凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「アリスアドラ様。無許可の戦闘行為は……」
「あとでどうにかするわぁ。どうせリーテリヴィアも見てるんだろうし」
ゆっくりと体を伸ばすアリスアドラに、僕たちに対する戦意はない。
あくまでも彼女が向けているのは、今僕たちとつながっているだれかに対して。
何が癇に障ったのかは分からないが、アリスアドラの中で、既にこれからの行動は決定していた。
「……責任は全力で取って」
呆れと、類を見ないほどの苛立ちを込めてリッカは推定味方であるはずの、枠組みの向こうの看板に言う。
……魔族相手でもそうそう見ないほどの怒りだった。少し怖い。
『いやこわ……やるけどさ。ところでイッチ、あたしはその台詞を然るべきシチュエーションで勇者くんに向けた場面を配信してほし』
「さっさとやって」
『はい』
勇者として、いつかは戦うことになる存在。
打ち砕かなければならない壁ではあるが、今勝てるかと考えれば、勝率は低いと言わざるを得ない。
――そして、それは諦めるということでもないのは、言うまでもないか。
はっきり言ってこういう形で戦うことになったのは不本意だ。
クイールたちの事情の解決が最優先な中で、アリスアドラと戦っている余裕がない。
だから、早く終わらせなければ。もしかすると借りるべきではないかもしれない――その力を借りてでも。
「ちょ……ユーリくんっ、流石に四天王と戦うのは……」
「――大丈夫。どうにかなるかも。クイールは休んでて」
「かもって……」
本来ならば逃げの一択。無理をしてでも勝てない相手ならば、生き残ることが先決だ。
だが、僕たちの戦力を“かもしれない”にまで押し上げる要因こそが、この状況を作った元凶でもある。
『……俺には出番を作るためにお前がわざと煽ったようにしか見えねえ』
『細かいことは言いっこなしだぜ相棒。成果を出せばきっとイッチも勇者くんも許してくれる』
『相棒言うな』
不可能を可能にする。勝てない戦いに勝つ。逃れられない運命を変える。
かれらに感じる特別は、つまりはそういうもの。
無理難題に慣れ切った雰囲気を持つかれらならば、この状況さえ覆せる。
そう、僕は“リッカが信じ切らない支援者”を信じ切る。
リッカによって辿り着いた理不尽を実現させるのは、僕にしか出来ないことだから。
「もうひと頑張り、いくよ、リッカ」
「ん――仕方ない」
『あれ? 待って。これってCPの間に挟まるも同然の大罪なのでは――!?』
『クロスオーバーコード! アクセプション!』
智慧を授けてくれた彼の力が体から離れ、枠組みに戻り、早々に消失する。
代わりに近付いてくるのはガクガクと震える看板の映るもう一つの枠組み。
それに多少の……いや、かなりの躊躇を覚えつつも、手を伸ばす。
『ストップ! 勇者くん! やっぱりそういうのって解釈違』
『フィーチャリンク!』
『あっもう無理スレ建てる……“【悲報】ワイ、推しの間に挟まる”』
『余裕あんなコイツ』
「リッカちゃんの知り合いって……」
胸部、肩、そして左腕と形成されていく、板のような装置。
そして全身を覆う、集中しなければすぐに持っていかれそうなほどに意識を引き寄せる虹色の粒子が追加外装となり、上半身を主に装着される。
流れ込むように理解する、与えられた能力は先程までのそれよりも奇妙なものだった。
だれかの力のほんの一端という点では同じ。彼女が持つ強大な力を簡易的に引き出すための、他のどんな形態とも異なる独自仕様。
直感的に使用法が理解できるような、徹底的に単純にされた技術の極致。
『U-リッカ! ――セプテニファ!』
『あ、そっち……じゃなくて名前バレはあかんて……あわわわわわわ……』
純粋に高い能力が引き出せるわけではない。寧ろ、外装が有する性能としては僕たちの力の中でも低い部類にある。
しかし、代替となる強力な特性は、数多の魔法薬の調合を可能とする先程の姿にも劣っていない。
「――終わったかしら。なら、いいわよね?」
『もしもしあたしネキ、今推しと一つになってるの』
……どうも先程の彼のように、意思を統一できない気がした。
それでは如何に彼女が凄まじいポテンシャルを秘めていようと――
『待てよ? これこのままやり切っちゃえばいいのでは? ――っしゃあ
「ッ!?」
「うわ――っ!?」
次の瞬間、体が爆発するように熱くなり、前方に向けて強く引っ張られた。
その熱さは、勇気の魔力による熱とはまったく違う。
魔法的ではあるが、もっと単純な、頭の働きを鈍くする発熱だった。
制御が利かず、勝手に動く体はゆらりと迫ろうとしていたアリスアドラに真っ直ぐ突撃し、拳を叩き込もうとする。
「――すまないが、そこまでだよ」
そこに立ち塞がったのはエヴァネス。アリスアドラほどではないが、今戦えば厳しいと言える存在。
『おっと、そっかそっか、部下のサキュバスちゃんがいた訳だ』
「アリスアドラ様の遊びに割って入るのも気が引けるがね。勇者クンたちの向こうにいるキミは……少し危険だと判断した。止めさせてもらうよ」
『止められないんだなぁ、それが』
しかし無謀だ、という思考は彼女に一切ない。
一切の悪意もなく、僕たちに対する善意でもなく。
――ただ、心が沸き上がるからと――その魔性は
体を操る彼女が何をするかと言えば、足を止めて、左腕の“盾”に軽く右手を当てるだけ。
触れられたアイコンが命令を受けて、与えられた機能を実行する。
何をするのかと、盾に視線を向けていたサキュバスに向けて、魔性が嗤う。
『――だって、ほら。キミのご主人様は誰だっけ?』
「――問われるまでもない。あなたただ一人だとも」
立ち塞がっていた筈のエヴァネスは、即座に道を開けて跪いた。
それは、他者の心を強制的に上書きするという禁忌。
魔法薬の中にはそういうものもあるだろう。魔法にも、然るべき手順を踏めば可能なものがあるかもしれない。
しかし、“これ”に複雑な手順など必要ない。
彼女が持つ力のほんの一端を、アイコンを押すという一手で実行しただけ。
「へえ……」
「エヴァネス? 狂った?」
眉を顰め、心なしかインキュバスを押さえる手に力を込めるジルと、感心の声を零すアリスアドラ。
本来、そうした力を持つサキュバスだからこそ、同じサキュバスの心を堕とすということの困難は知っている。
彼女たちをして異常だった。”サキュバスを催眠に掛ける“という、狂気の行動は。
『ねーイッチ。この子どうするか安価していい?』
『お前の頭は邪悪な発想しか出来ねえのか?』
彼の方はともかく、彼女は――決して、善人ではないのだろう。
与えられた権利を愉しむために行使する存在。それが、僕たちをどうして手助けしたかといえば、“気に入ったから”という理由に過ぎない。
このまま彼女に任せていれば、アリスアドラに勝つことができる。
そんな希望さえ生まれるほどに、彼女は
任せていれば、この熱に浮かされている間に、四天王という脅威の一つが片付けられる。
もしかするとリッカが受け入れたのも、期待があったからかもしれない。
「うぅん……ちょっと困るわねぇ。ユーリくんたちまで持ってかれるのは」
「――――!」
――そんな、のぼせ切った思考を瞬時に吹き飛ばしたのは、他でもないアリスアドラだった。
初めてその時、アリスアドラから敵意を向けられたのだと理解する。
凍てつくような寒気で我に返った時――これでは駄目だと思った。
力を借りるのはいい。僕が望んだことだ。
だが、何もかもを任せるのは間違っている。その先は僕たちが決めた選択肢ではなくなってしまう。
「ッ、リッカ!」
「……!」
体を覆う煌びやかな粒子が思考を溶かしているのだと認識し、自身に喝を入れる。
共に意識を朦朧とさせていたリッカを引っ張り上げれば、体に自由が戻ってきた。
『……ありゃ? あたしまたやっちゃってた?』
『やっぱりコイツ消滅させた方が良いんじゃねえかなぁ……』
――彼女からすれば、ただいるだけで周囲を沈めてしまうという当たり前の事象なのかもしれない。
そこに悪意がないならば――簡単な話だ。
この力を使う代償だと、強く認識すればいい。
『えっと……勇者くん、ごめんね? あたし割とこういうとこあるというか……』
「ううん、大丈夫……けど、
確固たる意思で、彼女の誘惑を跳ね除ける。“自分らしく”を意識することで、この力は制御できる。
内側から溢れる強力な魅了効果に陥落するということは、リッカをも明け渡すということ。
僕が立って、歩む理由が“リッカのため”である以上、借り受けたこの力も、僕が僕の意思で操らないと駄目なものなのだ。
「だから、我儘だけど――力“だけ”を貸して。僕とリッカが、使いこなして見せるから」
『――――――――』
宣言すれば、声が聞こえなくなって、意識も感じられなくなった。やっぱり駄目かもしれない。
『……まあいいか。動かせるならそのまま行け。アイツはそのうち復活する』
「――わかったっ」
力の供給は続いているようで、姿が元に戻る様子はない。
自由になった体、はっきりとした思考で、出来ることを模索する。
この姿――『セプテニファフューリー』の能力は、心の操作。
他者の意識を集め、そして唆すことで、思考はおろか肉体までもを操作する催眠の極致。
「……ごめん。お願い!」
「承った! すべては主のためさ!」
左腕の盾が暗示を送ることで、如何なる命令をも受け入れさせる。
一たび暗示の中に落とすことが出来れば、敵を味方にすることさえ可能な、凄まじい力。
「ああ、もうっ。エヴァネスっ」
「ハッハッハ! ジル、キミはいつの間に敵の下に堕ちたんだい!? いいだろう――ボクが正気に戻してあげよう!」
敵と味方が反転した状態で、エヴァネスはインキュバスを拘束するジルに杖を振るう。
その直前――ピンク色の炎に巻かれて三人の姿が消えた。
軽く手を振ったアリスアドラの仕業だろう。
これ以上の混乱を望まないのか、配下たちとインキュバスを転移させたのだ。
程なくして、盾に表示されたアイコンの点滅が終了する。
エヴァネスに掛かっていた催眠が解除されたようだ。
「……その力を使い続けるなら、罪悪感なんて持たない方が良いわよ。支配した誰かを操るのは自分の権利。そう、心に刻み付けないと、人間にその力は向かないわぁ」
「……」
エヴァネスを操り、ジルに嗾けたことに罪悪感を覚えていたこと。
それがアリスアドラに、伝わらない訳がない。
「……ま、いいわぁ。“それ”もユーリくんが黙らせたみたいだし。私も帰る……前に。流石にリーテリヴィアには会っとかないと駄目よねぇ」
先の、冷たい敵意ですべてを出し切ったかのように、アリスアドラは今までよりも眠たげだった。
ふらふらと揺れて、目を閉じたその様子はあまりにも隙だらけで、ゆえに“油断はできない”と思わせる。
「……そうだ。リッカちゃんに、話があったんだっけ。すっかり忘れてた」
「――――?」
次に目蓋を少しだけ開いた時、アリスアドラの意識の中に、敵意の中心だった彼女はいなかった。
何か、きっかけらしいきっかけがあった訳ではない。
しかし、現にアリスアドラには戦うという気は一切残っていない。この場の誰にも、なんの意思も向けられていない。
ほんの僅かな居眠りから目覚めたような、唐突な思考の切り替わりに目を丸くする。
「はい、ユーリくん。あとでリッカちゃんに、渡してあげて」
アリスアドラは手元に炎を揺らめかせたかと思えば、そこから何かを取り出して投げ渡してくる。
くすんだ銀色の――引き込まれそうな深い気配を持つ鍵だった。
『U-リッカ セプテニファフューリー』
【属性】火/勇気/夢
【攻撃力】■■■■
【防御力】■■■■■■■■■
【素早さ】■■■■■
【魔 力】■■■■■■■
【精神力】■■■■■■■■
【U-リアルコーティング】
全身を包む真紅のスーツ。
イマジナリマテリアルコーティングを構成する物質にユーリの勇気が含まれたことで飛躍的に性能が向上している。
各種状態異常への耐性も強化されたほか、あらゆる極限環境における生命活動の維持を可能とする。
【ブレイジングブレイブリィブラッド】
スーツの内部に流れる超強化エネルギー。
全身を循環することによる強化効果は装着者から滾る勇気とリンクし、魔法の効果を打ち消す類の特殊攻撃の影響を受けない。
被ダメージに対応する回復効果は本エネルギーに付与された魔法ではなく装着者の勇気が変換されるようになっており、瞬間的な大ダメージさえ受けなければ、諦めない限りの戦闘状態維持が可能となっている。
エネルギーの基本色はピンク。
【クロスオーバーライズ-725】
セプテニファフューリーを成立させる近似世界との簡易クロスオーバー。
異なる世界同士を繋ぐバイパスの役割を持ち、一時的にリソースの供給を受けることが出来る。
受け取ったリソースはこの世界に適した性質に変換され、特殊な装備を構築する。
【キラメイティックデコレート】
セプテニファフューリーの表面を覆う特殊魅了粒子。
絶えず変化する煌びやかな色彩は強力な幻惑効果を持ち、他者の無意識を自身の有利に誘導していく。
機能の制御とは別に、周囲に魅了粒子を無差別に振り撒くデメリットが存在する。
他者の恋愛感情を左右させるほど強力なものではないが、敵の狙いが自身に集まりやすくなる。
【プリマドンナアライメントブレスター】
セプテニファフューリーの胸部から肩部にかけて装着された演算装置。
構築されたアプリケーションの並列管理を行い、複雑なものであっても瞬時に出力できる。
この形態の各種機能の中枢でもあり、きわめて強固な防御力を誇る。
【EXコマンダーシールド】
セプテニファフューリーの左腕に装着された長方形の催眠デバイス。
衝撃を吸収し魔力へと変換する盾として使用可能なほか、構築されたアプリケーションを出力し、対象に強力な暗示を掛ける。
【全自動無双大全 ~今日からあなたも催眠マスター~】
この世界とは別の理におけるサキュバスが持つ、他者を操る術策が記録された催眠教材。
装備者の求めに応じ、特定の効果を発揮する催眠パターンを高速構築する、『プリマドンナアライメントブレスター』にインストールされた機能。
構築されたものはアプリケーションと呼び、『EXコマンダーシールド』に表示された個々に対応するアイコンを起動することで出力される。
プリセットされた数パターンのアプリケーション以外はこの形態を解除すると消滅するため、再び構築する必要がある。