うちの娘は絶対に次元一可愛いし、娘のためならたぶん何でも出来る気がする。   作:るーにー定食

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どう足掻いても文字数が減りませんでした。
バカが!!

それとなんですが、空白期編はこれで終わりで、次回からStS編です。
サクサクいかないとタイトル詐欺状態がずっと続いちゃうからね……


どれだけ負け続けようとも、隣に立つ事を諦める理由になりはしない。

 

 廃ビルが立ち並ぶ旧オフィス街、その空を桜色の極光が駆け抜けていく。

 その光を、俺もまた追いかけるように、銀緑色を纏い空を駆る。

 

 そこからだいたい二分ほど飛び続けたあたりで、俺と桜色を纏った少女も急速に停止する。彼我の距離はおおよそ五十mといったところ。

 

「よし!それじゃあいくよ、レイジングハート!」

『 Yes, my master 』

 

 そして、少女が自分のデバイス、レイジングハートに呼びかける。

 

「俺たちもいくぞ、アイテール!」

『 Yes, my lord 』

 

 俺も同じく、目の前の少女と同様の自らの杖型インテリジェントデバイス、アイテールに呼びかける。

 

「……」

「……」

 

 旧オフィス街をどこか緊張感を帯びたような静寂が支配する。

 

「アクセルシューター!」

『 Accel shooter 』

「シュ──ト!」

 

「ウィンドバレット!」

『 Wind bullet 』

「ファイア!」

 

 合図はなく、されど俺も彼女も同じタイミングで誘導弾を打ち出し、ぶつけ合う。

 少女は32発の魔力弾を、俺は28発を発射した。

 すると当然、全てぶつかり合ったとしても四発の魔力弾が余り、向かってくる。それを俺は、二つは障壁で防ぎ、残り二つを。

 

「ノトスブレイド!」

『 Notos blade 』

 

 アイテールの先端から斧の刃のような形をした魔力刃を発生させ、両断する。

 そして、そのまま斧刃を発生させ少女との距離を詰めるため、空気を蹴る。

 

 それに対し彼女は、誘導弾ではない直射型の魔力弾を放ちながら、距離を離そうと飛行する。

 向かってくる弾を、同じ直射弾で相殺しながら、取りこぼしたものは切り裂き、距離を詰める。

 

 直線で一気には向かわず、大きく迂回するように近づく。ジリ貧ではあるが仕方ない。一度一気に近づこうとしてひどい目にあったからな……。具体的には、四肢をバインドで固めてからのタコ殴りである。バインドには気をつけなければ。

 

「ショートバスター!」

『 Short buster 』

 

 少女が放ったのは溜めの短い砲撃魔法。砲撃のくせにほぼノータイムで放ってくるという大変厄介なものである。

 

 足先からの風の噴射で、大きく速度をつけ回避する。

 これが俺の持っている技能、魔力変換資質『疾風』であり、俺の戦い方の根幹になっているものだ。

 この力があるから、俺はこの人やフェイトさんたちに食らいついていくことが出来る。

 

「……今!ロック!」

 

 彼我の距離が、凡そ半分ぐらいまで縮まったところで右足に違和感が走る。

 疑問に思い見てみると、桜色の枷が嵌っていた。

 

「ぐっ、バインドか!?」

 

 ある程度警戒していたとはいえ、やはり厄介なことには変わりない。

 急いでバインドの解析を始める。間に合うか?

 

「いくよ陽彩くん!ディバイン──―」

「 Divine buster 」

「バスタ──ー!」

 

 バインドが掛かっている状態の相手に対しての全力の砲撃魔法、相変わらずえげつないやり方である。

 とはいえ掛かっているのは右足だけ。これだけならまだ対処できる。

 

 この人の砲撃は半端ない威力を誇っている。障壁で防いだとしてもノーダメージというわけにはいかないし、次の行動には絶対に支障が出る。かといって、バインドが掛かっているため大きな回避運動は出来ない。

 

 だから、こうする。

 

「フッ──―」

 

 飛行魔法を解除し全身の力を抜く。そしてバインドが掛かっている状態の右足を軸に逆さ吊りになるようにぶら下がる。いくら砲撃魔法といっても、標的が1.5mも下にずれれば回避はできるのだ。まぁそれでも固定されてるから足には当たるからノーダメージにはならないんだが。

 とはいえ全身で食らうよりはマシである。

 

「せ──のっ!」

 

 バインドの解析は既に終わっているから省略、上体を起こしバインドに対し、中からの風の噴射と、外からの斧刃の叩きつけで破壊する。

 そして飛行魔法と風の噴射の併用で、今の俺が出せる最高速度で一気に距離を詰める。

 

「ノトスブレイド!」

『 Notos Blade 』

「レイジングハート!」

『 Round Shield 』

 

 近距離での斬撃を障壁でガードされる。分かってはいたがやはりこの人の防御はとても硬い。抜くのは生半可にはいかないだろう。

 

 これは……ダメだな。

 障壁と拮抗している銀緑色の刃を消し、足先から風を全開で噴射、一気に距離を取る。

 

「チェーンバインド!」

『 Chain bind 』

 

 俺が離れたと同時に、先程までいた場所に四方から四本の桜色の鎖が通過する。

 あのまま居たら、せっかくバインドから抜けたのにもう一度引っかかるところだった。

 なんてことを考えていたら、鎖が向きを変えて迫ってくる。

 

「アイテール!」

『 Yes, my lord 』

 

 俺の呼びかけで、アイテールが魔力弾を八発生成する。そのうちの二発を牽制として少女に、残り四発を鎖に向けて放つ。

 牽制の二発は簡単に防がれる、まあ当然か。こっちにはあまり期待はしていない。

 本命はこっちである。残り四発を向かってくる鎖の先端にぶつけて、弾き砕く。

 

「これは……振り出し、かな?」

「そうとはっ、限りませんよ!」

 

 予めかけておいた隠蔽の術式を解き、ソレ(……)を引っ張る。

 魔法陣は発生せず、術式にすらなっていない。小さな子供でも魔力があれば、使おうと思ったら使える、魔力で編み込んだだけのただの銀緑色に光る糸。

 これを先程の鍔迫り合いの時に、腕にくくりつけておいたのだ。

 

 先端に少女が拘束されている銀緑色の糸を、風を噴射しながら大きく勢いをつけ、ブン回す。

 

「えっ、嘘ぉっ!?きゃああああああ!?」

 

 そして、その勢いのまま廃ビルに向けて思いっきり投げ飛ばす。

 パリン!という廃ガラスが割れる大きな音とともに、少女がビルに突っ込んでいく。そこへ追い打ちをかけるように、アイテールの先端を向け。

 

「ボレアス──―」

『 Boreas blaster 』

「ブラスタ──!!」

 

 俺が持つ魔法の中で、最大の威力を誇る砲撃魔法を打ち込む。やりすぎだと思うかもしれないが、俺は知っている。

 この程度の事で、俺が今戦っている人には勝てないということを。

 

 場を静寂が支配する。少女にも動いているような気配は感じられない。

 

 一度、飛行魔法を解除し、近くの背の低いビルに着地。

 油断はせず、少女が突っ込んでいったビルを注視する。

 どこだ、どう出てくる?

 

「──―ッ!」

 

 背後に魔力反応!数は……二つか。

 真っ直ぐ向かってくる魔力弾を、片方を両断。もう片方を障壁で防ぐ。

 

 

 その瞬間、旧オフィス街の隅々に届くであろう轟音が響き渡った。

 発生源は先程、俺が少女を投げ飛ばしたビル。

 未だ木霊す轟音と共に、ビルを桜色の極光が縦に貫き、破砕音を鳴らしながら倒壊していく。

 

 その先、つい先程までビルの屋上があったであろう場所であり、今はなにもない空中。

 

 そこに、あの人はいた。

 

 桜色の光を纏い、鮮烈に煌めく魔法陣を周りに浮かべ、デバイスを構えて、悠然と空に立っていた。

 

「マジかよ……」

 

 これほどの距離が離れたままじゃ、砲撃で削られて撃墜がオチである。

 ならば一気に距離を詰めての速攻一択しかない。

 見た感じ、明らかに準備万端といった感じで、そこに突っ込むというのは自殺行為なんだが。

 とはいえやらなければ勝てないので、覚悟を決める。

 

 飛行魔法を展開し、全力で魔力を風へと変換していく。

 そして、深呼吸を一つ挟み……。

 

「ふぅ──―行きます!」

 

 飛行魔法と風を併用しての爆発的な加速を以って、全力で彼我の距離を縮めにかかる。

 

 まだ彼女は砲撃の溜め段階中。

 これなら砲撃を撃たれる前に、近接で倒せる!

 

 ガチャン!!

 

「……は?」

 

 彼我の距離が三分の一ぐらいまで詰まり、少女を投げ飛ばした時に彼女が通ったであろう軌道にたどり着いたところで、大きな音が響く。発生源は俺の足元から。見てみれば先程とは違い、今度は両足に桜色の枷が。

 

「やっべ……」

 

 え、嘘でしょ?俺結構な勢いで投げ飛ばしたよ?あの勢いで投げ飛ばされてる時に空中にバインドを二個も仕掛けていったの?

 さすがに化け物すぎないか????

 

 これは……詰んだかもしれない。

 さっきは片足だけだったからなんとか切り抜けられたが、今度は両足。

 先ほどのように一筋縄ではいかないだろう。

 

 前を見れば、展開されていた円形の魔法陣はチャージの段階を終えたのか、桜色に眩く輝く。

 バインドのレジストはどう足掻いても間に合わない。

 

 いや!まだだ!こんなところで諦めてたまるか!

 こうなったらこっちも砲撃を撃って、撃ち合いに勝つ。これしかない!

 

「ブチ抜け、アイテール!ボレアス──―」

「お願い、レイジングハート!ディバイン──―」

『 Yes, my lord. Boreas blaster 』 

『 Yes, my master. Divine buster 』

「ブラスタ──ー!!!」

「バスタ──―!!!」

 

 自らのデバイスに呼びかけ、現状の俺が放つことが出来る最大威力の砲撃を放つ。

 

「ぐっ──―」

 

 拮抗は一瞬。すぐに俺の砲撃が押され始める。もうちょっと持つとは思ったんだが……。

 どうやらそううまくはいかないらしい。

 無理もない。向こうは万全の体勢で溜めた砲撃に対し、こちらは咄嗟に放った砲撃なのだから。

 だが、まだ手はある。

 

「──―カートリッジロード!」

『 Cartridge Load 』

 

 食い破ろうとしてくる砲撃を押し返すため、自らの魔力を上げるために起動句(トリガーワード)を唱え、薬莢が排出される炸裂音とともに砲撃の勢いが目に見えて増す。

 これでどうだ?

 

「こっちもいくよ!カートリッジロード!」

『 Cartridge Load 』

 

 目の前の少女もまた、俺と同じように起動句(トリガーワード)を謳い、砲撃もその言葉に応える様に威力が増す。

 は?おいおいおい詰んだわこれ。

 

「ぐぇぇ……」

 桜色の砲撃が銀緑色を消し飛ばし、申し訳程度に置いておいた障壁も一瞬で割られる。

 そうなると当然、次の標的は俺な訳で、かといって防ぐ手段も既になく。

 

 やがて、桜色の極光が俺を貫き、俺の意識は暗転した。

 

 __________________________________

 

「はっ!?」

 

 どうやら一瞬意識が飛んでいたらしい。

 えっと、どうなったんだけ?確か、あの人との模擬戦に負けて……。

 

「って、落ち──―」

 

 飛行魔法、ダメだ!間に合わない。てか、アイテールが手元にない!どこいった!?

 

「うおわぁぁぁぁ!?」

 

 お、落ちっ、落ちるっ──ー!?

 

 急速に落下していく感覚と、風を切る感触に危険だからダメだと分かっていても、ついつい目を瞑ってしまう。

 デバイスが手元にないため飛行魔法は使えず、見た感じバリアジャケットもズタボロになっているので、自動浮遊機能もおそらく発動しないだろう。

 なのでこのままだと地面との衝突コースである。

 お願いだから、できればあんまり痛くないようにしてほしい。

 

 そんな事を考えているうちに、ふわっと体を襲う浮遊感。

 目を開けてみてみると、そこにはつい先程まで模擬戦をしていた女性、高町なのはさんの顔が目の前に。

 ?????

 えっ、何この状況?どうなってるの?

 

「ふぅ、間に合ってよかった。大丈夫?」

「えっ。あっ!はい、大丈夫です……」

 

 頭の中に疑問符を浮かべていると安否確認をされてしまった。

 この状況、めちゃめちゃ近くにある高町さんの顔と、腰と太もも裏の近くにある俺のものではない腕の感触。

 ふむりこれは、もしかして俺お姫様抱っこされてる?

 なにそれ……普通に恥ずかしいんだが!

 

 早く降ろしてほしいという念を込めて、高町さんを見る。すると何故か高町さんも、首を傾げて目を合わせてくる。

 高町さんと見つめ合うこと、約数秒。

 いや……あの、何この時間?

 

「あの……そろそろ降ろしてもらえませんか?」

「え、ああっ!ごめんね、すぐ降ろすよ!」

 

 なんで俺はわざわざ見つめるという愚行をしてしまったんだろうか。

 最初から口で言えばよかったじゃん。馬鹿じゃないのか?

 

 そうこうしているうちに、高町さんの手によってゆっくりと地面に降ろされる。

 模擬戦用にと設定されたフィールドである廃ビル郡はすでに消え去っており、広がっているのは無骨な地面のみ。

 戦闘で火照った体に、冷えた地面が気持ちいい。

 

「はい、これアイテール。ダメだよ?いくら気絶してるって言っても、自分のデバイス落としちゃ」

「あ、すみません、ありがとうございます。アイテールもごめんな」

『 Pleas be careful from the next time 』 

 

 自分のデバイスにまで注意されてしまった……。ごめんね。

 地面に寝転んでいる俺に、緑と白で構成された杖が手渡される。

 いやほんと、高町さんの言うとおりなんだよな。

 どれだけボコボコにされようが気絶しようが、絶対に自らのデバイスは落とさない、これは魔導師の鉄則である。

 嘱託時代も含めて、魔導師歴七年なのにこんな初歩的なことをミスるとは。気を抜きすぎただろうか?

 

「大丈夫?訓練用の魔法だから体にダメージは残ってないと思うんだけど」

「無理ですね……動けそうにないです」

「嘘っ、おかしいなぁ。ちゃんと魔法の確認したんだけど」

「いや……精神ダメージがひどくて」

 

 途中まで勝てそうだと思っていただけなのに、落ち込み具合がやばい。

 あとお姫様抱っこも結構キテたりする。

 まあ今回は俺と高町さんの他に誰もいないからまだよかった……あ!?

 

「ふふっ、あははは!陽彩くんまたお姫様抱っこされてる―!しかも今度はなのはさん!」

「ちょっとフィニーノさん!そんな笑うことなくないですか!?」

 

 そうだった、今回の模擬戦はフィニーノさんが観戦していたのだった。

 くそっ、爆笑しやがって……!

 せめてもの抵抗ということで通信機の向こうで大笑いしているフィニーノさんへと威嚇を敢行する。

 

「まあまあ陽彩くん、落ち着いて。シャーリーも、そんなに笑っちゃ可愛そうだよ?」

「ふふっ、ごめんなさいなのはさん。でも面白くて、陽彩くんもごめんね?」

「ぐぬっ、まあ日頃お世話になってますからね。特別に許してあげます」

「やけに上から目線だね……。ていうかシャーリー、またって言ってたけど陽彩くんって、他の人にもお姫様抱っこされたことあるの?」

「いや、えと、それはですね」

「陽彩くん、フェイトさんやはやてさん、シグナムさんにもされてるもんねー」

「えぇ、そんなにされてるの……?」

「ちょ、なんで言っちゃうんですかフィニーノさん!?っていうか、言っときますけど!!全部不慮の事故ですからね!!!」

 

 そう、全部不慮の事故なんだ!俺は悪くない!

 フェイトさんは任務中に俺がミスった時に助けてもらった時のやつだし、八神さんも出向中にフェイトさんと同じような感じだし。

 シグナムさんは、まあ……うん……。あの人は完璧に善意でやってくれたし、あれがなかったら今この場に俺はいなかったかもしれないので感謝しかない。というか、今までのやつ全てそんな状況である。

 あれ、もしかして全部俺が悪い……?

 

「あっ!あの噂になってた美人女騎士に抱っこされてる男の子って、もしかして……」

「それ完全に陽彩くんとシグナムさんのことですね……」

 

 え、何その噂、俺そんなの知らない……。

 もしかして一時期の間、本局の中を歩いてるときにクスクス笑われたり、女性の局員さんたちから生暖かい目で見られてたのってそれが原因か!?

 

「と、ところでフィニーノさん、ずっと喋ってますけど動作テストの確認終わったんですか?」

「うん、こちらも動作は良好。完璧です!なのはさんも陽彩くんも付き合っていただいてありがとうございました!」

「ううん、気にしないで。こっちも陽彩くんのこと久しぶりに見れてよかったから」

「こっちはボコボコにされただけですけどね……」

「まあまあ……」

 

 肉体面も精神面もボコボコにされてしまったがそれはさておき。

 実は今回の模擬戦はちゃんとしたお仕事の一環なのだ。いやまあ、こんな言い方をしたら普段の模擬戦が特に理由もなくしている狂人みたいな感じだが、そんなことはない、決して。

 戦略や戦術の確認だったり、任務の前のウォーミングアップだったりと理由はちゃんとある。

 

 今回の模擬戦の理由というのはズバリ、俺やフェイトさん、高町さんたちが出向することになっている、八神さんが部隊長をする新部隊、機動六課の模擬戦兼訓練用の海上フィールドの、耐久テスト及び動作テストである。

 耐久面に関しては、目立った損傷が高町さんが暴れて崩壊させた廃ビルのみ、ということで問題はなし。

 あとは、フィニーノさんの諸々の動作の確認だけだったのだが、それも無事にクリア。

 どうやら特に問題はないらしい。

 いや、この時期に不具合なんかあったらそれはそれで大問題なんだけどな。

 

 ということで、俺も高町さんも着けていたバリアジャケットを解除。

 俺は元の青色の執務感補佐の制服に、高町さんは白と青の二色で構成された教導隊制服に戻る。

 次いで手に持っていたアイテールを、スタンバイモードである緑色の菱形の結晶へと戻し、いつも通り胸ポケットに入れる。

 

「いやあ、にしても今回こそは勝てると思ったんですけどねぇ」

「あはは、そう簡単に負けてたら私の立つ瀬がなくなっちゃうよ……」

「そんなこと言って、最後に俺が勝ったのめちゃめちゃなんですけど」

 

 俺は普段、次元航行などの長期の仕事が何もなければ、高町さんやフェイトさん、シグナムさんやヴィータさんたちに1ヶ月に一回ほど模擬戦を挑んだり、挑まれてたりするのだが、ここ2、3ヶ月は俺は次元航行でいなかったので、最後に高町さんと模擬戦をしたのは三ヶ月前。

 今回のを合わせたら現在、絶賛六連敗中、ついでに言うと、高町さん相手には勝率は三割を切っている。

 俺の他の模擬戦相手であるフェイトさんやシグナムさん、ヴィータさん相手の勝率は四割切りである。

 ちょっとこの人達、あまりにも強すぎませんか?

 

 ちなみに、最近の俺の絶対に勝ちたい相手はヴィータさんである。

 なぜかって?それは俺を模擬戦に誘う理由が、ヴィータさん曰く

『お前みたいな小柄なやつ中々居ねえからな、戦闘経験積みたいし相手しろ』などという、俺の逆鱗に触れるものだからである。

 

 人が気にしてることを言いやがって……!許せねぇ、絶対にギャフンと言わせてやる!と果敢に挑んでは、ヴィータさんの切り札であるギガントシュラークというクソデカいハンマーに、ハエのように地面に叩き落とされて『へっ、まだまだだな』と鼻で笑われては泣くという日々を繰り返している。クソがよ。

 

「あっ、そうだ!陽彩くん!空戦AAAランク試験合格おめでとう!教導隊の先輩たちが褒めてたよ、なんで一度落ちているのかわからないぐらい優秀だーって」

「ああ、ありがとうございます。まあ落ちたのは完璧に俺のドジですから……」

 

 落ちたのは、まぁ……あれは完璧に俺が悪かった。

 試験に向けて、俺はフェイトさんから予め試験の前の日から休みをもらっていたのだが、突然緊急の任務が入ってしまい、休めたのは前日の夕方から。とはいえ、普通に休むのには十分な時間なのだが……。

 

 普通に緊張して、ろくに眠れなかった。

 

 試験内容は、試験監督の魔力妨害を受けながらのオートスフィアの時間内破壊。

 そんな状態で全力を出せるわけもなく、試験監督に撃墜されて終わった。

 

 落ちたときはフェイトさんに泣きながら謝られて、とても困ったのを覚えている。

 

「よし、じゃあそろそろ行こうか?シャーリーも待ってるだろうし」

「ん、そうですね」

「はい、掴まって?」

「ありがとうございます」

 

 高町さんから伸ばされた手を掴んで立ち上がり、歩き出した彼女についていく。

 

「高町さんって何回かリミッター受けたことあるんですよね?」

「まあそうだね、何回かはあるよ」

「リミッターってどんな感じなんですか?まだ俺受けたことなくて」

「うーん、最初はちょっと気持ち悪いかも。出力に蓋をされちゃう感じだから。でも慣れたら平気だと思うな」

「うへぇ……」

 

 気持ち悪いという感想が出てくるだけで、嫌な気分になる。

 ただでさえ高町さんに負けて、テンション低かったのにさらに低くなってしまう。

 

 これから俺と高町さんは本局で出力リミッターを掛けられに行く。

 というのも、管理局の部隊には一つの部隊が持てる戦力に制限があるのだが……。

 

 今度出向することになっている機動六課はその制限を余裕で超えている。それはもうびっくりするぐらい、最初から守る気なかっただろというレベルで。

 

 だって部隊長が総合SSで隊長二人が空戦S+。

 副隊長二人が、空戦S−に空戦AAA+である。あとついでに俺もAAA。

 明らかに過剰とか、そういうレベルを超えた戦力である。

 

 いくら機動六課が担当する第一級捜索指定ロストロギア、レリックが作成時期不明、用途不明で外部からの魔力衝撃に弱い大変危険なものだとしても、この戦力は異常である。

 恐らくレリックの他にも、なにか理由があるんだろうというのが、俺とフェイトさん、フィニーノさん、高町さんの見解である。

 それはそれとして、俺はともかく、八神さんが昔からの幼馴染で大の親友である高町さんとフェイトさんにも話せないとなると、なにか事情があると見て間違いない。

 なので、八神さんから話してくれるまで待とうというのがフェイトさんたちの考えである。

 

 まあそれは置いといて。

 この異常戦力を保持するための制限を抜ける唯一の方法が、これから俺たちが受けに行くことになる能力制限という出力リミッターである。

 言ってしまえばただの裏技なんだが。

 

「あ、なのはさーん、陽彩くーん!こっちでーす!」

「あ!シャーリー!」

 

 海上フィールドを抜けた先の場所でフィニーノさんがこちらに手を振って待っていた。

 それを見た高町さんが小走りで近づいていく。

 

「いやー、にしてもすごいなぁ陽彩くん。あんなにボロボロになってもよく立ち向かえるよね」

「……強くなきゃ何も守れないってのはよく知ってますし……それに、置いていかれたくないですから

 

 合流した後、駐車場に向かってまた歩き出すと、フィニーノさんが話しかけてきた。

 

 俺は当然のことながら。

 高町なのはさん、フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウンさん、八神はやてさん達を尊敬している。

 

 だからこそ、知っている。

 あの三人はあまり後ろを見ることはない。ほぼずっと前だけを見て進んでいる。

 それこそ普通の人ならば、ついていけないような速度で。

 

 だからこそ、焦がれるのだ。

 あの人達の背中に追いつきたい。

 その隣に並んで一緒に戦いたい。

 

 それでもまだ彼女たちの背中はあまりにも遠い。

 だからこそ強くなりたいのだ。

 

「ほんと、陽彩くんってなのはさん達のこと好きだよね〜」

「……まあ否定はしませんけど」

「ん、なあに〜、二人して私に隠れて内緒話〜?」

「いやいや、そんなのじゃないですよ〜。ね、陽彩くん?」

 

 あっぶねえー、高町さんに聞かれなくてよかったー!

 フィニーノさんの言い方にはちょっと語弊があるんじゃないかと思わないこともないが、多分だいたい合ってる、と思う。

 

 あの人達が俺に居場所をくれたようなものだから。

 だから、横に立って戦うためにも。この人たちの背中を守るためにも。

 

「…………もっと強くなりてぇな〜」

 

「?陽彩くん、今何か言った?」

「……いや、なんでもないです」

 

 それはそれとして、こんな理由を面と向かって言うのは恥ずかしいから直接は言いたくはねぇな……。

 




風早 陽彩
AAAランクの魔道士。
負けず嫌い、緊張に弱い。
魔力光は銀緑色。なおAAAの試験には一度落ちている。
ハチャメチャに勝ちそうなオラオラムーブをしていたのに普通に負けた。
シグナムのお姫様抱っこは本局内で、美人女騎士に抱えられるショタということで噂になっている。

アイテール
風早陽彩のインテリジェントデバイス。
待機形態は緑色の菱形の結晶。
本来は中・遠距離戦用を想定され作られたが、陽彩には何故かたまに近距離で使われる。
今回は使っていなかったが変形モードが1個ある。
変身をあと1回オレは残している…その意味がわかるな?

・魔法

ウィンドバレット(Wind Bullet)
風早陽彩が使う誘導制御型の射撃魔法。
最大同時操作数は28発と高町なのはが使うアクセルシューターより4発少ない。これは、陽彩の誘導センスがなのはより劣るため。

ノトスブレイド(Nots Blade)
風早陽彩が使う近距離魔法。
アイテールのコア周りのフレームから斧のような刃を生やす。
分離して飛ばして使うことも出来る。

ボレアスブラスター(Boreas Blaster)
風早陽彩が誇る直射型の砲撃魔法であり、主砲。
万全の体制で使えば、なのはの使うディバインバスターに勝るとも劣らない威力を持つ。


なのは相手で勝率三割を切るのは、砲撃の威力はフルチャージした場合、そんなに威力に差はでないため、最大誘導弾数の差で押し切られるから。
陽彩はこの負け方を無限にしてその度にキレている。
たまに普通に砲撃威力の差で負けることもある。



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