凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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旅する妖精の劇団、それから勇者の翼

 

 

 別に僕たちとあの妖精たちが友好的な関係を結んだという事実はない。

 それどころか、彼女たちの仲間であった筈のブラックドッグを倒したのは僕たちである。

 だというのにレッドキャップの少女――フレアとその仲間たちは特に遠慮も敵意もなく接してきた。

 

「――それで。なんの御用です? キミたちの正体はなんとなく、予想はついてるんですが」

 

 市場のど真ん中で話すのは何だからと、案内されたのはさほど繁盛しているとも思えない裏通りの酒場。

 飲酒をするつもりがないどころか経験もない僕たちが旅の中で入る予定もなかった店に、他に客がいないことすら確かめずフレアはずかずかと入っていったのだ。

 特に何も注文していないことを店主と思しき老人が咎める様子はない。

 ごく普通に席に座る三人――約一名はテーブルに鎮座したかぼちゃでしかないが――の一方で、流石に僕たちも遠慮なく同席、という訳にもいかない。

 是非話をしたいというので付いてきたまでであり、流石に人通りのないこの場で警戒を抜く訳にもいかなかった。

 

「あたしは……の前に、コレは外しとくか。そっちもかぼちゃは外して構わないぞ。ここのじーちゃんは気にしない」

 

 フレアはナディアに言ってからかぼちゃを外すと、あまり見慣れたくなかった赤い兜が中から姿を現した。

 続いてもう一人、グレムリンのベルがかぼちゃを外し、残る鎮座したかぼちゃをフレアが持ち上げると、中からリャナンシーのシェリーが出てくる。

 

「……何故二重に被りものを……?」

 

 ――非常に気になってはいたが、掘り下げる必要性を感じなかったことを、ナディアは自身のかぼちゃを外しつつ問いかけた。

 正直、声に出したら負けだと思ったのだ。

 

「ん? これか? あたしはレッドキャップだからな。当然だろ?」

「なるほど……」

 

 ……ナディアがフレアの種族を聞いただけで納得してしまうのは意外だったが。

 レッドキャップという妖精の特徴を知っていれば、受け入れられることなのだろうか。

 リッカに視線で尋ねてみれば、彼女は首を横に振る。

 “気にしても時間の無駄、警戒していた方がずっと有益。むしろ今すぐ攻撃したい”。その通りだと思った。

 

「やっぱり……僕の試練の時もいた妖精みたいな子たちですよね?」

「ああ! 生きていて嬉しいぞ先代勇者! あの時出てきた金ぴかは絶対お前だと思ってたんだ!」

「ちなみに自分ら、“みたいな”じゃなくて真正の妖精な」

 

 再会を喜ぶフレアの一方で、クイールは曖昧に苦笑するばかりだった。

 確かクイールも、ネシュアで妖精みたいな子に出会ったと言っていたか。

 それは彼女たちであったらしい。意外と長く、ネシュアにいるのだろうか。

 

「本当に妖精だったんですね――いえ、いいですけど」

「あたしはフレア、そしてこっちがグレムリンのベルで、そこのがリャナンシーのシェリーな!」

「……今日は後ろで爆発とかしないんだ」

「所望とあらばやってやるけど、この辺一帯吹っ飛ぶぜ」

 

 試練の時の名乗りが悪い意味で印象に残り過ぎていた。

 あの爆発の意味は一向に理解できないが。

 

「シェリー……? そこのさっきまで浮いてたかぼちゃですか?」

「ああ、見えないんだっけ……そうそう。ここにもう一人いるんだよ」

 

 シェリーのことは、クイールやナディアにも見えていないらしい。

 ……妖精の仲間はともかく、何故僕にだけ見えているのだろう。

 

「キミたちはどうしてこの町にいるんです?」

「あたしたちは公演だよ! あっちこっちの町をショーをしながら周ってる。ネシュアにいたのは、ショーに使う道具の材料集めのためだったんだ」

「ショー……?」

「そう、人呼んで愛と正義の七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)ってね!」

 

 ……つまり、妖精たちで構成された劇団ということだろうか。

 だとすれば、あの試練の最中に突然絡まれたのが不自然なのだが。

 ともかく、彼女たちはこの町では受け入れられた存在であるらしい。

 フレアがどこからか取り出した台本の表紙には、辛うじて読める文字で「第12回ハローネ公演」と書かれている。

 

「……あなたたちは、何度もこの町に来ているのですか?」

 

 完全な想定外となる遭遇だが、魔族である彼女たちならば人々では知らない事情を知っているかもしれない。

 そう判断したのだろう。ナディアはフレアたちに問う。

 

「ん? ああ、毎年この時期にね。とにかく客が多くてやり甲斐があるからさ」

「……知っていたら教えていただきたいのですが、この町の、死者が蘇るという現象は……オドマオズマが関係しているのですか?」

「オドマオズマぁ? 知らないけど、あいつがこの町にいるのを見たことはないぞ。ネシュアに行くたびに暇そうにしているのは見るけど」

「あいつの仕業じゃないって言い切れはしないけど、考えにくいな。ずっと前からこの風習は続いているって聞くぜ」

「私たちは理由が気になったことはないかなー。細かいことだし」

「そうですか……」

 

 四天王たるオドマオズマであれば、ネシュアにいながら離れたこの町に自身の力を行使することは可能かもしれない。

 しかし、それはあくまで可能性の話。

 少なくとも、それ以上の手掛かりを得られないと判断したのか、ナディアは問いを打ち切った。

 

「そっちの質問は終わり? ならあたしたちの用事……というか、一つ頼みがあるんだけど」

「頼み……?」

 

 気のせいだろうか。フレアの、兜の下の瞳が輝いている気がする。

 というか、過剰なまでの期待が突き刺さってくる。

 

「単刀直入に頼む! あたしたちのショーに出てくれないか!?」

「は?」

 

 ――クイールでもなく、ナディアでもなく、そして僕でもなく。

 リッカが舌打ちですらなく、冷たいたった一文字でフレアの頼みを叩き切った。

 目の前にいる妖精たちにはひどく珍しく、恐怖や憎悪などの感情は抱いていない。

 今のリッカにあるのは、シンプルな嫌悪感と苛立ち。

 ……多分、いつかのフェアリーへの悪感情も含まれている。自由な妖精に対する煩わしさから、全力で関わりたくないと思っていた。

 

「――この前から考えてたんだ! 本物の勇者とのコラボ! もちろん先代も! コレは絶対に盛り上がるし観客も喜ぶ!」

「は?」

 

 フレア、めげない。

 リッカの圧は効果があったようで、あまりの冷たい敵意にフレアはたじろいでいた。

 堪えて続けた彼女に再度リッカは一文字だけ返す。

 自分たちは命がけで旅をしているというのに、そのような妖精の道楽に付き合っていられるかという端的な拒絶だった。

 

「……ベルが勇者がこの町にいるかもっていうから、台本も用意してきたんだ! 空前絶後のとんでもショーに」

「は?」

「……あの」

「は?」

 

 有無を言わさないリッカの猛攻。

 ふるふると震えるフレアは遂に何も言わなくなる。

 ……仕方ない。魔族嫌いなリッカがこちらにいる時点で、僕たちを勧誘するとはこういうことなのだから。

 

「――――びゃああああああぁぁぁぁぁぁぁっ! しぇりぃぃぃぃぃっ!」

「はいはい、泣かない泣かなーい」

 

 器用にも兜のバイザーの隙間から涙を流しつつ、シェリーに泣きつくフレア。

 やはり……僕たちとは相性が悪いのは分かっていたが、どうにもいじめる側に立つ気持ちになって仕方ない。

 

「リッカ。あなた、中々容赦ないですわね」

「……」

 

 取り付く島もない、とはこういうことを言うのだろう。

 まあ……僕としても、いきなりショーに出演しろと言われても困るのだが。

 あくまでこの町には物資の調達に来ただけなのだし、それ以上に目立つつもりもない。

 なんだか申し訳ないが、妖精たちには諦めてもらうほかないだろう。

 

「ま、そりゃそうなるわな。シェリー、フレア任せるわ」

「はーい」

 

 シェリーは泣きつくフレアを店の奥へと連れていく。

 もしかして、この酒場自体、彼女たちの拠点だったりするのだろうか。

 こうして話している間も、誰かが入ってくる様子がない。まだ夜には遠いし、そういう時間でないだけかもしれないが。

 残ったのは、丸眼鏡のグレムリン一人。

 

「改めて、自分はベル。機械弄りの妖精グレムリンだ。七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)の舞台装置を担当してる」

「あー……そもそも、その七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)とは?」

「さっきフレアが言った通りだよ。ちょっと変わった妖精どもが集まった、旅のサーカス団だと思ってくれればいい。面子はその場その場のノリで結構変わるけどな」

「そのサーカス団が、何故勇者の出演を求めるのです?」

「フレアの思い付き。勇者が滞在しているかもって推測したのは自分だけど、そこから爆速で台本書き上げたのはあいつ。多分無理だとは、自分もシェリーも言ったんだがな、ヒヒ」

 

 喉を鳴らすように笑ったベルは、テーブルに置かれた台本をぱらぱらとめくる。

 冊子程度の薄さだが、中はびっしりと字で埋め尽くされていた。

 フレア渾身の一作というのは、それだけで伝わってくる。

 

「ともかく、勇者二人には出来れば手ェ貸してほしいってわけ。試練の時の、赤いのと金ぴかのやつで」

 

 フレアに代わっての、再度の出演依頼。

 しかも魔法を使った状態で、と来た。

 思わず、クイールと顔を見合わせる。無茶では、という思考が向こうからも伝わってきた。

 あれは僕たちが魔族と戦うためのものだし――舞台の上となると観客を巻き込む危険性もある。

 

「流石に危険すぎますよ。あれ、僕たちが全力出すための姿ですし」

「ああ、うん。だから全力出してほしいって話」

「えぇ……?」

「そのくらいフレアの台本は大掛かりなショーなんだよな。下手すりゃ死人が出るし、下手していないから今までやってこられた」

「一気にきな臭くなってきた……」

「それを聞かされると出演云々以前に止めないといけなさそうなんですが……」

 

 意味が分からない。もしかして七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)とやら、サーカス団を名乗るテロリストの類ではないだろうか。

 見世物に乗じて町を破壊していくとか、そんな感じの。

 流石にそんなことをすると目の前で宣言されれば、僕たちも見過ごせなくなる。

 

「正式な出演者として、その“止める側”になってほしいんだよ。ああ……そっちの嬢ちゃんの嫌悪も分かる。信用できないだろうな。人間騙して陥れるなんて魔族の常套手段だし」

「……なら」

「ただしこっちは……少なくともフレアは真剣なわけよ。自分に、勇者たちへのとびっきりの報酬を用意してくれって頼むくらいにはな」

 

 ベルは席を立って、酒場の隅にあった大きな鞄をごそごそと漁り始める。

 リッカの苛立ちは変わらない。

 どれだけ魔族を嫌っているかは、クイールたちにも伝わっているだろう。

 リッカに無理はさせたくないし、依頼に対する報酬があるとしても、僕とクイールには断る用意があった。

 

「お、あったあった。これだよこれ」

 

 少なくとも、“それ”を見せられても少しの間は、リッカの拒絶は揺らいでいなかった。

 

「……それは?」

「昔、自分らがちょっとした冒険をした時にな、拾った。自分らが持っていても何にもならないが、自分が調べた限りじゃ、勇者の力に反応するデバイスだ」

 

 ベルの小さな体と比較すると少し大きく見えるが、片手でも持てるくらいの“何か”。

 一目見て、用途は分からない。単に部屋を飾るための置物と言われれば、当たり前に納得できる。

 寧ろそれ以外に、何に使えばいいのだろうか。

 魔道具は外見からは想像できない効果を持ったものも多いが、これもその類なのだろう。

 

「なんの魔道具です?」

「秘密だ。だが、勇者の旅には間違いなく役に立つ。公演がきちっと終われば、これを報酬として譲ろう」

 

 赤地に金色で装飾された、翼を広げた鳥。

 いや――鳥と一言で表現できるほど鳥らしい形状ではないが。

 特定の機能を実現させ、それに鳥の意匠に寄せたような、少し奇妙な形。

 表面の、この場で僕がなんとなく感じられるだけでも、きわめて高度で緻密な術式が込められているその魔道具が並のものではないことくらいは分かる。

 リッカや、魔法に通じているらしいナディアもまた、それを見て目を見開いていた。

 

「こいつの名前だけは、今教えようか――光翼ゼクセリオン、だとさ」

 

 そしてその鳥は――本当に不承不承ながらも、リッカが妖精たちに協力することを認めるほどのものであった。




【キャプテン・フレア】
リッカが単独で完勝した唯一の魔族。

【ベル】
大体今回の一件の元凶。

【シェリー】
妖精たちとユーリ以外には見えていない。
クイールもナディアも「そういう魔族がそこにいるんだなぁ」くらいに受け入れている。

【光翼ゼクセリオン】
「絶対この世界にあるのおかしいだろ」と言いたくなるヒロイックなデザインの鳥型魔道具。
詳しくは次話の掲示板回で辞書が教えてくれるって。
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