凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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ラフィーナちゃんのぴかぴか反省コーナー!

 

 

「――――――――」

 

 甘い、甘い陶酔からようやく這い上がってくる。

 自分の意識が飛ぶ、その瞬間ははっきりと自覚できた。

 まったく……全力でストライキしてよかった。よかった……のだろうか。

 あの二人の協力者たる(ラフィーナ)としては正しいのだろうが、アリスアドラ様から逃げたという事実が、正気に戻った私を苛む。

 まるで自分の行いを、アリスアドラ様が窘めているような……あ、まずい。この思考はよくない。想像だけでまた呑まれそう。

 

「っ……」

 

 一世一代の抵抗だった。

 あのまま剣として、ユーリに呼び出されていればどうなっていたか。

 ……考えなしにも程があるぞ。アリスアドラ様のいるところで私なんか呼び出せば、たちまち使い物にならなくなるなど、他でもない私が一番理解している。

 抵抗して、それでも一瞬だけ外と繋がってしまったことで浴びたあの狂気。

 それは瞬時に私を快楽の海に沈めてみせた。

 そこからはもう、自分が自分であるとさえ言い切れない楽園である。

 

 しかし……あの瞬間に見えた、アリスアドラ様以外の二人。

 あれは、エヴァネス様とジル様だろうか。姿を見たことはないが、アリスアドラ様の側近たるその名は知っている。

 水と風、土が二つと自ら定めたという側近の席。

 火たるアリスアドラ様は奔放さの表れからか、形式にとらわれずその席を四つと定めた。

 

 エヴァネス様、イルミナ様、ジル様、ネリネ様。

 

 私が関わったことがあるのは、剣の指南役であったイルミナ様だけ。

 変わり者であった私に差別の意識を向けず、“真面目”に付き合ってくれたあの方は、先程の場にはいなかった。

 エヴァネス様は……実力はアリスアドラ様に次ぐという噂。

 同僚たちの中にはなんか絶大な崇敬を向けている奴もいたな。

 本人がとんでもない“偏食家”にして“美食家”らしいし、私とは別方面で変わったサキュバスである彼女を、私は好ましいとは思えなかったが。

 どちらかといえば、正反対に過食の極みをいくというジル様の方が、アリスアドラ様の側近たるサキュバスに相応しい。

 二人の仲がいいという話は聞かないが……アリスアドラ様は二人を連れて、どうして聖都なんかに来ていたのだろう。

 

「……というか、生きてるのかしら」

 

 そもそも、それが心配なところである。いや、心配などしていないが。

 ユーリとバカ女の実力では、アリスアドラ様どころかあの二人にすら歯が立たないのではないか。

 ……この空間が残っているということは暫定で、まだ生きているんだろうな。しぶとい。

 

「む? おお、起きたか同胞! 相変わらず見事な陶酔だったぞ」

「……そりゃどーも」

 

 起きて早々に嫌な声を聞いた。

 くそ、もうこの際私をずっと離れたところに隔離しておいていいのに。

 どうしてよりによって今日、近場にあのイカレたセイレーンなんかがいるのか。

 名目上は連中と同じ苗床である私は、ユーリの武器であるという役目と並行してこいつらとの付き合いも続いている。

 これまで、壊れていく被害者を哀れんでいた私だが、こいつだけはどうにかなってほしいと思わずにはいられない。いや、こいつのメンタルと思考回路からしてその日は来ないのだろうけど。

 

「あー……なんだ。気をしっかり持てよ。まだ壊れてねえってんなら」

「そうね。ちょっと……昔のことを思い出してただけよ」

「昔を思い出してトリップするとかお前の思考どうなってんだよ」

 

 よく辺りを見渡せばオールスターであった。

 セイレーンだけではない。こちらにぶっきらぼうに心配を向けてきたオークに、明らかに怯えたヴァンパイアもいる。

 壊れていない――後者は正直怪しいが――苗床被害者同盟である。

 この連中と付き合っていると、色々と“加減”されていることにちょっとした罪悪感を覚えないでもない。

 本当に面倒臭い状況である。事ここに至って、自分が物を誤魔化すというか、それらしく振る舞う猿芝居に向いていることが分かったのがなんとも悲しい。

 

「ひっ……」

 

 この中では新入りのヴァンパイアに、何となく目を向けると、当然のように恐怖の感情が返ってくる。

 彼女が入ってきた時は、絶賛私がおかしくなっていた時らしいし、それを思い出したのだろう。

 

「ご……ごめんなさい、やだ、たすけてよぉ……! ヴァージニアぁっ!」

「自業自得だぞ、淫魔」

「分かってるわよ……反省してるわ」

 

 まあ、反省しているかどうかと、もう一度あれに抗えるかどうかは別問題なのだが。

 ……私への恐怖が大きくて、苗床となること自体への恐怖が薄れているのは、幸いなのかもしれない。

 このヴァンパイアの精神は幼い。もし、素の状態でいれば、耐えられなかったと思う。

 だからこそ気にかけてやらないといけないのだ。その先に待っているものに、明るいことなんて一つもないとしても。

 

 しかし、本当に幼いな。

 魔族において、他種族との年齢の差など殆どあってないようなものだ。

 成熟するまでの年月はバラバラだし、下手すると同種でも成長速度が異なる場合もある。

 極端な話、このヴァンパイアが私たちより百年単位で年上ということもあり得る。

 ……余談だが、私を同胞認定しやがったセイレーンの生まれた年は私とそう変わらないらしい。

 

「まあいいや。俺は寝るぞ」

 

 すっかり脱出を諦め、ここに骨を埋めることにしたらしいオークは昼寝を始めた。今が昼なのか夜なのか知らないが。

 この、他の連中にはない性質が、このオークに正気を失わせていないのだろう。

 獣の如く生きてきた、なるようになれの精神。

 それが、この空間における責め苦をトラウマにまで至らしめていない。

 恐怖によって壊れないヴァンパイアや、愛によって壊れないセイレーンとは違う、純粋な強さと言える。

 ……というか、私はなんで、バカ女に記憶を押し付けられるまで耐えられたのだろう。

 自慢できるような心の強さを持っていた訳ではない、単にサキュバスだから肉体が丈夫だってだけの私が。

 あの女が、それまで加減していたということもないだろうし。

 

「呑気なものよ……む?」

 

 私の暇潰しとしてポピュラーなものになりつつある、ふとした疑問への考察。

 目を閉じてそれに意識を委ねようとして、セイレーンの声でまた目蓋を開く。

 ……後悔した。嫌なものを見た。

 というか思い切り、嫌なものが突っ込んできた。

 

「プレゼントのじかんだー!」

「うぐっ……!?」

 

 顔に向けて迷い無しで突撃してきた、小さな塊。

 その衝撃に、どうしてあのバカ女は私の痛覚一つ消してくれないのかとやや理不尽な苛立ちが生まれる。この空間で事象を色々弄れるならそのくらい出来るだろうに。

 そんな別人への怒りも込めた眼差しを、突っ込んできたこの空間の災厄・二分の一は笑って受け止める。

 ……うわ、もう片方も普通に飛んでる。嫌なものを見た。

 

「メリー・メリー! よいこには贈り物をたまわす!」

「サブタイトルは『サンタくろうする』。施しの使者は一般的に親の扮装だと思われる!」

 

 何言ってんだこいつら。

 コミュニケーションを取るつもりならせめて私たちに理解可能な言語で喋ってほしい。無理か、妖精だもん。

 

「さあ、今日からぼくがお兄ちゃんだよー!」

「シャケ食えシャケっ!」

 

 何が面白いのか、まったく分からないが、笑いながら飛び回る妖精たち。

 それまで誰が何を考えていようと関係ない。

 一度現れれば、その時の空気などすべて吹き飛ばすお祭り気分の化身がこいつらだ。

 ……片方が抱えているあの魚、どこから拾ってきたんだ? どう見てもあれ、シャケじゃないだろう。

 ――っ、危ない危ない。疑問を持つな。疑問を持ったらそこからたちまち切り崩される。決して油断してはならない。

 あ、ヴァンパイアが絡まれた。かわいそう。

 

「や、やめ……こっち来な――」

「せいやーっ!」

「んぶぅ!?」

 

 懇願空しく、妖精たちの言うところのシャケを無理やり口にねじ込まれるヴァンパイア。何見せられてるの私。

 触手やらとどちらがマシだろうか。あれが本当に魚なら生臭いだろうし、違う不快さがあるだろう。

 一体“どこ”で“なに”を学んだのか、魚の抽送を繰り返し、ヴァンパイアの口内をぐぽぐぽと蹂躙する妖精たちは随分と楽しそうだった。

 哀れには思うが、代わってやろうとは思えない。

 こいつらが出てきた以上、私たちの感情は“こっちくんな”に統一される。

 セイレーンさえ同意見である。

 

「なあ淫魔」

「なによ」

「前から疑問だったのだが、りっかりかは何故あれをこの空間に取り込んだのだ? ユーリのためになるのか?」

「知らないわよ」

 

 ちなみに“りっかりか”はこいつらを未だに認識出来ていないらしい。

 一度、こちらに来ている状態で場所でも掴めれば一発なのだが、狙ってか無意識なのか、妖精たちはあいつの来るタイミングを見事に外してやってくる。

 セイレーンを放り込んでからは苦手意識から、より監視の時間が減っていて妖精たちにとっては隙だらけになっている始末である。

 

 ……監視の目が緩みつつあるのは、ある種の諦観もあるのだろう。

 この苗床に慣れ切ったここの面々は、あいつの復讐の失敗でもある。

 出られる見込みがないだけで、死ぬよりもキツい苦痛とはいえなくなってしまっているのだから。

 ならば求めるのはユーリを支える魔力タンクとしての役目のみ、と。

 あのヴァンパイアくらいはまだ壊せるかもしれないが。怖がり、嫌がることが出来ているし。

 

「まあ、どちらでもよいか。重要なのは、我が愛をユーリに捧げること、それだけだ」

「相変わらずね」

「うむ! この心持ちだけであと三百年は戦えるぞ」

 

 人間(ユーリ)は三百年も戦えないぞ。あのバカ女はそのくらいは戦っているかもしれないが。

 自信と誇りに満ちたセイレーンの表情はおよそ苗床とは思えない。

 この空間の主さえ黙らせた凶悪な思考回路は健在だった。

 

「ユーリは今頃どの辺りだ? そろそろ魔王の首級に届くのではないか?」

「……早すぎでしょ」

 

 ある程度状況を知っている身だが、何を言うわけにもいかない。

 外とつながりを持つことを知られたくないし、そうでなくとも少しでも情報を渡せばこの喧しいセイレーンはさらに喧しくなる。

 

「りっかりかが次に目指すのは迷宮みたいだよー!」

 

 もう、どうして状況を把握しているかは指摘しない。面倒臭いし。

 ヴァンパイアで遊ぶのに飽きたのか、妖精たちがふわふわとこちらに飛んでくる。

 ちょっと目を離している隙に、ヴァンパイアは秘部に魚を突っ込まれていた。何があったんだよ。

 

「迷宮……?」

「まおー様が眠る場所! あれ? まおー様がうまれた場所だっけ?」

「ちがうよシナト、まおー様がつくった、“かいぶつをふうじる”場所だよ!」

 

 当然ながら、そんなもの聞いたことがない。

 いや……魔王様に謁見したことすらない以上、存在しないとも断言できないのだが。

 聖剣がどうやら真実だったらしいし、この妖精たちの言葉が、万が一、この場で芽吹いた新説でないのだとすれば、また随分物騒な場所を目的地に定めたようだ。

 

「……はぁ」

 

 ――なんて、他人事に出来ないのがひどく憂鬱である。

 かれらに何かあるのだとすれば、私はそれに付き合わされるということ。

 どうせこの先には風の試練が待っている。

 一体何しに行くか知ったものではないが、その後に待ち受けるだろう大嵐に抗う一助になればと思うばかりだ。

 

 ……どうして私があの二人の無事を祈らなければならないとかと、苛立ち混じりの疑問が生まれたのは数秒後のことだった。




【シナト&トノカ】
申し訳程度のクリスマス要素。物凄く久しぶりに本編内で出没した苗床における混沌の化身。

【ラフィーナ】
巻き込まれ系サキュバス。欲しいプレゼントは何もない平穏な一日。

【オレブ】
オーク。欲しいプレゼントはこの現状を打破する力。

【イピカ】
セイレーン。欲しいプレゼントはユーリ。

【ルメリーシャ】
ヴァンパイア。欲しいプレゼントはヴァージニア。
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