凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
あれ、と思ったのは、リッカたちが帰ってからだった。
そういえば、殆どリッカと話していない。
また会えたら、色々なことを話そうって、毎日のように考えていたのに。
あれからわたしは、イリスに教えられながら魔法について勉強した。
はじめは基本から。もうリッカに教わったことであっても、イリスは何日もかけて、丁寧に教えてくれた。
必要だろうかとは思わなかった。二度と同じことを繰り返さないように、魔法は慎重に学ばなければならないのだ。
だから、進みは遅かったけど……あの時と比べれば、わたしもぐっと成長したと思う。
目指すはリッカにも並ぶくらいの魔法使い。そんな気持ちで勉強した成果を、少しでもリッカに見せたかったのだけど。
でも、今日のリッカたちはすごく忙しかったみたい。
帰ってきたリッカたちを見た瞬間は、まるで別人かと思った。
だって、最初に来たときとは何もかもが違う。
リッカの銀色のぐるぐるはもっともっと大きく、はっきりとしていた。
少し心配。リッカなら大丈夫だと思うけど、あれは、自分も呑み込んでしまいそうなくらいの勢いだったから。
それに、銀色と、元々持っていた黄色のほかに、あと一つリッカの色は増えていた。
増えていたというより……何かがあって、見えやすくなったのだろうか。
うーん……これも、何か違う。だってあの色は、“見えている”わけじゃないから。
銀色の中の、黄色のそばでゆらめく、透明な光。あれも、他の誰からも見たことはない。
銀色より、危ない……不思議な感じはないけれど、やっぱりリッカは他の人と違うんだなって、また思えるような感覚だった。
そして、リッカの大事な人だっていう、ユーリ――わたしのママとは違う、次の勇者の輝きは、すごく眩しくなっていた。
当たり前にあった赤色が見えなくなるくらい強くて、大きな金色。わたしの中にある小さな輝きと同じ色は、あんなにも輝くものなんだって驚いた。
これならはっきりと、ユーリが勇者だってわかる。どんな魔族にもきっと、一目で伝わる。
勇者の証の中にある四つの燭台には、試練を終えることで灯がともる。
そうイリスは教えてくれた。
四つ全てに灯をともすことこそ、勇者の旅の試練なんだって。
リッカたちが旅立つ前、ユーリの中には青い光が灯っていた。それは、聖都で挑んだ水の試練を突破した証明。
そして帰ってきたユーリには、新しく黄色と赤色の灯がともっていた。
残る燭台は一つだけ。それが終わったら、ユーリとリッカの旅は終わるのだろうか……じゃなくて、魔王を倒さなきゃ駄目なんだっけ。
だったら、早くそれも終わってくれないかなと思う。
ユーリのことはよく分からないけど、リッカの一番大切な人だっていうなら、わたしはユーリを応援する。
全部が終わったら……二人で聖都に住んでくれないかな。そうなったら嬉しい。
……おっと、間違い。
二人だけじゃなくて、ナディアに、ラフィーナに、アッシュも。
わたしには新しいともだちができた。びっくりなこと。たった一日で、三人もともだちが増えた。
ナディアは、青くて継ぎ接ぎの肌をした女の人。青色と黒色を持った人。
えっと……こうなっているのって、人間じゃなくてアンデッドって区別するんだっけ。まあいいや、わたしにとっては、大きな違いはない。
片方に、腕の代わりの魔道具を付けた、お姫様みたいな雰囲気のナディアは、優しい人だって一目でわかった。
リッカたちと一緒に、大切な話をしていたみたいだから、あまり話せていない。残念。
ラフィーナは、真っ赤な剣の形をしている。
最初はリッカがつくった魔道具なのかと思ったけど、少し事情が違うみたい。
ラフィーナ自身は別のところにいて、あの剣に……乗り移る? とか、そんな感じの状態になっているって言っていた。
赤色とピンク色……確か、イリスはこの色の属性が嫌いなんだっけ。
けれど、話してみればラフィーナも優しかった。ちょっとぶっきらぼうだけど、わたしに色々なことを教えてくれた。素直じゃないみたい。
そして、最後にアッシュ。
ラフィーナの剣と同じくらい不思議な魔道具。あの子も、本当は別のところにいたりするんだろうか。色ははっきりと見えなかったけど。
アッシュは小さくて、喋ることもできないけれど、とても力持ち。剣を軽々とくわえて持ち上げることができるくらい。
色々話しかけてみて、首を傾げたりして反応はしてくれたけど、話すことは出来なかったみたい。これもちょっと残念。
アッシュとも、話せるようにならないかな。
新しいともだちと、リッカたち。
もしもみんなが聖都にくれば、もっと毎日が楽しくなる。
そんなことを思い浮かべて、ベッドに入って、それで今日はおしまい……だと、思っていたのだけど。
「っ、はぁ……はぁ……!」
どうして、こんなことになっているんだろう。
イリスの屋敷の、お庭の外――中を隠す結界の向こうに出たのは、初めてのことだった。
なんだかすごく、イリスは焦っていた。そのあんまり必死な様子に、いつかを思い出して動けなくなったわたしを抱いて、イリスはわたしを部屋から連れ出した。
目を瞑れって言われて、いたずらがばれた時みたいにイリスを怒らせたくないからその通りにして、ぐるぐる振り回される体を縮こまらせてしばらく耐えて。
気付けば屋敷の外に放り出されていた。
イリスが最後にわたしに言ったのは、逃げろ、とだけ。
……どこへ? 逃げるって、どうするの?
振り向いても、結界の外だからもう屋敷は見えない。
中に入っちゃ駄目だってのはわかる。それをイリスが求めていることくらいは、伝わってきた。
わたしが逃げなきゃいけないくらいの何かが、きっと起きている。なんだか、触角の先がぴりぴりした。
どうすればいいかも分からないから、とにかく屋敷から離れようとして、どこに何があるかもわからない聖都を走った。
周りに知っているものなんて、なにもない。
誰かがいる気配もない。夜はみんな家の中にいるのだから、人間の子供たちの姿もない。
寒くて、足もつめたい。庭に出る時は靴を履いているけど、今はそれもない。
人間に比べて足の先が硬いから、タイルで怪我することはない。だから、走ることはできる。
でも、どうすればいいのだろう。
どこまで走るの? どこかに隠れればいいの? いつまで逃げればいいの?
何があったから、こうなってるの? 答えを出すためのヒントがなくて、わたしはがむしゃらに走ることしかできなかった。
目的地はない。だから、ここかなと思った曲がり角を曲がって、同じような場所をぐるぐるしている。
だれかに助けをもとめればいいの?
だれに? リーテ? それとも、リッカたち?
そうだとしたら、リーテってどこにいるの? リッカたちってどこにいるの?
そもそも、ここはどこ? いまわたしは、聖都のどこを走っていて、家からどのくらい離れたの?
自分が何をしているかも曖昧だった。こんなに聖都が広いんだって知らなかった。夜がこんなに暗くて怖いんだって、知らなかった。
もしかしてわたし、また何か、イリスの迷惑になるようなことをしてしまったのだろうか。
またリッカに謝らないといけないようなことを、してしまったのだろうか。
「ぅ……ぁぁ……っ――」
――もしかして、わたしのせい?
そんな不安が、感じていた寒さをより一層強くさせる。
と、止まっちゃ駄目。走り続けないと。怖いけど、助けてくれるだれかを探さないと。
涙は堪えられなくて、でも弱音は零さないように我慢して。
ヒントもないどこかに向かって逃げ続けて、広い道に出た。
他よりたくさんの建物が見える、わたしが何人横に繋がって寝転がれるかも分からない通り。
そして、その一番向こうに、白くて大きな建物が見えた。
根拠なんてないけれど、あそこに行けば、なにかが変わる。そう信じて、道の真ん中を駆ける。
頑張って走った。頑張って逃げた。だからこれで何か変わってほしい。
そんな思いで、少しでも早くそこに辿り着くように、一番速く走れるように。
顔を伏せて息も止めて、わき目もふらずに走っていたから。
だからわたしは、同じように道の真ん中に立っていた“だれか”に気付けなかった。
「ぷぁっ」
「……あら?」
ぶつかっても、そんなに衝撃はなかった。
何故だか柔らかく、ゆっくりと。ふわりと跳ねるように弾かれて、尻餅をつく。
見上げたその姿は――皮膜のない翼と長い尾を持った、女の魔族だった。
「……あぶないわよぉ……こんな夜中に、子供がひとりで外に出ちゃ」
赤色と、ピンク色……ラフィーナと同じ色だ。
それから、その色以上に、ラフィーナと――あの剣と同じものが、伝わってくる。
よく分からない、理解したら駄目だという雰囲気。
赤い髪を揺らしてこちらに振り返ったその魔族は、今にも閉じられてしまいそうな、眠たげな目でわたしを見下ろしている。
「なにか、あったの……? すごぉく、急いでいたみたいだけど……」
その翼で浮きながらふらふらする彼女は、今にも寝てしまいそうだった。
夜だから、眠いのは当たり前。だけど……大丈夫だろうか。
なんだか寝てしまえばそのまま起きてこない。そんな気がする。
ちょっと頼りないかなと思ったけど、すごく――リーテと同じくらい強いと感じ取って、わたしはこの魔族に助けてもらおうと決める。
「あ、の……」
「んー?」
「い……助けてほしいのっ。イリスに逃げろって言われて、わたしっ!」
ちゃんと伝えられていないと自覚している。
けど、とにかく今はイリスが心配で、名前を出せばきっと分かってくれると思った。
イリスは有名みたいだから。人間の子供たちも知っているくらいだから、大人なこの魔族もイリスのことは知ってるだろうって。
「――イリスってのは知らないけど……あなたを、たすければいいの?」
「う……うん。あ、あと……イリスを助けてほしいって、リーテと、あと、ユーリたちに……」
イリスを知らないと聞いてもっと不安になったけれど、それならとわたしは、リーテたちの名前を出す。
多分、リーテはイリスよりも知られているし、魔族ならユーリの名前を知っていてもおかしくない。
とにかく、きっと今、イリスは危ない目に遭っている。
だから話が分かるだれかに伝わればと、そう思った。
「……、……んん」
「――あの、えっと……」
なにか考え込んでいると思ったら、どんどん目蓋が閉じていく。
やっぱり、無視してあの建物を目指した方が良いのかなと、不安を覚えるわたしの気持ちなんて知らないかのように、その魔族はわたしの後ろを指さした。
「まずは……あの子からあなたを、助ければいいかしら」
「……え?」
何を言っているのだろう。
わたしは独りで走ってきた。誰とも一緒じゃない。
不思議に思って、指さす先をなぞるように振り向く。
――金色がそこにあった。
他にどんな色もない。ただの金色が、そこにいた。
……ユーリじゃない。
でも、金色だ。わたしの中にもちょっとだけある、勇者の色だ。
……女の子。
リッカと同じくらいの女の子。金色の髪を伸ばした、なんだかわたしに似た女の子。
真っ赤なトマトジュースを浴びたみたいに、赤い液体のくっついた服を着て、金色の剣を持って、目を閉じた女の子。
眠っているのだろうか。顔を俯かせて、ふらふらとするその子を、わたしは知らない。
知らないけれど……その勇者の色は、ユーリのものよりもわたしに近い。そんな気がした。
「夢うつつ……これはちょっと予想外。わたしの管理責任とか、言われるのかしら。面倒臭いわねぇ」
その子が誰なのか、こっちの魔族は知っているみたい。
感心した様子の魔族は、目蓋を少しだけ開いて、皮膜のない翼を広げる。
「それなら……あなたは守ってあげなくちゃ、かぁ」
……彼女は何かを掴んだみたいだけど、わたしには分からない。
分かることは二つだけ。
その、金色の女の子が狙っているのがわたしということで。
「あなた……なんて言うの?」
「……? なまえ……? わたし、ホープ……」
「そう。私は――アリスアドラ。よろしくね、ホープちゃん」
わたしの頭に手を置いて、微笑むその魔族が、わたしを助けてくれるということだった。
【ホープ】
はじめてのおつかい。
新しい友達ができてウキウキしてたと思ったら外に放り出された。
困っていたところを大人のお姉さんが助けてくれた。
【
街中でエンカウントするタイプの敵幹部。