「びえぇぇええええん!」
海鳴公園に泣き声が広がる。
号泣である。
まだ小学生の少女では精神的に戦いの場に出るのは難しかった様だ。
なのはの元にたどり着いたユーノは号泣しているのを見てなりふり構ってられないと判断してこの場を離脱した。
戦うつもりの無かったソウタは安堵した。
あのままだったらハクメンはなのはを殺していただろう。
上空にいる為、戦い辛いとは思うが今のハクメンなら2段ジャンプで接敵出来るかもしれない。
遠くなるなのは達を見ながらソウタは周囲を確認して、まだ結界が維持されているのを確認した。
今解除されるとまた警察に絡まれる恐れがあるからだ。
(今の内に公園から出て身を隠そう。この見た目って、やっぱり目立つみたいだ)
大太刀を納刀して、ハクメンはその場から離脱した。
なのはとハクメンの戦闘映像を見ていた時空管理局提督リンディ・ハラオウンは管理局艦船【アースラ】内の艦長用の椅子に座りながらため息を付いた。
ジュエルシードを回収だけでもかなりの人員を回しているのに、まさか大規模な次元振が起こるし、その発生源は一人の異形がやった事で、その戦闘能力はS級魔導師を退ける位の化け物。
(今のままじゃ手に負えないわね…次元振を起こした動機も気になるけど、なのはちゃん達で対処できる程あの異形は弱くないし複数にで対応しようにもジュエルシードがまだ残ってるから人員は割けない。…今は監視だけに留めてジュエルシードを先に片付けるしかなさそうね)
リンディは近くに居た管制員に声をかけ、白い異形の監視を任せてジュエルシードの件に意識を回しそうとした所、リンディの息子クロノが管制室に入ってきた。
「遅くなりました提督。なのはは無事ですか?」
「えぇ、無事よ。でも精神的に参ってしまって今は寝かせているわ」
「まさか、なのはが負けるとは思いませんでした。S級の魔導師並みの砲撃に耐える存在が居たとは」
「そうねぇ…一撃で沈められないなら数で推すしかないけど…ねぇクロノ。あれに数で戦って勝てると思う?」
「なんとも言えないですね。敵の戦闘力が未知数ですし、此方の人員を総動員しても中隊規模の編成しか出来ませんよ」
「敵の得物は近接武器だから遠距離で集中放火なんてどうかしら?」
「映像で見ましたが、砲撃に対応出来ていたので遠距離対策はしているでしょうね」
「バインドでの拘束はどうかしら?拘束出来たら遠距離攻撃も通りやすくなると思うけど」
「機動力次第ですね。やるなら設置型で攻撃は面制圧で様子見でしょうか」
「それが、今のところの妥協案ね。今はジュエルシードを優先して頂戴。異形には仮名で呼びましょう。これからあの異形を【白面】とします」
「了解しました。全乗組員に伝えておきます」
「なかなか冷静に状況を見れる様になったわねぇ。シロくんのおかげかしら」
「…確かに、シロの戦術理論は参考になりました。一体あの歳であそこまで冷徹に思考、実行出来るなんて、どう育てばああ成るのか…あれも十分に化け物ですね」
「ちょっと口が悪くなったのは頂けないわねぇ。まぁ、これから実践を積んで行けば良い執行官になりそうね」
「うぐ、善処します」
シロの名が出た辺りから冷静では無かったと自覚があるのか、苦虫を噛み潰したような顔でクロノはこう垂れた。
これからの擦り合わせと共に行われたこのやりとりは、クロノの思考の出来を見るのにちょうど良かった。
管理局の執行官となったクロノは今まで冷静でいる様心掛けていても感情的になる場面が幾つもあった。
息子だからといって執行官として感情的になるのはよろしくない。
リンディは矯正として報告時は情報の整理と今後の展開を思案するようにさせていた。
それが功を成したのもあるが、一番の影響はシロウの存在だ。
「シロくんもそろそろ帰って来る頃かしら」