序章:終末魔法少女ハレル   作:青川トーン

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衝突2/3

 日が暮れる頃にようやくオートレイダーのモニターに表示されていた地点に到着、そこは人の気配のある街であった。どうやらここにエレメントイレイザーがあるらしい、だがその前に歓迎の様だ。降り注ぐロケット弾による砲撃を回避しながらハレルの姿へと変わる。

 

 待ち伏せは想定の内だが加えて敵が多い、多くの殺気……それも人間の気配を感じる。

 

「ハレル、悪いが俺は殺さないつもりで行くぞ」

『何を無茶な事を言ってるんですか、あなたがやるつもりがなくとも向こうは殺しに来ますよ』

「我儘の一つくらい通させてくれ」

 

 オートレイダーから武器を取り外して飛翔、まずは索敵、廃ビルの中から飛んでくる砲弾を潜り抜けて急接近、相手は武装した兵士だった。すかさず銃を向けてくるが引き金を引くよりも早く銃身をブレードで切り裂いて体当たりで吹っ飛ばす。申し訳ないが片腕が折れるかヒビが入る程度にはダメージを与えてやった。

 さすがにロボどもと違って生身の人間が持ってる銃はそんなに威力がないみたいだ、プラズマとかだと逆に自分が焼けたりするもんな、普通にシールドを展開して真正面からスピードで詰めて直前に減速して死なない程度の威力で打撃。多分これでも車にぶつかられたぐらいの威力はあるから殺してしまわないか不安になる。

 

 これで3人無力化したけれど、まだまだ敵の数は多い。殺気を感じて跳躍すればそこを電撃が走る、魔術という奴だろう。敵に使われるのは初めてだけれどなるほどこういう感じで飛んでくるのかと分析しながら逆に威力を落とした奴をお返しする。思ったよりすんなり使えて自分でも驚いたがこれがナユタの神官としての力か、補正というかズルをさせて貰っているようでちょっと申し訳ないが相手を痺れさせた上で弾き飛ばす。

 

 直後に振動を感じて回避、壁を突き破って現れたのは大剣を持った魔法少女だ。そのまま手に持っていたブレードで防御するが相手の方がパワーが上だ、滅茶苦茶に重い一撃に両腕が痺れるし、踏ん張りが効かずに逆に押し退けられる。こいつは強い、間違いなく俺よりも遥かに格上だ。

 

『シルス!私に代わってください!』

「そいつは聞けない、けど……二人でやるなら聞いてやる!」

『……仕方ありませんね!』

 

 今の一撃で分かったのは奴は俺が戦ったエイキよりも遥かに固いし、力強い。そして今の姿じゃ勝ち目はまずない。

 

 だからこそ、ネビュラフォームで迎え撃つ!

 

 夢幻を纏って出力を上げる、姿が変わった事に相手は一瞬目を見開くが好戦的な笑みを浮かべて突っ込んでくる。それを正面からの全力をぶつけて相殺、相手が次の手を出す前に一気に攻め……

 

 

 衝撃と共に景色が一気に変わる、どうやら何かの攻撃を受けたみたいだ。壁を突き破って外へと押し出される。

 

「なるほどねぇ!前よりも随分と頑丈になったみたいだね!」

『シルス、今の攻撃は衝撃波です!奴の腕の中に発生装置が入っています!』

「サイボーグって奴か」

 

 機械で体を改造でもしているのか、ならばあれだけのパワーや質量も納得が行く。けれど解せないのは見る分にはわからないという所だ。継ぎ目もなければ今の衝撃波も出そうものなら自分の皮膚を破る様な威力がある筈。

 

 だが細かく分析するよりも早く相手がまた正面から向かってくる、ならば流れに任せてブレードをぶつけて斬撃を受け流す。威力で勝てないなら相手が一度攻撃してくるまでに3回は剣を振ればいい、一撃目は防御に、二撃目で大剣を叩きつけてバランスを崩させ、三撃目で右肩に突き立てる。

 

「やるね!ハレルじゃないだろあんた!名前は!?」

「……シルス!ナユタ・シルス!ハレルのパートナーだ!」

「あたしは……ヴァイオレットだよ!」

 

 だが突き立てたブレードが貫いた体から血は流れず、まるで鉄板にでも突き刺してしまったかのように引き抜く事が出来ない。即座に手放して蹴りにて距離を開けると大剣の一振りがその場を薙ぎ払い、へし折られたブレードが宙を舞った。

 

『わかりました!奴は体が有機的構造の金属で出来てるんです!』

「つまり死ぬ程固いってわけか!」

『そういう事です!質量とスピードの暴力です!正直やりづらいですよ!』

 

 ヴァイオレットと名乗った魔法少女、あいつはつまり金属生命体って事か。ハレルでも即座に対応策が出てこないってことは余程珍しい存在なのだろう。けどどんなものにだって弱点はあるはずだ、それに血こそ流れなかったがブレードを突き刺した瞬間はそこまで固くなかった。硬化させるのに意識する必要がある?

 

 と考えているとまたしても殺気、下方から飛んでくるロケットによる砲撃を回避して対策をハレルに丸投げしつつこちらは体を動かす事に専念する。今手元にある武器はナイフに機関銃、そして電磁グレネードが3つ。だけれどどれもヴァイオレットには有効打になるか怪しい、殺すには足りない。

 

 

 ……危ない、思考が殺す方向に寄って行ってしまっていた。逆に言えばあんだけタフなら撃ち込んでも死なないだろう、そう判断して機関銃を手にして追ってくる奴を捉えて引き金を引く。連続で放たれる弾丸を真正面から受けながら突っ込んでくるのは正直ヤバイが決して退かない、気迫で負ければ勝ち目はない。するとついに勢いが落ちて奴が押され始めたのを見て俺はそれが正解であったと思った。が敵は一人ではない事を忘れていた。

 

 手にしていた機関銃が粉々に砕けて、衝撃と爆発に襲われて俺の視界がグルグルと周り、地面へと叩き付けられた。

 

 

「そこまでです、降参するなら痛めつける事はしません」

 

 俺達を見下ろす様に宙に浮かぶ奴の姿を見れば、機械の鎧を纏った様な見た事のない格好をしている。武器はレールガン一丁だけ、視界投影される情報には「MCMS ライトニング」と表示されている。どこのどいつだよ。

 

『裏で手引きしていた者がいたという事ですね。シルス、少しだけ時間を稼いでもらえますか』

「お前は誰だよ、まずは名乗るのが礼儀じゃないのか」

「その必要はありませんよ、どうせ我々の付き合いなど今回限りなのですから」

「随分と余裕がないようだな」

「自分の置かれている状況がわかっていないので?身の程をわきまえてはいかがですか」

 

 かなり高圧的な態度だ、自分が絶対的な優位にあると思って疑わない……つまりは実力を過信している訳だ。

 

『もう結構ですよシルス。そいつの腰の歯車みたいな奴を狙ってください、MCMSのライトニングはそこがコアです。今さっきまで相手していたヴァイオレットに比べれば遥かにザコです、貴方なら余裕です』

 

「わかってないのはお前の方だよ」

 こちらにはもう大した武器がないと思っていた奴にハレルが体を動かして電磁グレネードを投げつける、それを軽々と撃ち抜くが炸裂したスパークが奴の鎧に纏わりつく。そうかと理解した俺は即座に距離を詰める、もう一度トリガーを引くがレールガンの弾は発射されない。

 

 電磁グレネードの爆発で生じたスパークがレールガンの内部機器にエラーを引き起こしたのだ。それを一瞬遅れて理解した様だがもう遅い、ナイフを奴の腰のコアに突き刺して蹴りを入れて突き飛ばしてやる。

 

「なっ……!どうして機能が!?」

 

 すると奴はまるで体の自由が効かないといった感じで立ち上がる事すらもままならない様子、単純に鎧が重いだけではなさそうだ。ハレルに何をしたのかと問う。

 

『何、ちょっとプレゼントをしてあげただけですよ。MCMSは魔法少女システムのコアにあんなにバカ正直な機械言語のプログラムを組んでくれているのですから前時代的なウイルスをですね』

 

 なるほど、今の時間稼ぎはウイルスプログラムを作っていたのか……いやこうコンピューターも無しにウイルス組むのってどうやったんだよ……それにあのナイフがやけにピカピカした素材だったのはハッキング機能がついていたからか……と納得しつつも、俺は再び跳躍してヴァイオレットの攻撃を回避した。

 不意打ちを卑怯とは言わないし、こうも立ち止まっていれば狙われるのも当然だものな。

 

「あーあー……いわんこっちゃない、おい手の空いてる奴はそこのおバカを運んでやれ……あたしがこいつの相手をするよ」

 

 奴がそう指示するなり兵士達が今しがたダウンさせた魔法少女を引きずって後退していく、なにやら喚いているようだが知った事ではない。

 

 今は目の前の強敵をどうにかする事が最優先だ。

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