序章:終末魔法少女ハレル   作:青川トーン

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前触れ2/3

 追跡は順調に進んでいた、昼頃にはモニター上の地図に目的地が表示されていた。日本地図であったならば大体中部地方に位置する場所におそらくは目的の物があるのだろう。

 しかしきちんとした道が無いとこんなに時間が掛かるんだ……元の世界の整備された高速道路や鉄道、飛行機なんかのありがたさが身に染みてわかる。交通とは道があってこそなんだ、そうなれば運送とかもかなり辛いんだろうな……というか電話すらまともにないんだから……逆に何ならあるんだ。

 

「こう……便利な通信手段欲しいよな」

「有線ケーブルや電線を引いてる所もあるんですが、劣化が早くてすぐ断線するのが問題なんですよね……かといって地下にやると整備が大変ですし」

「魔法での通信はどうなんだよ?奪われた物品の探知魔法が使えるならもっとこうアイデア出ないか?」

「盗み聞きされる危険性が高いんですよね、ついでに魔法も汚染で減衰しやすいんですよ、後単純に技術ハードルが高い」

 

 どうなってんだよこの世界はよ!と頭を抱える。当たり前にあったものが無いというだけで過酷さが3000倍か?こんなの生きていけねえよ!逆にどうやって生きてきてるんだよ!

 

「よく……よく人類残ってるな……ホントに」

「ええ、なんで存続してるのかさっぱりですよ。あらゆる不便も最終的に人力で解決する事で成り立たせてますからね。なんなら海を渡る様な連絡を請け負う魔法少女とかもいますよ」

「そんな商売があるのか……結構儲かりそうな気はしたけれど、めっちゃ過酷そうだ」

「そうですね、賊に襲われるのもですが敵対勢力からしたらもう狙うしかありませんし」

 

 マジでこれが人類の未来か?終わりすぎてるだろう……俺の世界はこうはなって欲しくない。

 

「帰ったら政治家になろうかな……こうはならんように……」

「それはいいですね、ちなみにナユタは政治手腕がパワーすぎてしょっちゅう相手方を悩ませてたそうです、まだ魔法や魔術が秘匿されてた時代とか、大戦期に国に加担して戦えだとかでモメた時とか」

「だろうな、なんかナユタってエグい組織って感じするし……そう、そういえばお前のその「夢幻」の中に入った時、神官の亡霊にあったぞ」

「は……はぁ!?なんですかそれ!?」

 

 初めて聞いた!という顔で驚くハレル、いやお前の領域の中の話だからお前が把握してないのかよ!いやでも確かに広かったからな……見てなかった可能性もあるけれど、単純に連中が姿を見せてなかった可能性やハレルには見えない可能性もある。

 

「どいつもこいつも仮面を被ってて、お前に近づかせまいと俺の邪魔をしてきたから殴って強引に突破した。確かに人類の為、役目や使命って気持ちは伝わってきたけどああなるのは違うよ、やっぱり」

「そ……そうなんですか、でも私は知らなかったですねそういうの……他には何かありました?」

「ああ、大体の奴はこうもう完全に亡者というか執念だけで残ってる……みたいな奴らだったけれど一人だけはっきりしっかりした意志で残ってる人がいた……そいつは俺の前のシルスだったよ」

 

 ハレルが目を見開いて、表情を固まらせる。俺は安心させるべく笑顔で返す。

 

「心配するな、誰もお前を恨んでなんかいなかったよ。それにあの人に至ってはお前どころか俺の心配までしてたよ。ただ……エレメントイレイザーの装置を奪っていった奴がそいつの妹で……そのまあ……事後報告なんだけれど誤解を解いて助ける事を約束しちまったんだよね」

「……シルス?」

「だからさ、こうなんというか問答無用でやりあうって感じじゃなくてちょっと俺に相手をさせてくれないだろうか」

 

 思い起こすのはサイトH1での事、確かに簡単に許されるべき事ではないだろうけれど、それでもそれとは別に真実を伝えるのは悪い事じゃない筈。もちろん簡単に信用されるとは思ってないし、何よりも正しく伝える為に彼女に触れる必要がある。

 

「それは、約束できません。向こう側が本気で殺しに来た時や状況次第では不可能かもしれません。ですが……ですが、可能ならば許可します」

「よかった……ありがとう、俺が出来る限りの力を尽くしてやってみるよ」

「しかしシルス、貴方はどうしてもそんなに首を突っ込むんです?」

 

 どうして、と聞かれるとやっぱり思い浮かぶのは一つ。

 

「さっぱりわからん、多分俺の気分」

「気分!?」

 

 そう、色々と考えてみるもただ俺がこういう理不尽だとか悲劇だとか救いの無い結末が嫌なだけ。ただそれだけで突っ込む、それでいいんじゃないか?

 

「ただやるからには最後までやり遂げる。途中で投げ出さないし、絶対に逃げはしない」

 

 ひょっとしたらナユタの人助けの理念にあてられたのかもしれないし、人造神格に選ばれるにはそういう性質が要るのかもしれない。まあそんな事はどうでもいい、約束したからには叶えてやる。

 

「……あなたは本当に予想外な人です、たった三日でこうも変わりますかね?最初に訓練した時には心底いやそうな顔をしていたのに……」

「そりゃ一日目であんな訓練されたら誰でも嫌がるぞ……まあ何よりも変わらざるを得なかったのは大きいな、動けるのは俺だけって所で動かない訳にもいかない。帰る手段なんて当然まだ無いし、この世界についても全然知らない……だからやるしかない、って最初は義務感だった。でもお前と一緒に戦ってたらなんだかやってやるぜって気持ちになってたんだよ。不思議だよな」

 

 人は変わる、変われる。必要なのは切っ掛けと決意、俺の場合それは良い事であったが前のシルスの妹とかは悪い事だったのかもしれない。そういう事を考えているとふと思う、今アカネさんは一体何をしてるんだろうかと。

 

 一夜をエレナ嬢の屋敷で過ごしたのに加えて、俺達と違って空路で来れるからもう追い付いてもおかしくないだろうに……だけどハレルも何故か来ない前提で話を進めているし……でも確かに俺はアカネさんのこともよく知らないな……。

 

「話題は変わるけれどそういえばアカネさんって、どういう人なんだ」

「あー超気分屋ですね、ほぼ御役目放棄で自前の研究ばっかりですよ。伝令の役目もゴタゴタで仕方なくやらざるを得なくなったからやっていただけで……ええ、マジで働きませんよあの人」

「そんなに?いやでもあの人すごいハレルの事を大事に思ってるの伝わってくるし……」

「それとこれとは別ですね、正直私がいなければナユタ滅ぼしたがってるレベルの憎悪を持ってますからね……」

 

 そんなに???いや確かにナユタって結構アレな所があると俺も既に感じているけれど……。

 

「姉さんはですね……私同様に生まれながらに特殊な能力を持っていたんです……それがあらゆるものを素材として見る目なんですが、そのせいでまあ……酷使されたり……実の親すらも材料にしか見えなくてすごい精神的にやられてたんですよ。ですけど私が生まれた事で姉さんは変わったそうです、何しろ「この目を以てしても完成が見えない」だとかで……」

「ああ……そういう背景があったんだ、俺を見て選んだのも……」

「おそらく姉さんの御眼鏡に叶う素質があったんでしょうねぇ……正直こういうのもなんですけれど姉さんは価値を感じたもの以外には本当に冷たいですから……その……先代以外にもシルスという名と役目を継いだ人達は居たんですが、その……姉さんからの評価としては取るに足らない存在だとかで……」

 

 こ……コワ……マジで素養がなかったらアカネさんが俺を拾う事もなかったんだろうな……一気に怖気が襲ってきた。しかしあの人にそんな過去があったのか……歪むというか、恨んだりするのも納得だ。

 

「私達は力を求める一方で、望まなくても力を持って生まれてくる事もある。そんな事があるというのも覚えて置いてください」

 

 少しばかり遠い目をしながらハレルは空を見上げ、俺もまたそれに続いた。

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