凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『夢幻の槍』/一角馬とマックスと勇者の魔剣

 

 

 覚えのある声。

 そして声以上に、つながりから感じ取れる確信。

 

「ラフィ――」

『はい黙る! 黙って構える! 戦いの最中に無駄話なんてしてたら――』

 

 その剣に意識を向けている間に、こちらに駆けてきていた魔族。器用にも前足が絡まったままに、突っ込んでくる。

 振り下ろしてきた角に咄嗟に剣を叩き付けて応戦する。

 強く弾かれて、体中に響く尋常ならざる衝撃――!

 

「ッ……!」

『ほら、そうなるのよ! 次が来るから踏ん張らないで後退しなさいっ!』

 

 声の言う通り、魔族の角はなおも振るわれる。

 そのまま耐えようとしていれば突き出された一撃に貫かれるのは目に見えている。

 炎を射出し、反動で距離を置く。

 そしてさらなる追撃は、横から魔族を吹き飛ばしたクイールによって中断させられた。

 

「大丈夫ですか、ユーリくん!」

「うん、クイールも……さっきの、大丈夫だった?」

「こっちはなんとか。にしてもユーリくん、その剣は……?」

『ああもう、喋ってていいから構えなさいっての! 持つのは両手で!』

「喋ってる……」

 

 確かに秘密兵器という呼び方に相応しい代物であるようだが、流石に理解が追いつかない。

 そこから聞こえてくる声の正体に確信があるだけに、なおさら。

 この剣の、この仕組みも含めてリッカが用意したとして、今のリッカが何故“彼女”に任せる選択をしたのか。

 ……いや、そこは考えるまでもない。これもまた、リッカの決意の一つ。至るべき場所に向けて、あと一度だけ信じても構わないと判断したのだろう。

 それは構わない。気になるのは、“彼女”の側がそれを認めた理由。

 “彼女”の選択肢、思考が失われているようには感じられない。なんらかの出来事があって、“彼女”がそうすることを選んだのだ。

 

「……リッカが用意してくれた武器だ。とにかく、今はあの魔族を倒そう」

「ん……そうですよね。ユーリくん、剣での実戦が初めてならもっと無理しちゃ駄目ですよ!」

 

 当たり前に振っていた木の剣とは、勝手が違う。その重みは正真正銘、敵を倒すためのもの。

 今はそれだけ、分かっていればいい。気になることは後回しで、あの魔族を倒すことを優先するべきだ。

 

『はじ……めて……? え、なんで? まさかずっとそのわけわかんない魔法頼りで……?』

「 ――――! 」

 

 前足を絡めていた液体を引き千切り、立ち上がった魔族は苛立ちに身を任せるように、地面を蹄で掻く。

 その姿に変化が起きたのは、次の瞬間。

 角から吹き上がった魔力が魔族の隣に纏まっていき、もう一つの巨体を作り上げる。

 

「分身……!」

 

 数の不利を埋める、あの魔族の特性。

 実体のない偽者だと判断しない方がいい。どちらも同等の脅威の筈だ。

 僕たち両方に向けて突っ込んでくる以上、少なくとも最初の突撃は僕が対処しなければ。

 無暗に躱した時、その目的がナディアたちであっても困る。ならば、受け止める必要がある。

 

『ッ、勇者ユーリ! 私に合わせて力を込めなさい!』

「くっ!?」

 

 それをこの剣でどう実現するのかという答えは、剣の側が引き出した。

 魔力の推進によって無理やり動いた剣に引っ張られるように手が動き、体がその巨体の正面からずれる。

 そして角を受け止めるのは横から。剣から向けられる意思に沿って剣を角に叩きつけ、一気に力を込めた。

 

「 ――――!? 」

 

 角が砕けることはない。しかし、突進の勢いそのままに体の軸がぶれた巨体は滑るように体勢を崩し、引っ繰り返り、転がっていく。

 今の動きは、咄嗟であろうと自分だけでできるものではない。

 剣の腕に覚えがある者がこの剣に備わっていて、かつどう対処するかの意思を向けてくれたからこそ、それを僕が受け止められた。

 さらに休むことなく、「この剣で何ができるか」が“彼女”から、そしてリッカから伝わってくる。

 離れた相手であってもこの剣は、相手を狙うことができる。それに適した姿を、持っている。

 

 刀身を左右に展開して、柄を倒す。

 一回りも二回りも大きさが違うが、さながらその姿は、イリスティーラが有していた因子を射出するための魔道具のようだった。

 こちらの形態でできることは、魔力を集束させた弾丸の射出。

 『リヴィアフューリー』や『バラーズフューリー』が持つ遠距離攻撃手段から妨害のための性質を廃し、より威力を高めたもの。

 

「よし……ッ!」

『ちょっ……言っとくけど、片手間にぶっ放せるものじゃないわよそれ!』

 

 一発放った瞬間、反動に体が押し返される。

 狙いが僅かにずれて、倒れた魔族の傍に落ちた魔力弾は決着に至るものではない。

 

「……ごめん、ユーリ。本当なら、実戦で最初に使わせるつもりじゃなかったんだけど……」

「ううん、大丈夫。確かに慣れてないから難しいけど――」

 

 二つの形態を切り替えることで、遠近に対応する武装。

 使いこなすのは困難だろう。だが、決して“無理がある”わけではない。

 重さも、威力も、反動も、把握して正しく運用すれば僕に完全に馴染むように、この武装は作られている。

 今のところの無理に近い困難を埋めて、僕にとっての最適に近付けるのは僕自身の役目だ。こういう実戦も踏まえて、慣れていくしかない。

 

「 ――――! 」

「っとと……危ない危ない……そんなに力比べがしたいなら……」

 

 恐らく、魔族の本体は向こう側。

 クイールが相手をしている方はとにかく勢いで、クイールを押し潰そうとしている。

 角だけではなく、その巨体もあの魔族の武器。捨て身の攻撃にも、クイールは焦らない。

 

「望むところです! あなたにも負けない全力マックスで立ち向かいましょう!」

『ブレイブコード! スタンバイ!』

 

 大きく剣を振るって、放たれた黄金の魔力をもって魔族を押し退ける。

 魔力は翼を広げ、首を伸ばし、徐々にドラゴンを形作った。

 それは攻撃ではない。クイールが持つ手段の一つを実行するためのシーケンス。

 飛翔して戻ってきた魔力はクイールを包み込み、彼女をさらに上から覆う追加の外装を形成していく。

 

『マックスアップ! Q-クエスター!』

 

 クイールの力押しを、より補強する第二の姿。

 それは魔族との体躯の差さえ縮めた。二メートルを超えるほどの姿が、輝きの中から現れる。

 対峙する魔族に決して見劣りしない強靭な四肢。

 普段と変わらないのは頭部だけ。それより下は別物の如きスーツが追加で装着されている。

 両の拳には何も握られていない。代わりに、その巨躯そのものに聖剣に等しい力が備わった姿であった。

 

『えぇ……何それ……? ってかなんで先代勇者生きてんの……?』

「さあ、ここからの僕は二百パーセントです! あんまり長持ちしませんからね、ユーリくんも決着お願いします!」

「っ、わかった!」

 

 恐らく本体を打ち倒せば、分身もその力を無くす。

 しかし、その確証はない。ならば確実に両方を倒すべきだ。

 突進を真っ向から受け止めて、思い切り殴りつけるクイールの規格外さを横目に、こちらも分身に向き直る。

 

「これなら……っ!」

 

 先の衝撃を覚えていればこそ、射撃の際に踏みとどまるための足にも力がこもる。

 構える両手にも“ぶれ”は許されない。二発目の魔力弾は真っ直ぐと放たれ、起き上がろうとする魔族の頭部に直撃した。

 

『――そう、それでいいわ。私が調整できる補正にも限度がある。狙いはちゃんと意識なさい』

 

 なおもその分身は健在。

 崩れた顔の一部を煙のようにたなびかせ、無傷な角を振り回しつつも、突撃してくる。

 視力が失われ、闇雲に突っ込んでくるだけであれば、あの巨躯にも付け入る隙が生まれる。

 そこを確実な決着とするために、己の内の熱を昂ぶらせる。

 

『ファイナライズ! アクセプション!』

 

 高まる勇気を自覚し、信念の奔流を受け入れる。

 クイールのそれとはまた違う黄金は、相手の一歩一歩に合わせるように力を高めていく。

 その勇気の魔力を足先の一点へ。こちらから走る必要はない。決着の瞬間は、向こう側からやってくる。

 

「今――!」

『ユーリ・エクストライク!』

 

 角が首に向けて突き出された瞬間に合わせて姿勢を落とし、巨躯の懐に潜りこむ。

 そして押し潰されるより前に胴体目掛けて叩き込んだ回し蹴りで、仕留めたことを確信した。

 

 一点に込めた威力は分身を内側から粉砕し、実体のない煙へと変えていく。

 魔族本体が指向性を与えなければ、これはただの魔力に過ぎない。

 であれば、後はクイールが追い詰めた本体にとどめを刺すだけ。

 そのタイミングはほぼ同時。そちらに視線を向けたとき、ちょうどクイールの拳が天に向けて突き上げられた。

 

「これで――終わりですっ!」

『マックス・エクストリーム!』

 

 巨体の重量すらものともせずに、その拳は魔族をかち上げる。

 それは、短期で決着をつけることを前提とした攻撃なのだろう。

 結果を見届けることもなく、クイールの追加装甲は解れていき見慣れた鎧が姿を現す。

 完全に元の姿に戻った瞬間空が強く輝き、打ち上げられた魔族は黄金の光の中へと呑み込まれていった。

 後に残るものはない。これ以上の分身は現れず、静まり返った平原の様子は、勝利を認識するのに十分だった。

 

「うん……お代わりはなさそうですね。お疲れ様です、ユーリくん、リッカちゃん」

「クイールもお疲れ様。今のって……」

「ああ、あれも聖剣の力です。さっきも言った通り、長持ちしないので手っ取り早く敵を倒したい時用ですね」

 

 言いながら、クイールは魔法を解除する。

 いつもの柔らかい笑顔が現れ、光が聖剣に収まったと同時、その表情は硬くなった。

 

「っ……つつ、反動がきっついんですよね、これ。必殺技使わないといくらかマシなんですけど」

「クイール――」

「大丈夫ですよ、ユーリくん。連戦となるとちょっと厳しいですが、少し休めば」

 

 聖剣を納め、崩れるようにその場に腰を下ろすクイール。

 確かに……“大丈夫”ではあるようだが、やせ我慢が多分に入っているのもまた事実。

 暫くは休んだ方が良さそうだ。色々と、整理すべき事柄もあるのだし。

 

「――それで? その随分流暢に喋る剣はなんなのです? 剣で戦ったことがないとのことでしたが」

「あ、ナディアちゃん」

 

 決着を見て取り、近付いてきたナディアの視線は、僕が持つ剣に向けられている。

 これについて、詳しくはリッカと“彼女”本人に問うしかない。

 リッカとの合意を経て、こちらも魔法を解く。

 一気に“元通り”の力になり、より重さをはっきりと感じられるようになった剣をどうにか支えれば、剣の方は呆れを隠さない溜息を返してきた。

 

『……先代勇者のクイール、それからアンデッドのお姫様……やっぱり変なパーティだこと』

「えっと? 僕たちのこと知ってるんですか?」

『あなたの方はほぼ知らないわ。なんで生きてるのよあなた』

「えっ」

『お姫様の方は色々と知ってるけど、何を話すべきかしらね、リッカ』

 

 リッカの名前を呼ぶ“彼女”の声を、初めて聞いた。

 そこには憎悪も怒りも当然あって、悲愴も自らへの情けなさも当然あって、そして僅かな……ほんの僅かな親しみと、友好があった。

 からかうような声色の“彼女”に対して、リッカは目を細めて返す。

 

「わかってる筈だけど」

『おーこわ。ちょっとした冗談じゃないの。……それなりに状況は理解しているわ。私はラフィーナ。この剣から意識を表出している勇者ユーリの支援者……そういう認識で構わないわよ』

 

 ――ラフィーナ。

 僕たちが最初に戦った、サキュバスの『初戦試験官』。

 “いつか”の僕たちにとっては、信頼した相手であって……“今回”において、共闘の選択肢など最初からなかった存在。

 

 リッカの真実、ラフィーナとの関係は、クイールとナディアに説明するには前提が足りていなさすぎる。

 どうやらそこまでを彼女は理解しているようで、自己紹介を最低限に済ませた。

 当然、よく分からないといった表情の二人。

 僕も話は聞いておかないとならないが、それはまた時間を置いてからになるか。

 

『私のことより。そっちの呆気に取られている人間たちと話したら? どうせ説明もなしに変な戦い方してたんでしょ?』

「支援者という割にこちら側ですのね、あなた。まったくもってその通りですわ」

 

 ひとまずは、危機を脱したことをかれらに伝えることが先決だ。

 振り返れば行商人の二人が、戸惑いを隠さずこちらに近付いてきていた。




『魔剣ラフィーナ』
【概要】
リッカがユーリの更なる戦力増強のために開発したU-リッカの専用武装。
ユーリの覚醒した勇者としての力と『U-リッカ ユーリフューリー』の保有能力の補助および強化に特化した機能が実装されている。
通常は斬撃に適した剣状のスラッシュモードであり、刀身を左右に展開して柄を倒すことで砲撃に適した大砲状のバスターモードへと切り替えることが可能。

【S/Bリンクユニット】
『魔剣ラフィーナ』の刀身部分。
モードに応じて魔力の流れを切り替え、斬撃/砲撃の威力を強化する。
さらに、読み込んだU-リッカの属性情報を増幅・変換させることで、特殊な攻撃方法を実行できる。

【アドラドライブ】
『魔剣ラフィーナ』の根幹を成す出力強化術式。
攻勢に特化した『U-リッカ アドラフューリー』が有する攻撃力を『S/Bリンクユニット』に送り込む。
出力時に発生する攻撃衝動の装備者への伝達を防ぐため、本機能の狂気を受け止めることに特化したファイアウォールが組み込まれている。

【U-ブレイブマスタリ】
装備者の能力・勇気の増大に合わせて性能を引き上げる、経験共感システム。
勇者と共に成長する魔剣としての性質を支える機能であり、これがある限り装備者にとって、常にこの魔剣が最適の装備となる。

【オートラフィーナ】
『魔剣ラフィーナ』の戦闘補助システム。
魔族『ラフィーナ』の人格が接続されており、彼女の意思を出力できる。
『ラフィーナ』自身が補正を行うことで攻撃の質を上げるなど、各機能への干渉も可能。
また、『アドラドライブ』の狂気を抑制するファイアウォールの機能も果たしている。



『Q-クエスター マックスブレイブリー』
【属性】勇気
【攻撃力】■■■■■■■■■
【防御力】■■■■■■■■■
【素早さ】■■■■■■
【魔 力】■■■■■■
【精神力】■■■■■■

【マイティエクスペリエンス99】
勇者としての力が装備者に悪影響を与えないための制御システム。
培った経験を強制的に励起させ、高速でスーツ内部に循環させることにより、装備者の弱体化を補い十全な戦闘能力を発揮できる。
ただし、勇者の力の制御と保護に特化しているため、この機能が駆動している間、出力は常に百パーセントに固定されており、瞬間的な過剰エネルギー供給なども行えない。
可能なことを万全にこなすためのシステムであり、不可能に手を伸ばすことは管轄外なのである。
そのため必殺技の使用時などはこの機能を停止する必要があるが、その場合、容量を超えた経験による体への負担が掛かる。

【マックスブレダリオンアーマー】
勇者の鎧の上から重ねて装着される、二メートルを超える強化スーツ。
攻撃力に強力な追加ボーナスが掛かる、より攻撃に秀でた状態。
“相手の守りを力押しで破る”スタイルがより顕著になっており、強大な魔族をも超える力を持つ。

【ブレダリオンヘビーガード】
『マックスブレダリオンアーマー』の各部に装着された装甲。
装備者の勇気の魔力によって強度を増し、装甲を介した攻撃は聖剣と同等の威力を発揮する。

【マックスターティングエナジー】
本形態に移行した際に自動的に起動する支援強化システム。
起動中、全能力を上昇させる強化魔法が発動し、戦闘能力を底上げする。
構築された魔法が複雑な分、長時間の維持ができず、停止後は冷却状態に入り『マックスブレダリオンアーマー』の性能が激減する。
発動中は聖剣に関わらないその他の強化魔法を含めたステータス変化や回復、状態異常などを発生させる魔法を全てシャットアウトする。



『夢幻の槍』
【属性】水
【攻撃力】■■■■■■■
【防御力】■■■■■
【素早さ】■■■■■■
【魔 力】■■■■■■
【精神力】■■■■

【種族】ユニコーン種
馬型魔族のうち、ユニコーンは頭部に一本の角を有する種を指す。
非常に狂暴、かつ知力が高く、個体数こそ少ないが出会ってしまえば大変危険である。
角はユニコーンの体の中で最も頑丈で魔力の集中した部位であり、その魔力を操って魔法に近い現象を引き起こす個体もいる。
綺麗な水場の近くを好んで縄張りとし、その属性も水に寄る傾向が強い。
外敵を発見すると積極的に撃退するが、例外的に人間の女性――それも処女に限り、その角を振るうことはないとされる。
未通の女性であれば、万が一ユニコーンに遭遇しても命を奪われることはないだろう。
――ただし、それが“無事に帰れる”ことに繋がるとは限らないが。

【『夢幻の槍』】
ノクトールの森を南下したところにある広い平原は、街道から外れても際立って危険な魔族に出会うことは少ないとされる。
しかし、このユニコーンだけは別格だ。
元々この個体はとある魔族がナイトラクサで飼育していた個体であるようで、およそ十年前、その魔族が失踪した後にこの平原で生きるようになったらしい。
角から煙のような魔力を吹き出し、それを再度固めて分身を作り出す戦法を得意とする。

【クイールの評価】
「……」

【ラフィーナの評価】
「魔力の性質が私たちのものに近い……またどうにも、不気味なのに遭遇してること」
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