凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『夢幻の槍』/リッカの秘密兵器

 

 

 ハローネの町を出た翌日。

 僕たちは明日には着くだろうチェリスの町に向けて見晴らしのいい平原を歩いていた。

 ゼクセリオンの調整が今晩の内に済めば、あれを使って海を渡る選択肢もなくはない。

 とはいえ、使えるようになって間もなく海を渡るというのはあまりにリスキーだ。

 ひとまず方針としてはこちらの大陸に来たときの逆――チェリスからシートレイアへの船で戻るという形に落ち着いた。

 ……海に良い思い出はない。魔族との遭遇は一度あったきりだが、その一度が衝撃的すぎて。

 ()()と同じものにもう一度遭遇することを否応にも考えてしまう。

 唯一……リッカに危険がなさそうなことだけは、ある意味マシともいえるが。

 

 何もない船旅であれば、それでいい。

 寧ろ人々に許された海路である以上それが普通な訳だし。

 そんな風に、来たる船旅を少しだけ憂鬱に感じていた、昼間のことだった。

 

「……つまり、二人とも中心としている型などないと?」

「そうなりますねー」

「うん、僕も……そもそも実戦で使ってないけど」

 

 話題の発端は、野生の魔族を追い払った後の、ナディアのふとした気付きから。

 僕やクイールの剣に、何か元にした型はあるのかという話である。

 僕はそもそも、日々の習慣、半ば体が鈍らないようにと剣を振っているだけであり、実際に戦闘で剣を使ったことは今まで一度としてない。

 一方でクイールも、まともに剣技を習ってはいなかったようだ。

 

 彼女は剣を戦闘の主として扱っているが、その技術は殆ど実戦だけで培ったものだという。

 確かに――思い返してみれば、聖都のエルフたちと比べてその剣筋は大振りであり、力強さに重きを置いている。

 あの外装によって魔族と力比べができるほどになっていても、その癖は抜けるものではないのだろう。

 

「……ユーリはともかく。クイールはよくそれで生き残ってこれましたわね」

「確かに、かっこいい剣ではないかなーとは思いますけど。その“生き残る”ための剣ですよ、僕のは」

「まあ……感心するものではあります。別にあなたの結果を否定するわけではありませんわ」

 

 ある意味、生き残るということに関しては、ナディアの言う型の定まった剣より完成されているともいえる。

 人間が魔族との戦いを勝ち抜いてきたという結果が伴っているのだから。

 クイールの才能ありきではあるが。少なくとも僕に真似のできるものではない。

 

「でも、どうして急に?」

「ユグディラ……今はイグディラでしたか。あの都市のことを思い出して、ふと気付いただけです。あそこはわたくしの時代、騎士の武技に秀でた印象があったものですから」

「あー……昔からそうなんですね。今もあそこには騎士がたくさんいますよ、エルフの騎士」

「魔族との共存を目指す都市とは聞いたことがあります。長い年月でそれも随分と進んだようですね」

 

 そういえば……聖都はナディアの――ネシュアの時代からあったのだったか。

 その頃から魔族と共にある都市という在り方は変わっていないらしい。

 いや、今ではどちらかというと、エルフの方が主になっている印象だが。

 しかしエルフが人間を虐げているという様子も見られなかった。

 聖都を発ってからも多くの魔族を見てきたが……人間との関わり方において、やはりあの都市のエルフたちは特別だと言える。

 かれらの存在こそ、クイールがナディアを聖都に保護してもらおうと考える理由の一つなのだろうし。

 

「……あそこの出身であるなら、その騎士から最低限の剣技を学んで出てきた方が良かったのでは?」

「――あっ、あんなところに魔族が」

「誤魔化し方が雑すぎますわ」

 

 もっともなことをナディアが指摘すれば、クイールは即座に話題を転換させた。

 どちらかというと、好ましい話題ではないようだ。

 それをナディアも察して、クイールの様子に溜息をつく。

 ――あらぬ方向に指を向けたまま、ぽかんと口を開けたクイールは動かない。

 

 たとえばクイールが話題を変えようとしなくとも、すぐに気付いていたことだろうが。

 たまたまそちらを指さしたのは、或いは彼女の勘だったのかもしれない。

 

 

「――――ぉぉぉぉおお! 渡さねえぞ! 積み荷も俺らの命もぉ!」

「無駄口叩くな(アニ)ィ! 黙ってとにかく走るっ!」

 

 

 彼方から近付いてくる、大きな荷車を引く誰か。

 尋常ならざる絶叫とその勢いから、明らかな異常事態であることが伝わってくる。

 荷車の後ろに、“人型ではない何か”の姿を見咎めたと同時に、クイールは駆け出した。

 

「先行きます! ユーリくんはナディアちゃんたちを!」

『マスターアップ! Q-クエスター!』

 

 今この場で僕たち二人が駆けつければ、ナディアが取り残されることになるからこそ、こうした状況においてはナディアを連れて追いつく。

 クイールの魔法は自身の聖剣を利用するために瞬発力に長けることから、そう取り決められていた。

 

「リッカ、ナディア!」

「ん――」

「ええ……!」

 

 幸い、かれらは向こうから近付いてくる。

 何かに襲われていて、それから守るというならナディアの近くにいてくれた方がいい。

 僕たちもかれらに駆け寄っていくうちに、その騒ぎの“正体”が明らかになっていく。

 

 やはり荷車を引いていることから、行商人と思しい。

 しかし不思議なのは僕たちとそう年齢が変わらないように見えること。

 そっくりな二人だった。同じくらいの長さのブラウンの髪を後ろで一つに縛った男女だ。

 荷車を引いて全力で走ってきている少年と、その荷車の上に乗って、妨害用の魔道具で追跡者を迎撃しているらしい少女。

 かれらとすれ違い、通り過ぎてクイールは追跡者とぶつかった。

 

「な、なんだぁ!?」

「新手の魔族……? それでそっちは人間!?」

「キミたち、大丈夫!?」

「あ、あぁ……悪い、巻き込んじまって――じゃなくて! あんたらこんなところで何してんだ!?」

 

 追跡者が吹っ飛んだことに目を丸くして、思わず足を止めたかれらのもとに辿り着く。

 かれらからすれば、あまりに唐突な乱入者ということになるだろう。

 警戒を隠さないかれらだが、まずはこの騒ぎの原因を取り払うことだ。

 

「ナディア」

「分かっていますわ。言われずとも、この場から動きません」

「は……? そ、そいつアンデッドじゃねえか……! おい、あんたら――」

「静かになさい。生き残りたければ、動かず黙ってかれらに任せておけば問題ありません」

 

 困惑する二人に説明している時間はない。

 敵は倒れていない。クイールの攻撃を受けて、耐えられるほどの存在だということだ。

 リッカと共にかれらの前に出て、クイールに対峙するその相手を見る。

 僕たちの倍はあろうかという体躯。がっしりとした四本の脚で大地を踏みしめる、大型の獣。

 白地に浮き上がったような赤黒い紋様のような、独特な毛並み。長く、太く、捻じれた一本の角を額から伸ばす狂馬。

 

「ッ――」

「リッカ!」

 

 その姿を見た途端、リッカは口元を押さえて蹲った。

 ――今なら分かる。そこにあるのは、あまりに実感の強い恐怖と苦痛の記憶。

 感じ取って、僕の中に生まれる嫌悪感を呑み込む。“それ”を前にして、リッカが寄り掛かるべき僕が不安を抱くわけにはいかない。

 かつて、立ち止まって、引き返すことを余儀なくされた相手。

 ここから先に希望を持ってくれたからこそ、リッカがそれを前にした恐怖は、より強いのだ。

 

「リッカ。僕が守る、信じて」

「……ッ、……――ごめん、ユーリ」

 

 謝られることはない。リッカを支えて、リッカと共に、どんな障害さえ乗り越えていくと決めた。

 だからそのために、リッカに力を託してもらう。

 

『トランスコード! アクセプション!』

 

「……ユーリ。あれは、強い。無理しないで――暫くの間は、持ち堪えて」

「暫くって……何かあるの?」

「……秘密兵器。すぐ、準備する」

「――わかった」

 

『ユニゾンリンク! U-リッカ!』

 

 リッカが警告するほどに、注意すべき相手なのだろう。

 それに、何かを用意してくれているのであれば、僕はそれを信じる。

 準備が終わるまで、耐え凌ぐ。この姿ならば、可能なことだ。

 

「はぁ……? あ、兄ィ、何あれ」

「いや……知らん。多分夢。そうじゃなかったら幻覚かも。体にあんな密度の術式刻むとか正気じゃねえもん」

「それについては同意ですわ。向こうにいる金ぴかも含めて、三人全員に言えることですが」

「兄ィが知らないアンデッドと一緒に現実逃避してる……」

 

 クイールに並び立つ。

 近付けば、低い唸り声を上げて見下ろしてくるその巨体はより威圧的に感じる。

 ひどく興奮しているのは明らかだ。

 恐らく、僕たちが力比べを挑むのは対応として正しくない。

 

「ユーリくんっ、気を付けてください。結構パワフルみたいです」

「うん、そうみたいだね――!」

 

 こちらの会話を隙と見たのだろう。

 一つ嘶いた魔族はまるで剣の如く角を振り下ろしてきた。

 受け止めるのではなく、躱す――地面に叩きつけられた角が帯びていた魔力が破裂するように広がり、攻撃の跡を広げていく。

 あの角が、見える限りの攻撃範囲しかないと思わない方が良いか。

 そして反撃として振るわれたクイールの聖剣は、負担を気にせず勢いよく振り上げられた角に受け止められた。

 

「今の受け止めます――かっ!」

「 ――――――――! 」

 

 そのままかち上げられる前に、自ら魔力の放出を行ってクイールは飛び退く。

 こちらも怯んだ魔族だが、攻撃した対象が離れたことを即座に理解した。ならば次に狙うのは、同じく近くにいる僕。

 横腹を蹴りつけ、炎を打ち込みつつ僕も離れる。攻撃を当てたはいいが、深くはない。

 あの強靭な肉体に決定打を与えるには、もっと鋭い一撃が必要か。

 

「なら……!」

 

 山道のオークと同じだ。力自慢の相手と、真正面から戦う必要はない。

 元々僕たちにあった、リッカがくれた力は、相手の足を引っ張って、その先で勝利を掴み取るもの。

 クイールと共に戦っている今の状況であれば、より僕たちの戦い方は有効に機能する。

 

 僕たちの選択肢の一つを選び出し、引っ張り上げる。

 この新しい姿を得た今も、ここまでの力が不要になったなどということはない。

 クイールへと駆け出そうとするその後ろ足に、伸ばした黒い触手が絡み付く。

 

「 ――――!? 」

「隙ありです!」

 

 体勢を崩した魔族へとクイールが切りかかる。

 彼女の攻撃力を信頼するからこそ、こうした連携も可能になる。

 これまでの姿で扱うことが出来た、豊富な妨害手段。それらを完全に扱うことは出来ないまでも、この姿ならば規模を縮小した状態で出力できる。

 状況に応じて姿を切り替えるための隙がなくなったことと、複数の特性を併用できること。

 これらにより、僕たちの戦いの幅はより広がったのだ。

 

 魔族が起き上がる前に、『リヴィアフューリー』によって操っていた液体――リヴィアブルリキッドを出力して射出。左右の前足を覆って機動力を落とす。

 恐らく、程なくして引き千切られるだろうが、僅かな隙だろうと魔族と僕たちの差を埋める手立てにはなり得る。

 振り下ろされたさらなるクイールの追撃を――魔族は体を捻り、後ろ足を振り上げて迎え撃った。

 

「っとわぁ!? き、器用なことを……!?」

 

 強力な蹴りと真正面からぶつかりあったクイールが一度距離を置いて態勢を整え直す。

 興奮した暴れ馬ではない。怒り狂いつつも、判断力を有した魔族だ。

 クイールと共闘だろうと一切油断できない、相当に手強い相手だと気を引き締める。

 

「……これでよし。ユーリ、右手を広げて。武器を出力する」

「え――うん、お願い!」

 

 そして、リッカの準備も整ったらしい。

 曰く武器。これまでの魔法が有する機能ではない、リッカが用意した新しい力。

 疑いはない。手を広げてそれを待ち受ければ、そこに緻密な術式が浮き上がり、物質としての姿を形成する。

 それを握った瞬間、あまり感じたことのない重みが伝わってきた。

 

「これって……」

 

 剣だ。幅広の刀身を持った、赤と黒で構成された大剣。

 その重みも、燃え盛るような熱も、習慣として振っている木の剣とは比較にならない。

 剣から伝わってくる“つながり”は、不思議と三つ感じられる。

 リッカと、リッカの真実を知ったあの空間で出会った法則の異なる誰か。

 それからもう一つ――

 

『――ボーっとするな! 勇者ユーリ! さっさと構えて前を向く!』

「……は?」

 

 そんな風に、剣から聞こえてきた声の持ち主である、僕たちの“最初の敵”とのつながりがあった。




【行商人の兄妹】
魔族から逃走劇で巻き込んでしまった人間がなんか変な魔法使って戦い始めた。ヤバい。
あとなんかごく当然のようにアンデッドがいる。ヤバい。

【ナディア】
そろそろ三人の常識外れ具合は理解してきている。

【リッカ】
ユーリという支えを得たことで、希望が生まれた分より過去のトラウマが強く刺激されるようになった。馬だけに。
今回の魔族には苦い思い出があるらしく、実戦でロールアウトするつもりのなかった秘密兵器を緊急完成させ、ユーリに託した。

【■■■■■■■】
本来数ヶ月から年単位の構築期間を要する機能の術式部分を、辞書を買収することで押し付け完成を早めた秘密兵器。
激化する戦いと、ユーリのさらなる成長を見越したリッカが考案した、ユーリの専用武装。
自身の秘密をユーリが受け入れてくれると思っていなかった“これまで”では構想すらしていなかった、リッカの新たなる希望(きょうき)の産物。
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