序章:終末魔法少女ハレル   作:青川トーン

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 この世界で初めて人の住む街を見た、小奇麗で近未来的で人の通りが少なく寂れていて。建物も崩れ朽ちたものではないが少しばかり継接ぎめいて補修されたものが多い。

 

「これがこの世界の人々の暮らしの一部分か」

「ここは平和な方です、玲栄の管理がしっかりしているからスラム街もないし。賊も簡単に手出しできない程度には戦力も揃っています。まあ勢力争いなどで重要視されている土地ではないというのもありますが」

「お褒めいただけて幸いですわ、それと今さらりとこの世界の生まれ無い事をカミングアウトされましたわね」

 

 ああ、口が滑ったが……エレナ嬢は別にって表情をしているな。一応今後は気を付けよう。

 

「その通り、別の世界から突然に飛ばされて死に掛けた所を拾ってもらったんだ」

「不幸中の幸いですわね、わたくしも生きている状態の異世界の方は初めて見ましたわ」

 

 確かに出た場所が悪ければ死ぬような事もあろう、何よりも別の世界に飛ばされるという事自体が相当に運が悪いといえばそうではある。

 

「さあ、見えてきましたわよ。わたくしの屋敷でございますわ」

 

 ……?……??……??

 

「……どれだ?」

 

 ビル街を抜けると芝生の生えた公園の様な広場に出た、よく考えると草木の生えてる地面を見るのは珍しいな……比較的汚染が少ないというか除染でもしているのだろうか?

 

「この辺り一帯が全部わたくし達、玲栄の所有する土地ですわ」

「スケールがデカすぎる」

「まあ人が少ないからそうもなりますよ、シルス」

 

 なるほど、人口が少ないなら確かにこうデカデカと庭があってもおかしくないな……しかしこう……フェンスだとかに覆われているイメージがあったんだが……。でも確かに人口が少ない場所ほど土地は安いって何かで聞いたな……後は外国の豪邸とかもテレビに映ってる分でしか見た事ないしもっと広かったのかもしれない……。

 

「フフフ……驚いたようですわね!これもナユタの皆さまから頂いた除染技術の賜物ですわ!」

「そういえば姉さんも言ってましたね……除染機材なんかを取引に使ってると」

「まだコストこそ大きいので生活圏内を支えるのがせいぜいですが、余裕が出来れば徐々にですが自然を取り戻せる筈ですわ!その為にも一層我々が頑張らないといけないのですわ!」

 

 なるほどなぁ……破壊の後には再生があるといった所か、なんだか物騒な話題ばかりかと思えばこうしてきちんと建設的な考えを出来る人もいるんだ……。

 

「……皆が皆、あなた達の様にこうした考えを持ってくれるとナユタとしても助かるのですが……」

「あなた方に言われると悲壮感がすごいのでちょっとそういうのおやめになってくださいまし」

「MCMSの連中にも爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいですよ、アライアンスやユニオンもそこそこそれなりに秩序の回復に向かって取り組んではいるものの犬猿の仲ですし……いつになったら私達は休めるんでしょうね」

「そのリアリティのある愚痴やめてくださまし、わたくしにはちょっと荷が重すぎましてよ。するならそこのシルスくんにしてくださいまし」

「俺に振らないで欲しい、世界情勢にはまだ詳しくないんだ」

「ここだけの話なんですがナユタの中で愚痴を言おうものなら即仕事を振られますよ、お前が平和にしてこいって」

 

 ええ……コワ……念の為覚えておこう、それにしてもハレルがこうして人間らしいというか俗っぽい感情を見せるのは初めて見たな……出会ってまだ3日しか経ってないけどすぐに御役目、仕事、責任って言葉が出てくる様な真面目すぎる性格で……言っちゃあれだけど社畜って言葉が似合う様な奴だと思ってたが……。

 

 でも大人びてる感じはする……不思議な奴だよなぁ……そうなるとちょっと気になってくる事がある。

 

「すごく今更だし関係のない話だけど、ハレルって何歳なんだ?ちょっと気になったんだ」

「わたくしは今年で17歳ですわ~!」

「そっちは聞いてない……けれど17歳でその、色々考えたり仕事したりって俺の住んでた所じゃあんまり見かけなかったな……みんな高校に通ってバイトして……それから大学行ってから仕事を探すみたいな……」

「高校……?なんですのそれ?」

 

 ……そうか、こんな世界だからもしかして……。

 

「シルス、説明を」

「義務教育制度ってのがあって、大体15歳ぐらいまでは小学校・中学校って通ってその後に3年制の学校があったんだよ、大体そこである程度知識を付けたりして大学なんかに通うかするんだ」

「なるほど~ユニオン圏や龍都なんかでは学園というものがありますがそれに似た感じですのね、この街にも子供への教育を行う為の教室はいくらかありますけれどそれは15歳ぐらいまでですから……あなたの言う中学校ぐらいまでですわね」

「ナユタには学校はありませんね、私は生まれてこの方修行と研究と任務で学んできましたから」

 

 ない事はないけれどそれでもって感じか……そりゃ国とか教育機関とかそういうバックアップがあってこそだもんな、あんまり詳しくないけれど。

 

「それでシルスさんは何歳ですの?」

「俺は14歳だ」

「あらあら……でしたらその中学校に通ってらしたのね。その割には色々学があるようですわね」

「そんなことはない……聞きかじった情報だとか塾……学校外での勉強もしてただけだ。それにインターネットがあったから色々情報を調べる事が出来た」

 

 そう、なによりもネットの力だ。俺でも簡単に情報を探す事が出来るソレがこの世界は無いという、それが大きな違いだ。情報の差は貧富や技術の差にも繋がるってのはよくニュースになっていたから覚えている。

 

「いわば大戦期前の世界に近いという事です、まあ大体予想はついていましたが……それはさておきシルスの質問への回答としては肉体年齢は大体15歳、精神年齢は20ぐらいとでも回答しておきましょう。一応年上ですがそこまで畏まったりする必要はありませんよ。しょっちゅう記憶喪失になって学びなおさないといけないので」

「ハレルさん、さらりと初対面のわたくしに重い事実を暴露しないでくださいませ」

 

 これまたちょっと情報量の多い回答をぶつけられて困るな、質問したのは俺なのに……。

 

「そ……そっか、とりあえず今まで通り接するから!ともあれやっぱり俺ももっとしっかりしなきゃな……」

「あら!わたしくを頼ってくださってもいいのですよシルスさん!先程言った様にわたくし、かわいい男の子のお世話なら喜んでして差し上げますわ!」

「シルス、そういう甘言に乗ると後で痛い目を見るからやめておいた方がいいですよ。それは別としてわからない事があれば私に聞くのは大事ですよ、なにしろあなたのパートナーであり……教師ですからね」

「ぐぬぬ……ずるいですわよハレルさん、立場というものを使うのは!」

 

 だからなんで俺をそう辱めるんだお前ら!も……モテ期か!?モテ期という奴か!?でもこんな世界でモテても困るぞ!なにしろ俺は……俺は帰らなきゃいけない。

 

「……エレナ嬢、あまりかわいいかわいい言うからシルスが恥ずかしがって沈黙してしまったではないですか」

「わたくしのせい!?い……いえ!シルスさん、あなたはカッコイイと思いますよ!ええ!いきなり別の環境に放り出されてもめげたり腐ったりせずに努力するあなたは美しいですわ!」

「そうですよ、確かにまだ未熟ですがそれでも、頼れるパートナーだと私は思ってますよ」

 

 色々励ましてくれているのは嬉しい、嬉しいんだけれど……違うんだ。

 どんなに仲良くなっても帰らなきゃいけないし、帰れないのなら、帰れたとして、俺はどうなるんだ?

 

 わからない、わからなくて……不安になる。

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