例えそうなったとしても、私たちロイヤルは負けない。宣戦布告をしに来たというなら、これでお話はおしまいね。」

 

受けることのメリットと受けないことのデメリット。

どちらも『無い』なら、この同盟は同盟の意味を為さない。

赤城はこの状況を予見し、敢えて指揮官にこの作戦を提案した。

 

(申し訳ありません指揮官様…………この者共とは、わかり合うことなど不可能なのでございます。敵の技術を盗む度量も無いような臆病者共とは…………どちらかが勝者であると決めなければ、人の世は前に進まぬのでございます。)

 

その場にいるKAN-SEN全てが、レッドアクシズとの戦争を覚悟した。

この、一人の男を除いて。

 

「…………怯えているのだな、クイーン・エリザベス。」

「…………なんですって?もう一度言っていただける?」

「怯えていると言ったのだ。一国の盟主ともあろう者が、その様な及び腰とは、セイレーンの恐怖とは俺が思っているよりも根強いと見える。」

「貴様!!女王への冒涜、磔刑では済まされないぞ!」

「いいのよ、ウォースパイト。………それで?あなたは何が言いたいのかしら。重桜の指揮官。」

 

机からゆっくりと立ち上がり、ゆっくりクイーンの元に歩み寄る。

 

「俺は、平民の出だ。だから政治のことなど知らない。権力者が何を思っていたのか、権力のある立場に立っても全くわからん。ただ、何より言えることは、失策した権力者の多くは《己のため》にその力を奮ったのだ。」

 

クイーンの椅子の隣につき、クイーンの目を見て話す。

 

「俺は恐れていた。権力を得た俺も、そうなってしまうのではないかと。しかし覚悟を決めた。俺は、この世界であの様な戦争を再び起こす訳にはいかない。俺がここに来た理由は、きっとそれを叶えるためなのだ。」

「あの様な戦争…………?」

「今から、それを見せる。少し辛いだろうが、我慢してくれ。」

 

そう言うと指揮官はクイーンの頭に優しく手を回し、額に自分の額を当てた。

 

 

 

 

時は、指揮官に就任して数週ほどした頃に遡る。

 

「んっ……………」

「赤城、どうかしたか。」

「い、いえ、なんでも…………少し頭痛がしただけですわ。」

「どれ、見せてみろ。」

 

そう言うと指揮官は赤城の額に自身の額を当て、熱を測ろうとする。

 

「し、指揮官様!?お、お顔が…………///」

「動くな。上手く測れん。」

 

ピトッと額同士が触れた時、赤城の脳内に映像が流れ込む。

 

「ッ!?っあぁ…………!?」

「赤城?どうした!」

 

頭を抑え、思わず座り込んでしまう赤城。

指揮官はすぐさま赤城を抱えてソファに寝かせる。

 

「大丈夫か?今水を………………」

「いえ…………指揮官様……………」

 

赤城が指揮官の袖をキュッと掴む。

 

「今、見えましたわ…………指揮官様の、故郷の記憶が。」

「っ、それは……………」

 

赤城が指揮官の肩を借りて座り直すと、指揮官も隣に腰掛ける。

 

「指揮官様のおでこが触れた時、電流の様に頭に記憶が流れてきましたわ。指揮官様の怒り、悲しみと共に…………」

「…………そうか。辛いものを見せてしまったな。」

「いいえ。これを体験した指揮官様の苦痛を思えば、この程度なんでもありませんわ。…………指揮官様は、この惨事を引き起こさないために頑張っていらっしゃるのですね。」

「あぁ。まずはこの業務量に慣れて、上層部からの信頼を勝ち取ることだが…………向こう一年はかかりそうだな。」

「ふふ♪この程度でしたら、この赤城にお任せいただいてもよろしいのですよ?」

「いや、俺を信じて与えられた仕事だ。俺がこなさなければならん。」

 

この時の出来事は指揮官と赤城の絆を深めて終わりだった。

それを指揮官は忘れたことはなく、今この場でクイーンに大博打を打ったのだ。

 

 

 

「っ!!っくぅ…………!!」

「貴様ぁ!女王陛下になんたる無礼!この場で首を刎ねて…………!」

「その前に拙者らが貴様らの首を狩るぞ。今は国の手綱を握る二人の戦い!手を出すでない!」

「………………大丈夫か。」

「………なんてものを、見せてくれるの。」

「無礼は百も承知だ。言葉よりも映像の方がよく効く。…………貴公らKAN-SENなら、これがどれほど醜悪なことかわかるはずだ。」

「えぇ…………臓腑が煮え繰り返りそうよ。祖国を生き残らせるために仕方なかったとはいえ、こんな事態にはなりたくない……………この世界でこの大戦が起これば、利を得るのはセイレーンだけね。」

「わかっていただけたか。女王陛下。」

 

少し乱れた髪を整え、毅然と座り直す。

 

「あなたの提案を受け入れ、その同盟を結ぶわ!女王の調印、ありがたく受け取りなさい!」

「感謝致します。クイーン・エリザベス女王陛下。」

「「「「え、えぇぇぇーーー!!?」」」」

 

騎士だけでなく、メイドも数名驚愕する。

クールを貫いていた騎士長やメイド長、さらには側近であった赤城ですら驚きを隠せていなかった。

この同盟は後に、『重英同盟』として後世の教科書に載ることになる。

 

 

 

「指揮官様〜?あの様な事をなさるなら、事前に一言申してくださいとお伝えいたしましたわよね〜?赤城とのヤ・ク・ソ・ク…………無視しましたね?」

「て、敵を騙すにはまず味方からと言うだろう…………しかし、お前にいの一番に相談しなかったのは申し訳ない。」

「むぅ、わかってくださるのなら構いませんわ。…………ですが、あのロイヤルの女王も、よく折れましたわね。」

「あそこで折れてくれなかったら、土下座でもなんでもした。KAN-SENは皆、平和のことには素直だからな。」

「うっ………….それを仰られると、戦争に走ろうとした赤城の心が抉られますわ……………」

「赤城のそれは、愛する者の平和のためにくるものだろう。ならば俺がお前を責める道理はない。」

「し、指揮官様ぁ…………!赤城!今以上に指揮官様への愛が高まってまいりましたわ〜!」

「…………指揮官は赤城殿の扱いが上手いな。」

「高雄には助けられた。よくあそこであの者たちを止めてくれたな。」

「礼を言われるほどではない。護衛として、当然の事をしたまでだ。」

 

スパイとして潜入していたメイドを解放したのを見届け、その場から離れようとすると、メイド長のベルファストに呼び止められる。

 

「三島様。女王陛下から、二人きりでお話がしたいとのお誘いでございます。」

「俺と………?わかった、行こう。」

「指揮官様………?これ以上そこな女に構う必要はないのでは?」

「何、ロイヤルとは先程袂を分かち合った仲だ。悪いようにはされないさ。皆はここで待機していてくれ。」

 

指揮官が扉の中に戻ると、赤城からドス黒いオーラが湧き出る。

 

「あのチビっ子…………私と指揮官様の大切な時間を………!!」

「お、落ち着け赤城!拙者らが不始末を起こしては本末転倒であろう!」

「ウフフ………♪どうしたのかしら、高雄?私は至極冷静よ?ただ冷静に……………あのオジャマ虫を指揮官様に触れさせないためには、どうするべきか冷静に考えているの……………」

 

こうなった赤城は止められない。

もちろん指揮官の邪魔はしないだろうが、何か同盟に悪影響をもたらさないか、高雄と龍驤は気が気でなかったという。

そんなことはつゆ知らず、指揮官はクイーンの元にいた。

 

「話とは何だ。」

「…………あなたほど真っ直ぐな人間を、初めて見たわ。我が国の時を刻むビッグ・ベンの針の様に、あなたは芯がブレる様子が一切ない。」

「過大評価だな。俺はただの一兵卒だ。君らほどの力も、覚悟も持ち合わせていない。」

「それは違うわ。私たちKAN-SENはね、平和のために生まれたのよ。重桜の娘たちは特にその気が強い。そんなKAN-SENが真に心を預ける相手と認めるあなたは、その辺にいる様な手下とは違うわ。女王が保証するんだもの!自信持ちなさい!」

「そう、か……………それで、激励のためだけに俺を呼んだわけではないだろう。本題に入れ。」

「せっかちさんね。もっと私の様に優雅に振る舞いなさい!」

 

そうしてクイーンは、真面目な目で指揮官を見つめ、言葉を紡いだ。

 

「あなた、私たちの指揮官にならない?」

「……………なん、だと?聞き間違いか?」

「言った通りよ。…………前任の指揮官は腐っていてね。私がどうにかこうにか立場を取り返したの。でも、どこまで行っても私たちは兵器よ。平和を祈る心はあっても、兵器を扱うのは人でなくてはならない。あなたこそが適任であると、この私が認めるのよ。どうかしら?」

「…………有難い話だ。俺をそこまで見込んでくれるとは。しかし、今は駄目だ。俺はまだ、重桜に恩を返していない。」

「…………あなたなら、そう言うと思っていたわ。でも、いつかよ!いつか、私たちKAN-SEN同士が争うことのない世界を作れたなら、その指揮官にはあなたを任命してあげる!」

「……………その勅命、ありがたく頂戴いたします。それで、話はそれだけか?」

「いいえ、最後に一つ。忠告よ。上層部に気をつけなさい。少なくとも、セイレーンと繋がっていることは確かよ。」

「っ…………!!それは、本当か。」

「私が嘘を言うと思って?女王の名に誓って、本当よ。」

「……………感謝する。であれば一層、この同盟を結んでよかった。」

「あらそう?本気でそう言うなら、私に最大の敬意をもったあなたの誠意を見せて、調印の儀とするわ!」

 

そう言うとクイーンは指先をスッと前に出す。

 

「跪いて、キスなさい。それがロイヤル式の、心の調印よ!」

「なる、ほど……………ロイヤル式ならば仕方ない。」

 

片膝をつき、差し出された女王の手の甲に口付けする。

 

「この調印、大義であったわ!死んでも人の世を守りなさいよね!」

「この身に換えても、約束は違えぬと誓います。女王陛下。」

 

女王に新たな誓いを立て、島を後にする指揮官であった。

 

 

 

「指揮官様。本部から通信が来てますわ。」

「ありがとう。………こちら三島。」

『あなたが重桜のナナシ指揮官ね。私の声、聞こえてる?』

「何者だ。管制官では無いようだが。」

『申し遅れたわね。こちらは鉄血艦隊所属の重巡洋艦プリンツ・オイゲンよ。総統閣下からの伝令をお伝えに参上したわ。直接伝えたいから、後でお話しいいかしら?』

「鉄血…………だと?」

 

優雅なる王国の次は、冷徹なる帝国が重桜に迫っていた。

 

 

 




今のところ誘惑されてる要素は各陣営にスカウトされてるくらいしかなくない…………?自分の駄文に自信がなくなる前に、話に一区切りつけようと思います。
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