凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
――すべてを奪われたあの時から、復讐がワタシの原動力だった。
どうしてこうなったのか、と何度も考えた。
足りない頭。恐ろしさをより感じるようになった頭で、数えきれないくらい考えた。
ワタシたちのやってきたことは、生きるための当然の行いだった。
強い者として、弱い者から奪い、弱い者を貪り、欲のはけ口にして生きていく。
魔族とはそういうものだ。
魔王様が世界を支配した時からそういうものなのだって、ワタシたちは生まれた時から知っている。
人間たちの縄張りに入るのは良くないという魔族は多い。
縄張りにいる人間は、そこから出なければ生きることを許されているという。
だからといって絶対ではないから、縄張りに忍び込んで食べ物を奪うことも多くあった。
ワタシたちは体が大きくない。人間の縄張りのように、隠れる場所が多ければ簡単に奥へ奥へと入っていけるのだ。
そして、縄張りの外をうろついている人間は、ワタシたちにとっては襲ってくれと言っているようなもの。
だから襲う。襲って、食べ物を奪う。
なんとなく苛立っていれば持ち物を壊したり、たまにその人間を殺したりもした。
オスの中には力の強いヤツもいるから、面倒だと感じたらさっさと“とんずら”したりもするが、メスであれば格好の獲物である。
そんな馬鹿な人間たちを襲うことが、何よりの楽しみであり、誇りだった。
それを終わらせたあの魔族を、許さない。
何が悪かったのかといえば、あの魔族が力を隠していたことだ。ワタシたちを騙していたことだ。
まだ成熟していない、人間のつがい。ああいうのが縄張りの外に出ているのは非常に珍しかった。
弱い個体ならば、二匹だろうと簡単なこと。オスは殺して、メスは犯そうと決めて、今回の狩りは成功だと確信して襲い掛かった。
今考えても腹立たしい。
そのつがいは力を隠してワタシたちをおびき寄せた、一匹の魔族だったのだ。
つがいは一つになり、見たこともない姿の魔族になると、圧倒的な力でワタシたちを蹴散らした。
あれほど強い魔族など、殆ど知らない。縄張りを同じくしていたものの、敵対してこないし獲物を奪ったりもしないから放置していたでかいスライムだって、あれに勝てるかどうか。
……強いて言えば、夜に時々見掛けるレイスくらいか。勝てないと思って、最初から喧嘩も売っていないが。
ともかく、ワタシたちは勝てない相手に襲い掛かってしまった。
そんなのエサになりにいくのと同じだ。
事実、ワタシの仲間はみんな、あの黒い魔族に食われた。骨すら残らず呑み込まれてしまった。
生まれてすぐに出会って、ずっと共に生きてきた仲間たち。生きることの大変さをも楽しさも分かち合ってきた仲間たち。
それが奪われるのは、一瞬のことだった。
生き残ったのはワタシだけ。
頭領は囮になって、ワタシを逃がした。勝てないと感じて、ワタシは頭領を置いて逃げてしまった。
もしも逃げずに、死ぬ気で戦っていれば、頭領を助けられたかもしれない。
だが、今ここにワタシは生きていて、頭領はもういない。
ワタシは臆病だった。頭領も、他の仲間も助けられなかった。
孤独になったワタシの心はあっという間に恐怖で満たされて、体力の続く限りあの場所から離れることしか出来なかった。
しかし本当の恐怖はそこからだった。
作り替えられ、種族として成立しなくなった体に気付いた時、ワタシは狂乱した。
あの時は何が起きているかすら分からなかったが、これもあの魔族によるものなのだろう。
それまでの力も出なくなり、同種にも受け入れられず、そこから生きていくことはより至難になった。
ワタシは群れで活動していた。単独での生き方など、知らなかった。
それを学ぶ中で一体何度、飢え死にしかけたか。そんなワタシを生かし続けたのは、執念のようなものだった。
絶対に、あの魔族を許さない。
いつか復讐し、ワタシや仲間たちが味わった苦痛を何倍にもして返してやると。
あんなことが出来るのは、被害者になったことがないからだ。だからこそ、ワタシが味わわせてやると。
そんな復讐心だけを支えにして、ワタシは泥を啜って生きてきた。
みじめな月日。宴もなく、人間に近くなった不気味な体を、出来る限り周囲に悟られぬようにこそこそと生きる毎日。
それでも、いつかあの魔族の首に、ワタシの爪を突き立ててやると思えば耐えられた。
そうでないと、耐えられる気がしなかった。すぐに壊れてしまう気がした。
どこにヤツがいるかなど分からない。
だが、生きてさえいれば、いつか見つかる。その時が、ヤツへの復讐の時。
頭領が最後にワタシに預けた、頭飾りに誓ったのだ。ヤツを殺すのは、このワタシだと。
それまで生きてきた平原を出て、山を越えた。
川を渡り、洞を抜けて、腹が減れば人間の縄張りに入って食糧を得た。
そして、“向こうにいるかもしれない”と思い、人間の乗り物に忍び込み海さえ渡った。
途中、人間たちが快適に暮らしていることの平穏に惹かれそうになったこともある。
それに甘んじるわけにはいかない。
復讐の達成をこそ、仲間たちは望んでいるはずなのだ。
……しかし計画を練る頭もないワタシでは、やはり限界があった。
ついに食糧を得られないまま数日凌いだ果てで、ワタシは動けなくなってしまった。
辺りには何もない。目の前に生えている草でも齧ればまだ少し動けるかもしれないが、そこに辿り着くことさえ難しい。
ここで終わるのかと思ったその瞬間に、案外後悔は少なかった。
きっと、そこまで必死で頑張っていたからか。
かつての仲間たちに形ばかりの謝罪をして、眠ってしまおうと考えて。
――――意識を取り戻してしまったのが、つい先程である。
並べられた肉だの魚だのにかぶりつき、ひたすら呑み込んでいく。
空腹すら超えた腹には、いくらでも入る気がした。
こんな風に、まともに食事をしたのは一体いつ以来か。
久しく感じていなかった幸福に満たされて、腹が膨れたことを自覚して、ようやく少しだけ冷静になる。
どうして“こいつら”は、見ず知らずのワタシを助けてくれたのだろう、と。
「いい食いっぷりだ! よっぽど腹減ってたんだなおまえ!」
「ン……ずっとナニモ、食えテいなかったんダ」
「そっか。ならどんどん食え! パンもあるぞ! もうすぐ買い溜め予定の町に着くからな。全部食っちゃってもいいぞ!」
「良くねえよ。いやまあ、飢え死に見過ごすよりはいいけどよ。ヒヒ」
……変な格好の魔族たちだ。
倒れていたワタシに山ほどの食糧をくれた、顔を隠した赤いヤツ。
それから、その食糧を乗せたガラクタで出来た乗り物の上にいる、ワタシと同じ緑色の肌のヤツ。
でも……あいつはワタシとは違う。元からああいう姿の魔族みたいだ。
「しっかし変な格好してんな? おまえ、グレムリンか?」
「違うと思うぜ。自分らとは魔力の作りが違えし、そもそも妖精じゃねえ。別の何かの突然変異だろうよ」
「あ、そっか。妖精じゃないんだ。んー……見たことないなぁ」
こいつら……妖精なのか。
妖精とは何度か会ったことがある。別に関わるようなこともなかったが。
手のひらくらいの小さいヤツばかりだったが、こいつらみたいな、今のワタシより少し大きいくらいのヤツもいるのか。
「コッペやシェリーがいれば、色々分かったんだろうけど。ってかシェリー本当にどこ行ったの?」
「知らねえ。自分は勇者たちに付いてったって予想してるが」
「あー、ありそう。“ああいうの”好きだもんなあシェリー。ユーリたちの邪魔とかしてないよな?」
どうやら、二人だけでなくもっと仲間がいるらしい。
同種ではなく、別々の種族が群れを作っているのか。そういうのは珍しいと思う。
「……オマエラは、なんなんダ?」
「よくぞ聞いてくれた!」
食欲が満たされて、落ち着いたことで出てきた疑問。
どうやら赤いヤツはそれを待っていたようで、急に立ち上がると何やら大袈裟なポーズを決める。
「
……なんだ、今の『ジャキーンッ!』って音。
「
どうやら今のが赤いヤツの名前みたいで、続けて緑のヤツを指さして言う。
……また、『ジャキーンッ!』が流れた。なんなんだ。
「今は二人合わせて、『
どう見ても合わさっていないが、いいのだろうか。
ちなみに今度の音は『ジャキジャキーンッ!』って感じだった。バリエーションがあるようだ。
「……デ、どうしてワタシを助けタんダ?」
「ん? 困ってるヤツは助けるだろ?」
ポーズを決めたまま、至極当然のように赤いヤツは言った。
何故そんなことを疑問に思うのかとでも言うようだった。
「目の前に、腹が減って死にそうなヤツがいる! あたしらはメシを余裕があるほど持ってる! なら、これは当然のことだよ」
……もしもワタシだったら。
使えそうなものを奪って逃げるだろう。
食糧を与えて元気になり、襲ってきたら大損だ。そもそも、食糧を与える時点で得などない。
こいつらはそう思っていないのか。それとも――損しても良いと思う、とびっきりの物好きなのか。
「ン……よくワカらん。だガ……礼をイウ。おかげで、ハラがイッパイになっタ」
理解できる気がしないが、こいつらに生かされたのは事実。
慣れない礼を言えば、赤いヤツは笑いながら肩を叩いてきた。馴れ馴れしい。
「いいってことさ。それで、おまえはただ腹減ってただけ? なんかやりたいことがあって、どこかへ向かってたとか?」
……食糧を渡した見返りに目的を言えということか。
大した力を持っていない魔族だが、それでも今のワタシより強い以上、下手に抵抗するのは厳しい。
仕方なく、ワタシがここまで来た目的を伝える。
満腹により一瞬忘れた怒りが再び頭の中で燃え上がった。
「そっか……仲間をなぁ。苦労したんだなおまえ……」
「ソうだ……ダからヤツを、絶対見つけル。見つケテ、復讐するんダ」
こいつらは復讐とは無縁に見える。
しかし、赤いヤツはまるで自分のことのように聞いてくれた。
話し終われば、そいつはパンと手を叩く。何かを思いついたように。
「――よし! なら提案!」
「な、なんダ……?」
「おまえ、あたしたちと一緒に来い!」
「ハ?」
うん……?
……何を言っているんだ、こいつは。
「あたしたちは色んなところを旅してる。時々すっごい魔族にも会ったりする。だから、一緒に来ればいつかそいつにも会えるんじゃないか?」
「そ……そうなのカ?」
確かに、あいつがどこにいるかは分からない。
どこを目的地ともしていないというか、どこに何があるかも分からないワタシがこのまま一匹でいるより、良いかもしれない。
だが、何故そんなことを提案するのか。
ワタシの復讐には、こいつは関係がない筈だ。どこまで損すれば、気が済むのだろう。
「付いてくればメシは食わせてやれる。代わりに、そいつが見つかるまであたしたちのショーを手伝ってくれ!」
「ショー……?」
「あー……お芝居、演劇、ごっこ遊び……そういうの分かるか?」
「……?」
「――とにかく! みんなを楽しませるために旅をしてるんだ。それをあたしたちと一緒にやろう!」
やはり、よく分からないが……ワタシたちが狩りで生きるように、こいつにもこいつなりの生き方があるということか。
何をするのかはともかくとして、こいつらにも見返りがあるというなら、腑に落ちる。
つまり、ワタシに食糧を提供する代わりに自分たちの生き方に付き合えということだ。
「……わかっタ。あいつを、見つけルまでダ」
「やった! 仲間が増えたぞベル!」
「……おー。良かったな」
飢え死にせずに目的に近付けるならば、願ってもない。
まともに生きるのが難しい身だ。こいつらを利用するのが正しいのだと、本能で理解した。
かつての仲間のような思い入れを抱く気はしない。これは取引だ。
しばらくは、食糧のために大人しく従う。それでこいつらがどんなヤツなのかを確かめ、利用するだけ利用してやろう。
「よろしくな! ――おまえ、なんて名前なんだ?」
「名前……そういうのは、ワタシたちにはないゾ」
「そっか。なら付けてやる! ……種族は?」
「ご……ゴブリンだガ」
やけにぐいぐい来るそいつに気圧されながらも、答える。
今のゴブリンらしくない姿で、嘘と判断されないかが不安だったが、普通にそいつは頷いた。
「なら――ゴブコだ! 今日からおまえはゴブコ!」
……馴れ馴れしい。本当に、馴れ馴れしい。
当たり前のように付けられた名前に、謎のむず痒さを感じた。
まあ……どうでもいいか。どうせ仮初の群れでしかない。勝手に名前も付ければいい。
これがワタシの復讐の新たな一歩だ。待っているがいい、未だ名も知らぬ魔族。
ワタシは必ず、おまえに辿り着いて見せる……!
【キャプテン・フレア】
弱きを助け、強きを挫く完全無欠のヒーローを目指す妖精の少女。
スタンス的にこういうことは往々にしてあるものの、メンバーの相次ぐ離脱が痛いことに変わりはないため、新しい仲間を探していた。
別にメンバーの条件は妖精に限定されるわけではない。今までの公演に協力してもらった者たちはすべて、メンバー名簿に名前が書かれているが、そこには人間の筈の勇者の名前さえある。
精神的にも幼く見える彼女だが、保護したゴブリンよりは成熟しているようだ。
そのゴブリンが復讐心で自暴自棄になっていることを察し、活動を通して生きる“楽しさ”を取り戻せないかと考えている。
【ベル】
「二人の成熟してない人間が魔族になった」という特徴に当て嵌まる存在を知っている気がするが、フレアがゴブコを懐柔できれば関係ないかと胸に秘めた。
【ゴブコ】
『金爪の継者』たるゴブリン。
かつては同種と共に群れを成していたが、戦力の違い過ぎる敵に挑んでしまい壊滅してしまう。
彼は唯一の生き残ったものの、戦った魔族の力によるものか、体が変化し、同種にすら受け入れられなくなってしまった。
それでも、復讐心を支えに旅を続け、限界を迎えたところを旅する妖精たちに拾われる。
ゴブリンには互いを識別する名前の文化は存在しないため、キャプテン・フレアの即興で初めて名前を与えられた。