うちの娘は絶対に次元一可愛いし、娘のためならたぶん何でも出来る気がする。   作:るーにー定食

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万事焦っても、良いことなんて何もないのである。

 

 

 現在、我々機動六課はホテル・アグスタという場所に来ている。

 といっても、当たり前の事だが旅行だとかそういった類のものではなく、歴とした任務である。

 

 今からここ、ホテル・アグスタではロストロギアのオークションが行われるのだ。

 そして我々機動六課は要人の警護と会場の警備のために来ているのである。

 

 なんでも八神さんの話によれば、オークションに出すロストロギアをガジェットがレリックの反応と勘違いして、回収しに来る可能性があるらしい。

 正直そんなことあるの?と俺は若干半信半疑なんだが。

 

 ということで今はヴィータさん、シグナムさん、それと他数名の隊員たちといっしょに前日から先入りして警備をしているところである。

 フェイトさんたちはこのあと来ることになっているので、まだ来ていない。

 

 そして俺は今、ホテルの裏手にある自販機まで来ている。

 まあちょっとした休憩みたいなものだ。断じてサボりではない。

 

 夜に交代で少し仮眠しただけの、ほぼ寝ずの番で警備をしているのですこぶる眠い。

 というわけで、自販機で買うのはブラックコーヒーである。

 あんまり好きじゃないんだけどな。

 

 近くのベンチに腰掛け缶のプルタブに力を込める。

 カシュッ、という若干心地いい音と共に缶が開いた。

 缶を傾け、一気に飲み干す。

 

 うえっ、苦……。

 だけどこの苦さが眠気覚ましには最適なのだ。なので我慢して飲む。

 

「ふぅ……」

 

 にしても、機動六課に来てからは残業も徹夜も全然しなくなったなぁ。

 次元航行部隊にいたときは残業がデフォルトみたいなところがあったからな……。

 フェイトさんも高町さんといっしょに良く眠れてるようで何よりである。

 

 と、適当にベンチで一息ついているとシグナムさんも自販機の近くまでやってきた。

 どうやら俺と同じく飲み物を買いに来たらしい。

 

「あ、シグナムさん。お疲れさまです」

「ん、陽彩か。お前も休憩か?」

「そんなところです」

 

 シグナムさんが自販機でコーヒーを買った後、俺の前に立つ。

 

 うおっ……。

 こう見たらシグナムさんってやっぱ身長高いよな……。

 

「ふぁ……」

 

 シグナムさんを見上げていたら、あくびが漏れ出てしまった。

 さっきコーヒー飲んだのにな……。

 

「眠いか?」

「まあそうですね、ちょっとだけですけど」

 

 本局にいた頃はこんぐらい平気だったのにな……。

 シグナムさんは全然眠くなさそうだ。俺より寝てないのに……。

 

「そういえばシグナムさんって全然仮眠取ってませんよね、ヴィータさんもそうですけど。平気なんですか?」

「特に問題はない。我ら守護騎士(ヴォルケンリッター)の体はプログラムで構成されているからな。普通の人間とは違う。とはいえ、ある程度の睡眠は必要だがな」

「……あー……」

 

 シグナムさんたちと会ってからもう三、四年ほど経っているが、四人には変化が見られない。シグナムさんとシャマルさんはいつまでも綺麗なままだし、ザフィーラさんの毛並みはいつだってツヤツヤだ。それにヴィータさんもずっと小さいままである。

 つまり、シグナムさんたちは歳を取らないし、衰えない。

 ただそれは、逆に言えば俺たち人間とは同じ時間を過ごせないということである。

 

 つまりそれは、将来的には俺がシグナムさんたちを置いていく、という可能性もあるわけで……。

 

 そう考えると何だか、少し寂しいな……。

 

「……あまりそういう顔をするな。部下を泣かせたとなったら私がテスタロッサに怒られてしまう」

「……別に泣いてないですけど?」

「少しだが泣きそうな顔にはなっているぞ」

 

 シグナムさんにそう言われながら頭を撫でられる。

 

 普段から人を撫で慣れてはいないんだろう。その手つきはどこかぎこちない。

 でも優しくて、なぜかはわからないけど気持ちいい……。

 

 じゃなくてだな。

 

「ちょ、ちょっとシグナムさん。やめて……」

「……何してんの?お前ら」

「うぇぇっ!?!?」

 

 シグナムさんにやめてもらおうとした瞬間。

 突然後ろから降ってきたヴィータさんの声にビビって体が跳ねる。

 

「い、いつからいたんですか!?」

「……シグナムがお前の頭撫で始めたとこ」

 

 ピンポイントで恥ずかしいとこからじゃねぇか!!

 

「なんで声かけないんですか!?」

「いや、なんか声かけづらくて……。シグナムはいつまで頭撫でてんだよ」

「ん?…………ああ、撫で心地がよくてな……」

 

 ダメだこれ!

 俺もシグナムさんも恥ずかしさで頭がバグってる……!

 この人、顔に出していないだけで耳が真っ赤になってるし……!

 

 シグナムさんが俺の頭を撫でるのをやめ、ゆっくりと手をどける。

 ふぅ、やっと離してくれたか……。

 

「……で、何だお前ら。二人揃ってサボりかよ?」

「……やだな。休憩ですよ、休憩。ちゃんとエントランスの警備は他の隊員に任せておきました」

「ふーん」

 

 聞いてきた癖にくそどうでもいいような反応するのやめてくれせんかね……。

 立ち寄ったついでとばかりに、ヴィータさんも自販機でジュースを買った。

 ジュースとか……。ふっ、ヴィータさんもまだまだこどもだな。

 

 とか思ってたら思いっきり睨まれた。

 ぴぇっ、ごめんなさい……。

 

「そ、そういうヴィータさんは?」

「バカヤロー、あたしは見回りだ。ここらへんはあたしの担当だろうが」

「……あ、そういえばそうでしたね」

「ったく……。警備の担当ぐらいは把握しておけよな」

 

 めちゃめちゃド正論で殴られてしまった……。

 いや違う、言い訳をさせてもらうと、エントランスの警備を任せたあとは適当に彷徨っていたので、ここが裏手であることは分かっているが、詳細な位置はよく分かっていないのである。

 よく考えたらそっちのほうが問題じゃないか??

 

 というか、今の警備の主力であるシグナムさんとヴィータさんが裏手に集まってるのやばいな……。

 

「で、何の話してたんだ?」

「いや、それはその……」

「…………なに。我らの体は普通とは違うだろう?どうやら陽彩はそれが少し寂しいらしいぞ」

「ちょっ、シグナムさん!?」

 

 あっ!?この人ヴィータさんに見られた気恥ずかしさとかの諸々のやつ全部俺に押しつける気だ!?

 というかなんで俺が考えてたこと分かるんだよ!?

 

「べ、別にそんなこと思ってないですけど!?」

「動揺しすぎだろ、目が泳ぎまくってんぞ……。にしても、寂しいねぇ。ふーん、へぇ……。ぷっ!」

「はあああああっっ!?!?」

 

 ぐっ、がっ、ぎいいい!!!何笑ってんだこの幼女!!

 くそが、ここぞとばかりに爆笑しやがって……!

 まずい、どうにかして話をそらさなければ恥ずかしくて死んでしまう……。

 ……そうだ!

 

「そ、そういえば高町さんたちっていつ来るんです?なにか連絡とかありました?」

「話逸らすの下手くそかよ……。一応言っとくと、あたしのところには連絡は来てないぞ」

「私にもだ。とはいえ確かに、そろそろ来てもおかしくはない時間だな」

 

 こ、これはセーフ……なんじゃないか!?

 

「……噂をすれば、というやつだな」

 

 シグナムさんがそう呟いた途端。

 ブロロロロという重い音を立てながら俺たちの頭上を大型のヘリが通過していく。

 

 タイミングが神すぎるだろ……。

 

「先程も言ったが、あまり気にするな。そもそも管理局員という仕事をしている限りもしかしたら、ということもあるかもしれないんだ」

「ま、あたしが居る限り絶対にそんなことにはさせねぇけどな」」

 

 確かに、これから先のことばかり気にしていても仕方ない、か……。

 

 

 話を切り上げ、シグナムさんとヴィータさんといっしょに屋上に向かい、ヘリから降りてきた八神さんたちを敬礼しながら出迎える。

 いくら身内部隊とはいえ、こういうところはしっかりとしないとな……。

 

「うん、皆出迎えありがとうな。なんか異変とかはあった?」

「特に異常はありません。我が主」

「そうか?なら良かったわぁ」

 

 八神さんにシグナムさんが報告をしている横で、シャマルさんが何やらケースを持って降りてきた。

 

「……シャマルさん、そのアタッシュケースなんですか?」

「……うーん、見てのお楽しみ、かな?」

 

 ?????

 

 

 

 

 さて、俺は今フェイトさんたちが着替えている部屋の前に突っ立っている。

 こう言うとまるで俺が三人の着替えをガン待ちしているド変態のように聞こえるが断じて違う。

 このあとの会場内での警備の話があるのだ。

 

 なんか緊張してきたな……。

 結局あれからシャマルさんにどんな服持ってきたのか聞いても、ずっと「見てのお楽しみ」って言って教えてくれなかったし……。

 

 というか、そもそも着替えってなんだ……?

 任務なんだから普通に地上部隊の制服でやるんじゃないのか?

 分からない、何もわからない……。

 

「──―っ」

 

 ガチャリという音が響き、ドアが内側から開かれる。

 中から現れたのは……。

 

「…………うぁ……」

 

 色鮮やかなドレスを見事に着こなした高町さん、フェイトさん、八神さんの三人だった。

 

 ……すっっっげぇ……。

 

 なんというか、いや、うん。すごいな……。

 いつもと雰囲気が全然違うというか……。

 なんか、うん……。すごいね……。

 

「ほらほら陽彩、なんか言うことないんか?」

「うえっ!?い、いやいや!今は仕事中ですから!ね?」

「なんやつまらんなぁ」

 

 つまらないって何なんですかね……。

 

「それで?何か報告あるんやろ?」

「えっ?あー、はい。……とりあえず警備の話なんですが、会場入りの際にホテル側で一応ですが荷物検査はするそうです。ただ、そこまで詳しくやると客の方々の失礼になってしまうらしくざっとやるだけだそうなので、あまり期待はしないでほしいとのことです。……はい、ホテルからの通達はこんなところですね」

「うん、了解や」

 

 当たり前の話ではあるんだが、機動六課が任せられているのは会場全体の警備と主要人物の警護なので、ガジェットだけから守れば良いというわけではない。

 中でもし、人が直接事件を起こしたりしても対応しなければならないのだ。

 

 さて、ここからなんだが……。

 

「え、えと……その、ですね……」

「?」

 

 ふぅ、落ち着け。深呼吸だ。

 

 高町さんとフェイトさんは首を傾げているが、どうやら八神さんは俺が何を言いたいか分かったらしい。

 めちゃめちゃニヤニヤしている。

 くそが、なんで俺がこんな目に遭っているんだ……!?

 

「お、お三方とも……えっと、ドレス、とても似合っていて、その……お、お綺麗だと思います」

 

 …………。

 無言の空気が死ぬほど痛い……。

 

 む、無理だ。俺には耐えられない!!

 

 三人に背を向け、脱兎のごとく走りだす。

 

 な、なんかめちゃくちゃ恥ずかしいことした気がする…………!!

 たぶん俺の顔はとても真っ赤になっている。

 自分でもそう分かるぐらいには顔が熱い……!

 

「あれは、逃げたなぁ」

 

 うるさいですよ八神さん……!

 走ってるとはいえ、まだそこまで距離離れてないから聞こえてるんだよ……!

 

 

 

 

 襲撃は突然のことだった。

 

 あのくそ恥ずかしい場面から脱兎のごとく逃げ出した後。

 他の隊員に任せていたエントランスの警備を引き継ぎ、しばらく経った頃……。

 

 シャマルさんのデバイス、クラールヴィントにガジェットの反応があったのだ。

 

 数はそれなりに多めの五十機ほどで、まだ増援が来る可能性もあるらしい。

 今の所、どうやら飛行型であるⅡ型はいないようで、来るのは通常のⅠ型と大型のⅢ型のみとのことだ。

 

 ということで、今から出撃である。

 シャマルさんからの指示で、シグナムさん、ヴィータさん、俺の三人は今から新人たちの防衛ラインより前でガジェットを迎え撃つ。

 

「スターズ2、ライトニング2、3。出るぞ!」

『了解。レヴァンティン、グラーフアイゼン、アイテール。デバイスロック解除 』

 

 フィニーノさんの声が通信の向こう側から聞こえ、デバイスのロックが解除される。

 

「アイテール!」

『 Stand by ready SET UP 』

 

 緑色の結晶を掲げ、起動句(トリガーワード)を唱える。

 視界が銀緑色に覆われた後、着ていた地上部隊の制服が、白と緑、黒の三色で構成されたバリアジャケットに換装された。

 

「レヴァンティン!」

「グラーフアイゼン!」

『 Anfang! 』

 

 一拍遅れるようにしてホテルロビーのエントランス、その中心に紫と紅が吹き荒れる。

 そこから数秒も経たずして、二人がバリアジャケットに換装、そのまま吹き抜けになっている屋上まで勢いよく飛び出した。

 俺もまたそれを追うようにして飛行魔法を展開し飛び立つ。

 

「新人どもの防衛ラインには一機たりとも通さねぇ。速攻でぶっ潰す!」

「……お前も案外過保護だな」

「ふふっ、ですね」

「うるせぇよ!!てかお前にだけは言われたくねぇ!」

 

 ヴィータさんが言った瞬間、飛行しているシグナムさんと俺のバランスが崩れる。

 味方にデバフかけるのやめてくれませんかねぇ……!

 

 

 気を取り直して、シャマルさんに伝えられた防衛ラインまで三人で高速で飛んでいく。

 

「……そういえば、この三人で組んで戦闘するのって初めてじゃないですか?」

「あ?……あー、そういえばそうだな。個々で組んだことはあるけど三人は初めてか」

 

 まあ航空武装隊と執務官が一緒に仕事する機会なんてほぼないしな……。

 

「……そうか。お前もいつの間にか我らと同じように飛べるようになっていたんだな。テスタロッサについていくだけで必死だった子供が成長したものだ」

「いつの話してるんですか?それもう三年ぐらい前のことですよ、それ……」

 

 というか、俺のこと舐め過ぎじゃないかこの人。マジでたまにでの話にはなるが、俺に模擬戦で負けてるくせによ……!

 

 今思い返したら、マジで最初の頃は大変だったな。

 フェイトさんめちゃめちゃ飛ぶスピード速かったからね……。いや、あれでも多分加減してくれてたんだとは思うけど。

 高町さんの教導を受けていなかったらついていけなかったと思う。

 

「こいつは今でも小さいままだろ」

 

 なんで俺いま喧嘩売られたの??

 普通にこの喧嘩は買いたいのに、任務中だから何も出来ないじゃねぇか……!

 

 せめてもの抵抗として無言でヴィータさんを睨む。

 当のヴィータさんはどこ吹く風、みたいな顔をしているが。

 くそが……。

 

「……そこまでにしておけ、来るぞ!!」

 

 嘘でしょ、火種の発端の人がそれ言うの……?

 

 

 とはいえ、シグナムさんの言っていることは正しい。

 

 バキバキという音を立てながら、眼下に広がる木を薙ぎ倒しながらガジェットの大群が侵攻してくる。

 いや、数多いな……。どれぐらい居るんだ、これ。

 

「大型は私が潰す。お前たちは細かいのを叩いてくれ」

「おうよ!」

「了解です」

 

 シグナムさんが俺たちにそう告げたあと、一人森の中へと降りていく。

 

「おい陽彩、ちゃんと合わせろよ!」

「分かってますよ!」

 

 目立つ大型の後ろ、小型のガジェットが約10機程向かってくる。

 そいつらに狙いを定め……。

 

「まとめてぶち抜けェ!シュワルベフリーゲン!!」

「ウインドバレット!」

 

 ヴィータさんが目の前に8発の鉄球を出現させ、4発ずつ往復で叩きガジェットに向かって飛ばしていく。

 それに追随するように俺もまた、風弾を発射した。

 

 命中、然る後に爆散。

 

 ヴィータさんの鉄球はあくまでも高速で飛ぶ直射弾だ。

 ガジェットは森の中を突っ込んでくるため、角度だったり木に邪魔されたりで追い切れないやつが出てくる。

 そういうやつを潰すのが、今の俺の役目なのだ。

 

 眼下の森、シグナムさんが降り立った位置からも爆炎が立ち上る。

 どうやらあっちも順調そうである。

 

 ん…………?

 これは、分かれたな。

 

「ヴィータさん!」

「分かってる!あたしが右、お前が左だ!」

「はい!」

 

 ガジェットが5機ずつの編隊に分かれ、右と左の両方からホテルへ向けて侵攻してくる。多分予めこのルートを通るように設定されていたんだろう。

 それを丁度、ヴィータさんと背中合わせになるような形で風弾を発射し、迎え撃つ。

 

「討ち漏らすなよ!」

「ヴィータさんこそ!」

 

 討ち漏らすなんていう馬鹿なことはせず、しっかり当ててすべて撃破。ついああやって言ってしまったが、ヴィータさんがそんなミスをするわけがないので、あっちも大丈夫だろう。

 

 よし、この調子なら新人たちのラインまでは行かせなくても済みそうだ。

 

 

 

 弾を誘導し、木々の合間を縫うようにしてガジェットに命中させ爆散させる。

 

「チッ、思ったより数多いな……」

「言ってる場合か、そんな暇あるならさっさと手動かせ!」

「……すいません、それもそうですね」

 

 ヴィータさんにド正論で殴られてしまったが、それはそれとして。

 風弾をさらに生成、発射…………しようとした直前。

 

 ガジェットが一瞬、妙な挙動をした。

 あ?なんだ今の……。

 

「……ん、何だ?」

「ヴィータさん」

「……分かってる、とりあえずやるぞ」

 

 さっきの動きについて思うところはあるものの、結局のところ俺たちは迎え撃つしかない。

 

 ヴィータさんが鉄球を生成、撃ち出すのに合わせて俺も風弾を放つ。

 

 ……だが、そのすべての弾は当たる寸前で回避された。

 

「はぁっ!?」

 

 何だこいつら、急に動きが……!

 

「急に動きが良くなった……?」

「……自動機械の動きじゃないな」

 

 ヴィータさんが驚きの声を上げると、シグナムさんも様子見のために一旦空へ上がってきた。

 

 二人が横で話し合っているのを聞きながら、とりあえず討ち漏らしたガジェットたちに先程よりも鋭い軌道で風弾を放ち、撃破する。

 

「ヴィータ、ここは我らに任せてお前は新人たちと合流しろ。相手に召喚士が居るなら回り込まれるかもしれん」

「わ、分かった!」

 

 ヴィータさんが反転、新人たちが居る防衛ラインまで全速力で飛んでいく。

 

「さて、ヴィータが抜けた今、ザフィーラが来るまで小型の相手はお前一人になる。出来るか?」

「……当たり前です。さっきから思ってたんですけど、俺のこと舐め過ぎじゃないですか?これでも昔と違ってフェイトさんにいろいろ任せられてるんですよ?」

「……ふっ、それもそうか。では任せたぞ」

「了解です」

 

 ……そう言ってみたはいいものの、ずいぶんと敵の数は多い。

 出来る限りザフィーラさんが来る前に落としたいが……さて、何機撃墜できるかな……。

 

 

 

 

 

「シグナムさん、ザフィーラさん!あと任せていいですか!?」

 

 ガジェットをシグナムさんとザフィーラさんと協力してあらかた排除し終わったあと、シグナムさんに許可を取る。

 

「どうした?」

「たぶん俺なら召喚士追えると思うんです!」

 

 召喚士の方は撤退を始めているだろうが、もしかしたら俺の速度なら追いつけるかもしれない。

 

「……なるほど、分かった。ここは私とザフィーラに任せておけ。やるぞ、ザフィーラ」

「心得た」

「ありがとうございます!」

 

 シグナムさんから許可は取れた。

 ならあとは追うだけだ。

 

「気をつけて、陽彩くん。召喚士の方向には虫のようなものがたくさんいるわ。一匹一匹はあまり大したことはないけど、集まったら厄介よ」

「了解です!」

 

 シャマルさんの忠告を聞きながら風を噴射させ、大きく勢いをつけ加速する。

 さて、間に合うかどうか……。

 

 

 そこから数十秒ほど飛び続けた後。

 

「あれがシャマルさんの言ってた虫か……」

 

 眼前にこちらへ向かってくる虫の大群が現れた。

 

 いちいち一匹一匹を相手にしていたらキリがない。

 まとめて風でふっとばして道を作る。

 

「ゲイルブラストッ!!」

 

 殺傷性などは一ミリも持っていない、風に指向性を持たせて破裂させるだけの魔法。

 だが今、この場面では結構役に立つ。

 眼前に群がる虫たちに狙いをつけ発動。虫の群れは風に押され、視界の端へと流れていく。

 よし……。

 

 加速を止めることなく、虫の群れを蹴散らしながら高速で飛行する。

 すると……。

 

 眼下の森、その木々の奥。

 まだ離れてはいるが、一瞬だけ紫色の魔力光が煌めいた。

 あそこか……!

 

 その地点に向けて一直線に飛んでいく。

 

 ……見えた!

 フードを被っているせいでよく見えないが、体格からして……。

 2m位はありそうな大の男と……小さい女の子だ。

 なんであんな小さい子が……?

 

 いや、今はそんなことはいい。

 とりあえず、捕まえて話を聞く。話はそれからでいいだろう。

 

「管理局機動六課ライトニング分隊所属、風早陽彩です。お話、聞かせていただきますね?」

 

 ゆっくりと下降し、見下ろすような形で口上を述べながら、アイテールに斧刃を生成し構える。

 

 返答はなく、無言で大男も女の子の前に出て槍を構えた。

 

 一気に緊張感があたりを漂う。

 

 大男が一歩前に踏み出し、魔力光が体から溢れ出す。

 来るかッ──―!?

 

『 My lord 』

「──―ッ!!」

「旦那たちにッ!近づくなぁッ!!」

 

 アイテールからの警告が耳朶を打った瞬間、幼そうな声とともに眼下の森から爆炎が飛来した。

 

 急いで風を噴射し高速で旋回、回避行動を取る。

 

 あっつ!!

 チッ!少し掠ったか……。

 

 回避行動を取った先、眼前を通過していった炎が蠢く。

 ただの指向性を持っていただけの炎の塊が形を変え、ドーム状になり俺を覆うようにして展開される。

 うっすら炎の合間から、向こう側が見えるのでそんなに分厚くはないんだろう。

 

「ゲイルブラスト」

 

 先程と同様、魔法を使って視界を覆う炎を霧散させる。

 ただ、あの二人組はもう……。

 

「くそ、やっぱりだめか……!」

 

 先程の二人組の姿はもう既に影も形もない。おそらく転移魔法で逃げられたのだろう。

 さっきの炎はどう見ても時間稼ぎ。

 気づくのが遅れた時点でたぶん無理だっただろう。

 

 

 

 あ〜〜、やっちまったな……。

 大男の方に気を取られて完璧に油断していた。もっと周囲を警戒するべきだったな……。

 これは完璧に俺のミスだ……。

 

『陽彩くん、どう?召喚士は追えた?』

「シャマルさん、ダメですね。転移魔法で逃げられました」

『そう……顔は見えた?それならもう少しやりようはあるんだけど……』

「すみません、フードを深く被っていてよく見えませんでしたね。ただ……」

『ただ?』

「ちょっと待ってください、アイテール」

『 Go ahead 』

 

 俺の呼びかけに反応し、アイテールが目の前にウィンドウを表示させる。

 そこに写っているのは先程の二人組。

 ……うん、しっかり撮れてるな。

 

「OKです、記録だけならなんとか撮れてました」

「本当?なら手がかりは少しだけど掴めたわね……」

 

 ふぅ、とりあえず何とかはなったか……。

 ただまあ……、しっかり捕縛できたほうが良いというのは間違いなかったわけで……。

 

 とりあえず、帰ったら反省会、かな……。

 

 

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