序章:終末魔法少女ハレル   作:青川トーン

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ネビュラフォーム2/3

 暗闇の中で浮かぶハレルは目を閉ざし、まるで見えない何かで縛られた様に身動きが取れない様に見える。だが俺が近づいてきた事に気づいて目を開いた。

 

「シルス、一体どうやってここに……」

「お前と一つになってんだからそれぐらいのこともあるだろ」

 

 改めてこいつの顔を見るとなんというか、とても疲れた顔をしてやがる。だけどもうちょっと頑張ってもらう事にはなりそうだ。

 

「おい、とりあえずあのセコい鬼野郎をぶっ飛ばすからシャンとしろ……っていうかなんだこの汚いフヨフヨしたゴミは」

 

 俺に纏わりつくようについてきていた泥というかスライムみたいな物体を手で掴む、滅茶苦茶ベタベタしててばっちいな……どうやらこれよくないものっぽいな。

 

「それ、呪いなんですけど」

「ああ!?なんでそんなもの態々置いてあるんだよ捨てろよ!」

 

 そういやさっき吸い込んでた骸骨とかもあったし……ああつまり屋敷で取り込んだ危険な物品もここにあるのか?こうしてなんでもかんでも取り込んでるから記憶がどんどんなくなるんじゃねえのかなぁ……。

 

 しょうがねぇな……と思いながらその呪いの塊を投げ飛ばそうと思って触れると何かキラキラしたものが見えて手を止める。

 

「呪いの中にあるこのキラキラがお前の記憶かよ」

「そうですよ、これがないとこの場所に存在する事ができないんですよ。普通は」

「なるほどなぁ、じゃあこれだけとって始末していいか?」

「また適当な事を言いますね、そんなことできるわけが」

 

 お許しが出たのでグシャっと握りつぶして「燃料」とする、どうせこんなもの取ってても役に立たんだろう。ならばエネルギーに変えてしまった方が得だろう。

 

「は???何をしてるんですか!?シルス!?ちょっと!!信じられない事をしないでくださいよ!!」

 

 するとハレルがワーキャー叫びだして元気になるのでその分解して作った分のエネルギーの塊と記憶の欠片を口に突っ込んでやる。すると一瞬固まった後に真面目な顔になる。

 

「なんですかその力」

「目覚めた、多分神官の力かなんか」

「そうですか、ですけれどそれはもうちょっと慎重に使うべきだと思います。どんな力であっても使い方を誤れば危険なんですからもうちょっと調べてから……」

「そうだな、じゃあここで存分に試してみておくか」

 

 とりあえず目につくゴミの中でも呪いだとか間違いなくとっておくだけで体に悪そうなやつらを引き寄せて纏めて分解していく、それを見てハレルは目を見開いた。

 

「あ……ああア゛ーッ!!!!!なにしてるんですかこのおバカ!!なんでもかんでも分解すればいいってもんじゃありませんよ!!」

「だから要らなさそうなゴミだけ選んで分解しただろ?」

「そういうことじゃありませんよ!!ちょっとその力使うの禁止!禁止です!」

 

 とりあえずワーワー叫ぶだけの元気は取り戻した様でなにより、それよりもだ。

 

「ほら、記憶」

 

 いらないものを分解した事で抽出したハレルの記憶の塊、それを手の上に乗せて差し出す。

 

「なんでこんなことをするんですか。余計な……余計なお世話なんですよ」

「今の俺とお前は一心同体だ、だからお前が潰れると俺が困る……のもあるけれど、それよりも見てられないんだ。お前がそうやって何でもかんでも背負って苦しんで、だから助けたいと思った」

 

 ハレルは真面目な顔で問いかける。

 

「それだけで?」

「それだけで十分だろ?」

 

 だから俺もまた本心で答える。誰かを助けるのに理由なんていらない、だから誰かを助ける為に苦しんでいる奴を助けたって構わないだろう?誰かが不幸を全部背負い込む必要なんてないだろう?

 

「バカですね……あなたは」

「バカで十分だ、お前を助けられるならな」

 

 呆れた様に笑うハレルの姿、俺はこれを見たかったんだ。

 

 ナユタの連中が誰も彼も誰かを助けたいだとか、世界をより良くしたいだとかで頑張れた理由がわかる様な気がするよ。傷ついて倒れてしまっても構わないだなんて言うな、その笑顔を壊さない為に戦うんだ。

 

「さあ、まだやる事は沢山残ってる。だから行こう、ハレル」

「そうですね、色々ありますが……まずは片付けるべきものを片付けましょう」

 

 記憶の光をのせた手にハレルの手が重なり、輝きが視界を白く染める。

 

 そして景色が切り替われば、そこは戦場のど真ん中、夜の闇の中で目の前にはエイキの奴がいて、エレナ嬢がレールガンをリロードしようとしている姿が見える。

 

 まずはエイキ、こいつには生半可な攻撃が効かない……というのも妖魔は怪異同様にただの物理攻撃だとある程度効き目が落ちてしまうみたいだ。加えて普通に破壊しただけだと簡単に再生してしまう、だからそれを阻害する必要がある。

 

 

 これまでわからなかった情報がどんどんと頭の中に浮かんでくる。

 ナユタの神官としての力は《分析》、そして《分解》は俺自身に芽生えた力だ。

 

 それがどこからやってきたかといえば、ハレルが宿していた力に由来するものだと直感が語っている。

 ならば取れる手立てもまた決まってくる。

 

「ハレル、さっきの骸骨の化け物を分解してエネルギー源にするぞ」

『仕方ありませんね、わかりました。許可します』

 

 内側に封じ込められていた怪異と瘴気の塊が崩壊していくのを感じる。そこから抽出されるのは根源的な力の塊、それを魔法少女システムのコアへと供給していく中で分析によって俺は気付いた。

 

 もう一歩向こう側へ踏み込める!

 

 アズライールフォームへと変身した後に、体からもう一度あの「夢幻」の力を開放させていく。だがハレルが使った時の様に周囲の物を呑み込むわけではなく、逆に「放出」する力だ。

 

 

『つくづく思いますね、あなたも私達に負けず劣らずとんでもない奴ですよ』

 

 そしてもう一度フォームチェンジを行い、あの夢幻の空間の様な星雲の翼を広げる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 名付けるのならば《ネビュラフォーム》

 これが俺とハレルの新しい力だ。

 

 

 それを見てもエイキは表情も変えず、ただただ冷めた目でこっち見ていた。

「多少は力を増したみたいだね、けど……覚悟のない力などゴミだ」

 

 ならば見せてやろうじゃないか、俺の覚悟を!

 ネビュラウィングを広げ、エネルギーを放出する事でこれまでよりも遥かに早く真っ直ぐに翔けて距離を詰める。そして奴が動くよりも早く力を込めた拳を腹部に撃ちこむ、衝撃が内部を破壊するだけに留まらずに裂傷を起こして黒い血が噴き出す。だがそれだけならば奴はすぐに再生するのだ、だから二発目を撃ちこむ。

 

 そこには「分解」の力を上乗せする事で再生しようとする奴の傷口をさらにズタズタに破壊して蓋をする。奴はようやく異常に気付いた様で即座に反撃に出る、飛んでくる攻撃は横からの右足での蹴り。だが遅い、俺はそれよりも早くに動けるのだから簡単に後ろを取って右手で手刀を作ってそこに纏わせた分解を纏わせた光刃で奴の首を落とそうとするが、流石に殺意が溢れ出過ぎてた為かワープで逃げられる。

 

 だがここから逃がす事はない、奴が移動する先を予測するのはもう出来る。光輪刃ヘイローソーサーを3つ出現させて現れるタイミングに合わさる様に投げつける。

 

 当然ながらこいつにも分解の力は宿っている、出現したエイキが拳でそれを弾こうとして腕を切断され、続いて飛来した二つで両足が吹き飛ぶ。

 

「代償も無しに軽々しく力を振るうだと?ふざけるのも大概にしろ……!僕が……!」

 

 地に崩れ落ちながら奴は周囲から闇を吸収して姿を変え始める、それは禍々しい呪詛の力だ。

 

「僕が力を得るのに、どんなに苦労したと思っている!?お前達のその夢幻の力を得るべく、どれだけの策を!どれだけの屈辱を!どれだけの対価を払ったと思っているッ……!!」

 

 言葉にするのならば「魔獣」という言葉がふさわしい、そんな姿だった。

 

「よこせ……僕にその力を寄越せ!!!」

 

 飢えた怪物が闇の中で吠える、哀れにも思えるが……それでもだ、俺達はこいつを倒す。

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