凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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幸せのかたち

 

 

「ん、んんー……!」

 

 大きく伸びをして、体を解す。

 別にそうする必要性なんてそんなにないけれど、眠りこけて鈍った体にはこれが効く。

 今日も、爽やかな目覚めだ。

 相変わらず目に映る光景に変化はない。

 しかし些細なこと。そもそも、一つの縄張りを定める種族としては、見える景色など変わらない方が自然なのだから。

 

 いやまあ、どちらかというと新鮮さはあった方がいいとは思うが。

 だってその方が楽しい。

 変化のない毎日。それが、幸せであるならば勿論大歓迎だ。

 そうだったら“ずっとこんな日が続いてくれればいいのに”と思う。毎日のように、そう思っていた。

 そんな中で、時々誰も予想できないようなトラブルを、危険のない範囲で拾ってくる者がいれば完璧。

 日常の変化なんてそのくらいでいい。

 

 毎日が楽しかった。狂おしいほど幸せだった。

 もしかすると、それがもう思い出になってしまったからかもしれないが、強く強くそう感じる。

 いつまでも続いて当たり前な筈の毎日は、もう取り戻せない。

 それがどうしようもなく悲しくて、寂しかった。

 

 こんな世界、何もかもが間違っている。

 

 怒りはなかった。ただ、その理不尽が嫌だった。

 本当ならば、過去に遡って変えられるように努力したい。それが出来るならば、喜んでそうする。

 けれど、それは出来ない。だから未来を変えるしかない。

 そういう風に決定しまうのは心が痛んだ。だって、過去を変えずに未来を変えようとするってことは、そこまでの過去を肯定するということだから。

 如何なる認めがたい苦痛、如何なる認めがたい理不尽を、容認してしまうということだから。

 それでも――前に進むと決めた。今から辿り着ける一番の幸せが未来にあるというのなら、そちらに向けて歩くべきだと、そう思った。

 ……受け売りではあるが。

 

「……ふふ。おはようございます」

 

 起きたことを悟ったのか、身を寄せてくるかわいい子たちを順番に撫でる。

 みんな、そういう順番なんて気にしていないから、“自分も自分も”と他の子たちを押し退けようとしてくるし、撫で終わった子も“もっともっと”とせがんでくる。

 こういう仕草の一つ一つがかわいらしい。

 手が三つも四つもあればこうしたいじらしい様子を見られなくなると考えると、手が二つっていうのは絶妙だ。

 とはいえ……数えきれないほどの子たちをみんな撫でていればいつまで経っても終わらない。

 心を鬼にして、“ここまで”と宣言すると、みんな落胆してしまう。……駄目だ、駄目。この子たちの誘惑を真に受けていたら、手の感覚がなくなるまで動かし続けなければならなくなる。

 名残惜しさを感じつつも床に下りて、歩き始める。

 諦められないのか、くっついてくる子たちをずるずると引きずりつつ。

 やろうと思えば無理やり動きを封じられるだろうに、それをしないやさしい子たちなのだ。

 

 根負けしてもいいけれど、かといって日課を怠るわけにはいかない。

 継続は力なり……ってよく聞かされていたし。本人がそうしていたかは怪しいが。

 

 別に長い距離を歩くわけではない。

 同じ家の、部屋から部屋へと移動するくらいの、ちょっとした距離。

 近付けばかわいい子たちはその入り口を悟らせまいと隠そうとする。

 それも、こちらを認識するまで。危険がないと分かれば、みんなは道を開けてくれる。

 

「ありがとう」

 

 やさしい子たちにお礼を言って、その先へ。しがみ付いていた子たちも、その奥までは付いてこない。

 本来は……自分たちを含めて誰も入ってはいけないところだって、分かっているから。

 もしかすると、そもそも、入ることができないのかもしれないけど。

 

 だから、本当はこうして踏み入ることも、やって良いのか怪しいところ。

 向こうはきっと知らないから、入るたびにちょっとだけ罪悪感を覚える。

 やってはいけないこと。そんな自覚からの自制と、その先にあるものへの誘惑。その二つを秤にかけて、あっという間に後者が勝つ。

 これも、いつも通りのことだ。相変わらず、自分を抑える心の弱さに痛みを感じつつ、しかし無遠慮にその聖域の中心へと歩む。

 

 ……そこに、姿があることを、果たしてこの子は自覚しているのかどうか。

 真っ白な寝台に横たわる、大切なひとは、穏やかに寝息を立てていた。

 

「……よかった。ちゃんと、眠れているみたい」

 

 ここに姿があるのは、彼女が眠っている時だけ。

 つまり、精神的に隙のある状態。だれが何をしても、感知できない状態。

 彼女がここまで心を落ち着けられていることに安堵する。

 それは紛れもなく、かれらが至った成果であり、成長の証ということだから。

 

 ほんの少し前まで、ひどくこの場所は不安定だった。

 ここに辿り着くどころか、踏み入ることすらできないくらい。

 まともに休めもしないほど、憔悴しきっていた彼女。

 それがここまで、隙を見せられるほどに安心できているのは――ユーリが頑張ったから。

 

「でも……わたしにも見せてくれていいんじゃないですか? ――リッカ」

 

 外で実際になにが起きているか、わたしには分からない。

 精々、まだ二人の大切な幼馴染が死んでいないということを確信できるくらい。

 勇者として選ばれたユーリ。それに付いていったリッカ。

 二人の旅路はまだ続いている。どこまで進んだかはともかく、生きてはいる。

 その事実はわたしを安心させて、同時に不安と不満も抱かせる。

 ユーリがどんな風に成長したのかを知りたい。

 あれだけ……あれだけボロボロだったリッカが、ここまで穏やかに休めるようになるほど、今のユーリはリッカの支えになれている。

 

 どのくらい強くなっただろう。

 どのくらい頼れるようになっただろう。

 

 魔族といえば、わたしくらいしか知らなかったユーリが、勇者として立派に成長する。

 それは……ちょっと想像できない。そういう風に、育ちかけた“いつか”があると分かっていても――やっぱり無理。

 だって、ユーリだ。わたしとリッカに振り回されるばかりだった、あの優しいユーリが、試練を成し遂げて勇者として成長するって。

 ユーリが勇者として選ばれる前の日のわたしが知ったら、センスの良すぎるジョークとして受け取って、きっと笑い死ぬ。結構自信がある。

 “ちょっとだけ”過激な未来設計を語っただけで逃げ出すユーリが……いや、あの時はリッカも逃げたっけ。

 ……そうなるきっかけがあったということだろうか。わたしが、リッカの真実を知ったように、ユーリも知ったのかもしれない。

 それで、ユーリがリッカの歩んできた道のりを、そして、いまやっていることを受け入れたとすれば、もしかすると――。

 

「……ふふっ」

 

 ユーリとリッカを送り出すと決意した時、すぐに逃げ帰ってきてくれればという気持ちだった。

 それを責めることなんてない。むしろ笑って迎えていただろう。

 結果として、わたしも旅に同行するような形になっていて――そして、その旅はまだ続いている。

 至るのだろうか、魔王さまに。

 千年続いたその支配を、ユーリたちが終わらせるのだろうか。

 

 うん……そうなってほしい。そうなってくれなければ、困る。

 リッカはここまで苦しんだ。

 そんなリッカが、ようやく希望を持つことができた。

 なら、それは報われてほしい。

 

「……」

 

 いつか、わたしはリッカの努力を無に帰したらしい。

 現実感はない。それを知った今も、嘘だって叫びたくなる。

 ……あれは違う。わたしの喜びとは、また違う。

 わたしはユーリも、リッカも好きだ。二人はわたしにとって、かけがえのない存在だ。

 当然、ユーリの精で子を成したい。当然、リッカの胎で育てたい。

 いつか――すべてが終わって、ユーリとリッカが平穏を手に入れて、わたしもここから出してもらって。

 そうしたら、のんびりとそんな風に過ごしたい。

 決して――決して、無理やりなんて、わたしの望む交わりじゃない。

 

 わたしに、“そういう”欲があるのは、自覚している。

 こうして、リッカの寝顔を見ているだけで、気持ちが昂る。

 その肢体に蔦を絡めて、わたしの魔力の乗った花粉を口から流し込んで、じんわりと、じっとりと、リッカをわたしの虜にしたい。

 

「ん……ふ、ぅ……リッカ――リッカ……っ」

 

 それは、出来ない。するわけにはいかない。リッカは、そんなことを望まない。

 こうしてリッカの世界で、眠るリッカに触れる。リッカに口付ける。

 これがわたしだけの特権であるならば、今はそれで満たされる。

 もしもユーリがこの場所に来ることが出来れば、分けてあげてもいいけれど。

 

 リッカはわたしに、この空間での役割を任せてくれた。

 復讐のために用意した、かわいい子たちの、“母”としての役割。

 最初は驚いた。けれど――わたしを信じて、リッカがこれを任せてくれたことを知ってからは……うん、幸せだ。

 かわいい子たちが、リッカの力になる。

 リッカの世界が、わたしのかわいい子たちで満ちていく。

 不条理に戦う二人と、同じ気持ちでいたい。肩を並べて戦いたい。それが許されないのなら――わたしはわたしなりの幸せで、リッカを満たす。

 

 勇気と対をなす、死を超える力が、生まれつきわたしにはある。

 自覚の仕方としては間違いだろう。“そういう力がある”ことを、カンニングして知っただけだから。

 リッカにも小さくともるこの力は、きっと近い未来、ユーリとリッカに必要になる。

 正確には……この力もちゃんと使えるようになれば、きっと魔王さまさえ……。

 

「……負けちゃ駄目ですよ、ユーリ。ちゃんとリッカを、守ってください。折れちゃ駄目ですよ、リッカ。あと少しだけ、ユーリに支えられて、歩いてください」

 

 本当なら、やっぱりリッカに無理をさせたくないし、ユーリにも勇者であってほしくはない。

 だが、二人が不条理に抗って、ハッピーエンドを目指すというのなら、わたしは支え続ける。

 

 ――なんで、どうして。

 

 この空間に閉じ込められて最初に、わたしはリッカの苦しみを知った。

 この空間に満ちていた怨嗟を、わたしは全部受け止めて、呑み込んだ。この空間から消し去った。

 あとから来るだれかに、リッカの苦痛を背負わせはしない。

 リッカの苦しみを知って、リッカに共感して、リッカのためにリッカを愛する。

 そんな気持ちでいるのは、この空間にはわたしだけでいい。

 ユーリがいて、わたしがいる。リッカには、それで十分な筈だ。……ラフィーナとか、ナディアなら、許してあげなくもない。

 

 ともかくわたしは、ここでユーリを想い、リッカを愛する。

 すべてが終わるその日に向けて、リッカの手を引くユーリの背中を押す。

 

 ……うん。

 今日の“リッカ分”の補給は、こんなところ。あまりやり過ぎると、リッカも起きてしまう。

 せっかくの安眠を邪魔するのは望むところじゃない。

 わたしも、求められた役割に戻ろう。

 かわいい子たちは、扉の外で待っているだろう。おりこうにしていたなら、ちゃんとご褒美をあげなくちゃ。

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