転生したらベル君だったので、ガチでハーレム創ってみる。 作:紫蒼慧悟
暫くはこれでええやろう
今日も今日とて素振りの日々。
独学で振るってはいるけど、姿勢とか動きとかみっともないんだろうなぁと思いながらも黙々と木の枝を上げては振り下ろす。
確か、体全体を使って振るうんだったか?
よくわかんないから適当に振るう。わからんもんはわからん。仕方ないね。
だから、振るう。唯唯、只管に。
唐竹、袈裟斬り、右薙、右斬上、逆風、左斬上、左薙、逆袈裟、刺突。
剣の振り方は、9種類に分けられると言う。それらを前世の記憶から抽出して、再現する。
まあ、へなちょこだけどな。
足の動きとか意識した方がいいのだろうか?
等と、余計なことを考えているからダメなんだろうなぁ…
両手で振るっていた木の枝を地面に落とす。
何故かって?
後ろから敵が来てるからだ。
振り向き様に、文字通りに飛び掛かってきたゴブリンを裏拳で殴り飛ばす。
奇襲を仕掛けてきたゴブリンは合計で4匹。一匹は殴り飛ばしたが殺してもいなければ、逃げ出してもいない。
既に起き上がって、俺のことを憤怒の表情で睨み付けている。
未だに戦力差は埋まってはいなければ、向こうはボロボロながらも武装している。恐らく、殺した人間から奪って使っているものだろう。
対して此方は無手。足元にいい感じの木の枝があるが、それを今拾えばゴブリンは確実に襲ってくる。
つまり、無手でゴブリン4匹を倒さなくてはならない。
ベストは最初のゴブリンから武器を奪って戦うことだが、そう上手くいくわけもない。
窮地。絶体絶命。死地。そんな言葉が脳裏を過ったが全て無視する。
これでいい。
俺は強くならなければいけない。
夢のために。己の欲望のために。今は亡き家族のために。
会ったこと無いけど叔母上はぶん殴ってきそう。爺ちゃんの話を聞く限りは多分そう。
ハーレムを創るならば、ハーレムの主は強くなければならない。
女が複数いればハーレム?違うだろう。
数多の魅力的な女性を幸せにしてこそ真のハーレムの主だろう。
故に、俺は強くなる。この窮地はそのための試練の一環だ。
ならばこそ、乗り越えよう。拳を握り込み、俺は冒険を始める。
先ずは、先手必勝。
足元に転がしていた木の枝を奴らに向けて蹴り飛ばす。地面の土ごと。
遠距離攻撃と子供騙しの目眩まし、通じるのは最初の今限り。
それと同時に一番左のゴブリンに向けて、全力で向かう。
飛んできた木の枝に気を取られていた、ゴブリンは容易く接近を許す。
すれ違いざまに右目を目潰しの要領で潰す。
突然の激痛にゴブリンは右手に持っていた錆びたナイフを落とし、絶叫を上げながら顔を押さえる。
他のゴブリンが漸く攻撃されていることを知覚して、こちらを探しているが、丁度ゴブリンが楯になって此方は見えない。
落としたナイフを拾い、絶叫を上げるゴブリンを放置してその隣のゴブリンの首に突き刺す。序でに握っていたナイフを捻り込んで無理矢理引き抜く。
錆びたナイフは整備もしていなければ、刃の部分も欠けている。その刃を無理矢理振るえば傷口はズタズタになる。
頸動脈辺りでも傷ついたのか、噴水のように血を吹き出してゴブリンが一体、絶命する。
絶命したゴブリンが、持っていたのは小さな円形の楯。只し、中央部分に穴が空いており、楯としての機能は著しく低下している。
その楯を拾い上げ、腕に固定せずに持ち手を握る。
目の前のゴブリンは、剣と槍を持っている。後ろには一時的に戦闘不能にしたゴブリンが、一体残っている。
戦況は未だに不利なれど、戦意は未だに衰えず。試練はまだ始まったばかりだ。
「あはははははははははは!!!!」
少女は隣にいる主神の聞いたこともないような喜色満面の笑い声を聞き流しながら、遠目から伺っている光景に見入られていた。
神々の恩恵がなければ、人間はモンスターには勝てない。
いや、必ずしもそうではないのだろう。
でなければ、目の前の光景は何だ?
彼が恩恵を、受けていないことは隣の主神が証言している。
では、嘘を着かれた?
いや、それはないだろう。もしそうなら、隣にいる主神はこんなに楽しそうにしていない。
「ヘルメス様、彼は本当に恩恵を、受けていないのですよね?」
「ああ。それは俺が確認済みだ。彼は一度も神々の恩恵を授かっていない。それどころか、誰かの師事を受けたこともない。」
新しい玩具を与えられたようなそんな顔をしながら、主神はそう言った。
その言葉を聞いたとき、少女は一年前の惨劇の最中に耳にした一つの言葉を思い出した。
もし、彼がそうなのであれば……
いや、恐らくそうなんだろう。
主神の反応と、言葉がそれを証言したようなもの。
「最期の英雄……」
少女が何ともなしに呟いた言葉は隣の主神の笑い声に掻き消されて…風に乗って消えた。
振り下ろされた剣を楯の淵で弾き、突き出された槍は左右どちらかに避けながらナイフを当てて、反らす。
2匹のゴブリンは怒りに任せて我武者羅に武器を振るうが、此方は冷静に一つ一つ対処していく。
心はホットに。只し、頭はクールに。
あまり時間は掻けていられない。最初に片目を潰したゴブリンが復活しかねない。だからこそ、前に出る。
槍が突き出される。今度は前に出ながら楯の淵で剃らしながら進む。楯の枠部分が軋みを上げる。更に前に出る。
剣の突きを姿勢を低くすることでやり過ごす。槍が戻されようとする瞬間、楯から手を離し、槍を掴む。もう一匹が背後に回り込もうとする。
綱引き状態の槍をこちら側に引き寄せ、背後に来た剣を持ったゴブリンに突き刺す。槍持ちのゴブリンが動揺した。更に前に出る。
ナイフを首に突き刺す。
残り一体。既に立ち上がっており、此方を残った片目で睨み付ける。
憤怒を通り越して憎悪に染まった目だ。
今はお互いに無手。どちらともなく走りだし、拳を振るう。
右の拳で腹部を狙い着けるが、避けられる。
更に前に出ると、左から拳が迫ってくる。左手でガードするが思ったよりも威力が高い。更に一歩、前に出る。
今度は右から来るが、姿勢を低くして空振りさせる。
今度は此方の番だ。
足を止めて、体を振り子のように揺らしながら、拳を叩き込む。
体を右に傾けた時には左の拳を。左に傾けた時には右の拳を。
殴る度に拳が痛むが、気にせずにスピードを上げる。
体の動きに緩急をつけてラッシュを叩き込む。
何発殴ったのかもわからないが、最期に側頭部を殴り抜け、地面に叩きつける。
今まで忘れていたかのように、全身で呼吸をする。
両手はもう動かせそうにない。
疲労もあるが、多分骨が折れているだろう。
初めての実戦。いい経験になった。
遠くから俺の名前を呼びながら全力疾走してくる爺ちゃんの姿を最期に俺は目蓋を閉じた。
ゴブリンA 首を刺される
ゴブリンB 仲間の槍が心臓に刺さる
ゴブリンC 首を刺される
ゴブリンD 幕ノ内される