凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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ラフィーナちゃんと魔剣の代償

 

 

 絶望に屈さず、終わり(バッドエンド)その先(インターバル)で少しずつ紡ぎ上げたらしいこの技術は、およそ魔法として思い至る発想ではない。

 人間が肉体の変換なんてものを思いつく時点で間違っているのに、それを実現し魔力消費の問題まで解決した狂気の発想。

 実戦を積み重ね、勝利することで強くなる。

 それは正しいがこの魔法の仕組みに限っては間違っている。こんな“強くなり方”あってたまるか。

 

 ――なんていう風に、自分たちの置かれた状況をようやく詳細に把握することが出来た。

 ここまで、この魔法について打ち明けたことも、あの女なりの信頼の証か。嬉しくて涙が枯れ果てそうである。

 

 私とあの女が共闘関係を結んで以来、苗床(どれい)としての私の扱いは多少変わった。

 私の意識の一部が、あの女の術式に組み込まれたという方が正しいか。

 半分……三割ほど……使い魔のようになったわけだが、いつかのスライムよりはマシなのかもしれない。私としての存在は残ったままなのだし。

 他の連中に悟られない程度に“加減”してくれるようになりはしたが、やっていることは変わらない。

 むしろ仕事が増えた。

 あの女がやらせたかったこと――勇者ユーリの、武器としての仕事である。

 

『――そういうわけで、この“カラダ”であんたに力を貸すことになったのよ。勇者ユーリ』

「そ、そうなんだ……」

 

 初めて彼が“私”を使った戦いのその夜、私は改めて勇者ユーリに経緯を話していた。

 自由に動けるわけではないが、“私”を中心として視界は色々と動かせる。

 こぎれいな部屋だ。目の前にはベッドに隣り合って座る件の二人。恐らくはどこぞの宿の一室。ずいぶんと良い生活をしているようである。

 ……よく考えたら、ここまでの宿がある町の近くにユニコーンが出たのか? あの種は凶暴な癖に潔癖で、基本は人里離れた泉やらを縄張りにしているらしいが。

 

「つまり……この剣自体、キミが変身したものってこと?」

『意識だけが乗り移ってるってのが適切かしら。自力で動けない人形に憑依した感じよ』

「……なるほど?」

 

 はい理解してない。まあ、これは人間には掴みがたい感覚か。

 体とは別のところに意識が遷移するのは、サキュバスの状態としてさほど不思議なことではないのだ。

 ……厳密に言えば、今の認識で言う“私の体”は本当に肉体であるかどうかは不明なのだが。

 整理したところによれば、私たち……勇者ユーリたちに敗れた魔族がいる場所は、混沌女の脳内という認識が正しいようだ。

 記憶の中に拡張した空間を作り、そこに魔法を用いて変換した魔族を放り込むのだとか。なるほど、分からん。

 

『あんたたちが戦う時、その女に無理やり体を動かされたことあるでしょ? それに少し近いかしら』

「あ……うん、よく分かった」

『よろしい』

「……」

 

 気まずい表情で僅かに視線をずらす混沌女。

 軽率にしょうもない記憶まで共有するからこうなるのだ。

 こいつらに協力するのは本当に不承不承なのだ。今後もこのスタンスは貫いていこう。

 

『あくまで私は私の納得のために協力する。あんたがどう思おうと勝手だけど、そこは弁えておきなさい。気を許したわけじゃないから』

「理解してる。そのうえで、力を借りるよ。よろしく、ラフィーナ」

 

 今度は上辺を繕った気配はない。

 ……これが、勇者ユーリが目覚めた勇者としての力ってやつか。

 向こうが相手を信頼し、そのつながりを尊重する限り、その相手に無遠慮に踏み入ることを可能とする特異性。

 親しき仲にもという礼節すら消し去る性質は、どうやら剣を隔てた私にさえ有効らしい。

 “今回”において、ただ最初の敵でしかなかった私を、理由もなく信頼しているのではない。あの女の過去を知り、そこで絆を育んだ相手だからこそなのだろう。

 本当……どいつもこいつも。

 

『……さて。この武器についてだけど、さっき使った通りのものよ。どうだったかしら』

「……木の剣とは全然違った。戦いで剣を使うことが難しいことだけは、よく分かったよ」

『でしょうね。まあ、これも普通の剣とはまた違うけど』

 

 重量も、重心も、そもそも武器としてのコンセプトさえ単なる剣ではない。

 これに慣れたら慣れたで、変な癖がつくだろう。

 どの道この勇者はまともな剣を使えるようにはならないということである。それでいいのか。

 

『その女に代わって説明するけど、この剣の元になっているのは、あんたたちの使う魔法の形態の一つよ。あんたたちにとっては苦い思い出でしょうけど、アリスアドラ様からいただいた、狂気の力』

「……『アドラフューリー』」

 

 勇者たちが主力とするあの魔法は、元々性質の違う形態を状況に応じて使い分けるものだった。

 その力の基本となっているのが、私たちの空間を支配する使い魔ご一行だ。

 触手どもを用いた『オズマフューリー』、スライムを用いた『リヴィアフューリー』、虫たちを用いた『バラーズフューリー』。

 そして、例外としてアリスアドラ様の狂気を注がれて完成した、あの女の想定になかった『アドラフューリー』。

 

 アリスアドラ様の狂気を人間が制御できる筈もない。当然、衝動のままに外敵を撃滅する暴走状態に陥ったという。

 ……これが、アリスアドラ様の狂気にたっぷり浸ったヴァンパイアが放り込まれた原因であるらしい。

 いやまあ、あの時正気を失ったのは仕方ないことだが、ヴァンパイア相手にやらかしてしまったことは結構反省しているのである。

 あれ以来、それなりに気にかけてはいるのだ。怯えられてしまっているが。

 

『狂気を私が受け止めることで影響を減らし、攻撃性だけを最大限に活用できるシステム。それが、この『魔剣ラフィーナ』。あのよく分からない先代勇者の聖剣ほど大層なものじゃないけど、勇者ユーリ……あんた専用の武器だと思いなさい』

「僕だけの、武器……」

 

 この二人に付き合っているというだけで、私が他の連中に手を貸す道理はない。

 アリスアドラ様と出会うことがあれば、その時はその時だが……いや、うん。

 はっきり言って、あのお方に一言、言葉を向けられれば私は自分を抑えきれる自信が無い。

 そもそも私があのお方に敵対することなど不可能なのだ。サキュバスである以上、アリスアドラ様に抗うという選択肢すら存在しないのである。

 とはいえ、私が迷う必要はない。戦うなら戦うで、この二人が剣を使わないという判断をすればいい。

 

「でも、大丈夫なの? 狂気をラフィーナが受け止めるって」

『大丈夫じゃないわよ。アリスアドラ様の狂気に耐えられるサキュバスがいるわけないじゃない』

「……大丈夫。ラフィーナにとってはご褒美」

『ねえ勇者ユーリ。そいつ黙らせられない?』

 

 苦笑で済ませるな。あの浮かれ切った口、そろそろ縫い付けた方が良いぞ。

 ……受け止めている間は、あまり影響はない。遅行性というか、意識と繋がっている肉体の方に流れていくようになっているらしい。

 よって、影響を受けるのは剣としての役目を終えた時。勿論そのリスクは、武器として使われないこうした“雑談”の最中にも背負っている。

 意識が肉体に戻ったとき、溜まりに溜まったアリスアドラ様の狂気が急速に頭の中に注ぎ込まれていくのだ。

 ゆっくり心の壁を溶かして、ふわふわと浮いていくような酩酊からはじまり、徐々に何もかもが分からなくなっていく他では決して味わうことのできない快楽。

 その本領にいきなり叩き落とされるようなものである。

 長い時間をかけて人間を堕としていくための、負荷にも快楽にも強い“つくり”など意味をなさない。

 一瞬にして本能が陥落を認識し、理性の一つや二つ容易く吹っ飛ばされる。

 たった一度でも味わってしまえばその虜にならずにはいられない究極の絶頂(エクスタシー)。快楽にトばされるサキュバスなどサキュバスの恥、そんな妄言はあの瞬間を経験したことがないから言えるのだ。アリスアドラ様の狂気は常識の埒外にある。誰がどんな高説を並べようともあの熱を否定するには至らない。理性のタガが外れて、角からつま先まで余すところなくアリスアドラ様に満たされる至福。あれさえあれば、剣に意識を表出させるとかいう過酷な労働も容認できる。この後にアリスアドラ様直々のご褒美があるということで――

 

『――えへへ』

「っ!?」

『……こほん。ともかく、“私”を使う上で狂気があんたに流れることはさせないから、気にしなくていいわ』

 

 ……危ない危ない。想像だけで達するところだった。

 一度引き受けたのだ。その役割はあくまで全うしなければなるまい。

 真面目にやるとも。だから引くな、勇者ユーリ。お前もだ混沌女。この仕組みだってお前がそう作ったんだろうが。

 

『この状態で私が出来るのは、口頭での助言と各機能の補助。当然だけど、“私”を使いこなすのは勇者ユーリ自身の役目ってことになるわ』

「う、うん……」

剣としての姿(『スラッシュモード』)砲としての姿(『バスターモード』)。さっきどちらも使ったわね? あんたの攻撃が甘くても多少は私が補正できるけど、それで魔族の相手ができるとは思わないこと』

 

 武器を変形させて二つの役割を持たせる。このコンセプトはイカレている。

 それを実現し、まともに武器として使えるほどの強度を確保するのにどれほど緻密な術式構築が必要なのか。

 この辺りはこうして乗り移っている私も想像がつかない。

 剣はともかく、魔力弾を放つための砲など、ネシュアの文献で見たくらいで私自身にはとんと縁がなかった。

 遠近両用の万能武器といえば聞こえは良いが、活用するにはそれらを切り替えどちらにも熟達するための技術が求められるということ。

 私が教科書通りの知識を教えられるのは剣だけだ。

 大きな壁を乗り越えたらしい二人だが、まだまだ前途が多難なことを理解しているのだろうか。

 まったく、まともに使いこなせるようになるまで、どれほど掛かるやら。

 

『もう夜遅いんでしょ? 今日からとは言わないけど、この重さに慣れて、まともに武器として振れるようにはしておきなさい、勇者ユーリ。その女と一緒に生き残りたいならね』

「もちろん、そのつもり。……それと、ユーリでいいよ。毎回“勇者”って付けられるのも、堅苦しいし」

『善処いたします、勇者ユーリ様』

「あれ……?」

 

 もう既に壁などないかのような距離の詰め方がなんとなく癪だった。

 少しは警戒するとか、なんかこう、あるだろう。

 いま同行しているあのネシュアの姫についてもそうだが、信頼した魔族を警戒しなさすぎだ。

 絶対に裏切ることはないと確信しているような……しているのだろうな。迷いなくそう言い切れるような力が彼にはあるのだから。

 何もかもを疑わずにはいられないあの女という荷物を抱えて進むならば、さぞ役立つ能力だろう。

 

「……とりあえず、今日はもう休もう。明日にはシートレイア行きの船に乗りたいし、早めに出発しないと」

「ん……」

 

 ひとまず今夜はお役御免。

 今後、この勇者の実戦から鍛錬まで、付き合っていくことになるのか。

 やはり複雑。別に同種以外の魔族と戦うことになんら躊躇いはないが、これは間違いなく、反逆と捉えられるだろうから。

 なんでこうもメチャクチャになったのだろうかと、私の運命の廻りの悪さを呪わざるを得ない。

 アリスアドラ様のものも含めて、三つの試練を突破したのだとかいう冗談のような成果を挙げている勇者。

 彼はもしかすると本当に……などと下らない想像をしかけて、思考を中断する。

 どうやっても、どうせどこぞで旅は終わる。そこまでの関係だ。その間、勇者が真っ直ぐであり続けるならば、付き合ってやらないこともない。

 

「……? リッカ、どうしたの?」

「……ぁ……え、と……」

 

 ――こともないが。

 これは流石に私が付き合わないといけないことでもないのではないかと、思わずにはいられない。

 あれやこれやを知られて、今更恥に思うこともないだろうに、何を言い淀んでいるのか。

 

「……」

 

 混沌女が何を言うのだとしても、それを正面から受け止める。

 大方そんな気概なのだろうが、そこまで真剣になるようなことでもないだろう。

 つながりの力とやらはどうした。言い出そうとしていることくらい、知ろうと思えば伝わるものじゃないのか。

 いや、あの女の言葉で聞きたいというのが、勇者なりの誠意というやつか。

 

「……一緒、に……」

「うん」

「……、……寝て、ほしい」

「……うん?」

 

 そんな絞り出すように言うことか、それ。

 というか、やっぱり私聞いている必要ないだろう。発情するのは良いが先に私を解放してくれ。

 混沌女の求愛行動など微塵も興味ない。私の及ばないところでやってほしい。

 何が悲しくてこの女と勇者が乳繰り合っている場面を見せられなければならないのか。

 

「け、けどそれじゃあ……」

「……お願い。……ひとりで寝るより……そっちの方が、安心、できるの」

「っ……わかった。ごめん、リッカ」

 

 もう少し粘れよ勇者。サキュバス(わたし)が言うのもなんだが。

 しかし、なんとまあ初々しいやり取りか。何十倍、何百倍の痴態を互いに知っている身だろうに。

 恋妖精(リャナンシー)にでも憑かれているのか? 脳内に妖精二人飼っていながらまだ飽き足らず。

 まあ……こいつが安眠できるなら、あの空間の使い魔たちも多少は大人しくなるか。

 願わくば、私たちにも安寧が欲しいものである。さっさと空気を読んで取り残されている私に気付け。




【ラフィーナ】
剣の実体化が解除されると疑似記憶空間の肉体に流れ込んだ『アドラフューリー』直送の狂気を一気に感じてぶっ飛ぶ。
これ以来、幸福など感じる筈のない苗床で、至福の中で絶頂する魔族が増えたという。どこぞの鳥は仲間が増えたと喜んだ。
アリスアドラ様に対する妄信は健在。抗えるとまるで考えていないため、二人でなんとかしろというスタンス。

【ユーリ】
一緒に寝る方が、リッカにとって安心できるなら……けど……。

【リッカ】
ユーリの存在を感じることが、何より安心につながる。
――そうでなければまともに心を落ち着けることができない。
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