前世の記憶などうろ覚え。サブカル知識だけはまあまあ残ってる。そんな彼女は転生者らしく凄まじい美少女なのだが、代わりに語尾が強制的に“♡”になる呪い?に掛かっていた。
そんな彼女が原作開始前から原作主人公と付き合っていたら、原作はどうなってしまうのかという話。


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連載なら本来3~5話くらいかけてやる話を短編だからと1話に収めた結果超早足になってしまった。
だって体力的にそんなに沢山文章書けないし……。
まあサクッと読めるので暇つぶしにでもどうぞ。


そうはならんやろ

前世の記憶は曖昧だ。

具体的には、性別すら思い出せないくらい。

男だったのか、女だったのか。

何歳まで生きたのか。

 

そんな私だが、“趣味”のことは結構覚えている。

漫画、ゲーム、アニメ、などなどなど。

そういうサブカルを嗜んでいたことと、その内容も完璧ではないがかなり思い出せる。

 

そんな私もこの世界で生まれてから十数年。今日から遂に高校生二年生。

そして────

 

「俺たちが付き合って、今日で丁度1年だな」

 

「そうだね、士道♡」

 

 

それにしても、今年も士道と同じクラスになれて良かった。

学年が上がったことで教室の場所も変更されてなんとなく落ち着かない気分だった私だが、愛する彼と一緒ならやっていけそうだ。

 

 

私が転生したこの世界がデート・ア・ライブだと気付いたのは1年前。

高校の入学式で五河士道(原作主人公)と出会ったときだ。

デート・ア・ライブとは、隣界に存在する特殊災害指定生命体『精霊』を恋愛で攻略するというギャルゲーの規模を大きくしたようなライトノベル。

制作会社を転々としながらも三期まで制作された大人気作で、私も前世でアニメ版だけみていた記憶が少しある。そして四期製作決定の告知をみた記憶も……。

もし私が死んだ後にアニメ四期が始まったとしたらみられなくて残念だ。

 

まあ何はともあれ、士道と出()会った()時点で性格の歪んでいた私は、とても楽しそうなことを思いつく。

 

『原作開始前から士道に最愛の彼女がいたらどうなるか』

 

先程も言ったようにデート・ア・ライブ(通称デアラ)は士道が精霊(女の子)を次々に攻略していくハーレムモノのギャルゲー的なストーリーだ。当然その子達とデートもするしキスもするし、だけど決して“恋人”という明確な関係にはならない。

攻略の前提として、士道に“既に付き合っている相手がいない”ことが条件になるからだ。

お相手がいるのに更に他の女の子とデートしたりキスしたりするのは倫理的にアウトだし、バレたら精霊の機嫌を損ねる爆弾になりかねない。

実際、二人目の精霊を攻略してる途中に一人目の攻略精霊が出てきて修羅場になっていたような気がする。

こう聞くと士道が酷い奴のように聞こえるが、彼は精霊という少女達の命と笑顔を護るために戦うヒーローだということは抑えておいて欲しい。

さて、そんな士道に“最愛の恋人”が出来てしまったらどうなるだろうか。

 

幸い私の顔面偏差値はぶっちぎりの人型トップ。美少女揃いの精霊にだって勝っているって転生の際に聞かされた。

だから士道を堕とすのは簡単で、告ってその日に付き合えたってわけ。

もうメロメロよ。

 

「今日は学校も午前だけだろ? 昼飯はウチで食ってけよ。腕によりをかけて作るぞ」

 

「士道の料理! それは楽しみ……なのだけど、琴里ちゃんはいいのかな♡」

 

……最高の顔面を手に入れた代わりに語尾? が強制的に“♡”になる呪いを受けてしまったのは痛い。今だって真剣に話しているつもりなのに、なんかバカっぽい感じになっちゃってるじゃないか。

 

「それが、あいつファミレスのデラックスキッズプレートが食べたいって今朝からうるさいんだよ。俺は今日恋人と食べる予定だから琴里には付き合えないぞって言ったら、1人でも行く! て。だから今日の昼は家に琴里いないんだ」

 

「ふーん、誰もいない家に彼女を連れ込む気なんだ♡」

 

「べ、べつに変なことをするつもりはないぞ!?」

 

「変なこと? それって例えばどんなことなのかな♡」

 

「え、いやそれは……ッ」

 

顔を赤くして慌てる士道は可愛い。

格好良くて可愛くて、オマケに家事万能で特に料理の腕は超一流。

『デアラの原作主人公に恋人がいたら、元のストーリーからどう変化するのか』という好奇心だけで士道と付き合いだした私だし、今でもそれは気になっている。

だがそれと同時に、私は今純粋に異性として士道が好きになっていた。

 

「それにしても、琴里ちゃんに未だちゃんと挨拶できてないんだよねえ♡」

 

「タイミングが悪いよな。まあしょうが無いさ。別にわざと避けられてるわけじゃ無いから気にするな。そのうち会えるさ」

 

本音を言えば、別に会えなくていいけど。

 

おっと、チャイムが鳴った。

席に座ろう。

 

 

 

◇◇

 

 

 

空間震とは、その名の通り地震の空間バージョンである。

発生原因不明、発生時期不定期、被害規模不確定の爆発、振動、消失、その他諸々の現象の総称────ということになっている。

その実体は精霊が隣界からこの世に出現する際の余波らしいが。

 

地震の文字を含むように、空間震には“余震”が存在する。

そのため直前には察知して警報が鳴るようになっている。

丁度、()()()()()

 

「空間震警報だ……!」

 

「学校の地下にシェルターがあるはず。みんな落ち着いて非難しろ!」

 

教室が、いや天宮市全体が騒がしくなった。

市内での空間震発生。その余波で空間震警報が鳴ったのだ。

規模によっては地下のシェルターごとお陀仏になりかねないという不安を押し殺さなきゃいけない人々の緊張は並ではない。

何故なら空間震は過去、ユーラシア大陸のど真ん中(当時のソ連、中国、モンゴル含むいったい)を一夜にしてくり抜いた経歴を持つ。

最近は小規模のモノばかりしか確認されていないが、シェルターに入れば絶対に安全と言えないのは確かなのである。

 

そしてここにいる殆どは年端もいかない高校生ばかり。

不安に負けて走り出す者や大声を出してパニクる者が出て混乱が深まるのは仕方が無いと思う。そしてそれをなんとか誘導して避難させている諸先生方には脱帽する想いだ。

ただ、申し訳ないことに私は教師の必至の避難誘導を無視して外に繰り出さなければならい。何故なら────

 

「琴里のGPSがファミレスから動かない!? そこは空間震の発生予想地点のすぐ近くなのに!?」

 

と叫んだ士道がそのまま妹のGPS反応を追って飛び出したからな。

このシスコンが!!!

状況分かってんのか!? 死ぬぞマジで。

しかも妹の携帯にGPS機能を仕込んでいるだなんて、ちょっとヤバくない?

て、言ってる場合じゃ無いぞ。

私も後を追いかけるっきゃない。

これが原作の始まりだった気もするし。

……たぶん、きっと、恐らく。

なにせアニメ一期の一話なんて何年も前だから、うろ覚えでも仕方が無いだろう。

 

あ、ちょっと、顔面全振りのせいで運動は転生者にあるまじき平均値なんだから置いていくなよ。

ていうかいつもより足速くないか。

これがシスコンパワーなのか。

 

 

 

というわけでなんとか追いついた頃には逆に士道がこっちに飛んできた。

空中浮遊だとか急いで駆けつける様子の慣用句とかではなくて、何かの衝撃によって彼の意思に関わらずぶっ飛ばされたって感じですねこれは。

咄嗟に受け止めようとしたがそんな筋力があるはずも無く、当然彼の身体に押し出される形で私も一緒に吹き飛んじゃうわけ。

て、あれ?

これ後ろの瓦礫に後頭部ぶつけて死ぬ────

瞬間、視界が暗転した。

 

 

その数瞬後、視界に入ったのは淡色で構成された機械的な壁に床。近未来的な建物の中といった風情を感じる。

 

「……ここはいったどこで、なにがあったのかな♡」

 

だからシリアス場面だと言ってるだろーに。十数年の付き合いだが未だに馴れんなこの謎ハート語尾。

 

「て、質問したら答えてくれる人?♡」

 

ていうかあなた誰?

と問うてはみるが、しかし目の前の美女には見覚えがある。

軍服らしきモノを纏った、二十歳ほどの見た目の女性。無造作にまとめられた色素の薄い髪に、分厚い隈に飾られた目、あと軍服のポケットから顔を出す傷だらけのクマの縫いぐるみが特徴的な彼女は……思い出した。

確か────

 

「……こうなってしまっては仕方が無い。私はこの空中艦〈フラクシナス〉で解析官をやっている、村雨令音だ」

 

 

 

◇◇

 

半楕円の形に床が広がり、その中心に艦長席と思しき椅子が備えられている。まるで……いや、そのまんま船の艦橋だったか。

先ほど目を覚ました士道と共に、そこで司令なる人物に先ほどの問いの答え以上の説明を受けていた。『精霊』『AST』『空間震』『ラタトスク』など、あれこれ。

 

どうやら士道は現界した精霊と精霊絶対殺すウーマンとの戦闘の余波で吹き飛んだらしい。それにぶつかって私も一緒に吹き飛ばされ、瓦礫にぶつかる直前でこの空中艦フラクシナスの転送装置によって拾われた、らしい。

 

「なるほど大体わかった♡」

 

「いや全然わからないんだが」

 

「とにかく琴里ちゃんは命の恩人ってことでしょ? ありがとうございます♡」

 

「ああ、それはそうか。ありがとな、琴里。……琴里、で合ってるんだよな?」

 

仮にも兄が、目の前の少女が妹かどうか分からないなんて普通はありえない。

だが、今回ばかりは断言できないでいる自信なさげな士道も仕方が無い。

だって、今の彼女は“黒”なのだ。

普段は白いリボンでツインテールにしている彼女の髪は、現在黒いリボンで結われている。

先ほどアニメの知識を思い出したが、確か彼女はリボンの色で性格が変わる二重人格みたいなキャラだった筈。

そして彼女は精霊で、精霊を士道に攻略させる組織《ラタトスク》の司令官でもある、女子中学生──ちょっと設定盛りすぎだと思うの私だけ?──で、士道の義理の妹。

 

そんな琴里ちゃんと、こうして顔を合わせるのは実はこれが初めてだったりする。電話で話したり、写真で姿を見たりしたことはあったけどね。

そのせいで、まさか初の対面が(こっち)になるとは思わないじゃん?

ほんと、最悪。

 

私がただの視聴者だったときは琴里ちゃん大好きだったんだ。特に琴里攻略回でのデレは常軌を逸した破壊力があった。

だが、今世で士道のことを異性として好きになった今では、ね。

彼女の、士道の人権を無視した高圧的な言動は強い絆で結ばれた家族ならではなのかも知れないがそれはそれとして外から見てたら不愉快でもある。

現在はまだそういう数々の非道を行う前ではあるが、これからそういうことを行うのかと思うと好感度も鰻下がりだ。

アニメではたぶん士道は白も黒も両方愛する妹だとして受け入れてたと思うけど、私は黒い琴里は正直好きじゃない。

士道の黒歴史を使って脅したり、ことあるごとに士道を侮辱したりするし。

創作としてならそれもまあ良かったが、同じ人間として付き合うことを考えるとあまり愉快ではない。

誰だって好きな人を侮辱されたら嫌だろう。

好きな人がいないなら好きなキャラや趣味などでもいいが、それを悪し様に罵られて不快にならない者は手を挙げてみろという話。

 

「私が琴里かどうか、ですって? 妹の顔を忘れたの、士道? 物覚えが悪いとは思っていたけど、さすがにそこまでとは予想外だったわね。今から老人ホームを予約しておいた方がいいかしら」

 

……スゥーッ。

 

「こほん。えー、こういうことを言うのも憚られますが、例え家族であろうともそのような、相手を小馬鹿にするような言い方は良くないと思います♡ というか私の彼氏を小馬鹿にしないで下さい。不愉快です♡」

 

「……家族間の問題よ。部外者は黙っていなさい。あとなにその巫山戯た喋り方は」

 

「血の繋がりがないあなたと、将来結婚する私。彼にとってどちらが他人でしょうか♡」

 

「むっ!」

 

「むむむ♡」

 

こやつ、やはり気に食わん。

確かコイツは士道のことが好きなはず。

確かね。

だから彼女の座を射止めた私が気に入らないに違いない。

だって彼女が士道以外の人間に毒舌を披露する姿にはあまり覚えがないのだから。

それか単純に任務の邪魔だと思われているのか。

いやどうだろう。

居合わせたとはいえ本当に邪魔だと思っているのならここまで私に説明する必要は無い。さっさと私だけ地上に送還して士道にだけ精霊の説明をするべきだった。

つまり私も一応当事者として認識されている?

 

しかし私の顔面は同性ですら陥落させるのに、微塵も効果が無いな。もう少し私に融通効かせてくれてもよいものを。

……ああ、違う。

私の顔面は効いている。

ただ彼女はラタトスクを代表する司令官として、私情に流されず物事を判断しているに過ぎないのか。……そういうところは掛け値無しに尊敬に値するんだよなあ。

 

「争いは同レベルでしか……というだろう。一旦落ち着いてくれ。琴里も、肝心な説明が終わっていないよ」

 

令音さんの仲裁がなければ、士道の前で士道の妹を悪く言うという最低ムーブをかますところだった。危ない危ない。

サンキュー令音さん。

 

「こほん、話を戻すわ。さっきも言ったけど、空間震の原因は精霊で、精霊の対処法は二つあるの。1つは武力を持ってこれをぶっ殺す。そしてもう1つが────」

 

 

精霊という少女の姿をした化け物と対話し、平和に空間震を解決する。具体的にはデートして惚れさせて士道とキスをさせる。

 

 

それが彼女達ラタトスクの存在理由だという。

私は彼女が気に入らないが、それはそれとして司令官としての彼女は尊敬する。

武力ではなく対話で、精霊(少女)たちを救い空間震も解決するという一挙両得な、けれど恐ろしく険しい道のりをこの歳で覚悟しひた進んでいるその生き様には。

 

士道を侮辱するのは許さんが。

 

「士道、あなたは言ったわね。空間震が精霊の意思に関わらず発生するのなら、精霊を殺すのは間違っていると。そんなことがあっていい筈がないと」

 

「ああ。あの子はとても悲しそうな目をしていた。まるで世界全てが敵だと思っているような、あの頃の俺と同じ……」

 

「じゃあ、やることはわかってるわね」

 

「何故かは分からないが俺には精霊の霊力を封印する力があって、そのために精霊とデートして好感度を上げ、キスをする必要がある。だったか?」

 

「ええ、そうよ。空間震を解決したい。精霊も助けたい。だったらすることは一つ。そうでしょう?」

 

さて、遂にこのときがやって来た。

ここで士道がどういう反応をするかが見たくて私は彼と付き合い始めたのだ。

今は普通に好きだから付き合ってるんだけど。

アニメでは確か、精霊を助けるために自分の命すらかけて死地に飛び込んでいた士道。

だったら流石に精霊を見捨てるという選択肢は取らないだろうし、さてどうなるかな。

 

「例えどんな理由があろうと、俺はこいつだけは裏切れない」

 

そういった士道が私の腰に腕を回して抱き寄せ……ふぁっ!?

ちょ、こんなところで何を!?

 

「例え誰の命が掛かっていようとも、俺が死ぬとしても、ほんとは嫌だけど……お前()に軽蔑されたとしても、こいつだけは裏切らないって、俺はあの日にそう誓ったんだ。だからどんな理由があろうと他の誰ともデートなんて出来ないし、ましてやキスなんて論外だ」

 

ふぁああああ!?

やっば心臓が破裂する好き好きしゅき^~♡

 

はっ!?

 

一瞬意識が飛んでたわ。

おっと口から唾液が──。

 

「……そこのアホ面は放っておくとして、それがあなたの選択ってことでいいのかしら、士道。後悔はしない?」

 

「正直、後悔はすると思う。ことあるごとに精霊を見捨てたことを思い出して悔いると思う。でも、それでも俺は! こいつを裏切らない! 例え何度同じ場面になってもそれだけは絶対に変わらない。変えられない。変えちゃいけないんだ」

 

あ、やば。

幸せすぎて現界────。

 

 

 

◇◇

 

 

 

あの後、令音さんが割り込んで一旦仕切り直しになったらしい。

 

精霊の“世界を殺す力”を対話で封印するためにどうしても士道の力が必要なラタトスク。

恋人絶対優先マンと化した士道。

 

互いの主張をすりあわせて譲歩点を見極めるために、ラタトスクは最後のチャンスを手に入れたわけか。

 

……今思ったが、琴里ちゃんが私にまで精霊のあれこれを教えたのは「世界の危機である空間震を解決できるチャンスなんだから、わかったら自分から士道と別れろ」というプレッシャーを与えていたのではないだろうか。

士道にメロメロにされて呆けていたから放置されただけで、手札の一つとして数えていたのは恐らく間違いない。

 

と、過去の考察を進めている私の現状を一言で表すとどうなるのか。世間一般ではこう言うらしい。“現実逃避”と。

 

『力が欲しいか(意訳)』

 

なんか、いま、わたしは、、、おとこともおんなともとれるようなよくわからないそんざいにからまれています。

歳もわからん。

上手く認識できない。

間違いなく始原の精霊だよこれ。

なるほど、よくわからんが私を精霊にしてそこいらの掃いて捨てるほどいる美少女チートモリモリ転生者に貶める気だな! そうはいかんぞ!

 

『じゃあ強制ね(意訳)』

 

「ふぁっ!?♡」

 

おいよせヤメロっ!

嫌だ放せぐわー!

 

 

 

◇◇

 

 

 

「令音さーん! だずげでぐだざーい……♡」

 

と泣きついてフラクシナスの設備で解析して貰った結果。

 

「間違いなく精霊になっているね」

 

「なんだって!?」

 

「なんですって!?」

 

空中艦の艦橋再び。

なんて思ってる間もないくらい怒濤の展開である。

てかそこ、驚愕の声を揃えて兄妹アピールするな。

もう、突っ込みが追い切れない。

 

「しかし、これで光明が見えたね。彼女の天使の能力は『吸収』。うってつけじゃないか」

 

「え、どーゆうことですか♡」

 

「シン(士道)の霊力封印とは、具体的に説明すると『シンと精霊の間に霊力のパスを繋ぎ、霊力をシンに流す』ことなんだ」

 

「なるほど、つまりまずこの女と士道のパスを繋ぎ────」

 

「ああ。彼女が精霊と友好的な関係を築いて定期的に霊力を吸収させて貰う」

 

「更にその霊力はパスを通じてこの女を中継し、最終的に士道に流れ込む。だからこの女も普通の生活が送れるし精霊も実質封印できる」

 

は?

なになに、なんなの。

勝手に話進んでる系?

 

「なるほど。それなら俺が他の女の子とデートしたりキスをしたりする必要も無い、ってわけか!」

 

士道まで!?

 

「あんたも士道に浮気されたくなかったら、この話に乗るしか無いわよ? 精霊を見殺しにしたという罪悪感を恋人に一生背負わせたいんなら構わないけど。それとも空間震のニュースで死人の数や被害額を聞いて青ざめる方がお好み?」

 

こ、こいつ~!

ここぞとばかりにドヤ顔しおって、許せん!

 

「でも危険だよな。俺は恋人にそんな危険なことをさせたくないぞ」

 

「もっともな意見ね。でも一つ忘れてないかしら。彼女は精霊になったのよ? 霊力を封印されたとして、その生命力は人間を遙かに超えているわ。少なくともあなたより生存率は高い」

 

「いや、でも危険なことには変わりないんじゃ……」

 

「やるかやらないか、それを決められるのは本人だけよ」

 

みんなの視線が私に集中したからといって、私が緊張することは無い。

何故なら絶世の美少女である私は見られることに馴れている。

つまり、この緊張は純粋に選択を迫られているが故。

 

自己保身を優先して士道に一生言われなき罪の意識を背負わせるか。

それとも士道に心配をかけつつ私が精霊を攻略するか。

 

決まってんだよなー、そんなの。

 

「……やります。その役目、やらせて頂きます!」

 

「いよっしゃ!」

 

「ふむ、こちらとしても助かるね」

 

「俺のために、すまん……」

 

 

 

このときの私は知るよしも無かった。

まさか生まれ持ったカンストAPPで精霊達を“堕とす”のが、自分の理性を狂わせるほどの悦楽だったなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、『女の子どおしならただの友情です!』
続かない。

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