序章:終末魔法少女ハレル   作:青川トーン

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 市街地に入り、オートレイダーがスピードを落とす。比較的新しい建物群と損傷の少ない道に段々と人の気配が近づいてくるのを感じる。そして武器のついていないドローンが俺を取り囲む様に現れ、しばらく周囲を漂った後に散開していく。

 

 おそらくは街の警備とかそういうものだろう、これは通っていいのか?確認するべきだな。

 

「おい、ハレル」

 

 そこにいるのは間違いないが返事はない、オートレイダーを停止させて俺は瓦礫に腰掛ける。ちゃんと聞いておかないと面倒な事になるのは間違いないからな。何事も報告連絡相談だ。それにしてもよっぽど考え事に集中しているのか返事がない。

 

 空を見上げれば日は傾き、もうすぐ夕暮れといった所か?灰色の雲に覆われてるせいであんまり実感がわかないのが難点だ。この世界に来てまだ3日ぐらいだというのに元の世界の空が懐かしくなる。もう何年も青空を見ていない気がする。

 

 家族の事を考える、もし仮に同じだけの時間が経っていたなら失踪届か。ニュースになってそうで嫌だ、ほぼ身の着だったから事件性ありみたいな感じかな。心配しているだろうなと思うと今すぐにでも帰りたい気持ちが浮き上がって来る。それに最初にアカネさんに言われた「時間の流れ」が違うかもしれないという言葉を思い浮かべるとやはり不安にはなってくる。

 

 けど弱気になっていてもどうにもならない、今はハレルを信じて待つだけだ。

 風音が聞こえるのを感じ取り、そちらへと目をやる。街の方角からやってくるのはドレスめいた衣装を纏った魔法少女だ、敵か?とは一瞬警戒するがよくみれば武器は持っていないし、何より殺気を感じない。

 

 一応は何があっても動きだせる様にと意識しながら、それを目で追っていると彼女はこちらへと降りてくる。そういえばさっきのドローンの持ち主……というのもありえるな。ウェーブのかかった青い目に金髪にロール、典型的なお嬢様みたいだな。と思っていたがこの世界にお嬢様概念は残っているのだろうか?

 

 

「あら、かわいい男の子がいますわね。そこの方、どうかしましたかしら?」

「少し相棒を待ってる、この辺りに住んでるのか?」

「そうですわ、治安維持を行っておりますのよ」

「なるほど、迷惑にそうなら迂回するよ」

 

 テンプレートというか、こんなベタなお嬢様いる??それにしても治安維持か……警備員か警察みたいなのものか。

 

「あなたのようなかわいい男の子がこんな所で一人、危ないですわね。とりあえず街の方にいらっしゃいませ。待ち合わせにしてもぴったりなスポットがありますのよ」

 

 おほほと笑う目の前のお嬢様、人をやたら子供扱いしてくるのはなんかムカつくが……まあこんな所よりちゃんと休める所の方がありがたいな。しかし……見知らぬ相手についていくにしてもな。

 

「ご心配はいりませんわ、確かに警戒する気持ちもわかりますわ。ですがわたくし、こう見えてもこの辺りを治める企業の令嬢ですのよ」

「わざわざ危ない仕事を引き受けるのかよ」

「その方が多くの方を守れますわ」

 

 なるほどな、まあ悪い奴ではなさそうだ。まあ何か問題があったら、その時はその時だ。

 

「わかった、ついていこう。案内してくれ」

「ではそのおレイダーに乗ってついてきてくださいまし」

 

 おレイダーってなんだよ。一応いつでも何かあった時に銃を抜ける様にだけして俺は目の前のある意味では怪しい女についていく。そういえば。

 

「あんた、名前は?俺はナユタ・シルスという者だ」

「な……ナユタ!?お……おほほ……ちょっと待ってくださいまし」

 

 そいつはナユタの名を聞いた瞬間、目に見える程うろたえはじめ、目が泳ぎまくる。何かまずいことでもあるのか……そういえばこの世界でのナユタの知名度とか評判ってどうなってるんだ?やっぱりまずかったか?

 

「そ……それでな……なんの御用でこの街へ……」

「あー……まあ用事の途中で休憩だ、ちょっと疲れるようなことが続いたからな。それに長くは滞在しない筈だ、すぐに行かなきゃいけないところがあるからな」

「そそそそうでございましたの!おほ……おほほほ!」

 

 そこへスッとハレルの幻像が現れる、どうやら探し物は終わったみたいだ。

 

「ただいま戻りました、シルス」

 

「うぎゃああああああっ!!出ましたわ~!!!!」

 

 それに対してお化けでも見たかのような表情で叫ぶご令嬢、確かに幽霊みたいにも見えなくはないが……こいつ騒がしいな!

 

「シルス、そこのお方は誰ですか?」

「さあ、なんかこの辺りを治める企業の令嬢だとか……」

「記憶が正しければ「玲栄工業」の玲栄エレナですね、名前だけなら知ってます。なんせナユタの事を知らずに庇護下に居れようとして……控えめに言ってスベった方ですから」

 

 ああ……なるほどだからか、ナユタと聞いた途端に慌てだしたのは……まあ敵対してないならそれに越したことはない。

 

「アワワ……アワ……私の恥が……黒歴史が……広まってしまってますわ……」

「まああんたの人の良さは伝わったから……悪かったな疑ったりして」

「ええ、ナユタもあなた方の様にこうやって人々を守ろうとする姿勢は決して嫌ってませんですし。現在でも取引は続いていますでしょう?」

「そ……その件ははい、弊社の商品をご利用いただいている事や技術提供には感謝しておりますわ……」

 

 へー……ナユタにそんな面もあったのか、また一つこの世界の知識が増えたな。

 

「ところでどんな商品を扱ってるんだ?」

「あなたが使っているそのおレイダーの部品や普段使いする様々な工具などの消耗品などを提供しておりますわ!他にも生活家電に浄水装置、空気洗浄機に食品も少々扱っておりますわ!」

「なるほど結構手広くやってるんだ……生活に役立つものばかりだ……」

「そう!そこなのです!確かに武器も大事なのですが、生きていくには相応の環境が必要なのです!なのにどいつもこいつも兵器に兵器に兵器!戦いばっかりですの!戦いはもう飽きましたわ!」

 

 プンスカ!という擬音が似合う様な怒りの言葉を吐くエレナ嬢に同意しながら、この世界に住む人々の生活という現実を少し知れる。

 

「それでハレル、この街で何かするんだろう?具体的に何をするんだ?」

「最低限度の武器弾薬を調達、それから食事と休息も取って貰います。さすがに私は平気でもシルスが耐えられそうにないので。ただ明日の朝には出立するつもりでいてください」

 

 という事は、この街で本格的に休むという事か。

 

「わかった……で宿とかの当てはあるのか?ついでに金」

「なければそんなこと言いませんよ、それに無いなら無いでそこに取引できる相手がいるじゃありませんか」

「そ……そうでございますわね……武器は無理ですが泊まる場所と食事ぐらいでしたらご用意できますが」

 

 なんというかハレルって時々びっくりするぐらい図々しいな……とエレナ嬢への対応で思い浮かぶ、まあこのぐらいふてぶてしくて面の皮が厚くなければやっていけないのかもしれない。

 

「そのありがとうございます、エレナさん。とても感謝します」

「あら……あらあら~!シルスくんは慎み深くて可愛いですわね!!!そこのハレルさんも見習ってくださいまし!」

「なんで私今罵倒されたんですか?それとそのシルスは私のパートナーですよ!ベタベタしないでください」

 

 オートレイダーに並走するように飛ぶ上機嫌なエレナ嬢と何故か不機嫌なハレルに挟まれ俺は溜息を吐く。

「なんでエレナさんは俺を気に入ったんですか」

「わたくし、何よりもかわいい男の子が大好きですの」

 

 恥ずかしいな、というかかわいい男の子扱いされるのは一体なんだ?どんな感性だ!

 

「確かにシルスがかわいいのは同意しますね、こう自信なさげなのに精一杯頑張ってる所とかかっこよくあろうとするとか。ですが私のですからね」

 

 いやいつ俺はお前のものになったんだよ……妙に顔が熱くなるし、二人は俺の顔を見てニタニタと笑っている。悪い気はしないけど、今はそういう場合じゃないだろうに!

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