凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
ここまで、正体に至れる情報など碌に手に入らなかった。
その姿を見るのは、四つの試練すべてを終えてからだと、そう思っていた。
――今、目の前にいる無機質な人形が、本当に魔王なのだと決まったわけではないと、自分の確信を誤魔化そうとする。
こんなところに、魔王がいる筈ない。
強さが判然としないことから、“勝てない”という予感は四天王に感じるものの方がずっと大きい。
きっとそれは、魔王を自称しているだけの存在だと。
そんな誤魔化しは、抱いた傍から消えていく。
現実逃避だと、無情に告げられる。
僕の力ではない、もっと根底の
『それでいい』
満足するように、人形は頷いた。
……“見せかけ”だ。それらしく振る舞う“満足ごっこ”に過ぎない。
だから不気味だった。その存在が傍に侍らせた
感情に向けて手を伸ばしたつながりは、掴めるものもなく虚空を彷徨う。その先に何かがあるという感覚さえない。
無意識下で抱いていた、絶対的な存在だというイメージ。
本物を見てようやく、それはどこか間違いだったと気付いた。
『
「……そ……その……」
――駄目だ。震えていてはいけない。
この勇気は確たるものでなければ。
ここにいるのは、僕だけではない。僕はリッカの命も預かっているのだから。
痛いほどに唇を噛んで、今、僕がここにいることを強く認識する。
「――、
「口を慎め、勇者。今のお前に、それを問う権利は」
『良い』
熱くも、冷えた頭で、言葉を紡ぐ。
問いを投げれば、最初に反応したのは混沌を具現化したような黒騎士だった。
その声を遮ったのは、他でもない魔王自身。
挙動の一つ一つが不気味だった。だが、少しでも、魔王自身から正しい情報を得られるならばと、逃げ出したくなる足を繋ぎ止める。
『当然の疑問だ。勇者であるならば、
「――」
「王命ならば」
王の言葉に、オリヴィエは短く返し、エコーと呼ばれた黒騎士は、何も言わずに従った。
『
「端末……?」
魔王の言葉の選択は、一つ一つに“生命らしさ”を感じない。
やはりそれは、自己のない人形たちによく似ている気がした。
与えられた選択肢の中から、最もその場で適したものを、出力しているだけのような――。
『たとえば、キミたちがこの端末を破壊したとて、
「……その、柱を壊せば……」
『
……僕たちに情報を明け渡すことを、躊躇していないのだろうか。
その端末とやらが魔王の本体ではないとしても、言葉から察するに柱は重要なもの。
しかし、魔王にも、二人の騎士からも、断固として柱を守ろうという意思は見られない。
――混乱が消えない自分の中で、彼らから掴めたものは一つだけ。
“壊せるものなら”という、オリヴィエの挑発の意思だった。
まだ、問えば解答が返ってくる。そんな気がした。
ならば次に聞くべきことは何か、頭の中で考える。
そして、それよりも先に――リッカの意思が、前に一歩踏み出した。
「……わた、しに……」
躊躇いがあった。恐怖があった。
それでも知りたい、聞かなければならないと、リッカは言葉を紡ぐ。
……そんな姿を感じて、僕が弱さを見せていられようか。
ここでリッカを支えられなければ、“リッカのための勇者”だなんて名乗れない。
リッカが前に進もうというなら、その手を取る。心配いらない、僕がいると、ほんの少しでも勇気付ける。
――僕は、リッカが進むための希望になれるのだと、自分に言い聞かせる。
「私に……繰り返しを、させていたのは――」
『
――そして。
無機質に“ここまで”を導く一役を担ったことを、魔王は認めた。
『この機能に耐え得る器は、はじめからキミに備わっていた。キミのはじまりは“無”だった。
「……!」
『キミは
「っ、な――」
「――僕を、配置……?」
やはりその物言いには、違和感がある。
だって……その言葉をそのまま捉えるのであれば、僕が勇者だと定められたのは、あの瞬間ではないような。
――まるで、生まれた時からそれが決定されていたようではないか。
『
「な、にを……それじゃ、ゆ、ユーリが……勇者に、なったのは……」
『キミのせいではない。勇者ははじめから勇者なのだ。自覚と、通達が誕生より後にあるに過ぎない。しかしキミの懸念が、此度の勇者が“キミの傍の人間となった”ことに関するものであれば、
「――――――――」
……自分の出自に、疑問を持ったことなんてなかった。
お父さん、お母さん。それがどうして、僕にはいないのかって、考えたことはあったけれど。
深い悩みになることはなかった。何故って……リッカもまた、そうだったから。
“そんなに悩むようなことじゃない”――リッカはとっくに割り切っていた。それが当たり前のことなんだろうって、まるで気にしていなかった。
村のみんなが家族みたいなものだったし、誰よりも親しい大人といえば、おじさんとおばさんがいたから。
僕も、リッカも、特に理由は気にしないけれど、お父さんとお母さんがいない。
勇者となった頃には、もうそれは僕の中で、疑問ですらなかった。
そんな、僕たちの当たり前についての答え合わせは、まったく想像していなかった場所で行われた。
――では、それで強く動揺したか、といえば。
……否だ。そうだったのかという不気味な納得はあったが、それだけだった。
当たり前は揺らぐことなく、むしろ、魔王によって補強されてしまった。
ただ……リッカは、今の答えに違う感情を抱いた。存在意義が突き動かされるほどの戦慄だった。
「わ……私が、巻き込んだ……」
――違う。リッカが僕を巻き込んだのではない。
僕がその“勇者”を、僕だけで完結できなかった。リッカも、カルラも、ラフィーナも、ナディアも、僕が巻き込んだ。
だけどそんな言葉が、リッカの気休めにならないことなんて、分かり切っている。
だから、呑み込む。
もっとリッカを強く安心させるための選択は、他にあるはず。
「……どうしてリッカを、いつまでも、いつまでも……苦しめようと思ったの?」
今度の声の震えは、先程までと意味が違った。
『
そこで一度、魔王は言葉を区切る。
まるで、答えを選んでいるかのような仕草に――僕は今まで抱いたことがないほどの不快感を持った。
『――“苦痛を選んだのは、自分自身だ”。あえてそう言えば、キミたちはより著しい成果を出すのではないかな』
見え透いた挑発だったからだろうか。
それとも結局、魔王が何を言おうとも、僕の心持ちは既に決まっていたからだろうか。
少なくとも、その時点で、それまで以上に強く何かを思ったということはなかった。
揺らぐリッカを、今にも崩れ落ちようとするリッカを、二人で一つの存在として支えることで、僕は必死だった。
『“5039”。それがキミというサンプルが歩んだ末路の総計だ。今のキミは、“5040”の道中にいる』
だから――そのどこまでも生々しい“回数”は、リッカだけでなく僕にとっても、受け入れがたい不意打ちだった。
「――――……ご、せ、ん……?」
『キミに残るのは、キミにとってありふれた末路。ただの一度しか辿り着かない、尊き可能性はすべて
――何百回もの、途方もない繰り返し。
リッカにとっての、希望に向けてもがく旅路。
魔王の言葉は決定的だった。
――リッカが、それまでの“すべて”だと思ってきた“いつか”を、魔王は己の中にある厳然たる事実でもって、いとも簡単に“一端”へと変えてみせた。
『逃避にしろ、諦念にしろ、人間には普遍的な幸福に至る結末があるものだと、そう
――統計から結論しよう。
――キミに、
パキリと何かが罅割れた音が、はっきり聞こえた。
直後に、弾かれるような衝撃と共に、魔法が解ける。
「ぁ」
「リッカ――!」
――魔剣もまた、手から零れ落ちて、消えていく。
リッカから離れようとした体を踏ん張って、倒れかけたリッカを支える。
見開かれて揺らぐ瞳と、視線を交わしたのは一瞬だけ。
『……いけないな。どうしても
気付けば、魔王は、そして二人の騎士は、僕たちを通り過ぎて階段を下っていた。
無機質な声は遠のいていく。この場で僕たちに手を掛けるつもりは、ないようだった。
『“最後の結末”は価値あるものであることを、
一瞬だけ、強い風が吹いた。
砂埃を巻き上げた風は離れていく三つの人影をあっという間に消し去ってしまう。
残ったのは僕たちだけ。魔法が解けて、なすすべもなかった僕たちは、見逃された。
……リッカを支えて、引っ張ってみせると意気込んだ怒りはぶつける相手もおらず、胸の真ん中で中途半端に燻る。
あの時、ネシュアの地で別れを告げた筈の無力感は、久しぶりに僕を苛んでいた。
【リッカ】
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魔窟での■■END―― X周目。
セイレーンの■■■END――XXXX周目。
■■■■■■における■■■END―― X周目。
とある■■■の■■■END――XXXX周目。
運命から逃避すること、諦めることによる消極的ハッピーエンド――記録なし。