刀剣男士は心身共にボロボロ。
審神者はヤクザ。
息が上がる、口の中は血塗れだ。
鉄臭い味がする、食べなくなって久しい。
政府の刀剣だったときは食べることは当然だった、でも今の主になってからは食べたのは数えるくらいしかない。
重傷になっても手入れはされず、風呂もない、休みもない、ひたすら出撃か遠征をさせられる日々、寝る暇すら与えられず肥前はボロボロだった。
何も食べたないのに気持ちが悪い、苦しい、痛い、このまま俺は朽ちていくのか。
…
「ヤッホォーイ、拾い物しちゃった」
「…、おい。すぐ風呂の用意しろっ、こんのすけ手入れ部屋の用意!」
「はいっ!!」
葛羅が叫ぶように言って手入れ部屋に運ぶ、非番の骨喰と愛染が風呂場に走っていく。
「本霊様、」
「なぁに、」
「今度も、傷ついてる奴がいたら連れてきてくれ。ガキが腹すかして見てるのは耐えられねぇんだ」
「モチロン、これからもよろしくね」
加州清光の本霊は嬉しそうに笑った、心の中で「これだから人間は愛おしい」と呟いた。
ドタドタと走っていく彼らの姿を見送りながら、本霊は微笑んだ。
その後、目が覚めた肥前は風呂に連れて行かれた、温かいお湯は久しぶりだった。一緒に入った愛染や骨喰が風呂場のことを色々と教えてくれた。
優しくて涙が溢れた、あいつらと一緒に。
「おい、本霊様!次々連れてきすぎだろうが、」
「え…、」
「よかったな、肥前。」
「さっき主人から連絡があって、残ってた三人保護したって」
頬を伝う涙を紛らわすようにシャワーをかけた。
風呂から上がって聞かされたのは、加州清光の本霊が本丸に取り残されていた、秋田、鯰尾、蜂須賀を保護したそうだ。
三人とも傷がひどく手入れはもう少し時間がかかるそうだ。
…
食堂に通された肥前は、席についた。
今から夕食だという、丸皿に円を描くように盛られた餃子は香ばしい匂いを漂わせている。
ニンニクの匂いが食欲をそそる、白飯と卵スープが出され「たくさん作るから好きなだけ食え、心配しなくてもあいつらも手入れが終われば飯を出す。」と葛羅に言われた。
肥前は、躊躇いつつも餃子をとり食べる。
口の中に広がる肉汁はニンニクとニラの味がしっかりしていて美味しい、白菜がいいアクセントになっている。
餃子を頬張り白飯を口の中にかきこむ、卵のスープを口に入れて一息つく。
美味しい、こんなに腹を満たせたのは久しぶりだ。
優しいこの場所でご飯を食べているとわかる、やっとあの地獄から抜け出せた。
犠牲になった仲間達にもここに来て欲しかった、そう思いつつ幸せを噛み締めた。