凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「案内……?」
「はい。あなたたちはここに、迷宮を求めてきたのでしょう?」
ベガおね……もとい、ベガと名乗った魔族の知識は、偏っているらしい。
勇者については、はっきりと知らない。少なくとも――勇者の証を感じ取ることはできない。
しかし、この場所……迷宮やこの鍵、アリスアドラの存在については、知っている様子が見られた。
「あなたたちの求めるこの空間の顔……回顧の迷宮。他の二種の迷宮と同様、ここは己の強さを証明する場となっています」
「……ここにも、何かがあるの? 聖剣みたいな――魔王を倒せるほどの武器が」
「……魔王……はい。遥かな苦難を超え、誘惑に囚われず、そして……この世界の主にあなたたちが認められれば、旅路に相応しき力を得られるでしょう」
主……彼女とは別に、誰かがいるのだろう。
周囲に他の気配はない。どこまでも静かな、本に満ちた部屋だった。
「この先に進むというならば、私が随行しましょう。少なくとも、この迷宮の外見にだけは、迷わされぬように」
「……見た目だけじゃない、ってことだよね」
「これはあくまで図書館としての姿。あなたたちを真に迷わす迷宮とは、また違うものです」
随行すると聞き、リッカがより警戒を強める。
今のところの脅威はないものの、彼女が何者か……そもそも、ここがどういった迷宮なのかはまだ不明だ。
外見があまりに独特で気が削がれるが、油断するわけにはいかない。
「準備はよろしいですか? 戻ろうと思えば戻れますが、また一からになることをお忘れなく」
「うん――構わないよ。行こう、リッカ」
「ん……」
「では、こちらへ」
戻れるのか、と意外に思った。
また一からというのは当然だが、一度入れば踏破するまで帰れない――そういう認識だった。
だからといって、気軽になるというわけではないが、なおさらに不思議だ。
逃げ道の用意された、魔王の迷宮。大部屋の奥の通路に向けて、ベガは先導するように歩き始めた。
「道中、私はあなたたちを支える義務があります。求めれば傷を癒し、疑問にも適宜答えます。ですが、試練そのものには関わりません。最奥に辿り着くまで、如何な試練も私を認識しませんので、盾にしようなどと考えないよう」
「……そんなこと、するつもりはなかったけど」
「そうですか」
……当然ながら、安全な道中ではないようだ。
傷を負えば癒す。そこまで考慮されている点は余計に怪しいが……“戦うこと”がこの迷宮の本題ではないのだろうか。
部屋の向こうは、ひたすら続くと錯覚する、長く幅広な通路だった。
右を見ても、左を見ても、無数の本。異常に高い天井までの本棚に、ぎっしりと埋め尽くされたそれらは言いようのない気持ち悪さを抱かせる。
背表紙に書かれているのは読めない字。
意味があるのかどうかさえ不明瞭なそれは、本のタイトルのようだが……。
「……辺りの本は、一体なんなの?」
「この世界の主が綴った記憶。主にとっての、かつての全てがここにあります」
「全部が……ここの主の……? さっき、邪悪な本だって言っていたけど」
「……忘れろってのに」
どうやら、彼女の素はこちららしい。
吐き捨てるような呟きを、ベガは咳払いで誤魔化した。
「……本棚に収まっているものは、あなたたちに関係のないもの。自分で取り出し、開いたりしなければ無害でしょう」
――逆に、僕たちにとって害になる本もあるということか。
出来るだけ壁に近付かないように、通路の真ん中を歩く。
どうやら、ソファに寝そべって雑に開いて読むような書物では、決してないらしい。
「この迷宮に踏み込んだものを試す苦難は、個々によって異なります。時は狂わず、力を取り上げられることもない。ただ、現在をもって、現在が正しいことを証明するのみ」
どうにも微妙な気持ちになりつつも、ベガに続いていれば、通路の途中に何かが見えてくる。
床に置かれた、一冊の本。
ベガの言葉に則るならば――それは。
「……一冊目」
短く、一言。それだけで、その本が僕たちに害あるものだと悟るのには十分だった。
ベガの言葉は合図のようだった。一瞬震えた本が、手に取る者もいないというのに浮き上がり、開かれる。
「……!」
そして本が泡のように弾けたかと思えば、中から飛び出してくる小さな姿。
入った時から魔法は実行している。戦闘準備は万全。
だから、何が来ても――そんな覚悟が滑稽だとでも言うように、その二つの羽ばたきは、か弱かった。
「――――」
「フェアリー……?」
影のように、どこかはっきりとはしない気配。
しかし姿かたちは確かにフェアリー。旅に出て間もない頃に出会った、あの二人の妖精だった。
無邪気な笑顔はそのままではあるものの、伝わってくる感情はない。
それが、“作り物”であることは明らかだ。
「リッカ、これって……」
「――――」
「……リッカ?」
倒せばいいのだろうか。魔法的な仕掛けがあるのであれば、リッカが対策を見出すかもしれない。
近付いてくるフェアリーが何をしても問題ないよう、周囲に炎を巡らせようとして――リッカの異変に気付いた。
反応が返ってこない。目の前にあるものも見えていないように、呆然と――停止している。
……いつもと違う。
恐怖や憎悪すら伝わってこない、しかし、まるで首を絞められているかのような息苦しさと激しい動悸、数秒後には狂ってしまうのではというほどの混乱が、リッカに満ちていく。
「ッ!」
その異変の原因が、出現したフェアリーたちにあると判断した直後、衝動的に体が動いた。
放った炎で、迫るフェアリーを拒絶する。
今の力ならば、苦戦することもない。一瞬のうちに、二つの小さな姿は呑まれて消えた。
「リッカ――リッカっ! しっかりして、リッカ!」
「――――っ、ユーリ……!?」
それから再度呼び掛ければ、眠りから覚めたように、リッカが震える声を零した。
……あの時のように、フェアリーたちに絡まれたことによる恐怖とは違う。自分に何が起きたのかという困惑が、今のリッカにはあった。
「なるほど、こういう。一冊目の試練は終わったようですね」
先程開いた本は、もうそこにはない。
問題ないとベガは頷いた。状況を把握しているのは、彼女だけだった。
「っ……リッカに何が!?」
「……先程の、この迷宮の説明を訂正します。多少、時は狂うようですね。人によると、なるほど」
ベガは答えず、感心したような素振りで訂正する。
時が狂う……少なくとも、リッカは今の短い時間、確かに外装を維持して、ここにいた筈だ。
それとはまた別の何かが……?
「……ユーリ、大、丈夫。まだ、行ける」
「リッカ……教えて、何があったの!?」
「……フェアリーと、会った時のこと……思い出した、だけ……ごめん、心配、かけて」
荒い呼吸の合間に言葉を紡ぐリッカ。
……嘘と真実、半々。今の説明は、正直なものではなかった。
リッカにはまだ混乱が見られる。今起きたことを、自分でも理解し切れていないように。
今すぐ本当のことを知りたい。リッカに整理させてからでいい。二つの迷いは、リッカに余計な負担を掛けたくない気持ちが勝った。
「……少し休む? 落ち着いたら、話を聞かせて」
「っ……ううん……けど……今の、なんで……?」
少しでも休ませようと、魔法の解除を試みて――リッカに小さく反対される。
明らかに無理をしているが、このままでいる方がまだいいという主張だった。
「片方は、一冊目で随分と消耗しているようですが。戻りますか?」
「……うるさい。この、くらい……」
そんな中でも、リッカはベガを拒絶する。
まだ、リッカには進む意思がある。それならば、魔法はこのままでいいし、進んでも見せる。
出来る限り――リッカが秘めたものを、無理やり覗きたくはない。
それよりも、自分から話してくれた方が、ずっと気持ちは楽になるだろうから。
「では、進みますか?」
「……進んで、ユーリ。……も、もう少し、落ち着いたら――話せると思うから」
「……うん」
その、リッカの様子は、不安で……不満でもあった。
またリッカは強がろうとする。僕がそれを言葉にしなかったのは、リッカが平常心を保とうと、僕を支えにしてくれているから。
……大丈夫。リッカには、迷わせない。
何かが分からなくなって、足が止まったならば、僕が引っ張ればいい。
この先に何があっても――リッカが何かを感じる前に突破するだけの話。
自分でも、無茶だろうと思いながらも、それが今のリッカに僕ができる最大限の助けだった。
「……今のが、迷宮の試練?」
「その一つの形です。あなたたちへの苦難として設定されたものでしょう。そうでないものも、点在していますが」
「奥に辿り着くまでに、どのくらいあるの?」
「あなたたちが振り返るべき道の、長さ次第です」
……先のフェアリーは、“本物”ではないながらも、あの二人にそっくりだった。
僕たちに対する苦難として設定された――つまり、別の誰かが踏み入った時には、この場でフェアリーが襲ってくる訳ではないのだろう。
振り返るべき道。言葉通りに受け取るならば、ここから先に立ちはだかるのは。
「二冊目」
前方に見えてきた、やはり転がされていた本が弾ける。
その勢いのままに飛び出してきたのは、フェアリーのような小さなものではない人型。
大半を腐らせながらも、辛うじてその形を保っている“成れの果て”。
ネシュア跡地で挑んだオドマオズマの試練。その脅威の一つとなったゾンビだ。
「単体なら……!」
「――――」
あの時、このゾンビやスケルトンが試練の妨害となっていたのは、大挙して押し寄せてきていたから。
それが一人であるならば、決して対処の難しい相手ではない。
迫ってくるより先に炎を放つ。防御力も乏しい腐肉の体は、瞬く間に燃えていく。
恐らく、容易いのは序盤であるから。
徐々に現れる魔族も、強力なものになっていくのだろう。
そこから先は、文字通りの迷宮の如く。
本棚を並べて作られた格子のような通路を、ベガは迷うことなく先導していく。
「三冊目」
――床を這いずって、ゆっくりと近付いてくる粘体。
スライムだ。思い出されるのは、リッカの意向で挑むことになった『迷い池』と呼ばれる巨大スライム。
『オズマフューリー』の力で強引に撃破したあの個体は、その後リッカの使い魔として、『リヴィアフューリー』に転用された。
強固な防御力を有するあの姿を、リッカを守るためにとよく使っていた。
今の僕たちに至る過程に欠かせなかった力と言える。
ただ、目の前に姿を見せたのは、『迷い池』のような巨体ではない。
さほど多くの水を取り込んではいない、小型と言える個体だ。
……僕たちが戦ったスライムは『迷い池』だけだったと、記憶している。
小型のスライムは、川辺で見かけることはあっても、積極的に近付いたりしなければ敵意も見せてこない種であるために、戦ったことはなかったはず。
「――――、っぁ」
奇妙に思いながらも、撃破する。
一度纏わり付かれれば厄介な種ではあるが、スライムは動きが鈍い。
そして、統率していた液体すべてをどうにかするのは難しいが、核さえ撃ち抜いてしまえばスライムとして成立しない。
対処法さえ分かっていれば、あとは落ち着いて、迅速にそれを実行するのみ。
問題ない。この程度でリッカを危険に晒すわけにはいかない――
「ぅ、あ……ごめ、ユーリ、いっかい、とまって」
「――リッ……」
その、リッカの様子が、“支えて進む”ことすらままならないものになったのは、スライムを倒して、次に進もうとした時のこと。
絞り出すような、震えた声。恐怖が隠していられないほど、耐えられないほどに大きくなる。
次の瞬間、魔法が解除され、弾けるように投げ出される体。
きっとリッカも同じだと、その体を支えようとして、
「ッ――ぐっ、う、ぇ……!」
その場に蹲り、咳混じりに嘔吐するリッカを見て、それが“ただの”恐怖ではないと悟る。
「リッカ……? リッカ! どうしたの!?」
「ぃ……や……! う、ぅあ……っ!」
――もう二度と、こんなこと、ないはずだった。
信じるものがあるからこそ、安心感で誤魔化せていた絶望。
――――
「大層な道のりだったようですね。迷宮がこういう変貌をするとは、意外です。
過去の回想。現在の証明。
その道のりは、ただ戦うだけではなく――リッカに“もう一回ずつ”を、強要するものだった。
【回顧の迷宮】
砂漠地帯ホロゥの中心に存在する、第三の迷宮。
入ることが出来るのは勇者に限らないが、専用の鍵が必要となる。
内部は「挑戦者の現在の証明」を試すつくりになっており、過去の記録から再現された障害を回想する。
+
ゲーム的に言えば、過去の戦闘をもとにしたイベント戦が道中にばら撒かれたダンジョン。
敵は再現であり本物の魔族と戦うわけではない。各所には試練とは関係のない宝箱やトラップなんかも存在する。
装備やレベルは現在のまま、過去に戦った敵をひたすら倒していく。案内者に頼めば戦闘ごとに回復もできる。
ただし、戦闘はソロで行われる。仲間の助けは得られず、なんらかのイベントにより突破ないし戦闘回避を可能とした強敵とも純粋な実力勝負となる。
複数人で挑戦する場合、各回想は個々で発生し、それぞれの完了時点で合流する。そのため、体感時間や戦闘内容が同じとは限らない。
また――どうあれ“乗り越えられるか”が回想の要であり、たとえ敗北してもその回想の終端まで耐え抜くことが出来れば、試練の突破は可能であるとか。
【ユーリ】
「つながりを自身の力にする」性質により、U-リッカを試練に使用する反則技が持ち味。最適な武器も装備可能。
対応力は高いが「自身の旅よりも過去の旅路」を認識しているために、初見の敵まで湧いてくるバグが発生した。
リッカの状態が自身の戦闘能力に影響しやすいことが欠点といえるか。
難易度はハード。
【リッカ】
個人での戦闘能力は貧弱。かつ、魔族相手のデメリット系パッシブが山ほどくっついている。
キャラの性質がユーリの支援に特化しており、まともに立ち回ることも難しい。
ただし、“戦闘敗北のその後”と、“諦めないその先”を認識していれば、進むことは決して不可能ではないぞ!
“諦めないその先”にさえ到達すれば、“戦闘敗北のその後”にて受けた傷はリセットされるから安心して負けよう!
難易度はナイトメア。
【クイール】
ソロプレイで問題なく立ち回れる優秀なステータス、そして聖剣による自己強化が光る。
どんな強敵でも突破し得る隙のなさと、精神ダメージが戦闘能力に影響を与えにくい性質により迷宮攻略を楽しみやすい。
旅の期間が膨大なため、試練の数も比例して多くなる。こまめな休憩を挟みつつ気長に挑もう!
難易度はノーマル。