凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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飛べない翼、ひとりの夜

 

 

「……今日はここまで、かな」

「分かった。お疲れ様、リッカ」

「ん……」

 

 光翼ゼクセリオン。これが今後の旅に大いに役立つものであるという理解はできた。

 乗りこなすことさえ出来れば、これまでとは勝手が違う。

 地形を気にせず、魔族と遭遇する確率も減少し、さらには速度が出る。

 『ユーリフューリー』を使い全速力で駆けるよりなお速い飛行により、移動に関してはかなり変わるだろう。

 

 ――そう。乗りこなすことさえ出来れば、である。

 

 クイールが試して吹っ飛んで、それから僕も試して、案の定同じ目に遭った。

 魔法を利用した状態でなければどうなっていたか。何故生身でいたクイールが無事だったのか不思議なほどだ。

 幸い停止すれば、ゼクセリオンは元通りに縮小するため、持ち運びに難はない。

 僕たちはとりあえず徒歩で旅を続行しつつ、対策を講じることにした。

 ある程度制御をしやすくし、僕たちが問題なく乗りこなせるようにするためのセーフティの実装である。

 緻密に術式が刻まれた魔道具だ。そこにさらに機能を追加するには、より繊細な調整が必要になる。

 加えて、各機能を動かしつつ具合を確かめるには、僕たちが持つ勇気の魔力を要する。

 このため、作業をするうえで僕はリッカの助手をする形で手伝っていたのだが――日が暮れるまではあっという間だった。

 

「終わりそうですか?」

「……まだ、もう少し。それにナディアの方も進めないと」

 

 リッカが現在請け負っているのは、ゼクセリオンの調整だけではない。

 ナディアを祝福に適応させるための工程もまた進行中なのだ。

 どちらも、僕たちの中ではリッカにしかできないこと。任せるしかないのだが……無理はさせられない。

 あまり急がず、将来的に徒歩ではない選択肢が見えたと考えるのが良いだろう。

 

「ただ、これで中は大丈夫そう」

「中? それは、この魔道具の内部という意味で?」

「ん……テントよりは、体も休まるはず」

 

 ゼクセリオンは勇者の翼であると同時に、その仲間を連れて飛ぶためのものでもある。

 尾に設けられた扉の内部は空間が拡張されているとのことだった。

 リッカが扉を開いて、先んじて中に入る。

 それに続き、魔道具を突き抜けて地下まで行くのではという階段を下りていけば――

 

「……凄い」

「わぁ……もう普通に家じゃないですか、これ」

「魔道具の内部空間にここまでしますか普通……?」

 

 聖都の宿に匹敵せんばかりの、生活に困らない家具があつらえられた大きな部屋が広がっていた。

 その質は野宿で用意できるようなものでは断じてない。

 空間の拡張だけでも、そう簡単な魔法ではないという。それがここまでの規模で展開されたうえで、内装にまで拘られたその空間は、魔法に明るくなくとも凄まじい技術の賜物だと分かる。

 

「あとは、これを弄れば。魔除けの起動と、それから……」

 

 驚く僕たちに追い打ちするように、リッカは壁に掛けられた時計のような魔道具に何かを打ち込む。

 そうすることで空間には新たな変化が起きた。

 部屋の奥の壁が横に開いていき、一筋の通路が出来上がったのだ。

 いくつか扉の取り付けられたそこに踏み入り、リッカが開いた扉の向こうを覗いてみれば、大きなベッドのある個室がそこにあった。

 気を落ち着けて休むには十分な部屋だ。どうやら他の扉の先も、同じようになっているらしい。

 

「これはまた……宿いらずじゃないですか」

「一長一短。魔除けをはじめとした、各種警戒用魔法も市販のものよりずっと強力だけど、起動に使う魔力もそれなり。魔除けの性質は同じだから、町で休めるならそれに越したことはないはず」

 

 魔除けの魔法はゼクセリオンにも備えられている。

 これは気配を消し、周囲から感知されなくなるというものだが、見つからずとも踏み入ることが出来るという性質も持つ。

 たとえばの話、そこが魔族の縄張りで、たまたま巡回のルートに被っていたりすれば、結界の内部には容易く侵入できるのだ。

 それ以外にもゼクセリオンには警戒のための魔法がいくつか仕込まれているようだが、そのすべてを利用するならばそれなりの消耗が必要になる。

 いつも通り教会の資金に頼って、町で休むという選択肢は存在し続けることになるか。

 

「……まあ、それでも野宿はずっと安全になるんだよね」

「ん……それは間違いない。部屋は好きに選んで。初期状態だと内装は同じ」

 

 一旦、リッカからの説明はそれで終わる。

 うん……今のところは、安全なキャンプ用品でしかないものではあるが、それでも助かる。

 とっくに慣れたテントや寝袋での休息だが、こうして立派な部屋で休めるに越したことはない。

 どうやら個室の他にも、調整次第で色々と用意ができるようだし、ぐっと快適性が広がったと言えよう。

 翌日に疲れを持ちこさないことは、旅の安全に繋がる。

 休息の質の大切さというものはここまでの旅でよく理解した。これだけでも、あのショーの報酬としては十分すぎる代物だ。

 

「それじゃあ……今日はここで休もうか。夕ご飯作るから、待ってて」

「やった! ユーリくんユーリくん、僕も何か手伝いましょうか?」

「いや、いいかな」

「えっ」

 

 先の部屋に戻り、鞄を下ろす。

 ロケーションこそ変わったが、いつもとやることは変わらない。

 既に魔除けが展開されているならばここで食事を済ませても良いだろう。

 ……台所も用意できないだろうか。いや、ここでも調理に支障はなさそうだが。

 

「わたくしも部屋を一ついただきますね。リッカ、来てください。続きをお願いします」

「ん……ユーリ、またあとで」

「うん。用意できたら呼ぶよ」

 

 ナディアが選んだ個室へと二人は入っていく。

 聖都に辿り着く前に、ナディアの祝福への適応は済ませなければならない。

 夕飯の用意は僕一人でもできるし、眠る時間を削るくらいならば今の内に進めてくれた方が良い。

 

「うぅん……料理スキル……僕の先輩としての威厳……」

「……?」

 

 備え付けの椅子に座ったクイールが何やらぶつぶつ呟くのを耳にしつつも準備を進める。

 風の試練に向けて大きな前進となる新たな“旅のお供”。

 その中における最初の一晩は、こうして更けていく。

 

 

 

 それから数時間。もうあとは寝るのみとなった頃。

 僕はこのゼクセリオンの有する自由性に改めて感嘆していた。

 

 どうやら個室の調整については、各部屋の所有者が任意で行えるらしい。

 それぞれ割り振られたリソースの範囲で、必要な家具の調達や設備の設置など幅広く。

 ここまで来ると、“誰が作成したのか”“何を目的としていたのか”という疑問が生まれる。

 聖剣のように、言い伝えの上だけでも魔王が用意したというのであれば、このような快適な旅を魔王は許していたということに繋がる。

 百代も続く、人々にとって希望ですらなくなった“慣習”。

 そこにこんな、お誂え向きの道具があることは、やはり不思議だ。

 僕よりずっと長く旅をしてきたリッカでさえまだ見ぬ魔王の存在にはやはり謎が多い。

 

 ――だけどその、リッカがずっと抱き続けていた謎も、明らかにする。

 僕たちで辿り着くのだ。試練のすべてを突破して、必ず魔王のもとに辿り着く。

 そうして、その先へ。

 目指すのはハッピーエンド。魔王の、さらにその先へ。

 

「……」

 

 ベッドに腰掛けて、カーテンを少し開いて外を覗く。

 拡張された空間ではあるが、外の景色は問題なく眺めることができる。

 野ざらしになったゼクセリオン内部から見る外は、宿の窓から見る景色ともまた違う高さで、なんだか慣れない。

 ――たとえばこれが、空を飛ぶことが叶った状態であれば、さらに新鮮なのだろうか。

 もっとも、空を飛ぶならば僕かクイールが運転を行うことになるので、単純に楽しむだけともいかないが。

 

 暗がりの向こうに魔族がいないことを確認してカーテンを元に戻す。

 ベッドや、寝癖を直すのに便利な鏡。普段使っているものは鞄の中にあるから、個室にはそれくらいで十分だった。

 しかし、まさか個々の浴室まで用意できるとは、という驚き。

 普段の野宿では当然ながら風呂はないし、かといって川辺なんかも水浴びを目的に近付くのはあまりにも危険だ。長い旅では清めの魔道具に頼り切りだった。

 町で休むことが出来ても、浴場なんてそうそうない。……宿の部屋にそれさえ備えられていた聖都が凄まじかったともいう。

 とにかく、ゆっくりとお湯に浸かることなど殆どなかった環境さえ、改善されるとは思っていなかった。

 本当に、考えなければ思いつかないくらい不便がないし、快適だ。

 僅かな間であるが、旅をしていることを忘れてしまうほど。

 

 その万能性を受け入れつつも、意識しておかなければならない。

 僕たちは、これに甘んじて安全な行商をしている訳ではない。勇者としての旅の最中なのだということを。

 この設備の数々で気が抜けて何か失敗でもしてしまえば、いくら後悔しても足りないだろう。

 十分に英気を養い、明日の活動を万全にするための拠点。常にこの場所は、そうあるべきだ。

 

 とはいえ――ようやくまともに眠ることが出来るようになってきたリッカには、これでもっと気を抜いてほしいところもあるが。

 そうしてほしいという望みと、きっとリッカはこの中にあっても最低限で済ませるだろうという確信。

 ままならないと思いつつ、部屋を見渡してふと疑問が生まれた。

 眠るとき、同じ部屋にリッカがいないというのは、いつ以来だろうか。

 リッカも今頃は自分の個室だろうが……眠れているかな、と心配する。

 

「……」

 

 ……いや、顔を出すのも、おかしいか。

 この方がリッカもより安心できる……はず。

 少なからず今までの環境は、リッカにとって負担だっただろうから。

 いつもとは違う今の状況にどうにも違和感を覚えつつも、寝転がって布団に潜り込む。

 

 それから意識を手放すまでの暫く、その違和感は消えることはなかった。




【光翼ゼクセリオン】
ユーリたちの新たな旅のお供。
飛行用の乗り物である点がメインの筈だがあまりにもじゃじゃ馬過ぎたため調整中。
魔除けをはじめとした警戒魔法も完備しているが、運転しながらの展開は不可能。魔除けを張った上で敵に突撃なんてできたらチートである。
内部には居住空間が広がっており、必要に応じて部屋の拡張などが可能。
ゲーム的に言うと体力の回復、倉庫や銀行の利用、ある程度の買い物などが出来る万能拠点的な存在。
個人的イメージではFF3の飛空艇インビンシブルみたいなやつ。

【リッカ】
現在のタスク
・ナディアを祝福に適応させる
・ゼクセリオンの各種調整←New!
・辞書と共同でやってる何か(最終段階)

【ユーリ】
「いや、いいかな」に悪意はない。純粋に戦力外と判断しただけである。

【クイール】
料理スキルはともかくとして、彼女の名誉のために言うならばユーリは彼女のことを頼れる先輩として慕っている。料理スキルはともかくとして。
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