橘 響姫side
「わざわざ田舎からありがとがんす!ささ、中さあがってあがって」
「おう、じゃまするぜ。」
そう言いながら大きなリュックとバックを持った奏さんを家の中に招き入れる。今回セイちゃんは奏さんが来ると言う事で、家を空けてくれているので家には私一人だけだ。
「上京して大丈夫かと心配してたけど、元気そうで良かったぜ」
「あ、アハハ」
すいません奏さん、私は毎日都会の恐怖に震えて生きているので若干空元気な所もあります。
目の前の女性、奏さんとの出会いは私が上京する四年前。私が中学一年生になったばかりの時まで遡る。
とある日の夜、家にお父さんから1本の電話があった。それを聞いてお母さんが酷く驚いており、当時の私は首を傾げた。
もしかして車に何かトラブルでもあったのだろうか?そんな私の想像は父親が帰ってきた事で変わった。
なんと父さんは、ボロボロな服装で倒れていた奏さんを見つけ保護して家に連れてきたらしい。お母さんに連絡していたから良かったものの、連絡が無かったら酷く気まずい光景だったと思う。
そんな奏さんは家で目が覚めたとき、私を見ると泣きながらひたすらにごめん、と呟きながら布団を濡らしていた。
お父さんによると奏さんは、お父ちゃんに助けてもらうまでの記憶が無いらしい。お父ちゃんとお母ちゃんが凄く心配して気に掛けているのを覚えている。
結局それから奏さんは私の家でアルバイト等をして暮らしている。自分の名前である奏以外は何も思い出せていないらしい。なので名字も今は私と同じ名字である橘となっている。
「それにしても、オレはいつになったら思い出せんのかねぇ……」
「そっか、奏さんはまだ記憶が戻ってねぇべな」
「まぁな、最近は無理に思い出さなくてもいいかなぁって考えるんだけどな。今の生活、結構気に入ってるんだよ」
そう言って太陽の様に明るく笑う奏さんに釣られて私も笑みを浮かべる。
「そう言えば、何を送ってくれたんだべか?」
そう言いながら渡されたバックの中身を開ける。そこには南部せんべいに、かっけといった食材か沢山入っていた。
「こんなに沢山!それにかっけとか久しぶりに見たべ!早速今日の晩ごはんにするべ!」
「んじゃ、オレは帰るぜ」
「届け物ありがとう、今度の長期休みにでも田舎さ帰るべ」
「おう、叔母さん達に伝えとくぜ」
そう言いながら奏さんを送り出し、見えなくなるまで手を振り続けた。
風鳴 翼side
それは、一目みたとき幻覚だと考えた。
「いやぁ、クレープなんて始めて食ったけどすゲェうめえな!いつもこれを食えるなんて都会の人たちが羨ましいぜったく」
少し先のクレープの屋台にて酷く見覚えのある顔がクレープを食べて満足げな表情を浮かべている。
天羽 奏。私の相棒であり、戦友であり亡き者となってしまったはずの存在。3年前のあの日、絶唱の反動で命を落としてしまったはずの彼女が何故か目の前にいる。
あぁ、また私は幻覚を見ているのか………
あれ、幻覚って思い出に近いものから発生するよな?私は少なくとも奏とクレープ屋に行ったことなどないはずだが。
………そもそも幻覚ならクレープを店員から貰って食べるなんて出来るはずが。
そうか、そもそもあの人は奏じゃない。ただの他人の空似だろう。何故なら奏は、私の目の前で………。
「なぁ、あんた」
そんな考えをしていると、何故か目の前に奏に似た女性が目の前に立っており不思議そうな目で此方を見つめていた。
「何だろうか?」
「変なこと聞くけどさ、昔何処かでアタシと会ったことある?」
「ッ………ない、はずだが」
「そうか、急に変な質問して悪かったな。これ質問に答えてくれたお礼だ、上手いから食ってみな」
そう言って彼女は私の手にクレープを持たせると、ヒラヒラと手を振って歩いていった。
奏に似た彼女に渡されたクレープを口へと運び一口食べる。
何故だろうか、甘いはずのクレープは少ししょっぱく感じた。
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