ゼンノロブロイが競走馬関連本を紹介します【オススメ本、あります!】 作:木下望太郎
原作:ウマ娘プリティーダービー
タグ:ウマ娘 ゼンノロブロイ 競馬 オグリキャップ ハルウララ ナイスネイチャ ミスターシービー 読書 書評 競走馬 本
全6冊の競走馬書籍を紹介。
ウマ娘から競馬、競走馬に興味を持たれた方(筆者もそうです)はぜひどうぞ。
あの……どうも、トレセン学園図書委員のゼンノロブロイといいます。
ここでは私自身が読んだ、競走馬関係の本を皆さんに紹介していければと思います。ですが一応……「ウマ娘が競走馬を認識しているのはいいのか」といった世界観的なことには、ちょっとだけ目をつむっていただけると嬉しいです。
皆さん、本はお好きですか? 普段はあまり読書なさらない方もいらっしゃると思うので、煩雑にならないように気をつけて紹介していきたいです。気になった本があれば、ぜひ! ご自分でも手にとって下さいね!
それと、これはあくまで個人的な感想になりますが、紹介する本にはそれぞれ【良書度】と【ウマ娘度】を★5段階評価でつけさせていただきました。
【良書度】は読み物としての面白さや読みごたえ、【ウマ娘度】はウマ娘のモデルとなった馬の掲載度合いによるものです。本を探す際の参考にしていただけると嬉しいです。
それと、皆さんもオススメのウマ本があれば途中でもいいので、ぜひ! 教えて下さい!
それでは早速紹介していきます。……オススメ本、あります!
『名馬を読む』シリーズ(江面弘也 著)
【良書度】★★★
【ウマ娘度】★★★★★
さあいきなり来ました、【ウマ娘度】堂々の★5です! マルゼンスキー、ミスターシービー、シンボリルドルフ、あっ敬称は省略させていただいてます順不同ですオグリキャップメジロマックイーントウカイテイオーナリタブライアンタイキさんエルさんオペラオーさんウオッカさん! シリーズ1巻目だけで11頭ものウマ娘モデル馬が登場ですもちろんそれ以外の名馬も充実のなんと全32頭!(早口)
はぁはぁ……ちょっと興奮し過ぎましたが……様々な名馬のエピソードを紹介するといった形式の本です。1頭ずつ章立てされて書かれていて文章も分かり易く、ウマ娘ファンの方なら誰にでもオススメできますね。
欠点は…多数の名馬を網羅した反面、1頭1頭にあてたページ数はどうしても少なくなっています。そのため、名馬の一生を掘り下げる…といった形にはなっていません。入門書として読んで、気になった馬については別の本を探して調べるといった形がいいと思います。
とはいえ、やはり多くのモデル馬を収録しているのは大きな魅力です。シリーズ2巻、3巻でもさらにモデル馬が登場しますし、それ以外の馬についても興味を持つきっかけになるかもしれませんね。
近年のシリーズなので書店で探すのも比較的簡単です。ただ…ハードカバーの本で1冊1,800円ぐらいするので…古本屋や図書館で探してみるのがいいかもしれませんね。
余談ですが、このシリーズで印象的だった内容に【シンボリルドルフの走りは強さを、マルゼンスキーの走りは大きなスケールを感じさせる】【その強さとスケール感を併せ持った馬を近年に見られるとは思わなかった】というものがありました。
前後の文脈から、その近年というのが私(ゼンノロブロイ)の現役時期だったので「えっ!? いえいえそんな私なんてまだまだですよ!」って思ったんですが。
……そうですよね、これ次の年代の某ディープな衝撃さんの話ですよね……。ありますもんね、強さとスケール感……。
でも明言はされてないのでもしかしたら私……いえ、何でもありません……。すみません、本当にすみません地味で……。
えー、さて。それでは次の……オススメ本、あります!
『銀の夢 オグリキャップに賭けた人々』(渡瀬夏彦 著)
【良書度】★★★★★
【ウマ娘度】★★★★
『シンデレラグレイ』でおなじみのオグリキャップ先輩、そのモデル馬の生い立ちから引退後までを詳細に追ったルポルタージュです。
オグリキャップは一つの時代を築いた名馬、押しも押されもせぬアイドルホース! というわけでさすがに関連本は数多く出版されています。ですが今回、私が読んだオグリキャップの本はこれ一冊だけです。
……もうはっきり言います! これです! この一冊です! オグリさん関連本はこの一冊で決定です!
冒頭にいきなり運命の有馬ラストランの章! もうオグリは終わった…そんな空気の中しかし競馬場に溢れかえるファン! その終わったはずのオグリをそれでも見に!
関係者の張り詰めた空気! はるばる北海道から応援にきた故郷の牧場のオーナー! 先に引退したライバル陣営はむしろ温かい言葉をかける!
そして出走……からのまさかの大勝利!! 沸き立つ競馬場! 大興奮と祝勝ムードの中、慌ただしく作業に入る関係者! そんな中、著者はオグリの生い立ちに想いを馳せる……という導入から、オグリキャップの生い立ちから引退後までを描いていく、という構成です。
もうこれだけでですね、素晴らしいのが分かりますね構成の妙が光ると言いますか一番大事な所を一番最初に持ってくるこのぜいたくさ、ですがその後の内容も丹念な取材の跡がうかがえる詳細なルポで決して竜頭蛇尾に陥らないというのがまた……はぁはぁ…。
とにかく、詳細かつ丁寧に描かれた名馬一代記にして名馬をめぐる人々の群像記、と言いましょうか。読みごたえという点では抜群です! 文句なしの良書度★5!
もちろんタマモクロスや三強メンバー、ヤエノムテキ、メジロアルダン……敬称略です、などなどシングレでおなじみの方々のモデル馬も登場しますし、そちらの陣営への取材も精力的に行なわれています。その点でも楽しめますね。
オグリキャップという馬に焦点を向けつつ、騎手、生産牧場、馬主、調教師、装蹄師、厩務員、他陣営、市井のファン、そしてオグリファンである著者……「オグリキャップが作り出した時代そのもの」を活写している、と感じました。
ただ……誰にでもオススメできるかというと難しいところです。まず、すごく…長いです。ハードカバーですがちょっとした国語辞典ぐらいの分厚さがあります。私は図書館で借りましたが、貸し出し期間中に読み切れず借り直しました…。
またサブタイトルのとおり、オグリキャップをめぐる人々にも大きく焦点を当てています。もちろん素晴らしい掘り下げなのですが…ウマ娘から興味を持たれた方の多くは、その辺りは退屈に感じられるかもしれませんね。その点を考慮してウマ娘度は★4とさせていただきました。
さらに言えば、オグリキャップという馬そのものや、レースに焦点を当てるという点ではもっと掘り下げる余地があるのかもしれません。その辺りは別の本を読んでみるといいかもしれませんね。この一冊でいいなんて言っちゃいましたけど…私も今後、別の本も探してみようかと思います。
全くの余談ですがウマ娘アプリ配信当初の頃、この本は古本サイトで200円ぐらいでした。最近見ると8,500円ぐらい……これがバブルなんですね、マルゼン先輩…(遠い目)。
とにかく、この勢いで行きます……オススメ本、あります!
『馬の瞳を見つめて』(渡辺はるみ 著)
【良書度】★★★★
【ウマ娘度】★★
「愛されブロンズコレクター」「いつまでも名脇役ではいられない」でおなじみのナイスネイチャさん、そのモデル馬の生産牧場に嫁がれた女性が著者です。
著者の動物愛と牧場での生活、ナイスネイチャら生産馬との触れ合いが描かれるほのぼのとした本……です、はい。
はい……ほのぼのとしています、部分的には。
牧場生活の大変さを描くという点でもほのぼのとはしていられません(何しろ生き物相手です、仕事しなくていい日というのは基本的にありません)が。それ以上に凄絶なのが。著者の、「馬の生死」への向き合い方です。
…………大変重い話になって恐縮ですが。競馬界では日々多くの馬が走っています。当然、彼らも年齢を重ねれば引退します。好成績を収めた馬や良血統の馬は、牧場のシンボルとして大事にされたり繁殖馬となるわけですが。
……そうでない大半の馬は?
……実際のところ、全ての引退馬をその生涯にわたって養うということはまず不可能でしょう。著者もそのことを理解した上で決意します、――うちの牧場で産まれた馬は、引き取ってのびのびと余生を過ごさせよう。そして死ぬときは苦しまずに――と。
著者によれば当時、屠畜される馬の中には安楽死の処置を施されないケースがしばしばあったそうです。そのことに衝撃を受けた著者は、せめて自分の牧場で産まれた馬は引退後引き取ろうと考え、引退馬用の放牧地を設けますが。
著者の牧場は中小牧場です、予算も土地も限りがあります。そして引退馬は数多くいます――馬を生産して売るのが生産牧場の仕事ですから――。
短い間ではあるけれど、引き取った引退馬にはのびのびと余生を過ごさせ。美味しいものをたっぷりと食べさせ。そして……次の引退馬を引き取るために、元気なうちに安楽に死なせる。それが、著者の選択でした。
賛否は分かれるところだと思います。著者が安楽死を依頼した獣医にも、嫌悪感を示す方と理解を示す方とがいらっしゃったそうです。ですが、これが著者のぎりぎりの選択だったのでしょう――もちろん経済的には、一円の得にもならないどころか相当の出費を伴う選択です――。
それでも、それを実行したということに、著者の選択の意味があるのではないでしょうか。この本はきっと、人から馬への凄絶な愛のモニュメントなのではないでしょうか……そんなふうに感じます。
著者はその後も、引退馬支援のため精力的に活動したと語られています。
そして、年代的に本の中では語られていませんが。皆さんの記憶にも新しいと思います、ナイスネイチャ・伝説のバースデードネーション! 3,500万円を越える額―—さらに今年はそれ以上――が、引退馬支援のための寄付として集まりました! ばんざい!
著者の方も大変喜ばれたそうですね。ナイスネイチャ先輩、先輩は最高にキラキラした最高のウマ娘です!
…まあ、普通に考えても有馬5年連続出走かつ生涯獲得賞金がトウカイテイオーさんと五分五分という超エリートホースなんですけどね…この本の中でも他の牧場の方に「渡辺さんち(の生産馬)にはナイスネイチャがいるから」とうらやましがられていた、と書かれていました。
そんなこんなで悲喜こもごもですが。行きましょう、オススメ本、あります!
『またも負けたか100連敗 負けるが勝ち! ハルウララ物語』(岡本弘 著)
【良書度】★★
【ウマ娘度】★★★
不撓不屈の113戦、たった一度の勝利もなく、それでも皆が夢中になった。ご存じ、ハルウララさんのモデル馬を描いた本です。
詳細なルポというよりはファンブックといった感じでしょうか。ハルウララそのものだけでなく、高知競馬場の紹介、担当調教師や厩務員の方々、仕掛け人となった広報担当の方への取材もなされています。気軽に読める本ですが、もう少しハルウララの写真が載っていたら嬉しいかな、とも思いました。
個人的な意見ですが、オグリキャップが「時代を創ったアイドルホース」なら、ハルウララは「時代に望まれたアイドルホース」ではないかと思います。
バブル期前後という波に乗った時代の中、一戦一戦をドラマチックに魅せていくオグリキャップ。「負け組」という言葉が流行した不景気の中、一勝もできずとも、皆応援せずにいられなかったハルウララ。当時は「負け組の星」という呼ばれ方もありました。
実力勝負のプロスポーツの世界で弱い馬の人気が膨れ上がるのはいかがなものか、といった意見ももちろんあってしかるべきですが。暗い夜にこそ星が輝くように、その時代だからこそ輝いた負け組の星……そんな存在が必要だったのではないでしょうか。
さあ次も行きます! オススメ本、あります!
『旅路の果ての名馬たち』(吉永みち子 著)
【良書度】★★★★
【ウマ娘度】★
テンポイント、ヒカルイマイ、トウメイ、テンメイ、プレストウコウ……ウマ娘から入られたファンの方にはなじみのない名前ですよね。ウマ娘でいえばマルゼンスキーさんと同世代かさらに以前の名馬たちを追った本です。
ウマ娘と直接関連のある馬は出てこない(マルゼンスキーのエピソードが少しあるぐらい)ため、ウマ娘度は★1とさせていただきましたが…独特の深みを持った作品です。
この本の特徴的な点は、まさに「旅路の果ての名馬」――馬たちの生い立ちから「引退後」にまでスポットを当てた点です。
親子孫の三代にわたる苦難の果てに三強の一角となるも、大怪我による闘病の末亡くなった馬――。二冠を制するも馬主の名義貸し問題のため、三冠への挑戦を断たれた馬はアテ馬(繁殖の補助作業馬)として、ファンの支えを受けながら静かに暮らしている――。暴れん坊の女傑は引退後、新参馬にも先をゆずるほど大人しくなった――。マルゼンスキーに惨敗した馬はその後菊花賞を獲り、やがて海外へ渡り繁殖馬となる――。
……ここに描かれているのはどれも、ヒーローの物語ではありません。順風満帆とはいえない、むしろいつも苦難ばかり。それでも周りの人たちに愛され支えられ、自分の道を懸命に歩んできた。そんな、競走馬のエピソードという枠を越えた「人生の縮図」というべきものが垣間見える、そんな本です。
特に印象深かったのは、テンメイの引退時のエピソードです。引退後のテンメイは個人所有の種牡馬として引き取られることになったのですが。実はその後、種牡馬登録をせずに地方競馬場で走っていることが判明しました。
後援会の方たちは新しい馬主の方に抗議を重ねました。最終的には後援会が安く譲り受け、テンメイが生まれた牧場に預けることになったのですが。
後に後援会のうち、一人の方がこう語っています。
「テンメイを水沢(競馬場)で走らせたものだから、世間にずいぶん誤解されてしまったけど、(馬主の方は)とても馬の好きな方でね。しょっちゅう水沢までテンメイに会いに行ってたし、話をするときにテンメイちゃん、テンメイちゃんって言うんですよ」
「担当の厩務員さんも、情の厚い方でね、テンメイを本当にかわいがってくれてました。何度か水沢競馬場に顔を見に行っているうちに、テンメイにとって水沢競馬場で過ごした三年間は幸せだったのかもしれないと思うようになったんです」
……契約上の問題の良し悪しについては、ここでは判断できませんが。種牡馬にせず地方競馬に移していたことは、馬自身にとって良かったのでしょうか? 悪かったのでしょうか? ――そもそも走ることは競走馬にとって幸せであるのか、という問いにも結びつきますが――その問いには、答えは出ないのでしょう。あるいはこの後援会の方が語ったように、答えの移り変わり得る問いなのではないでしょうか。
……すみません、まとまりのつかない内容になってしまいましたが…名づけがたい感情が湧いてくる、そんなエピソードでした。
さて、次でいよいよラストです……オススメ本、あります!
『競馬の“言葉力”』(関口隆哉、宮崎聡史 著)
【良書度】★★★★
【ウマ娘度】★★★★
レース実況、名馬評、騎手や調教師の発言、文豪の残した競馬への格言…様々な「名言」から競走馬や騎手らのエピソードに迫る本です。
ウマ娘関連では、敬称略でマルゼンスキー、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ウオッカ、ウイニングチケットに騎乗した柴田騎手など。
トレセン学園モットーでおなじみの「一着はエクリプス、他の馬はどこにもいない」などなど、ウマ娘の作品内に取り入れられている名言やエピソードのルーツを探す楽しみ方ができますね。また、多くの方にはなじみの薄い海外馬に関する名言も多く、興味を広げることができると思います。
取り上げられているのはどれも素晴らしい言葉なのですが、一つ選ぶとしたらこれでしょうか。
「大地が、大地が弾んでミスターシービーだ!」
ミスターシービー三冠達成の菊花賞、ラストスパートの際の実況(杉本清アナウンサー)です。
大地が! 弾んで! ミスターシービー! ですよ、大地が! 弾んで! ……もうですね、素晴らしいとしか言えませんね伝わってくるこの躍動感! それをこれだけ簡潔な文章で、いいえ簡潔だからこそダイレクトに伝わってくる力強さ! 迫りくる足音が、地面の揺れさえも感じられそうなまさに名文章しかも実況でこれをとっさに言えるアナウンサーの方のセンスは本当に最高ですねこの後も「史上に残る三冠の脚、史上に残る三冠の脚だ! 拍手が湧く! ミスターシービーだ!」と名調子が続くわけではぁはぁ……。
……とにかく。「人気のシービー、実力のルドルフ」とも言われたミスターシービーさんのレースは観客を湧かせるとの定評があります。ウマ娘としてどんな描き方がなされるか、育成実装が楽しみですね!
……というか、私も育成実装まだですね、はい……。あの、皆さんの後で、後でいいので、忘れずに実装して下さいね……。
…ということで、競走馬をテーマとした本を私なりに紹介させていただきました。少しでも興味が湧いた方がいて下されば嬉しいです。
今回紹介させていただいた本の中にはかなり古い作品もあります。古書として値段が高くなっているものや、図書館で表の書棚に置かれず、書庫内に収蔵されている場合もあります。図書館で探す際は検索端末で調べるなどして、書庫にあれば司書の方にお尋ね下さい。
紹介させていただいた中で、特に一つオススメというと……どれもそれぞれに素晴らしいのですが、あえて選ぶとするなら『競馬の“言葉力”』でしょうか。複数のウマ娘モデル馬が取り上げられていることや読みやすさ、また、最近の本なので書店で手に入れやすいという点も見逃せません。
ただ、『銀の夢』『旅路の果ての~』の重厚さ、『馬の瞳を~』の唯一性、『またも負けたか~』のポップさ、『名馬を読む』の広範さ…どれも素晴らしいです。
皆さんもオススメの名馬本があればぜひ教えて下さい!
それではこれで。トレセン学園図書委員、ゼンノロブロイがお届けしました。
……育成実装待ってます(小声)。