凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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教会と静謐の人形劇、それから九人の究極の救世主

 

 

 ショーの出演を請け負った後、ひとまずその場は解散することになった。

 というのも、そもそも僕たちがこの町に来た理由を優先したい旨を伝えたため。

 あの魔道具はリッカも注目するほどのものであるようだし、少しの間この町に滞在してでも手に入れるべきと判断した。

 外に出てからリッカが伝えてきたところによると、あれは戦闘ではなく、どちらかというと旅そのものに役立つものであるようだ。

 内容によっては、ここで新しく魔道具を買い込む必要もないかもしれない。

 しかし、備えておいて損はないだろうと、とりあえず予定していたものを揃えたい。

 

 最初に訪れたのは、この町の教会。

 かつてどんな目的で建てられたのかは分かっていないが、少なくとも今の用途は魔王に仕える魔族たちの拠点であること。

 そして、勇者の支援施設であること。

 教会に訪れれば一定の資金が受け取れる。

 それは魔王からの支援であるということになり、勇者という存在が侮られている証左でもあるのだが――これを気にしていても仕方ない。

 リッカもその部分は気に入らないようだが、資金を受け取る重要性もまた分かっている。

 この施設がなければ、まともに旅を続けることさえ難しいのだ。

 

 教会に辿り着いて、最初にクイールが中に入っていった。

 強い祝福の掛かった教会に、ナディアは近付くことが出来ない。

 そのため順番に入ることになったわけだが……

 

「……」

「……どうしたの?」

「いえ……資金は受け取れました。今後も僕の支援は続けてくれるみたいです、が……」

 

 資金を受け取って出てきたクイールの表情は、大変曖昧なものだった。

 懸念していたのが、先代勇者たるクイールがその支援を受けられるのか。

 アリスアドラが勇者として役割を継続できることは宣言していたが、そこから今まで教会からの支援を受けていなかったこともあり、不明な点であったのだ。

 そこはどうやら問題なかった。では、クイールには何が引っかかっているのか。

 

「……入ればわかると思いますが、あまり知りたくなかったなって」

「……?」

 

 クイールの苦笑から、困った事態が待ち受けているのは確実だ。

 しかし、少なくとも教会で魔族が僕たちを害してくることはない……らしい。

 どうあれ今後のため、資金は受け取っておきたい。

 いつでも魔法を展開できる準備を整えて、リッカと共に教会の扉を開く。

 

「――はぁぁ……感無量。勇者クイールが生きていた、そしてこれからも教会に頼ってくれる……」

「……」

 

 ――これまでの教会にも多く存在していた、多数の球体関節人形。

 それらが高度な魔法によって成立する、アンデッドに似た魔族であることは、リッカから聞いていた。

 今回もそんな人形たちが待っていると想定していた僕の視界には、確かに人形がある。

 大量の人形がくるくると踊る中心で、半透明な魔族もくるくる回っている。

 足の途中から解れるように消えている、薄い布きれ一枚羽織った、ふわふわの髪を伸ばした青白い少女。

 その向こうが見えるほどに透き通った少女が恍惚とした表情を浮かべて人形と戯れる恐怖の光景が、そこには広がっていた。

 

「勇者ユーリに勇者クイール……できることならもっと甘やかしたい……本音を言えば欲しい、コッペの人形にしたい……あ、でもその前にちょっとだけ味見してもいいかも……ぁぁ、考えるだけで昇天しそう、存在がどこかに飛んでいきそうな感覚……最高に気持ちいい……」

「……」

「……」

『ユニゾンリンク! U-リッカ!』

 

 ゴーストのような精神体が放つ言の葉にしては、あまりにも生命力に満ち溢れた欲望。

 それが一直線にこちらに向けられていることを自覚した時には、僕はリッカと言葉も交わさないままに魔法を起動していた。

 リッカも目の前の存在に危機感を覚えていたのは同じであったようだ。

 ……思い出されるのは、海の上で出会ったセイレーン。

 向けられていたのは実直な好意であると理解していても、受け入れられなかったあれと似ている。

 こちらに有無を言わせない類の、一方的な感情である。

 いや、今の言葉だけであのセイレーンよりさらに倒錯したナニカであるのは確実だが。

 

「……」

「……」

「……」

 

 こちらはなんら声を出していないが、魔法音声は十分な音量で響いた。

 そうでなくても、これだけの魔力だ。気付かない筈がない。

 リッカのためにと手に入れたこの力を、生理的な拒否感によって発動してしまったのは――はっきり言って屈辱であるが、仕方なかった。

 それほどまでに、少女に感じた身の危険は大きかったのである。

 

「……」

「……」

「……」

 

 本音を言えば、資金はいらないのでこの教会を退散したい。

 動きを止めてこちらをじっと見つめてくる少女とのにらめっこのひと時は、それくらい重苦しいものだった。

 なおも人形たちは踊り狂っている。かれらのステップの音が、癒しにさえ感じられた。

 

「…………いつもの倍の資金を提供したら、今の見なかったことにならない?」

「……ならないかな」

 

 申し訳ないがこれを忘れられるほど器用な頭のつくりはしていなかった。

 

 

 

 少女は気まずさを無理やり誤魔化すように指を振って人形たちを整列させた。

 その前に立って“それらしさ”を醸し出し、一つ咳払いの後、何事もなかったかのように振る舞い始める。

 

「――ようこそ、ハローネの教会へ。旅が順調そうで何よりよ、勇者ユーリ」

「……」

「……」

 

 魔法を解くことはない。

 それをしたら、次の瞬間襲い掛かってくる未来が見えた気がした。

 

「普段はここも人形たちが担当してるんだけどね。いやあ、まさかメンテ当日に勇者が来るなんて」

 

 今日ここに訪れたことを後悔する。

 たった一日でもずれていれば、彼女の倒錯した欲望を聞くことなどなかったのだから。

 あの人形たちは、彼女が操っていると見て間違いないだろう。

 今この場にいるだけでも、二十は超えている。

 それだけの数をあれほど自在に操れる辺り、高い力を持つ魔族なのだろうが……感じる恐怖が強敵に対するそれとは違う。

 

「コッペはコッペリア。ポルターガイストのコッペリア。これでも教会の人形たちの総監督をしてるのよ」

 

 ――本当に“これでも”だった。

 彼女の言葉が本当であれば、僕たちが最初に立ち寄ったイネアの町の教会の人形なども、彼女が操作していたということになる。

 あの場にいなかったならば遠隔で人形を操っていたということで、それは彼女の持つ技術がより高度なものであるという証明に他ならない。

 非常に複雑だった。

 ここまでの旅を成立させてきた教会の裏に、彼女がいたことが。

 ……というか、コッペリア。ポルターガイストのコッペリア。ということはつまり。

 

「……フレアの仲間?」

「うん? うん、そう。七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)の一員もやってるわ。それを知ってるってことは……もしかして! キミも引き受けてくれたの!? コラボショー!」

 

 出演を引き受けたことも後悔した。

 まさかこの少女があの妖精たちにも絡んでいたとは。

 

「ぁぁ……ありがとね、あの子絶対やりたい台本だって言ってたから。これはコッペも張り切らないと。あ、コッペは主に観客の誘導と無名キャラ(エキストラ)、舞台装置の補助をやってるのよ。こう……人形をちょいちょいって」

 

 今まで姿を見せていなかった、七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)の五人目。

 ネシュアでは“本日欠席”とのことで現れなかった、一切来る気がないらしかったメンバー。

 その割にはフレアのことを想っているようだった。やはり彼女も自由人なのか。

 

「それなら、この町の公演の時にまた会えるわね!」

「……」

 

 遭わざるを得ないことが億劫だった。

 この教会で受け取ることができる資金を、彼女が操る人形から受け取り、踵を返す。

 もちろん、魔法は維持したままだ。

 

「え? もう行っちゃうの!?」

「用事は済んだから……」

「待って! お茶してって! せめてちょっと人形なっていかない!? 今ならサービスで眼から魔力光線も出――」

 

 教会を出て、扉を閉めてから魔法を解除する。

 お茶の提案だけならばともかく、“せめて”で提示してくるものがあまりにもおかしかった。

 サービスについてはほんの僅かに興味を引き立てられなくもないが、その興味に身を任せれば間もなく後悔するのが目に見えている。

 フレアの出演依頼は純粋な気持ちだったから首を縦に振ることも出来たが、コッペリアのそれは頷くのに純粋な気持ちなだけに抵抗があり過ぎた。

 どう考えても、ハッピーエンドから遠ざかることはあっても近付くことはない。

 

「お疲れ様です。凄かったでしょう?」

「……うん」

「……」

「本当に何があったんですか」

 

 入る前のクイールの苦笑はすべてを物語っていた。

 いや、僕もリッカも今のを笑って済ませることは出来なかったが。

 今の数分だけで大いに気力をすり減らした。これが大きな戦いの前とかでなくて良かったと心底思う。

 ……土の試練の最中に現れていれば、僕たちは終わっていたのではないかとほんの僅かに考えた。

 

「それじゃ、今日のうちに買い物も済ませてしまいましょうか。魔道具に食料品に……ナディアちゃん用の服も買わないとですよね。僕も色々と買っておかないと……」

「いえ、わたくしは……ちょ、ちょっとクイール!」

 

 コッペリアによって生み出された微妙な空気を吹き飛ばすためか。

 やや強引にクイールはナディアの手を引いて、市場の方に歩き始める。

 そうだ。買うものは色々とある。ショーのことは一旦置いておいて、旅支度を整えることを優先しなければ。

 

「行こう、リッカ」

「……ん」

 

 人に混じってかぼちゃ頭たちが行き交うことでより活気に溢れる市場へと歩いていく。

 ショーに対する大きな……非常に大きな不安要素が増えはした。

 しかし、その先で得られるものが旅の助けになるならば、我慢するしかないか。

 

 

 

 

 

 それから二日後の夜、町の外で僕たちは集まった。

 どうやらここから、彼女たちのショーは始まる……というよりも、この町すべてがショーの舞台となる。

 台本を確認した時はやはり堂々としたテロ行為かと思ったが、過去のショーも似たようなものであるらしい。

 今回はそれに、少しだけ“例外要素”と“アドリブ”の増えたものだとか。不安である。

 

 ここに集まった七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)の面々。

 今回だけの臨時メンバーは多い。しかし、フレアにそれに対する不安はない。

 寧ろ来たる本番に対しての期待の方が、大きいようだった。

 

「赤の戦士! キャプテン・フレア!」

 

 ショーを始める前の慣習であるらしい。

 フレアは最後の打ち合わせの後、いつか聞いたものと似たような名乗りを上げた。

 

「緑の戦士! ベル!」

「おう」

 

 あの時は一切やる気の感じられなかったベルも、ショーともなれば話は別らしい。

 板のような魔道具で、舞台装置の最終調整を施しつつも、片手を上げて反応する。

 ……彼の装置が此度のショーの目玉の一つであるようだが、僕たちからしてみれば町を破壊しかねない最大の要因である気がしてならない。

 

「青の戦士! コッペリア!」

「コッペはいつでも準備おーけー」

 

 どちらかというと、このコッペリアの方が安全と言えなくもなかった。

 彼女も“演じること”に関しては真摯であるらしい。

 どうか僕たちに対して“アドリブ”の範囲で血迷わないでほしい。

 

「桃色の戦士! シェリー!」

「はぁい」

 

 シェリーは昨日今日と、やけに僕たちに視線を向けていることが多かった。

 リッカに見えないだけではない。クイールやナディアにもその姿は見えておらず、観客にも同様らしい。

 そもそも何故僕に見えているのか、聞いてみたが答えは返ってこない。

 というか、彼女は一体何をするのだろう。台本の中にも、シェリーが担当するらしい動きはなかった。

 役割に『注目誘導』と書かれていたし、裏方の重要な仕事だとは思うが。

 

「紫の戦士! ナディア!」

「……何故わたくしまで」

 

 未だに自身も巻き込まれたことを受け入れられていない部分があるらしいナディア。

 彼女が任されているのは、ショーの司会進行であった。

 普段はコッペリアの人形を使ったりしているところらしいが、フレアは彼女に目を付けた。

 司会にも感情が乗っていた方が絶対に良い、とのことだ。

 

「金の戦士! クイール!」

「ああ、はい」

 

 僕たちは勇者として、顔を出すことはしない。

 徹頭徹尾、今回の“謎のコラボヒーロー”として、魔法を起動した状態で出演することになる。

 クイール曰く、聖剣がやる気をなくしそうとのことだった。聖剣に感情があるのだとしたら、その気持ちは分からなくもない。

 

「赤と銀の戦士! ユーリとリッカ!」

「うん」

「……」

 

 僕たちに定められた制限は、“全力を適度に出し惜しむ”こと。

 ようはある程度苦戦しろということらしい。それが聖剣がへそを曲げている理由なのだろう。

 

 この面々で挑む、見せかけの戦い。

 正直、今も心情としては複雑ではあるが、やると決めたなら精一杯取り組もう。

 その方が、少しくらいはこれが終わった後に、自分でも納得いくだろうから。

 

「金の戦士! ティバリー!」

「はい、です」

「待って誰いまの」

「以上九人! 我ら無敵の七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)ッ! 今回のショーも絶対成功させるぞっ!」

 

 ――ショーのタイトルは。

 

 ――『ハローネ絶体絶命! 立ち上がれ三人の究極戦士!』である。




【コッペリア】
勇者に教会で施しを与え、自分無しでは生きていけない体にすることに悦を覚えるポルターガイスト。
多分どこかのゲーミングサキュバスと会わせたらえらいことになる。
人形の術式に色々と仕込むタイプの性質悪い技術者。

【ティバリー】
この町の公演でのみ、七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)に協力するジャックランタンの少女。
祭りの象徴のような魔族であり、蘇った死者にかぼちゃを渡していく。「進呈」
ユーリ曰く台本に存在すらしていなかったらしい。

七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)
今回においては史上最多となる九人の劇団。
ハローネ公演において一回限りのショーを行うため、臨時メンバーが多数参加している。
それぞれ象徴となる色を持ち、順に赤、緑、青、桃、紫、金、赤、銀、金となっている。
なおショーそのものについて、全部は描写しない。悪しからず。
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