凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「……ユーリ。ユーリ、起きて」
「ん……」
体を揺すられ、意識が浮き上がる。
目を開ければそこには真っ白な幼馴染の顔があった。
表情には、強い警戒。そう判断すれば、眠気はすぐに飛んでいった。
「――リッカ、どうしたの?」
「魔族。こっちに気付いてる」
既に体中の術式に魔力を通し、僕さえ起きればいつでも対処可能な状態のリッカは、テントの隙間から外を覗きながら言う。
魔除けの効果を持つ魔道具――これは簡易的な結界で、内部の様子が外に伝わらなくなる効果があるらしい。
けれど、万能ではない。
偶然足を踏み入れてしまえば当然気付くし、強い力を持った魔族なら中の気配も悟れるとか。
……何故そこまで、リッカは知っていたんだろう。この魔道具に込められた魔法をもう解析したのだろうか。
いや、疑問はともかく、今は外の魔族だ。
僕たちに気付いているというのなら、それだけ強力な魔族がいるということ。
まだ時刻は深夜。ゴブリンやスライムと比べても危険度の高いゴーストが出現する時間帯だ。
一つ深呼吸。戦うという気持ちを全体に巡らせる。
「……いける?」
「……いける。やろう、リッカ」
――トランスコード、U-リッカ。
リッカの魔法による鎧を身に纏い、テントの外へと飛び出す。
そこからすぐに戦闘に突入するつもりで――
「……おや。意外と早い目覚め……えぇ……?」
そう広くない結界のすぐ外にいた人型の魔族に、露骨に引かれた。
目を閉じているにもかかわらず、こちらを視認しているかの様子の男性。
耳は尖り、長い金髪を後ろで一つに結び、腰に一本の剣を携えた魔族は確かに、僕たちに気付いている。
「いや、なん……あー……」
「……?」
「……いえ。なんというか。奇抜な鎧だ、と思いまして。ここ数世代の勇者の姿は見てきましたが、本当に」
柔らかな笑みを引き攣らせながら、その魔族の男性は僕たちから一歩離れる。
流石に失礼ではないだろうか。確かに戦い方としては特殊かもしれないが、黒くてかっこいいと思う。
リッカは僕が戦いやすいようにする魔法と言っていたし、もしかすると相手に違う印象を抱かせる魔法でも掛かっているのかもしれない。
「こほん……戦闘態勢を整えていただくのは結構ですが、警戒すべきは私ではなくあちらかと。あれにも気付かれていますよ」
冷や汗を流しつつも落ち着きを取り戻した男性が指さした先。
そこにいた――否、“あった”のは、辛うじて人型を保った白い靄であった。
「あれは――」
「『残響』。最近この辺りに出没しているレイスです」
それでも成り立っている姿をよく見てみれば、失敗した木彫りの人形のような。
モデルが誰だったのかも分からないくらいボロボロになってしまった、残骸と呼んでも過言ではない代物。
それが化けて出たかのような霊体は、こちらを見ていた――少なくとも、顔に見える部分はこちらを向いていた。
『残響』という名は、イネアの町の教会で聞いた。
人間、魔族問わず襲い掛かる凶悪なレイス。
リッカも触れない方が良い気がすると言っていた個体であった。
「勇者であれば、教会にて話は聞きましたかな? とにかく凶暴でしてね。イネアの町に用向きのあった私に討伐せよとの命が下ったわけです」
「……魔王軍?」
「はい。四天王が一角、水のリーテリヴィア様に仕えております、オリヴィエと申します。見ての通り、エルフです」
オリヴィエと名乗った男性の種族は、僕でさえ知っていた。
エルフ。元は人里と隔絶した森の奥に隠れ住んでいた、自然との共存種。
高い魔力を持つ一方、体の弱い個体が多いと言うが、それはあくまで今も自然と共に生きる個体であればの話。
小さな村にさえ名の轟くエルフの騎士。四天王の一人とその配下はエルフの常識など通用しない。
彼がその一人だというのなら、携えた剣は決して飾りではないのだろう……僕と違って。
「教会では挑戦を促していますが、あれは駆け出しの勇者には厳しいでしょう。急いでことを済ませようとしたら、当の個体は既にあなたたちを捕捉しているわ、あなたたちは起きてこないわ。……いや、うん。焦りました。流石にあなたたちを守る方が優先でしょうって」
「……」
――敵である筈だ。
だが、彼はこちらに一切敵意を向けない。僕もどちらかといえば困惑の方が強いし、この場の敵意はリッカが彼とレイスに一方的にぶつけているものだけ。
不自然なまでに、彼は僕たちに友好的だった。
「信じられませんか? であれば、それでよろしい。目が覚めた以上、自衛はできますね? レイスのような精神体相手では心を固めることが肝要です。それを意識した上で、この場に残っているように」
彼はそう、僕に助言をして、剣を抜く。
相変わらず目を閉じたまま、それでいて『残響』を確かに見据えたように、雰囲気を変貌させる。
「剣技、長じれば魂をも断つ。我が剣が、勇者の成長に繋がらんことを願います」
それが本心かどうかも分からないままに、僕たちに迫らんとしていた危機の“除去作業”は始まってしまった。
2385:転生領域の名無しさん
剣技、長じれば魂をも断つ。我が剣が、勇者の成長に繋がらんことを願います。
2386:転生領域の名無しさん
キリッ
2387:転生領域の名無しさん
だっておwwwwwwwww
2388:転生領域の名無しさん
なんか懐かしいなそのノリ
2389:転生領域の名無しさん
久しぶりに見たわ。
2390:転生領域の名無しさん
唐突に配信始まったと思ったらえらく胡散臭い奴出てきて草
2391:転生領域の名無しさん
外に妙な気配を感じたのでとりあえず配信開始するイッチ
2392:転生領域の名無しさん
やっぱりイッチ割と余裕あるだろ
2393:転生領域の名無しさん
この素晴らしい復讐劇を俺たちに知らしめようとしているだけだから
2394:転生領域の名無しさん
多分そんな意図はない。
2395:転生領域の名無しさん
まだ犯される魔族共を晒したいだけって言われた方が納得するわ
2396:転生領域の名無しさん
俺たちは雰囲気でこのイッチの動向を眺めている
2397:転生領域の名無しさん
配信開始した辺りこのエルフも隙あらば苗床行きにしてやろうという気はあると思う
2398:転生領域の名無しさん
その意図は多分ある。
2399:転生領域の名無しさん
今のところ善人やぞ
2400:転生領域の名無しさん
胡散臭いのは分かるがまだギリギリ味方と言えなくもない
2401:転生領域の名無しさん
唐突に出てきて味方面する金髪ロンゲの敬語糸目エルフとか構成する要素が全部アウトなんだよ
2402:転生領域の名無しさん
これで本当に完全な善人だったらマジで全力で土下座してもいい
2403:転生領域の名無しさん
>>2402
心の底から疑っている様子が伝わってきて草
2404:転生領域の名無しさん
胡散臭さの役満なんよ
2405:転生領域の名無しさん
触手アーマーにドン引きしてたしまだ良識がある可能性は消えていない
2406:転生領域の名無しさん
あんなの触手使いでも困惑するわ
2407:転生領域の名無しさん
勇者が寝ていると思っていたテントから触手の巻き付いた黒ずくめの不審者が飛び出してきたんだぞ
誰だって引くだろそんなん
2408:転生領域の名無しさん
何なら良からぬ魔族に寄生されている可能性を疑うまである。
2409:転生領域の名無しさん
もっとタチ悪いものに寄生されてるんだよなぁ
2410:転生領域の名無しさん
あれがいきなり出てきて冷静でいられる奴がいるなら見てみたいわ
2411:転生領域の名無しさん
レイスは無反応っぽいぞ。
2412:転生領域の名無しさん
あのレイスまで反応しだしたらもうギャグだろ。
2413:転生領域の名無しさん
胡散臭いエルフと触手アーマー勇者と作画崩壊レイスしかいない空間がギャグじゃないと?
2414:転生領域の名無しさん
……まあ、うん
2415:転生領域の名無しさん
登場人物の特徴を抜き出すと意味分からんなこの光景
2416:転生領域の名無しさん
つーか結局物理効くの?
2417:転生領域の名無しさん
エルフの言い分からして普通は効かないっぽい
2418:勇者くんカワイイ
魔力の通し方とか戦意の向け方によってはダメージ入るよ
イッチの触手アーマーだと効果薄いね
2419:転生領域の名無しさん
辞書だと思ったら違った
2420:転生領域の名無しさん
それサキュバス封じた禁書の類だよ
2421:転生領域の名無しさん
ネキ何でそんなこと知ってるんだ
2422:勇者くんカワイイ
いやだって精神体の倒し方なんてどの世界も変わらんし……
こっちの世界のサキュバスから見れば、このレイスの方がイッチの世界のサキュバスよりも近い存在なんよ
この手合いを仕留めるなら魔法でちまちま削るか心で斬るかバトルファックって相場が決まってる
2423:転生領域の名無しさん
オチが最悪だった
2424:転生領域の名無しさん
そんな戦闘が罷り通る世界なんて実在したんだ
2425:転生領域の名無しさん
いやでもあのレイスにそれはちょっと要求されるレベルが高すぎるだろ
2426:転生領域の名無しさん
やって見せろよ辞書!
2427:転生領域の名無しさん
何とでもなる筈だ!
2428:転生領域の名無しさん
辞書巻き込まれてて草
2429:転生領域の名無しさん
ワンチャン辞書の性技が凄まじい可能性もある
2430:転生領域の名無しさん
そういう問題じゃない
2431:ふみなぺでぃあ
その手の輩は憑依させてから精神一回壊して揮発させるのが手っ取り早いよ。
2432:転生領域の名無しさん
なにそれこわい
2433:転生領域の名無しさん
本当に何とでもなるやんけ
2434:転生領域の名無しさん
精神ぶっ壊すことが気軽な選択肢に入るんか……?
2435:転生領域の名無しさん
やっぱり転生者なんだよな
2436:転生領域の名無しさん
あ、斬った
2437:転生領域の名無しさん
これが『心で斬る』ってことよ
2438:転生領域の名無しさん
割とスレ民だと出来る奴いそう
2439:転生領域の名無しさん
転生者でも何でもないエルフが成し遂げてるしマウントにもならんぞ
2440:転生領域の名無しさん
割と勇者くんでも何とかなったのでは
2441:転生領域の名無しさん
土壇場で覚醒してくれそう
2442:勇者くんカワイイ
いや無理、あれ今の勇者くんとイッチじゃ勝てんよ
下手に突っ込んでたら即バッドエンドだった
2443:転生領域の名無しさん
なんかネキのキャラが違う
2444:転生領域の名無しさん
お前そんな訳知り顔で語るタイプじゃねえだろ
2445:転生領域の名無しさん
いつも通り勇者くんを愛でていればええんやで
2446:転生領域の名無しさん
キャラ変には遅いぞ。
2447:転生領域の名無しさん
そういうのは辞書の領分だ
2448:勇者くんカワイイ
変身したのに出番なさそうな勇者くん可愛いね!
2449:転生領域の名無しさん
よし、戻ったな
2450:転生領域の名無しさん
戻さないほうが良かったんじゃねえか
2451:転生領域の名無しさん
変身するための魔力無駄になりそう
2452:転生領域の名無しさん
カルラちゃんたちの献身が……
2453:転生領域の名無しさん
そっか、これ代償大きいんだよな
2454:転生領域の名無しさん
オリヴィエさん強くて草
2455:転生領域の名無しさん
剣一本で霊体を圧倒する変人
2456:転生領域の名無しさん
通じてないけどレイス側の攻撃普通に怖いんじゃが
2457:転生領域の名無しさん
レベルの違いを見せつけられるイッチと勇者くん
2458:転生領域の名無しさん
頑張れ、先は長いぞ
2459:転生領域の名無しさん
最悪なのはこのあとこのエルフと戦闘になることだよね
2460:転生領域の名無しさん
戦闘入るかな?
2461:転生領域の名無しさん
ここから戦う流れはまずないやろ
2462:転生領域の名無しさん
もしあったら?
2463:転生領域の名無しさん
まあ次のイッチと勇者くんに期待するしかないかな
2464:転生領域の名無しさん
諦めが早すぎる。
2465:転生領域の名無しさん
迎撃の触手全部ぶった切りながらゆっくり迫ってきそう。
2466:転生領域の名無しさん
普通のRPGなら負けイベでそのままストーリー進行しそうなんだけどなぁ
2467:転生領域の名無しさん
選択肢で戦闘回避できるタイプ
2468:転生領域の名無しさん
そもそもイッチが会ったことある存在かどうか
2469:転生領域の名無しさん
四天王のエルフ騎士がさっき名前出てた奴か?
2470:転生領域の名無しさん
リなんとかさん!
2471:転生領域の名無しさん
その部下の逸話と言えば*1
2472:転生領域の名無しさん
流石に同一人物じゃないやろ
2473:転生領域の名無しさん
まさかな
2474:TS幼馴染系魔法使い
そのまさかよ。
2475:転生領域の名無しさん
草
2476:転生領域の名無しさん
やっぱり信用できないタイプじゃねーか!
2477:転生領域の名無しさん
胡散臭い金髪ロンゲの敬語糸目エルフなんて最初から信用ゼロだろ
2478:転生領域の名無しさん
本性表す前からバレる奴があるか
2479:転生領域の名無しさん
ようやくまともに話せる奴が出てきたと思ったらこれだよ!
2480:転生領域の名無しさん
本性出すのはせめて胡散臭いキャラのまま何度か登場してからだろ
2481:転生領域の名無しさん
本性出してねえんだよなぁ
2482:転生領域の名無しさん
とりあえず胡散臭いキャラで一旦終われる立場だったのに……
2483:転生領域の名無しさん
いつかのやらかした自分が全部悪い
2484:転生領域の名無しさん
とか何とか言ってる間にレイス倒したぞ
2485:転生領域の名無しさん
バッドエンド(イッチ談)がバッドエンド(ネキ談)に勝った!
2486:転生領域の名無しさん
この調子でバッドエンド同士潰し合っていけば良いんじゃね?
2487:転生領域の名無しさん
勝ったバッドエンドが強くなっていくだけだろ
2488:転生領域の名無しさん
バッドエンド蠱毒やめろ
2489:転生領域の名無しさん
同士討ちだと苗床増えないし勇者くんも成長しないぞ
2490:転生領域の名無しさん
目に見えたバッドエンドが一つ強くなった瞬間である。
まともな方ではあるよ。強さはともかく性質だけは魔族でも数少ない清涼剤に感じた。
戦いが終わっても「力を付け、また挑むがいい」って逃がしてくれたし。
まあその後そいつの目の届かないところでそいつの取り巻きの性処理ついでに殺されたんだけど。
『残響』
【属性】土/死
【攻撃力】■
【防御力】■
【素早さ】■■■
【魔 力】■■■■■
【精神力】■■■■■■■■
【種族】レイス種
ゴーストの一種に分類されることも多いレイスではあるが、厳密には死霊とは異なる存在である。
肉体が何らかの理由によって消滅し、あるべき場所を失った魂が彷徨っているうちに魔性に変じたものをレイスと呼ぶ。
その性質から『まだ生きている』とも言えるため、ゴーストやスペクターの類よりは元々の人格を保持しやすい。
未練や無念のような曖昧な動機で動く霊より理性的で、熟達した死霊使いでもレイスを操るのは難しい。
また、死の属性を必ずしも持つとは限らず、死に近付き過ぎていない個体ならば肉体を取り戻すことでいわゆる蘇生を行うことも不可能ではない。
精神体ゆえ人間を脅かしやすいが、サキュバスに極めて弱い点はゴーストと同じ。
【『残響』】
深夜帯、イネアの町周辺に出没し、人間魔族問わず遭遇した者を襲うレイスである。
その精神体は生前の容姿を維持できておらず、辛うじて人型を保っている程度。ここまで変質してなお、レイスとしての性質を失わないなど通常はあり得ない。
よほど強力な思念を有していたと思われるが詳細は不明。
精神的に未熟なこの時点の勇者では、どう戦っても勝つことの出来ない存在。
強い意志を持っていなければ、その敵意を向けられた者はあっという間に衰弱死してしまうだろう。
【ユーリの評価】
「…………?」
【リッカの評価】
「…………?」
2022/06/18 追記
ぴょー様よりオリヴィエさんのイラストをいただきました!
これは勝てない(確信)
【挿絵表示】