序章:終末魔法少女ハレル   作:青川トーン

31 / 33
第一部最終話Aパートです


絆の印1/3

 どんな窮地であっても、どんな相手であっても決して後ろに退かない、諦めずに立ち向かう。それは自分の在り方を受け入れ、ただ役目や使命という言い訳で諦めていた私にはない「強さ」それが一体どこから来るのか知りたい。正直な言葉で表すなら恋愛的なものではないけれど彼に「惚れた」というのが相応しいのかもしれない。

 

 だからその答えを知るべく私は今目の前の事態を終わらせるべく思考を巡らせる。どうやら彼は人が相手ならば敵であっても殺したくないという、ならばその要望に応える手段を探そうではないか。

 

『シルス、時間を稼げますか。切り抜ける為に手立てを探します』

『もちろんだとも』

 

「撃て」

 無数の銃弾が放たれるもそれらを正面からシールドで受け止め、受け流し、前へと進む。そしてMCMS魔法少女のレールガンの直撃を回避すべく分解の光を纏わせたブレードで弾頭を斬り捨て、シルスが少しずつ距離を詰めていく。当然ながらこれだけの攻撃を全部正面から浴び続けているのだからこちらの消耗もバカにできるものではない。何発かはバリアコーティングに接触してスパークを起こしているし、なんならば薄くなった所を貫通してくる事もある。それでも一歩も怯みはしない。

 

 今手にしている武器はこのブレードだけ、ならば魔術という選択肢からアプローチ、周辺への被害を考えればそう……ホワイトフロストフォームが使えれば……フォームチェンジまでしなくてもいい、同じ効果を発揮できればいい。代わりになるものなら、今この身に宿っている!

 

『思いつきました、魔術制御は私がやります。あなたは正面から連中をぶちのめすことを考えてください!』

『何をするかは知らないけど……任せろ』

 

「夢幻解放」

 コアから夢幻を最大まで放出して周囲の空間を私を中心に「塗り替える」ビルも地面も空も、全てが星空の景色に呑まれる。だが分解する事も同化する事もない、ただただ表面が覆われただけの幻術の様なもの。

 

 しかし視覚効果は十分だ、生身の人間である兵士達にも纏わりつけばそれは「脅威」だと見せかけることさえ可能だ。感覚こそあるものの気づいた時には自分の体が黒い闇と一体化して見えなくなっていくのだから。悲鳴が上がり、武器を取り落とす者が現れればその混乱は次々と感染する。人間に対してはこういった視覚効果はバカに出来ない。

 

「取ってくれ!」「俺の!俺の体がない!」「前が!前が見えない!」「助けてくれ!」そういった混乱で射撃が止まった一瞬の隙をついてシルスが駆け抜けて次々と兵士のノックアウトしていく、だがそういった中でも二人の魔法少女だけは至って冷静だった。

 

「目くらましなど!」

 味方がいるにも関わらずレールガンをチャージするMCMSの魔法少女、ここでシルスが避ければ周りの兵士が爆風で死ぬ。いや受け止めてもおそらくは同じ結果になるだろう、同士討ちなのだから自業自得と言いたいけれど彼が望まぬ結果になるのは良くない。

 

『シルス!少し体を借ります!』

 

 即座に主導権を握った私は剣を手放し【ネビュライト・レイ】の構えを取る、そして弾丸が放たれると同時に夢幻の光の奔流で正面からそれを消滅させて、敵の魔法少女を呑み込むが……私は彼女の武装とシステムのコアだけを破壊する事で殺すことなく無力化する。これで残る相手はただ一人。

 

 夢幻が晴れていく中で取り落とした剣をもう一度拾い上げて、切っ先をアザミへと向ける。

 

「これでようやく邪魔者はいなくなりました、後は……後は私達の因縁です!」

「……そうね、ここからは私の……私達だけの戦いね」

 

 そう、ここからは明日の為に過去を罪を、間違いを正し、償う為の戦いです。

 

『行きましょうシルス』

『ああ、こいつが最後だ!』

 

 私達は実のところ既に限界なんて超えている。ヴァイオレットとの戦いで受けたダメージから立ち上がれたのが奇跡みたいなものです。エネルギー源として同化したものの中から更に不必要そうなものを分解して無理矢理にエネルギーを抽出して、それで無理矢理に動いているのですから……当然戦いが終わればまともに動けなくなるのは間違いありません。

 

 ですので、エレメントイレイザーの回収は最悪、破壊で済ませる事になるかもしれませんが……まあその前にまずは目の前の相手です!

 

 

 私達が即座に上空へと飛び上がるなり、それを追って彼女はついてくる。両の手には武器などない、まさか素手でやりあうつもり?と思えばそれが正解でした。圧倒的なスピードで接近してきた彼女はヴァイオットほどではないが、ストレートにパワーの乗ったパンチの連撃でこちらの大剣を弾き飛ばす。反撃すべくシルスが蹴りを放つが消耗している私達よりも遥かに早い動きでそれを回避してカウンター気味に蹴りでこちらのバランスを崩してくる。

 

「どうしてアズライールを、ルスフィオンを使わない?」

「悪いですね、今日は殺しに来たわけじゃないです!」

 

 本来ならば、殺す気であれば、まだ手はありますでしょうが今言った通りにシルスがそれを望まない。だから使うことはない。だからここから先は全て根性と気合と度胸が全てです。

 

「……あなたはそんなバカな事を言うような女ではない筈」

「ええ、少しばかりバカになってしまったようです」

 

 チカチカと視界が眩み、音もなんだか遠い気がしてくる、そしてついにコアがアラートを鳴らし始めました。これは私達の「生命力」が尽きつつあるという事です。

 

 私はどっちにしろ死ぬような事はまずない、時間が経てばどうにかなる……けれどシルスは別です。彼には命が一つしかない、死んでしまえばそこで終わり……だからそれまでに勝たなければいけません。

 夢幻の力を使うにも正直ここまで意識が危うい状態だと精確さを欠く、ならば……ならばこの身こそが最後の武器となりましょう!

 

 正面から突っ込む、アザミが放つ右ストレートを避けてこちらもフルパワーの右ストレートで吹き飛ばした。そして廃ビルの壁面に叩き付けられて一瞬動きが止まった所を決して逃しはしない、馬乗りになるようにして魔法少女システムのコアを破壊すべく分解の力を纏った手による突き。ですがそれは手首を掴まれて阻止されて逆にこちらが投げられる事になる。

 

 凄まじい勢いで地面に叩きつけられた事で目が回り、相手を見失うが。シルスがそこを補って敵の位置を把握する、私達は一人じゃないんだ。

 

「……決着の時よ」

 

 夜空に浮かび、アザミの纏うシステムのコアから紫色の光が溢れ出して、エネルギーラインを形成していくのが見て取れる。そしてそれを私はかつて見た事がある、記憶の奥底から蘇ってくるのは惨劇の景色。ありとあらゆるものが分解してエネルギーと化して、誰も彼もを消し飛ばしたあの事故の光景。

 

 エレメントイレイザーの光だ。

 彼女は既にそのデータを取り込んで、使える様に調整を済ませていたのでしょう。もしそれを浴びたならば私とてきっと「死ぬ」事ができるでしょう。だからあの日……かつてのシルスであり、彼女の兄であった者はその命を捨ててまで私を守った。

 

 ですが、私はここで終わるつもりも……終わらせるつもりもありません。

 そして一歩たりとも、ここから退くなんてこともありえません!

 

「シルス!ここから!ここから全部を始めるです!滅茶苦茶気合いれていきますよ!!」

 

 全てはここから、初めてましょうか!

 放たれたエレメントイレイザーの光に正面から私達は立ち向かう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。