「人造神格」呼ばれる術式データをシステムコアに宿した魔術デバイス
その名の通り少女にしか動かせないが、これは人造神格というものが巫女に対して力を付与するものであり。正しくは武装巫女システムとも呼べる。
人造神格から抽出したエネルギーを武装や術式などに出力し、運用する。
現在は遺失品や技術流出などにより、様々な勢力で運用されている
また基本的にシステムコアと武器があれば最低限度の運用が可能なので非常に低コストで量産が容易である
迷い子1/3
破壊の限りを尽くした大戦期は勝利者さえもわからぬまま終わりを迎え、後に残されたのは崩壊した文明と荒れ果てた世界。
灰色の荒野に黒く燃え尽きた廃都市、白く輝く雪原、汚染された海洋……何もかもが死に絶えたかの様に見えた。
だが生命は……人類は死滅してはいなかった!
機関砲によって廃墟となったビル群が崩壊していく、先走ったバカの乗ったバギーのいくらかが落ちてきた瓦礫に巻き込まれてクラッシュし、爆炎と砂煙が立ち込める。
おまけに放たれるグレネードランチャーの爆風は明らかに味方を巻き込んでいるし、それを気にしている様子すらない。
死をも恐れぬというか、単に興奮で麻痺しているのかもしれない。
純粋に距離があるからかこちらに気づいている様子はない。
略奪者どもが狙っていたのはまた別の略奪者どもの物資輸送車、勝手に潰しあえとしか思わないが困った事にその荷物が厄介だった。
どこから拾ってきたのか、それは完全保管状態の「核爆弾」だ。当然ながら野蛮な連中にそんなものを持たせておけばどんな惨劇が起こるか分かったものではない。
なので即座に対応可能かつ仮に起爆しても解決可能な私達が派遣される事となった訳である。
「あーあー今日も変わらず元気な事だ、バイタリティだけは評価したいね」
私の姉であるナユタ・アカネ。
「姉さん、そんなのんきな事を言ってる場合ではありません。アレは想像以上のバカの集まりですよ」
そして私、ナユタ・ハレル。
この二人だけで武装した略奪者どもの抗争のど真ん中にある核爆弾をどうにかしろ、それが私達の組織「ナユタ」の方針であり……それ以上の具体的な指示はない。
どんな手段で、どういう風に解決するか、それは私が決めなければならない。
私の選択が結果を変える。
ならば迷っている暇はない、躊躇いこそが全てにおいて命取りとなる。
「連中を黙らせます、姉さんはその隙を見て爆弾の確保をお願いします」
「君がそうしたいなら、従うよ。でもいいのかい、私ならもっと確実に連中を始末できるよ?」
「目的はあくまで爆弾を処理する事です、連中を始末するのは私達の管轄ではありません」
「言うようになったじゃないか、妹の成長がうれしいねえ」
時間はそれほど残されてない、ヤケクソになって起爆されてしまえばもっと面倒になる。
私は姉さんの言葉に返事も返さぬまま宙へ浮かび、最大加速で渦中に飛び込む。
最低限必要なのは連中の火器、特に威力の高いものから排除するべきで、次に足だ。追走側の略奪者達の後ろを取り、すれ違いざまに車両のタイヤ、車載砲を斬り捨てて無力化していく。幸いにも目の前の獲物を狙うバカどもは後ろからどんどんと味方が減っている事に気づかない。
これが指揮系統のしっかりした組織ならばこうもいかないだろうけれど、荒くれものと暴力以外にとりえのないバカどもですが……どうやら追われていた側の略奪者達は私の存在に気づいたようです。
自分達に向けてバカスカ撃ちこんできた相手が減ればそうもなりましょう、ですが連中にとっては敵が私に変わっただけです。容赦なく機関砲の弾丸が飛び込んでくるのを左右上下に回避しながらも前進、地を走るより空を飛ぶ方が早い。
「なっなんだぁってめえ!どこの魔法少女だぁっ!」
銃座に座ってたスキンヘッドが手持ちのグレネードランチャーを構えながら吠えるも私は相手にせず、バギーのタイヤを切り裂いてクラッシュさせる。
車体が瓦礫に突っ込み、見事に吹っ飛んでいった上にグレネードが誘爆する、とことん運が無い奴らですが。この時代の人間はタフですからね、きっと生きているでしょう。
これで護衛は殆どいなくなった、輸送車両の方はどうなっているのかと感覚を研ぎ澄ませて追いかける。
まるで無事の様ですが、一つ疑問がありました。
姉さん何処だ?
私は一つの予感から感覚を広げて、その姿を探す。
そして見つけたのは、廃墟のカフェテラスで優雅にお茶を堪能する姉さんの姿だった。どこから持ってきたのか綺麗なティーセットまで用意していて、私がそれを察知したのを認識したのかフフッと笑っていた。
おい、仕事しろ姉さん。
そんな時、輸送車両のハッチが開く。
中から放たれた青く輝くプラズマ弾をバリアを纏わせたブレードでを逸らして後方へ受け流す。
続けて現れたのは、私達と同じ魔法少女。
ただしその装備は略奪者共の仲間とはとても思ない「正規品」だ、鹵獲品や継接ぎなどではない、明らかに後ろ盾のある存在。
「ふん、つまらん仕事だと思っていたが……存外に面白そうな相手が出てきてくれたな」
《MCMS》の所属識別コードが表示されたソレは企業の私兵、野盗や荒くれものとは全く別の次元の存在。
なるほど、買い取り手は既に居たという訳ですが、それを渡す訳にはいかない。
そして戦いを心待ちにしていたかの様な笑み、これは交渉の通じる様な相手ではないのも違いない。
して、相手の装備を見ればアーマーに加えてプラズマライフルにブレード、そしてショルダーキャノンが左側にマウントされている。対して私の武装はブレード一本にアウターのアーマージャケット、やや不利。
「せいぜい楽しませてくれ」
銃口がこちらに向くより早く動き出す、まずは距離を開き廃ビルを遮蔽物として身を隠す。高熱のレーザーがコンクリートを貫通して、迫りくるのを回避しながらシステムコアにアクセス。
現在、使用可能なフォームは「ブレイズテイル」か「ホワイトフロスト」のどちらか、もう一つ選択肢はあるとはいえ極力取りたくはない。
相手も同じ魔法少女ならホワイトフロストでは決定力不足、ならばブレイズテイルだ。
コアを介して武装構築材「アームズマテリアル」を分解・再構築して装着させ、フォームチェンジを行う。
私の纏う武装を妖狐の力を封じ込めて素材とした火炎属性形態へと変化させ、すぐさま式神を4体放つ。それはいわば自動で敵を追尾し、火炎弾を放つ簡易的攻撃ドローン。
「術使いか!面白い!」
小柄で素早く動き、小回りの利く式神だが防御力は大したことがない。火炎弾は回避され反撃で放たれたグレネードの爆発で簡単に破壊されて処理される。
それで終わりではない。加えて今度は8体の式神を放ちながら私は術式を構築しながら思案する。
いくら威力が低く、機械的な攻撃でも四方八方から来ればそれなりに厄介、相手の足止めを行いながら私はブレードに火炎のエレメントを纏わせる。
準備は整った。
式神を一斉に自爆させて炎で目くらましを行い、私は廃ビルを突き抜けて相手の魔法少女へと斬りかかる。
「ぬるいぞ!!」
それに対して相手はプラズマライフルをこちらに向けるが私の方が早いし、何より炎の分のリーチがある。炎の刀身により銃身を切断、返す一撃で突きを放つが即座に振りぬいたブレードによって防がれる。
しかし威力もこちらが上回っている、盾としたブレードが半ばから融解し一瞬の拮抗の後に断ち折り、相手のバリアコーティングを貫通し、肩を貫いた。
魔法少女にとってはこの程度ならば致命傷ではない、が武器は破壊し大きな負傷ともなれば戦闘の続行は困難、それに何よりも命まで取る理由はない。
「死にたくなければ、追いかけてこない事ですね」
それだけ言い放って相手からブレードを引き抜き、私はすぐさまに輸送車両へと向かう。
「お疲れだね、ハレル。言われた通りに爆弾は確保しておいたよ」
そして先ほどよりも少し先の道、輸送車両はすぐに見つかった。その側で爆弾を椅子にお茶を飲む姉さんと共に。
なるほど、先ほど手を出さずに待っていたのは魔法少女が護衛についているというのが分かっていたからか……と納得するも、姉さんならあのぐらいの相手ならあっという間に無力化できるだろうに。
「まあ何事も経験さ、全てが上手く行く事などない。予想外、予定外なんていつも通りだろう?」
姉さんは、私に、私だけに期待を向けている。
だからいつも何かと理由を付けて、私を強くしようとする。
それがこの人にとってただ一つの希望であり、生きる理由であることを私は知っている。
だからいつも不安になる、私が一人でも居られる様になってしまった時、あるいは姉さんから離れた時に、何が起こるのか。
私にはそれに対する答えをまだ知らない。
出来るのはただ、姉さんを一人ぼっちにさせないという事。
そして、他のどんな記憶を失っても……姉さんの事だけは覚えていていてあげるという事だけ。
「仕事は果たしました。一緒に帰りましょう、姉さん」
爆弾を回収し、私達は帰路に着く。
けれど戦いは終わる事などなく、私達の仕事もまた尽きる事はない。
「ナユタ」それは人造の神の力を操る神官と巫女で構成された魔術結社、主な仕事は少しばかりスケールの大きな「人助け」。例え相手が人間であろうと、妖魔であろうと、神であろうと、人々を踏み躙ろうというのなら立ち向かうだけ。
人間同士の争いで荒廃したこの世界でも、それは変わらないまま。