序章:終末魔法少女ハレル   作:青川トーン

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試練1/3

 フォートレスキャリアーは旧時代の重機動兵器の一種。重装甲に重火力と圧倒的な輸送性能で現在でも大規模な隊商などが運用する事があるものの、整備や弾薬補充に大量の燃料といった保守コストの高さから姿を消しつつある。

 何よりも厄介なのはこいつは現在「暴走状態」となっていて、全てを敵と認識しているという事。つまり放っておけば無関係の人間に被害が出かねないという事です。

 

 大量の攻撃用ドローンに無誘導ロケット・対空砲、プラズマキャノンに大型レールガン、しかもご丁寧にバリア発生装置まで積んで近代化改修されている。どれも製造元が異なるパーツで構成されていて、略奪品あるいは廃品から再生させたものだろう。

 

『見ただけでそんなことまでわかるのかよ』

「ええ、こう見えても分析力には自信がありますからね。暴走状態にしているということはご丁寧にハッキング対策もしているでしょうね……つまりは動かなくなるまで破壊するしかありません」

『シンプルでいいな』

「バカいわないでください、流石にこんな軽装では私でも骨が折れます。あなたの助けが必要です」

『何をすればいい?』

 

 これだけの巨体を破壊するにはそれなりの順序がある。まずは守りの要であるバリア発生装置を突破しなければならない、これにはまず周波数を突き止めた上でその内側に入って発振器を破壊する必要がある。

 

 せめてホワイトフロストか使えればよかったのですが、先の襲撃で使った瞬間に壊されたのが痛い、もう少し出し惜しみするべきであった。しかしないものねだりをしても仕方がない。

 

「私がバリアの突破方法を分析する間、回避とドローンの排除をお願いします」

『わかった、何か気を付ける事はあるか?』

「耐久性に自身はありますが、受けるより回避を優先してください。また動けなくなると困るので」

 

 そしてシルスに体の操作権限を委ねて、私はセンサーから得られる情報を処理していく。旧式とはいえ決して侮れる相手ではない、そもそも奴らが型落ちになったのはあくまでコストの理由からだ、弱くなった訳じゃない。

 

 飛んでくるロケットをうまく遮蔽物を使って防御しつつ、ドローンを誘いだしてプラズマキャノンの射線から逃れながら数を減らしていく。あまり高度を取れば対空砲の爆風に巻き込まれる、低すぎればロケットの爆風に当たりかねない。うまくバランスを取りながらも避けられない攻撃は魔術シールドで防ぐ。シルスの想像以上の動きに驚きながらも、私は自分の役目を忘れない。

 

 バリアやシールドは当然ながら使えば使うほどにエネルギーを消耗するし、大きすぎる威力は減衰しきれない事もある。相手のプラズマキャノンを奪えればいいがあいにく接触すればこっちがダメージを受けるだろう、ならば今ある地形を利用する。パルスセンサーで探知するのは地下空洞。

 

 かつて都市の地下を張り巡らされたインフラや通路の残骸を使う事でまずは奴の足を潰す。

 

「シルス、そこの崩落した穴から地下へ!」

『つまりは落とし穴か』

「そういう事です」

 

 さすがに地上要塞ですからね、奴も地に足がついている以上攻略する方法はいくらでもあるという事です。当然ながらドローンが追尾してくるのを撃ち落としながらフォートレスキャリアーの下にある地下鉄道跡地に潜り込む事に成功する。けれど問題はここからだ、いくら風化や劣化で朽ちているとはいえ奴が乗っても大丈夫だという事はまだそこそこに強度が残っている。

 

 どうにかして崩落させる必要がある上に、それに巻き込まれない様にもしなければならない。

 

「シルス、天井に手を触れてください。時限爆弾をセットするのです、まあ爆弾というか魔法なんですが」

『なるほど、その後すぐに地上に逃げろって事だな?』

「その通り、崩落に巻き込まれれば無駄にダメージを受ける上に足止めまで喰らいますから気を付けてくださいね」

 

 私はバリアコーティングで包んだ振動爆発魔法を建材へと6つ設置して、爆発までの時間を30秒で設定した上でカウントを開始する。

 

「さあ脱出です」

 

 その合図と共にシルスが体を動かし、地上への出口目指して地下を駆け抜ける。闇の中に這いずる有象無象の相手は今日はしなくてもいい、適当にあしらい一直線に地上へと飛び出すと爆発音と共に砂煙が舞い上がり、轟音を立ててフォートレスキャリアーは沈む。これで良し、と思った。

 

『おいなんかアイツの砲身が光ってるぞ!』

 だがシルスの言葉と共に目を疑った、奴はプラズマキャノンを後部に撃ちこんだ爆風と衝撃でなんと穴から抜け出して来た。当然ながら自身もダメージを受けていて、後ろにあった武装は使い物にならなくなっていて、バリアも不安定化しているものの戦闘継続は全然余裕でしょう。

 

『この世界は機械の連中にまで根性論が浸透してるんだな』

「私も今まで見た中で一番骨のあるマシンですよアレは」

『なら応えてやらないと、敵の期待を裏切っちゃわるいからな』

 

 彼の好戦的な言葉はまるで相対する障害、脅威に対する尊敬にも感じられる。なるほど、私にはよくわからない感覚でしたがこれが俗にいう「燃えて来た」という奴でしょう。手強い相手への敬意と称賛、しかして勝つのは己だという事。私にもまだまだ学ぶべき事が多いのはわかっていましたが、こういう所にもあるのですね。

 

 プラズマキャノンの砲身が再び輝きだすよりも早く動く、もう一度崩落させて今度こそ停止といきたい所ですが、今破壊した付近はそれこそもう一度潜るにはあまりにリスクが高すぎる。となれば今度は地上からのアプローチだ。地形をスキャンして使えそうなものが無いか探す。

 

『なあ、さっき使った爆発魔法でバリアを爆破できたりしないか?』

「無理ですね、あれは飛ばしたりする様には出来てないのです。動かない対象物に置いて使うのです」

『地雷みたいには?』

「使えますが、奴がそうそう追いかけてくるように見えますか……そうですね。ありがとうございます、いい案がでました。爆破でビルを倒してぶつけるとしましょう」

 

 なるほど、質量は確かにいい武器でしょう。プラズマの爆風をシールドで防ぎながらぶつけやすそうな建物に目星をつける。出来れば高いビルの方がいい。ならばと奴の向こう側だ。

 

「正面突破と迂回、どっちがいいですか」

『急いでるなら正面突破だろう』

 

 私達はフォートレスキャリアーの正面へと飛び出す、一斉に機銃やロケットの砲口がこちらへ向く。

 

 放たれた弾丸は戻らない、前へ、ただ前へと進むのみ。

 

 敵を飛び越えて、道路側に面した壁に大きな術式を一つ。そこに再びプラズマキャノンとロケットが飛び込んでくるのを飛翔して回避、ビルに激突したロケットとプラズマの爆風が柱を破壊し、さらに術式が起爆する。

 

 地球の重力と自重に耐えきれずにビルは傾き、巨大な移動要塞の上に影を落とす。轟音と共に再び砂煙が上がり、遅れて大爆発が起こる。センサーでスキャンすれば完全に反応は停止、燃え上がる炎と瓦礫の山が残った。

 

「やりましたね、シルス。中々の腕です、私の中でのあなたの評価がまた上がりましたよ」

『そりゃ、まあ悪い気はしないな……』

「期待の新人から頼れる新人にランクアップですよ」

『……ちなみにランクアップしていくと何になっていくんだ?』

「そうですね、仕事仲間・ベストパートナーと上がっていって最終的には親友とか恋人とか家族ですかね。ちなみにシルスは元の世界に恋人とか居ましたか?」

『いねえよ』

「そうですか、もし私に惚れたらぜひ告白してみてください。恋人というものにも興味はあるので」

 

 一瞬、頭の中で彼の呆れた様な顔が浮かんだ。

 

『はぁ……考えとくよ』

 

 なんかバカにされたような気がしましたが、今は置いておくとしましょう。

 実際に彼に興味があるのも、恋愛というものも知ってみたいのもまた本当なんですけれど。

 

「……姉さんはこういうシチュエーションで仲が進展すると言ってたんですが」

 

 再びシルスから呆れている様な気配を感じた、解せぬ。

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