凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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かいものおやこ

 

 

 ホロゥを発って、十五日。

 行きよりも少し時間を掛けて、僕たちは聖都に戻ってきた。

 遅れの要因は、途中で物資を買い込んでいたこともあるが、何より僕たちが完全ではないから。

 

 魔法は未だ、発動できないまま。

 

 リッカが言うには、魔法そのものに不具合が発生しているわけではないらしい。

 であれば、正しく実行するだけで、求められた効果は発動する筈だ。

 リッカが有するその他の魔法は問題なく使用できている。つまり、僕たちの主力である魔法だけが使えないということ。

 

 色々と試行錯誤したものの、やはり答えは出ないまま。

 アッシュを用いた僕単独の外装は扱えるため、その状態で運転を行ってきた。

 この外装の性能が、リッカと二人で一人の状態よりも劣っているのは理解している。

 そのため、より危険が少ないよう、注意した上で飛行する必要があったのだ。

 翼を持つ魔族は比較的、強力な種が多い。それに――再びあのセイレーンの群れのようなトラブルに見舞われれば、僕一人での対処は難しいと思う。

 

 この問題を解決してから、本格的な移動をした方がいいとも考えた。

 だが、僕たちで答えが出ないならば、別の誰かの知恵を借りた方が有効だと、僕は提案した。

 聖都で待つ、クイールとイリスティーラとナディア。三人ならばもしかすると、何か解決策を見出してくれるかもしれないと。

 リッカもそれを苦渋の様子で認めた。

 イリスティーラはもちろん、クイールでさえ、リッカにとっては信頼を預ける対象にはなっていない。リッカが認めているのは、ナディアのみだ。

 誰かを信じるのは、僕の役目。もう、過去に出会ったことなく、“何をするか分からない”相手を信じることなど、リッカには出来ないから。

 それでも、この問題は解決しなければ次の試練もままならない。

 万全の状態で挑むべき四つ目の試練を、この『アッシュフューリー』で成し遂げられるわけがないだろう。

 

「リッカ、着いたよ」

「ん……」

 

 正門近くでゼクセリオンを停止させ、中で待機していたリッカを呼ぶ。

 ここ数日――リッカはずっと、気落ちしている。

 理由は明白だ。魔法が使えないことで、リッカが自分を足手まといだと感じていること。

 ……僕の戦う理由は、リッカそのものだ。重い問題であっても、それをリッカだけで背負ってほしくはない。

 そもそも、魔法が使えない理由がリッカにあると決まったわけではない。僕の方に何か、理由があるかもしれない。

 そう伝えても、リッカの調子は相変わらずだった。

 

「……ユーリ、疲れてない?」

「少し。出発は早くても明日かな。今日は、クイールと合流だけ済ませよう」

「……分かった」

 

 アッシュの魔法を解き、ゼクセリオンを仕舞い込む。

 たった三十日やそこらでは、聖都の様子は変わらない。

 正門のフェンとルークに話せば、当たり前のように入場許可が下りた。

 今回はリーテリヴィアに用事があるというわけではないため、案内を付けてもらうことなく、聖都に入る。

 

 相変わらず、人間とエルフ、そして少数ながらその他の魔族まで入り乱れる、結晶樹に囲まれた聖都。

 ここでは人間と魔族の間で、なんらかの諍いが起きていると聞いたことはない。

 あくまで、双方の間に暗黙の力関係があるという前提の上でだが――共存の成り立った大都市だ。

 人間の子供とエルフの子供が遊ぶ様子も、当たり前のように見られるこの街の光景は、村にいた頃など想像も出来なかったし、旅を始めてからはとても希少な文化だと感じるようになった。

 

 聖都のほかにも、魔族と一定の条件下で共存する町や村は存在する。

 ハローネの町なんかが好例だ。たった七日間のみなれど、どのような種であれ、あのかぼちゃを被っていれば住民として認められるという祭りは、魔族への信頼があってこそ成立しているのだろう。

 そして、部外者でありながらそんな町で公演を可能としている『七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)』という存在もある。

 彼女たちは魔族の中でもとびっきりの変わり者ではありながら、人々と共に笑うことをよしとする面々だ。

 ……ナイトラクサは――僕は認めることは出来ないが、あれも一種の、共存の形ではある。

 そうした、魔族の一方的な支配だけではない、“共存”。

 それは僕たちが魔王を討つにせよ、それを果たせないにせよ、これからも続いていくのだろう。

 僕たちは何を促すことも出来ないのだが……聖都のような、ハローネのような――理想的な形の生き方が、広がっていってほしいとは思う。

 

 人間と魔族であっても、かけがえのない親友になれる。

 それは、僕とクイール。勇者が二代続けて証明しているのだから。

 

「リッカっ」

「ッ!」

 

 イリスティーラの館を目指していた僕たちの知った声は、市場を歩いていた時に聞こえてきた。

 途端、リッカの表情が強張り、繋いでいた手に力が込められる。

 声の主は、リッカに対して全幅の信頼を置く――それでいて、リッカにとってはなんでもない、ただ“利用した”というだけの相手。

 そのすれ違いはどうにも解消しづらくなり、こうして今も続いている。

 人混みの中から駆けてきた少女に僕が対応する前に、懐からアッシュが飛び出した。

 さも、この状況を想定していたとばかりの速さだった。

 

「わ、わっ……アッシュ?」

『そして私よ。久しぶりね、ホープ』

 

 飛び出したアッシュを受け止めたホープは、聞こえてきたラフィーナの声に首を傾げる。

 どうやら、ラフィーナが予め対策していたらしい。

 ……そういう認識で良いのだろうか。アッシュの行動そのものは、ラフィーナが自由に出来るものではなかったような。

 ということは、アッシュの方が学習したのか。つまり、ホープがリッカの天敵である、と。

 

「ラフィーナ……? アッシュと合体したの?」

『この魔道具からも声を出せるようになったのよ。理屈は大体剣と同じ……何でもないわ、あんたは教育に悪いから黙ってて

「……?」

『気にしないでちょうだい。それよりホープ、外に出るようになったのね』

 

 ……確か、アッシュと接続している状態では、直接声を出す必要があるのだったか。

 近くに誰かいるのかもしれない。その辺り、リッカが多少配慮はしていると言っていたが。

 

「うん。ママとお買い物」

『そ。なら、あいつは近くにいるのかしら』

 

 イリスティーラの方針で、外に出ていなかったらしいホープだったが、それも幾分変化したようだ。

 ラフィーナの問いに、あそことホープは人混みの中を指さす。

 それに合わせたように、人混みを掻き分けて紙袋を抱えたクイールが出てきた。

 

「駄目ですよホープ、あまり離れると――ユーリくん、リッカちゃん!」

「久しぶり、クイール」

 

 元から妖精の粉の影響は、顔色の悪さなどには現れていなかった。

 ゆえに、知っている通りである筈のクイールの顔色は、より活気に満ちていた。

 見せかけのものではなく、日常によって取り戻した、あるべき姿。

 この暫くの休養は、間違いなくクイールに良い変化をもたらしたのだろう。

 

「はい。久しぶり、です。なんとなく、そろそろかなって思ってました。お二人は、やるべきことを終えられました?」

「……一応は、かな。けど、一つ相談があるんだ。イリスティーラや、ナディアも含めて」

「イリスたちも? それなら帰ってから話を聞きましょうか。ホープ」

「うん、ママ」

 

 クイールは空いた片手でホープの手を握る。

 アッシュはホープが持ったままだが――ひとまず、このままでいいか。

 ラフィーナたちが相手をしてくれていなければ、またリッカの好ましくない状況になりかねない。

 

「クイールは、具合どう?」

 

 イリスティーラの館を目指して、並んで歩きつつ、問いかける。

 当然ながら今はもう、妖精の粉を服用してはいないのだろう。

 この元気な様子が一時的なものであればと危惧したが、クイールは紙袋を抱えた手の親指を立てることで応じてきた。

 

「おかげさまで元気いっぱいです! 新しい薬も、とんでもなく良いものみたいで……あのウサギ耳の人がイリスに教えてくれたんですよね? 僕の代わりに、お礼を言っておいてくれると助かります」

「……」

 

 どういう風にやり取りしているかは知らないが、リッカに目を向ければ、面倒だとばかりに溜息をつく。

 僕からコンタクトを取ることは、出来るかもしれない。

 しかしかれらの反応を見るに、どうもあまり良くないことらしい。これはリッカに任せた方が良いだろう。

 ある程度、リッカもかれら……いや、女性の方は不明だが、少なくともウサギ耳の彼の方は信用しているらしいし。

 

『先代。それなりに期間は開いたわよ。体はだいぶ鈍っている筈だけど、取り戻せるの?』

「もちろん、ちゃんと体は動かしてます。イリスたちにも手伝ってもらって、新しい力にも慣れましたし!」

「新しい力……?」

「はい! 最初に使ったのは、二人が僕を止めてくれたあの夜ですね。聖剣が僕を認めてくれたみたいで、その力でイリスにも勝てました。言うなれば、僕なりの“究極の勇者の姿”です」

 

 どうやら知らない間に、クイールは更なる強さを手にしていたらしい。

 それも、彼女が“究極”と称するに相応しい力を。

 療養が必要になったとはいえ、クイールは止まってはいないということか。

 

「今の僕はかつての完璧以上に完璧ですよ! ね、ホープ?」

「ママ、すぐにイリスに対策されていじけてた」

「ホープ?」

 

 ……それは当然ながら、一切敵なしの力ではないようだが。

 ともかく、クイールはやや過激なリハビリにより、実力を落としてはいないようだ。

 それは、僕たちが来ればすぐにでも出発できるという決意表明だった。

 

「い、一応その後はまたやり返しましたし……とにかくっ! もうイリスに一方的にやられていた僕はいません! 言わば新・クイールなのです!」

「あと、ナディアに魔法の講義で“こてんぱん”にされてた。これじゃ、次の試練が不安だって」

「ホープ!?」

『あっちもこっちも、どうも先行き不安ね……』

 

 そして、次の試練のために出発するということは、再びホープを置いて聖都を出るということ。

 どうやら――それはホープも、きちんと把握しているらしい。

 どちらも寂しさを見せていないのは、“今度こそ”やり遂げて戻ってこられるからと、確信しているからか。

 ならば、同行者である僕たちに不備があるのは問題だ。どうにか、この聖都にいる間に解消したい。

 

「ぼ、僕はこう、感覚派なんですよ。最終的な効果さえ分かっていれば、術式は本人が理解していなくてもいいというか……」

「ナディア、“その考えだけはぜったいだめ”って言ってた。“そういう理解の甘さが決戦派によるギジュツカクシンを五百年遅らせた”って」

「うっ」

 

 ――リッカを助けるため、ナディアに治癒魔法を教わった時。

 僕がその術式の構成も理解せず、ただ使えるだけの技術とすることに対して、ナディアは受け入れがたい様子だった。

 事実、しっかりと把握に努めていれば、あの魔法の術式がヨハンナを起動させたことにも納得できただろう。

 本来魔法は、こうした想定外を生まないものなのだ。

 

「えっと、それはですね。今は時代も変わったというか……」

『見苦しいわよ、先代。そこの価値観が変わっていないことは私が保障するわ。その点、ホープはよく教育が行き届いているわね』

「ぐぅ……!」

「ふふん」

 

 持論を一瞬で切って捨てられたクイールと、褒められて得意げなホープは対照的。

 やがてイリスティーラの館に着くまで、クイールの形勢不利は変わらないままであった。

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