凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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リーテリヴィアは変わらない

 

 

 景色も変化せず、人の波もない静かな通路をどれだけ歩いたか。

 時折分かれ道があったものの、そこで方向を変えることもなく歩き続けて、やがて上に上がる階段のある小部屋に辿り着いた。

 

「この上はもう大聖堂だ。ナディア殿、しつこいようだが、問題はないか?」

「……そうですね。逆に何も感じないのが多少不気味です」

「なんと……如何なる術を施したのか――オドマオズマ様……噂ではあのお方はネシュアの出身と聞くが、もしやかの国の技術……」

「ネシュアをなんだと思っているのですか……」

 

 歩きつつも、ぶつぶつと呟き自分の世界に沈んでいくフェンにナディアは呆れを見せる。

 何を突拍子もないことを、というようなナディアだが、正直なところそうした技術があったとしてもおかしくないと思わせるものがネシュアにはある。

 土の試練において、オドマオズマが用意した外装に施されていた強力な修復術式も、ネシュアの秘奥と言っていた。

 ナディアの右腕、義手となっている魔道具もまたその類なのだろうか。

 

 階段を上り切る頃には、フェンも独り言を切り上げ、気を引き締め直す。

 小部屋から出れば、そこはかつて見た大聖堂。

 煌びやかな結晶樹の装飾で照らされるそこは相変わらず荘厳な雰囲気に満ちている。

 ナディアがほう、と感心の声を零す。

 僕より遥かに優れた審美眼を持つだろうナディアさえも評価するほどに、この場所は完成されているようだ。

 

「フェン先輩!」

 

 既に話は通っているらしい。周囲の騎士たちは各々、動揺を見せていた。

 視線の大半は当然クイールに向いている――その中に、喜びが殆ど見られないことが、気になった。

 

「ルーク。リーテリヴィア様はなんと?」

「は、はい! すぐにクイールと、勇者殿たちをお連れするようにと!」

「わかった――そういうことだ。行くぞ」

 

 注目を集めているのはあまり良い気分ではないのだろう。

 ルークの報告を受けたフェンは、言葉少なに僕たちを大聖堂の奥へと導く。

 既にその圧倒的な力は伝わってくる。初めて彼と出会った時と同じ――いや、その時以上に、はっきりと強大な力を感じることができる。

 これは、僕の成長なのだろうかと、やや釈然としない気持ちを抱きつつも広間に辿り着く。

 

「リーテリヴィア様。勇者ユーリ殿の一行、および先代勇者クイールをお連れしました」

「――ご苦労だった、フェン。ルークと共に門衛に戻って構わない。……なるほど。正直なところ半信半疑だったのだが、よもや本当に生きているとは」

「――――?」

「……!?」

 

 フェンがルークと共に大聖堂を出ていく一方で、その厳かな声に、どうにも違和感を覚えた。

 聞き覚えはあったものの、どうも“何か”がおかしい気がして。

 水の試練、かつての聖都で起きた出来事、リッカが先に至ったらしい答えとリッカの秘密とを照らし合わせて、その違和感の正体を探り。

 

「勇者ユーリ。壮健そうで何より。オドマオズマやアリスアドラから活躍は聞いている。見違えたな、勇者の証も良く輝いている」

 

 そして、ようやく思い至る。

 

 リッカの魔法の基本コンセプトとして有する、“倒した魔族を利用する”能力。

 如何なる敵に対しても有効とするために、攻撃により対象の存在を改変する機能がある。

 つまるところ、性別を反転させ、利用可能な存在にまで貶める力。

 『勇蝕写本』との戦いにおいて、水の試練の突破に至った僕たちの攻撃はリーテリヴィアを倒すには至らず、しかし有効ではあった。

 あの時は僕も知らなかったが、今は彼に起きた変化がリッカの魔法の影響だったと分かっている。

 その変化を前提とした場合に、彼の姿に覚える違和感の正体。

 

 彼は確かに、性別を反転させた筈だった。

 ――その、反転した筈の彼の姿が、再び男性としてのものに戻っているのである。

 

「……? どうかしたのか?」

「いや……その姿……」

 

 リッカもまた想定外の事態らしく、強く混乱している。

 僕も、それが“戻せるもの”だとは知らない。少なくともリッカの混乱を見るに、普通は戻せるものではないらしい。

 リーテリヴィアはこちらの混乱に首を傾げていたが、やがて合点がいったと頷いた。

 

「この体の話か。あの姿で公の場に出ても混乱を生むのでな」

「い、一体どうやって……」

「キミたちも知っているだろうが、存在の改変には詳しい知人がいる。エルフとしては抵抗があったが、止むを得ない」

 

 恐らく彼女だろうと、自然に一人のエルフを思い浮かべた。

 リッカも同様のようで、元より良い感情を持っていなかった彼女への嫌悪をより深める。

 一体どのような手立てを使ったのか想像もつかないが、どうあれ彼女はリッカの複雑な魔法を打ち破ったということになる。

 手を貸してくれた相手ではあるが、底の見えなさが恐ろしかった。

 

「無論、キミたちの結果を否定はしない。可変にしたので安心してほしい」

「可変……え?」

「膂力は比べるべくもないが、“あちら”にも軽視できない利点がある。使い分けるに足ると判断した」

「――――?」

 

 冗談の様子はない。真顔で彼は、そう言ってのけた。

 つまり……完全に戻ったのではなく、どちらにもなれる状態だというのか。

 何を言っているのだろうと困惑するこちらを置いて、リーテリヴィアはナディアへと目を向けた。

 

「キミについては、オドマオズマから話を聞いている。どうやら暫く動向を監視していたようだ」

「ッ……」

「案ずるな。聖都に彼の目はない。ゆえに、わざわざ彼はこちらに連絡を寄越してきた。妹を頼む、とな」

 

 上辺ではなく、ナディアについての事情の詳細を知らなければ出てこない言葉だった。

 オドマオズマがこちらの動向を見ていたというのは――彼の力をもってすれば可能なのだろう。

 リッカの魔法を一日と経たずに解析し、模倣する技術。

 それは、遠方の監視さえ容易く行える域なのだ。

 

「ネシュアの姫。聖都はキミを保護する用意がある。無論、キミや勇者ユーリの意思次第だが」

「……随分と、話が早いのですね」

「人間と魔族の共存を掲げているのが聖都だ。騒ぎを起こさなければ自然と皆受け入れる」

「なんとまあ……そうですね。それがユーリたちの意思ですし、庇護を受けるつもりでいますが――暫し保留としても?」

「構わない。聖都を見て判断するといい。かつてのネシュアほどではないだろうが、不便の少ない都市である筈だ」

 

 それだけ話して、自身の用向きは終わったとナディアは一歩下がった。

 今は自身よりも優先して解決すべきことがあるという判断。

 リーテリヴィアもナディアの意思を汲んだのだろう。彼女に向けた言葉を切り上げた。

 

「……さて。よく戻った、というべきか。クイール」

「はい、ただいまです。リーテさん」

 

 クイールはリーテリヴィアを愛称で呼ぶ。

 聖都出身であるならば、当然知らない間柄ではないとは思っていたが、親しい仲なのだろうか。

 

「やはり不思議なものだ。十年前と変わらない姿で、キミは今ここにいる」

「フェンちゃんたちにも驚かれました。いや、僕としては十年経ったっていう実感がないんですが」

「時忘れの迷宮に挑んでいたと、そう聞いた。あれを踏破した初の例が、キミだとは」

「知ってるんですか? あの場所」

「魔王が自ら作り上げたという迷宮の一つだ。ここまで長く、時を狂わせるものだとは知らなかったが」

 

 魔王が自ら――ともなれば、やはりあの聖剣は魔王が用意したものなのか。

 勇者に対する、四つの試練には含まれない難題。

 ……やはり、分からない。

 そんなものをどうして魔王が用意したのだろう。間違いなく魔族にとって脅威となるほどの、あの強力な聖剣を。

 

「俺が四天王として、キミに新たに伝えることはない。アリスアドラが伝えたように、キミの勇者の証は健在だ。灯る輝きは三つ……水の試練に再度挑む必要もない」

「――ですよね。良かったです。今度はリーテさんも、加減してくれないでしょうし」

「元より加減したつもりはないが……キミは旅を続けるのか」

「はい。勇者ですから」

 

 リーテリヴィアの核心的な問いに、クイールは毅然とした態度で答えた。

 そこに迷いはなく、疑いもない。どこまでも、勇者らしい姿で。

 

「この後イリスたちのところに、顔を出しに行きます。生きていたって知らせて、怒られてから、また風の試練に向けて、旅に出るつもりです」

「……そうか」

 

 いくつかの言葉を、リーテリヴィアが呑み込んだのが分かった。

 クイールの意思は固い。だからこそ、僕は彼女を眩しく思っている。

 心の底から、自身の勇者らしさを信じるクイールに、故郷で立ち止まる選択肢はなかった。

 

「俺は四天王だ。キミが勇者らしくあることを否定はできない。だからこそ、こう言わせてもらおう――盛大に叱られ、なお立ち上がることを期待する」

「――ありがとうございます、リーテさん! それじゃあ、ちょっと行ってきますね。ユーリくんたちもまた後で!」

 

 特別な知己に会うことへの緊張がほんの僅かに解れたのか、やや硬い笑みのまま、クイールは大聖堂を飛び出した。“後で”の集合場所も決めることなく。

 やはり、内心相当な不安なのだ。

 行き先も告げず、それを悟らせまいとしているのは、クイールの親切心だろう。

 しかし――もやもやとした本音は伝わってきてしまう。できれば、付いてきてほしいと。

 見送ったリーテリヴィアは、ぽつりと僕たちに言ってきた。

 

「……勇者ユーリ。それから、キミたちも。可能であれば彼女を追ってあげてほしい。イリスの工房と呼ばれる……キミたちが、『勇蝕写本』と戦ったあの屋敷だ。あの屋敷の主は、キミとも知り合っていた様子だったな?」

「……うん。言われなくても、付いていくつもりだよ」

 

 クイールの不安は見て取った。

 本音を言えば、僕たちが首を突っ込むべき話なのかという疑問はある。

 しかし僕たちが彼女の緊張を解せるのであれば、世話になっていることの、ほんの少しの返礼にはなるだろう。

 どの道、共通の知人であることをクイールに教えるつもりはあった。今からでも、追いかけるべきだ。

 

「感謝する。……クイールにとっては、或いは何より大きな試練となるだろう。キミたちの存在は、きっと心強いものになる」

 

 リーテリヴィアは、これから起きることを予期しているようだった。

 どこか不穏な彼の言葉を受けて、僕たちは大聖堂を後にする。

 地下通路を通ってきたため、今回初めての聖都の光景。

 人々の賑わいを眺めて楽しむ余裕はない。クイールは既に、イリスティーラの屋敷に向かっている筈だ。

 

「ごめん、リッカ、ナディア。もう少し付き合って」

 

 クイールを追うのは、僕の勝手な判断だ。

 早足で歩きつつも二人に謝ると、溜息はナディアだけから返ってきた。

 

「……ユーリが必要だと思うなら、それでいい」

「事態は概ね把握しました。面倒ごとになる気しかしませんが、早く行きますよ」

 

 “僕の信頼”を信じてくれるリッカと、事を察して足を更に速めるナディア。

 面倒だという感情は共通だったが、それでも足を止めたりはしなかった。

 

 リッカもナディアも、あまり体力には自信がない。全速力で走る訳にもいかないので、二人が可能な範囲で、足早に。

 それでも――イリスティーラの屋敷への入り口にクイールが立っていたことで、追いつくことができた。




【リーテリヴィア】
性別可変式エルフ四天王。
女性の姿のままでは混乱が大きいだろうと、知り合いによって処置が施された。
知り合いは完全に男性に戻そうとしたが、リーテリヴィアは「向き不向きの差があるため、切り替えられた方が好ましい」とトチ狂ったことを言い出したため今のような状態となったらしい。

知り合いのエルフ(イリスティーラ)
リーテリヴィア(アイツ)判断(あたま)おかしいんじゃないか?

【リッカ】
イリスティーラ(アイツ)技術(あたま)おかしいんじゃないの?
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